本人の意思、財産の帰属、贈与・貸付け・預かり、相続預金の仮払い制度まで、相続税の納税資金を準備するときの実務上の分岐を整理します。
本人の意思、財産の帰属、贈与・貸付け・預かり、相続預金の仮払い制度まで、相続税の納税資金を準備するときの実務上の分岐を整理します。
本人の預貯金を動かす前に、誰の財産として管理するのかを明確にします。
相続発生前に預貯金を引き出して納税資金にできるかは、単純な可否では整理できません。預貯金の名義人本人が自分の意思で自分の預貯金を引き出し、将来の相続税に備えること自体は考えられます。しかし、相続人となる予定の人が本人の預貯金を自分の納税資金として自由に使うには、贈与、貸付け、信託、保険、遺言、遺産分割、相続預金の仮払いなど、法的に説明できる原因が必要です。
次の一覧は、このページ全体で最初に押さえる3つの考え方をまとめたものです。相続発生前の資金移動は後で税務・相続人間の説明が問題になりやすいため、まず「引き出し」「財産の帰属」「資料化」の違いを読み取ることが重要です。
本人名義の預金を現金化しただけなら、残っている現金は原則として本人の財産です。死亡時に残っていれば相続財産として整理します。
贈与、貸付け、預かり、信託、保険、遺言など、どの法律関係で資金を移すのかを説明できる状態にします。
本人の意思、判断能力、使途、残高、領収書、通帳コピー、税務申告資料を残すことで、後日の疑義を減らせます。
相続開始前、預貯金、納税資金、引き出しの意味を分けます。
用語を分けて理解することは、相続発生前に預貯金を引き出して納税資金にできるかを判断する土台です。次の表は、それぞれの言葉が何を指すか、なぜ重要か、どの点を確認すべきかを整理したものです。列ごとに「意味」「実務上の確認点」を読み比べると、資金移動で混同しやすい部分が見えます。
| 用語 | 意味 | 実務上の確認点 |
|---|---|---|
| 相続発生前 | 預貯金の名義人が生存している段階です。相続は死亡によって開始します。 | 相続人予定者は、まだ本人財産を当然に処分できる立場ではありません。 |
| 預貯金 | 銀行、信用金庫、信用組合、農協、ゆうちょ銀行等の普通預金、定期預金、当座預金などです。 | 相続税の対象となる財産の典型で、現金化しても本人財産なら申告対象です。 |
| 納税資金 | 主に相続税を期限までに納めるための資金です。 | 相続税は原則として財産を取得した相続人・受遺者等が納めます。 |
| 引き出す | 本人が下ろす、家族が委任で下ろす、カードで下ろす、死亡後に下ろすなど複数の類型があります。 | 誰の意思と権限で動いたか、使途と残高を説明できるかが問題になります。 |
相続税の有無を考えるうえでは、正味の遺産額が基礎控除額を超えるかが出発点です。次の重要ポイントは、計算式そのものと、預貯金移動の前に試算が必要な理由を示しています。
「将来相続する予定」と「現在処分できる権利」は別です。
相続発生前の預貯金を動かすときは、「納税資金」という目的だけで財産の帰属が変わるわけではありません。次の判断の流れは、引き出した資金をどう整理するかを示します。順番に見ることで、本人の現金、贈与、貸付け、預かり、無権限引出しを分けて考えられます。
誰に、いくらを、何の目的で動かす意思があるかを確認します。
本人財産の保管、贈与、貸付け、預かり、信託、本人費用支出のどれかを整理します。
名義預金、贈与認定、使途不明金、返還請求などが問題になります。
契約書、出納帳、領収書、申告資料に基づいて相続開始後も説明します。
本人の預貯金を家族名義口座へ移しても、本人が資金を出し、本人が管理していたと評価される場合には、名義にかかわらず相続税の課税対象になる可能性があります。したがって、単なる名義移転ではなく、贈与なら受贈者の管理、貸付けなら返済義務、預かりなら返還義務という実体が必要です。
生前と相続開始後で使える制度とリスクが変わります。
次の表は、相続発生前の代表的な場面を、引き出しの可否、納税資金としての使いやすさ、実務上の評価に分けたものです。左から右へ読むと、同じ「引き出し」でも、本人の意思や法的原因の有無によって結論が大きく変わることが分かります。
| 場面 | 引き出し | 納税資金化 | 実務上の評価 |
|---|---|---|---|
| 本人が自分の意思で引き出す | 可能 | 本人財産としては可能 | 死亡時に残れば相続財産で、保管記録が重要です。 |
| 本人が相続人予定者へ贈与する | 可能 | 受贈者の資金になり得ます | 贈与契約、資金移動、贈与税、生前贈与加算を確認します。 |
| 本人が貸し付ける | 可能 | 借入資金として一時利用できます | 借用書、返済条件、利息、貸付金債権の相続財産性が問題です。 |
| 本人が家族に預ける | 可能 | 預かった人の自由資金ではありません | 預り金は本人財産として死亡時に整理します。 |
| 本人の委任で医療・介護費に使う | 可能 | 相続人の納税資金ではありません | 領収書・出納帳があれば説明しやすくなります。 |
| 本人の意思確認なく家族が引き出す | 原則不可 | 不可 | 返還請求、損害賠償、相続紛争、刑事問題のリスクがあります。 |
| 判断能力を欠く状態で引き出す | 原則危険 | 原則不可 | 成年後見等を検討します。 |
次の表は、相続開始後に預貯金を使う制度と注意点をまとめています。相続開始後は生前の委任とは別に相続手続として処理するため、上限額や必要書類を読み取り、資金不足に早めに備えることが重要です。
| 場面 | 払戻しの可否 | 上限・手続 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 遺産分割協議・遺言等に基づく通常手続 | 可能 | 戸籍、印鑑証明、遺産分割協議書など金融機関所定書類 | 金融機関ごとに必要書類が異なります。 |
| 相続預金の仮払い制度 | 可能 | 相続開始時の預金額×1/3×払戻しを行う相続人の法定相続分。同一金融機関150万円上限 | 単独相続人でも一定額を払戻しできますが、大口納税には不足し得ます。 |
| 家庭裁判所の判断による仮取得 | 可能な場合あり | 遺産分割調停・審判が係属し、必要性等が認められる場合 | 生活費、葬儀費用、納税等の必要性を資料で説明します。 |
| 死亡後に銀行へ知らせずATMで引き出す | 高リスク | 金融機関手続外 | 後日の相続紛争、使途不明金、単純承認等が問題になり得ます。 |
現金化、名義移転、贈与、貸付け、預かりを税務上も分けます。
相続税の対象は預金という形式に限られません。次の一覧は、資金移動の代表類型ごとに、相続税・贈与税・申告上の注意点を比較するものです。どの行でも「残った財産が誰に帰属するか」と「税務資料があるか」を読み取ることが重要です。
預金を1,000万円引き出して金庫に保管したまま死亡した場合、原則として現金として相続財産に含めます。
家族名義口座に移しても、本人が資金を出し管理していれば、名義預金として本人財産と評価される可能性があります。
有効な贈与なら受贈者の財産になり得ますが、110万円基礎控除、生前贈与加算、相続時精算課税、遺留分を確認します。
借主が納税資金として一時利用できますが、本人の貸付金債権は死亡時に相続財産になります。
預かった家族の自由資金ではありません。本人死亡時に残っていれば、本人財産として整理します。
医療費、介護費、生活費として使う場合も、領収書、請求書、出納帳、残金管理が必要です。
贈与や貸付けとして説明する場合には、単なる口頭説明では足りないことがあります。次の表は、特に確認されやすい資料を並べたものです。列の違いから、贈与は「もらった実体」、貸付けは「返す実体」、預かりは「本人へ返す実体」が中心になると読み取れます。
| 整理方法 | 必要になりやすい資料 | 不足した場合のリスク |
|---|---|---|
| 贈与 | 贈与契約書、銀行振込、受贈者の通帳管理、必要な贈与税申告 | 名義預金、贈与の実体なし、生前贈与加算、遺留分の争い |
| 貸付け | 金銭消費貸借契約書、返済期限、利息、返済履歴、返済能力 | 贈与認定、貸付金の申告漏れ、使途不明金の争い |
| 預かり金 | 預り証、保管口座、保管目的、返還条件、支出明細、残高表 | 本人財産か家族財産か不明になり、遺産分割や申告で争われます。 |
家族が管理するときほど、本人の意思と権限を資料化します。
本人の意思と判断能力は、相続発生前の預貯金管理で最も重要な確認点です。次の一覧は、委任、キャッシュカード使用、判断能力低下、金融機関手続の違いを整理しています。各項目では、本人のための支出か、相続人の都合による確保かを読み分けてください。
委任状、目的メモ、引出し前後の通帳コピー、支出先の請求書・領収書、本人への報告記録を残します。
生活費、医療費、介護費、施設費、税金、公共料金、修繕費など本人のための支出は説明しやすい一方、相続人の納税資金確保は別問題です。
入院、認知症、死亡直前の高額引出し、領収書なし、家族口座への混入、残高不明が重なると疑義が強まります。
成年後見人や任意後見人は本人財産を本人のために管理する立場です。相続人の納税資金確保目的の移転は慎重に扱われます。
本人の判断能力が不十分な場合の対応は、時期によって使える制度が変わります。次の時系列は、元気な段階、判断能力が低下した段階、相続開始後で、何を準備すべきかを示しています。順番を追うと、生前対策は早い時期ほど選択肢が多いことが分かります。
法定後見、保佐、補助、任意後見の発効など、本人利益を中心に財産管理方法を検討します。
生前の委任とは切り離し、遺言、遺産分割、仮払い制度、家庭裁判所手続に基づいて預貯金を整理します。
贈与、保険、信託、遺言、不動産換価、延納・物納を横断して考えます。
納税資金を準備する方法は、預貯金を現金化するだけではありません。次の比較表は、主な手段ごとに資金の帰属、納税資金としての有効性、注意点を整理したものです。どの手段も「誰の資金になるか」が異なるため、列ごとの違いを見て、目的に合う制度を選ぶことが重要です。
| 手段 | 資金の帰属 | 有効性 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 本人が現金化して保管 | 本人 | 相続後の遺産として使える可能性 | 紛失、使途不明、申告漏れ |
| 生前贈与 | 受贈者 | 受贈者固有の納税資金 | 贈与税、生前贈与加算、遺留分、証拠 |
| 貸付け | 借主が使用し返済義務を負う | 一時的な納税資金 | 貸付金は相続財産、契約と返済実体が必要 |
| 生命保険 | 受取人 | 遺産分割前に資金化しやすい | 保険料負担者、受取人、税務、非課税枠 |
| 家族信託 | 信託財産 | 契約設計次第 | 税務、信託契約、受益権評価が複雑 |
| 遺言・遺言執行者 | 相続開始後の承継先 | 預金取得者を明確にしやすい | 遺留分、金融機関手続、遺言の有効性 |
| 不動産の生前売却 | 本人または贈与先 | 流動性確保に有効 | 譲渡所得税、住替え、介護費、相続税評価 |
| 延納・物納 | 相続発生後の納税者 | 現金不足時の制度 | 要件、担保、期限、利子税 |
次の一覧は、選択肢のなかでも実務で検討されやすい手段を詳しく示しています。タグは資金化のしやすさや注意点の方向性を示す目印で、どの方法も単独で完結せず、税務・法務・金融実務を組み合わせて判断する必要があります。
贈与者と受贈者の合意、資金移動、通帳管理、必要な申告を整えます。
固有資金加算確認受取人固有の請求権として、遺産分割を待たずに資金化しやすい設計があります。
早期資金化契約形態確認判断能力低下後も契約に沿って管理できる一方、受益権評価や遺留分を確認します。
管理設計専門設計預貯金の取得者、代償金、保険、不動産承継を明確にし、相続後の資金化を円滑にします。
承継明確化遺留分注意口座制限後は、通常手続・仮払い・家庭裁判所手続を使い分けます。
口座名義人の死亡を金融機関が把握すると、原則として入出金等の取引が制限されます。次の判断の流れは、死亡後に預貯金を納税資金や葬儀費用に使いたい場合の整理順を示します。上から順に見ると、通常手続、仮払い制度、家庭裁判所の判断を段階的に検討する必要が分かります。
金融機関へ連絡し、残高証明や取引履歴を確認します。
取得者が決まっていれば通常の相続手続で払戻しを進めます。
必要な場合は相続預金の仮払い制度や家庭裁判所の判断による仮取得を検討します。
生命保険、自己資金、借入れ、延納、物納、不動産売却を組み合わせます。
仮払い分は後の取得分から調整し、申告資料にも反映します。
仮払い制度の金額は、相続開始時の預金額、3分の1、払戻しを行う相続人の法定相続分、同一金融機関150万円上限を組み合わせて計算します。次の重要ポイントは、計算式と例を通じて、制度の使いやすさと限界を読み取るためのものです。
相続税申告は遺産分割が終わっていないことだけで待てるものではありません。未分割の場合も、法定相続分等に従って申告・納税し、後で分割結果に応じた修正申告や更正の請求を検討します。
預貯金引き出しが難しい場合も、申告・納税期限は意識します。
現金が不足する場合の選択肢は、制度上の要件と期限で使いやすさが変わります。次の一覧は、延納、物納、金融機関借入れの違いを整理したものです。各項目の「使える場面」と「注意点」を読み比べると、申告期限直前では間に合わない可能性が見えてきます。
相続税額が10万円を超え、金銭納付が困難な範囲で、担保提供や期限内申請などの要件を満たす必要があります。延納税額100万円以下で延納期間3年以下なら担保不要とされる場合があります。
延納でも金銭納付が困難な場合に検討します。管理処分不適格財産、物納劣後財産、収納価額、境界、共有、担保権など多くの実務問題があります。
相続税納税資金ローン、つなぎ融資、不動産担保ローンなどがあります。金利、担保、返済原資、売却予定、相続人間の合意、連帯保証を確認します。
本人資金と家族資金を分け、出納帳と領収書で説明できる状態にします。
死亡前の引出しは、本人のための正当な支出であっても、資料がないと使途不明金として疑われやすくなります。次の表は、出納帳に残すべき項目と記載例を示しています。日付、入出金、残高、使途、支払先、証拠資料の列を横に追うと、資金の流れを後から再現しやすくなります。
| 日付 | 入金 | 出金 | 残高 | 使途 | 支払先 | 証拠資料 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026/1/10 | 0 | 100,000 | 900,000 | 介護施設費 | A施設 | 領収書No.1 |
| 2026/1/15 | 0 | 25,000 | 875,000 | 通院タクシー・薬代 | B薬局等 | 領収書No.2 |
| 2026/1/25 | 0 | 50,000 | 825,000 | 生活費 | 本人 | 本人受領メモ |
記録管理で大切なのは、家族だけが分かる形ではなく、他の相続人や税務署にも説明できる形にすることです。次の一覧は、疑義を減らすための管理ポイントを整理しています。各項目は、後日の紛争で何を確認されるかを示しています。
本人資金を家族自身の生活口座に入れると、名義預金、預り金、不当利得、使途不明金が問題になります。
レシート、メモ、写真、振込控えを保存し、現金残高も分かるようにします。
介護を担う相続人が単独で抱え込むと疑念を持たれやすいため、本人意思やプライバシーに配慮しつつ共有方法を整えます。
本人のための支出か、相続人の利益取得かで見え方が変わります。
相続人間で争いになる論点は、税務だけではありません。次の一覧は、死亡前の預金引出しをめぐって生じやすい法的論点を整理したものです。それぞれの見出しから、どの相続人がどのような主張をする可能性があるかを読み取ってください。
無権限で引き出したり、委任の範囲を超えて自分のために使ったりした場合、本人または相続人から返還や損害賠償を求められる可能性があります。
納税資金として先にもらった資金が実質的に贈与なら、遺産分割で持戻しが問題になることがあります。
特定の相続人に多額の資金を渡した結果、他の相続人の最低限の取り分を侵害する場合があります。
本人の意思に反し、または預かった趣旨に反して本人財産を流用した場合、横領、窃盗、詐欺等が論点になることがあります。
相続税の試算から相続開始後の説明まで逆算します。
実務では、預貯金を引き出すかどうかを最初に決めるのではなく、相続税額、本人意思、資金源、書面、分別管理、相続開始後の手続を順に確認します。次の時系列は、その進め方を示しています。上から下へ進むほど、資金移動後の説明責任が具体化します。
預貯金、現金、株式、生命保険、不動産、非上場株式、貸付金、退職金、贈与、債務、葬式費用を洗い出します。
相続税総額だけでなく、誰が、いつ、いくら、現金で払えるかを確認します。
相続人固有資金、生命保険、仮払い、遺産分割で取得する預金、生前贈与、貸付け、不動産売却、延納、物納を分けます。
財産管理委任契約、贈与契約、借用書、預り証、信託契約、任意後見契約、公正証書遺言、保険契約を検討します。
本人現金、贈与資金、貸付資金、預かり金、本人費用支出ごとに口座、出納帳、領収書、残高表を分けます。
戸籍収集、遺言確認、財産目録、残高証明、仮払い、生命保険請求、申告、遺産分割、相続登記、延納・物納判断まで逆算します。
資金源は、誰の資金かによって使いやすさが変わります。次の表は、納税資金源を比較するものです。上から順に、相続人固有の資金ほど使いやすく、遺産分割や制度要件に左右される資金ほど準備期間が必要だと読み取れます。
| 資金源 | 誰の資金か | 使いやすさ | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 相続人固有の預貯金 | 相続人 | 高い | 生活資金も考慮します。 |
| 生命保険金 | 受取人 | 高い | 受取人と保険料負担者を確認します。 |
| 相続預金の仮払い | 遺産の一部 | 中程度 | 上限があり、取得分から控除されます。 |
| 遺産分割で取得する預金 | 相続人 | 協議次第 | 協議未了なら使えません。 |
| 生前贈与資金 | 受贈者 | 高い | 贈与税・生前贈与加算を確認します。 |
| 貸付資金 | 借主が一時使用 | 中程度 | 返済義務と貸付金の相続財産性があります。 |
| 不動産売却代金 | 売主・相続人 | 売却次第 | 売却期間と譲渡所得税を確認します。 |
| 延納・物納 | 納税者 | 条件付き | 担保、利子税、物納適格性、書類整備が必要です。 |
専門職はそれぞれ扱える領域が異なります。次の表は、どの問題を誰に相談しやすいかを整理したものです。左列の専門職名だけでなく、中央の主な役割と右列の相談場面を合わせて見ると、複数専門職の連携が必要な理由が分かります。
| 専門職 | 主な役割 | 相談を優先しやすい場面 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 使途不明金、遺留分、遺産分割、調停、審判、訴訟、交渉 | 他の相続人が不信感を持つ、多額の引出し、認知症中の引出し、通帳不開示 |
| 税理士 | 相続税申告、贈与税申告、名義預金、相続時精算課税、延納・物納、税務調査 | 相続税が発生しそう、生前贈与、名義預金、不動産や非上場株式、期限まで10か月未満 |
| 司法書士 | 相続登記、戸籍収集、法務局手続、裁判所提出書類作成 | 不動産がある、相続登記期限を確認したい、法定相続情報を整えたい |
| 行政書士 | 紛争性のない書類作成、相続人関係説明図、名義変更書類 | 相続人全員の合意があり、書類整理を進めたい |
| 公証人 | 公正証書遺言、任意後見契約、死後事務委任契約 | 本人の判断能力が十分なうちに生前対策を形にしたい |
| 不動産・会計系専門職 | 不動産評価・測量・売却、非上場株式評価、事業承継、知的財産承継 | 不動産が多い、非上場会社や事業承継がある、納税資金問題が複雑 |
| FP | 家計、保険、老後資金、納税資金の全体設計 | 法律・税務の判断前に資金計画を整理し、必要な専門家につなぎたい |
個別判断ではなく、一般的な制度説明として整理します。
一般的には、親が判断能力を有し、贈与する意思があり、子も受諾し、贈与契約や資金移動、必要な税務申告等が整っていれば、子の資金になる可能性があります。ただし、単に子名義口座に移しただけで、親が管理し、子が自由に使えず、贈与の認識もない場合には、名義預金として親の相続財産に含まれる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで税理士や弁護士等に相談する必要があります。
一般的には、贈与なのか預かりなのかで整理が変わるとされています。贈与なら受贈者の財産になり得ますが、預かりなら親の財産です。贈与契約書、資金移動、通帳管理、税務申告、親が返還を求められるかなどで判断が変わる可能性があります。具体的には、預り証または贈与契約書の整備を含めて専門家へ相談する必要があります。
一般的には、本人の明確な依頼または法的権限に基づき、本人の医療費・介護費・生活費に使う場合は正当な支出として説明しやすいとされています。ただし、領収書、請求書、出納帳、残金管理の有無で結論が変わる可能性があります。本人の判断能力が不十分な場合は、成年後見等を含め専門家に相談する必要があります。
一般的には、預金を現金にしただけでは相続税が当然に減るわけではありません。本人の財産として残っていれば、現金として相続財産に含まれる可能性があります。使途、残高、名義、贈与の有無によって判断が変わるため、具体的には税理士等へ確認する必要があります。
一般的には、死亡後の預貯金は遺産となり、金融機関が死亡を把握すると取引が制限されます。葬儀費用等の資金が必要な場合は、相続預金の仮払い制度、生命保険金、相続人の立替え、遺産分割協議などを検討することが多いとされています。無断引出しは後日の紛争につながる可能性があるため、具体的な対応は専門家へ相談する必要があります。
一般的には、一定額を相続税や葬儀費用等に充てられる場合があります。ただし、金融機関ごとの上限は150万円で、計算式も相続開始時の預金額×1/3×払戻しを行う相続人の法定相続分に限られます。相続税が高額な場合は不足する可能性があるため、他の資金源も含めて検討する必要があります。
一般的には、遺産分割が終わっていないことだけで相続税の申告期限が延びるわけではありません。未分割の場合でも、法定相続分等に従って申告・納税する必要があります。特例適用や後日の修正申告・更正の請求が関係するため、税理士等に確認する必要があります。
一般的には、暦年課税の基礎控除額は110万円ですが、それだけで安全とはいえません。生前贈与加算、名義預金、贈与の実体、連年贈与、遺留分などで結論が変わる可能性があります。具体的には、贈与契約、資金管理、申告の要否を専門家に確認する必要があります。
一般的には、本人に贈与の意思能力がなければ、有効な贈与として扱うことは困難とされています。成年後見人等は本人の財産を本人のために管理する立場であり、相続人の納税資金確保を目的とする移転は慎重に扱われます。具体的な対応は、後見制度や相続対策に詳しい専門家へ相談する必要があります。
一般的には、通帳、取引履歴、領収書、出納帳、残金の開示を求めることから始まります。任意に開示されない場合や使い込みが疑われる場合には、金融機関取引履歴の取得、遺産分割調停、返還請求、損害賠償請求等が問題になる可能性があります。具体的な方針は弁護士等に相談する必要があります。
同じ資金移動でも、残高、贈与意思、判断能力、相続後の制度で結論が変わります。
次の一覧は、典型的な5つの事例を通じて、相続発生前後の預貯金引き出しをどう見るかを整理したものです。各事例では、金額や時期だけでなく、本人の意思、資金の残り方、資料の有無、相続後の制度を読み取ることが重要です。
死亡時に現金が残っていれば、預金ではなく現金として相続財産に含めるのが原則です。
贈与なのか預かりなのかを、契約書、管理口座、返還意思、申告の有無から確認します。
判断能力、支出目的、領収書、残金が問題です。流用があれば返還請求や刑事問題が生じ得ます。
仮払い制度、生命保険、自己資金、借入れ、延納、物納を検討します。150万円上限に注意します。
不動産売却、評価、測量、境界、共有解消、生命保険、遺言、代償金、延納・物納を早めに検討します。
「引き出すか」より「どの原因で誰の財産として説明できるか」が核心です。
相続発生前に預貯金を引き出して納税資金にできるかは、本人が自分の預貯金を引き出すこと自体と、相続人予定者の納税資金になることを分けて考える必要があります。本人財産として残る限り、死亡時には相続財産です。相続人予定者の資金にするには、贈与、貸付け、保険、信託、遺言、遺産分割などの法的原因が必要です。
最後に確認すべき実務上の順番を次にまとめます。この一覧は、相続発生前の引出しを安全に検討するための最終確認です。上から順に、税額、本人意思、選択肢、資料、相続後の手続、専門家相談を確認してください。
相続税額と納税資金不足額を試算し、本人の意思と判断能力を確認し、贈与・貸付け・保険・信託・遺言・不動産売却等を比較し、書面、振込、出納帳、領収書、申告資料を整備し、相続開始後の仮払い、申告、納税、遺産分割まで逆算します。