手当の名称だけで判断せず、給与性、実費弁償性、休業による減収、有給や賞与への影響を、資料と計算例で整理します。
手当の名称だけで判断せず、給与性、実費弁償性、休業による減収、有給や賞与への影響を、資料と計算例で整理します。
手当の名称ではなく、給与性、減収、事故との関係、実費弁償性で判断します。
会社員の休業損害は、交通事故による傷害のために働けなかったことで失われた収入を填補する損害です。出発点は、1日あたりの基礎収入に休業日数を掛ける考え方です。
基礎収入は手取り額だけではなく、原則として事故前の給与実績をもとにした控除前の支給額で検討します。ただし、すべての手当が当然に入るわけではありません。重要なのは名称ではなく、労働の対価か、実費の穴埋めか、休業で実際に減ったかです。
次の分類表は、手当や金銭を大きく4つに分けています。左から区分、典型例、基礎収入での扱いを示し、まず給与性が強いもの、条件付きのもの、除外しやすいもの、賞与のように別枠で見るものを読み取ります。
| 区分 | 典型例 | 基礎収入での扱い |
|---|---|---|
| 原則として含める手当 | 役職手当、職務手当、資格手当、家族手当、住宅手当、地域手当、皆勤手当、時間外手当、夜勤手当、歩合給、固定残業代 | 労働の対価または給与性のある収入として、事故前実績を基礎に含める方向で検討します。 |
| 条件付きで含める手当 | 通勤手当、食事手当、在宅勤務手当、単身赴任手当、外勤手当、車両手当、通信手当 | 固定的給与か、実費弁償か、休業で実際に減収したか、費用が節約されたかを個別に見ます。 |
| 原則として含めないもの | 出張旅費、業務交通費、宿泊費、立替経費、会社貸付金、仮払金、労災保険給付、健康保険の傷病手当金 | 給与ではない、または損害調整の対象であり、基礎収入そのものには入れない方向です。 |
| 別枠で検討するもの | 賞与、決算賞与、一時金、年次精算のインセンティブ | 事故前3か月の月例給与には通常入れず、減額や不支給があれば別途検討します。 |
次の重要ポイントは、休業損害の基本式と基礎収入の位置づけを表します。日額の作り方を誤ると全体の金額が変わるため、式の左から基礎収入、休業日数、別枠損害の順に確認することを読み取ります。
賞与減額、有給休暇、残業不能、歩合給の減少などは、必要に応じて別枠で積み上げます。
事故前3か月の月例給与、本給、付加給、控除項目を分けて見ます。
休業損害証明書では、給与所得者について、事故前3か月間に支給した月例給与を記載する欄があり、賞与は除く形式になっています。同じ欄には稼働日数、支給金額、本給、付加給、社会保険料、所得税、差引支給額が置かれます。
次の一覧は、基礎収入を確認するときの主要資料と役割を整理しています。列は資料、確認する内容、見落としやすい点を示し、手取り額だけではなく控除前の本給と付加給を確認する必要があることを読み取ります。
| 資料 | 確認する内容 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 休業損害証明書 | 事故前3か月の月例給与、本給、付加給、稼働日数 | 賞与を月例給与に混ぜない |
| 給与明細 | 基本給、手当、残業代、控除、差引支給額 | 手取り額だけで計算しない |
| 賃金台帳 | 月別賃金、欠勤控除、遅早控除、手当の増減 | 事故月の控除が基礎に入っていないか |
| 源泉徴収票 | 前年収入、給与所得者であること | 転職直後や昇給直後では補助資料にとどまる場合がある |
| 就業規則、給与規程 | 手当、控除、賞与査定、有給のルール | 手当名だけでは性質が分からない |
次の計算式は、事故前3か月方式の基本を表します。分子に月例給与、分母に日数または稼働日数を置くため、事故による減額がすでに反映された月を含めないことを読み取ります。
事故前3か月が不適切な場合があります。入社、転職、配置転換、昇給、降給の直後、病欠や育休があった時期、季節変動が大きい業種、歩合給の変動が大きい場合などは、直近6か月、直近1年、前年同月、雇用契約上の予定賃金などを合わせて検討します。
給与性、継続性、減収、蓋然性、社会保険給付との調整を順番に見ます。
手当を基礎収入に含めるかは、名称ではなく性質で判断します。労働の対価か、毎月支給されているか、休業で実際に減ったか、事故がなければ得られた蓋然性があるか、社会保険給付との調整対象かを分けます。
次の一覧は、手当判断で使う5つの軸を表します。各項目は左から順に確認する観点を示しており、ひとつの手当に給与性と実費弁償性が混ざる場合は、どこで資料を追加すべきかを読み取ります。
職務、地位、資格、勤務時間に対応する手当は給与性が強くなります。立替費用の精算は除外方向です。
継続的な手当は月例給与に入りやすく、祝金や見舞金など一時的な金銭は慎重に見ます。
給与性があっても全額支給されていれば、その月の手当部分に現実の減収がない場合があります。
残業代、歩合給、インセンティブは、前年同期や直近実績で見込みを補強します。
労災給付や傷病手当金は給与手当ではなく、損害賠償との調整の問題として扱います。
次の判断の流れは、手当が給与明細にある場合の見方を表します。上から順に給与性、減額、実費弁償性を確認するため、基礎収入に入れるのか、別枠で主張するのか、除外するのかを読み取ります。
まず支給実績と名目を確認します。
職務手当、資格手当、残業手当などは給与性が強い方向です。
減額額と事故との関係を資料で示します。
支出の穴埋めか、給与性がある部分だけかを分けます。
基本給、役職手当、資格手当、皆勤手当、残業代、夜勤手当、歩合給などを確認します。
労働、職務、地位、技能、勤務時間、成果に対応して支払われる手当は、基礎収入に含める方向で検討します。ただし、実際に減額されたか、事故がなければ継続して得られたかは別途確認します。
次の比較表は、含める方向で検討する代表的な手当と確認点を整理したものです。列は手当、給与性の理由、追加で見る資料を示し、同じ給与性のある手当でも減額の有無が重要なことを読み取ります。
| 手当 | 給与性の理由 | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 基本給、本給 | 給与所得者の中心的収入 | 雇用契約書、給与明細、賃金台帳 |
| 役職手当、管理職手当、職責手当 | 地位や責任への対価 | 辞令、給与規程、休業中の減額処理 |
| 職務手当、職能手当、技能手当 | 職務内容や技能への対価 | 職務等級、業務内容説明書 |
| 資格手当、免許手当 | 資格保有や資格業務への対価 | 資格手当規程、配置転換資料 |
| 家族手当、住宅手当、地域手当 | 給与性のある生活補助手当 | 休業中も支給されたか、日割り減額されたか |
| 皆勤手当、精勤手当 | 休まず勤務した条件に対する給与 | 支給条件、事故欠勤以外の遅刻欠勤の有無 |
| 時間外手当、休日手当、深夜手当、夜勤手当 | 勤務時間帯や勤務量への対価 | 事故前実績、シフト、医師の就労制限 |
| 歩合給、出来高給、インセンティブ | 成果に対応する給与 | 直近6か月から1年、前年同期、営業実績 |
| 固定残業代、みなし残業手当 | 毎月の賃金として扱われる場合がある | 固定残業時間、超過分精算、休業中の減額 |
次の職種別一覧は、どの手当が問題になりやすいかを整理したものです。職種ごとに中心となる手当が異なるため、事故後に外れた勤務や配置転換の影響を読み取ります。
夜勤手当、資格手当、職務手当、処遇改善手当、オンコール手当、特殊勤務手当が問題になりやすい職種です。
夜勤資格乗務手当、無事故手当、歩合給、距離手当、深夜手当、車両手当の性質を分けます。
乗務歩合営業手当、固定残業代、歩合給、インセンティブ、達成手当の見込みを資料で補強します。
営業成果固定的給与か実費弁償か、休業で費用が節約されたかを分けます。
通勤手当、食事手当、在宅勤務手当、通信手当、外勤手当、単身赴任手当、車両手当などは、給与性と実費弁償性が混在しやすい手当です。給与明細に毎月載っているだけで一律に含めるのではなく、支給条件と実質を確認します。
次の比較表は、条件付きで判断する手当の扱いを整理したものです。列は手当、含める方向に働く事情、除外方向に働く事情を示し、同じ手当でも資料次第で評価が分かれる点を読み取ります。
| 手当 | 含める方向の事情 | 除外方向の事情 |
|---|---|---|
| 通勤手当 | 毎月定額支給で休業により支給停止または減額された。定期券の払い戻し不能がある。 | 休業で通勤費が発生していない。ガソリン代相当の実費補填に近い。 |
| 食事手当 | 毎月一定額が現金支給され、欠勤控除の対象になる。 | 社員食堂の補助や夜勤時だけの実費補助である。 |
| 在宅勤務手当 | 課税給与として定額支給され、休業で減額される。 | 通信費、電気代、備品代の補填に近い。 |
| 通信手当 | 使途確認なく毎月定額で給与処理されている。 | 個人携帯の業務利用分の実費補填である。 |
| 外勤手当、営業手当 | 職務手当や固定残業代の性質がある。 | 出張日当、移動費、顧客訪問の交通費精算である。 |
| 単身赴任手当、車両手当 | 定額生活補助や車両維持の対価として支給される。 | 帰省旅費や走行距離に応じた実費精算に近い。 |
通勤手当は争点になりやすいため、次の一覧で状況別に見ます。左の状況から右の扱いへ進むことで、支給停止額、実損、節約された費用を分けて読み取ります。
付加給として事実を示し、実際の減収や払い戻し不能額を説明します。
支給停止額だけでなく、払い戻し損や実際の負担を資料で確認します。
相手方から節約された費用と見られやすく、基礎収入から外されやすい領域です。
実費精算、貸付金、見舞金、労災給付、傷病手当金を給与と混同しないようにします。
出張旅費、業務交通費、宿泊費、立替経費、会社貸付金、慶弔見舞金、退職金、労災保険給付、健康保険の傷病手当金などは、通常の月例給与とは性質が異なります。基礎収入から外すか、別の損害項目または損益調整として整理します。
次の比較表は、含めにくい金銭を理由ごとに整理したものです。列は金銭名、除外方向の理由、別途検討する場面を示し、給与ではないものと別枠損害を読み分けます。
| 金銭名 | 除外方向の理由 | 別途検討する場面 |
|---|---|---|
| 出張旅費、業務交通費、宿泊費 | 業務遂行のための費用精算であり、休業すれば費用も発生しない | 未精算の立替費用が残っている場合 |
| 接待交際費、工具代、備品購入費の精算 | 本人所得ではなく会社経費の精算 | 領収書に基づく精算漏れがある場合 |
| 会社貸付金、仮払金、前払金 | 返済または精算を予定する金銭 | 給与未払とは区別して整理 |
| 慶弔見舞金、災害見舞金、永年勤続表彰金 | 福利厚生または恩恵的給付 | 通常の月例給与とは分ける |
| 退職金、解雇予告手当 | 休業期間中の月例給与とは性質が異なる | 事故による退職、退職金差額、逸失利益として整理 |
| 労災休業給付、傷病手当金 | 給与手当ではなく社会保険給付 | 損害賠償との調整、二重填補の回避 |
次の重要ポイントは、労災や健康保険給付を基礎収入に入れない理由を表します。給与と社会保険給付を分けることで、損害額の計算と既払金調整を混同しない点を読み取ります。
月例給与の日額計算に混ぜず、減額や消化があれば根拠資料を分けます。
賞与は、休業損害証明書の事故前3か月の月例給与欄では除く形式です。そのため、月例給与の日額計算に当然に混ぜると混乱します。一方で、事故による欠勤、休職、評価低下、査定期間中の就労不能で賞与が減額または不支給になった場合は、別枠の損害として検討します。
次の比較表は、月例給与とは別に確認する損害を整理したものです。列は項目、計算や評価の考え方、必要資料を示し、給与明細の総支給額だけでは見えない不利益を読み取ります。
| 項目 | 考え方 | 必要資料 |
|---|---|---|
| 賞与減額 | 事故がなければ得られた賞与見込額から実支給額を控除 | 賞与減額証明書、賞与規程、査定期間、前年同期明細、会社の減額理由 |
| 有給休暇 | 本来別の目的で使えた休暇を事故対応に使った不利益 | 有休管理簿、休業損害証明書、通院資料 |
| 時間休、遅刻、早退 | 1時間あたりの基礎収入に失われた勤務時間を掛ける | 勤怠記録、給与規程、所定労働時間、通院資料 |
| 皆勤手当 | 事故欠勤や遅刻で支給条件を失ったかを確認 | 賃金規程、勤怠記録、過去の支給実績 |
次の数値例は、役職手当、住宅手当、残業手当を含める場合と、通勤手当を除外する整理をした場合の差を表しています。合計額と分母の60日を確認し、通勤手当45,000円を含めるかで日額と総額が変わる点を読み取ります。
| 計算 | 3か月合計 | 日額 | 20日休業の損害 |
|---|---|---|---|
| 通勤手当を含む | 1,215,000円 | 1,215,000円 ÷ 60日 = 20,250円 | 20,250円 × 20日 = 405,000円 |
| 通勤手当45,000円を除く | 1,170,000円 | 1,170,000円 ÷ 60日 = 19,500円 | 19,500円 × 20日 = 390,000円 |
| 差額 | 45,000円 | 750円 | 15,000円 |
付加給漏れ、手取り計算、事故月混入、賞与減額、有給の区別を確認します。
休業損害証明書や給与資料の不備は、基礎収入を低く見せる原因になります。勤務先が交通事故実務に不慣れな場合、基本給だけを書いたり、手取り額だけで記載したり、事故月を含めたりすることがあります。
次の一覧は、見落とされやすい不備と確認方法を整理したものです。左から不備、低くなる理由、直し方を示し、提出前にどの欄を照合すべきかを読み取ります。
役職手当、資格手当、住宅手当、残業手当、皆勤手当が抜けると基礎収入が低くなります。
社会保険料や所得税を控除した後の差引支給額だけでは、控除前支給額を反映できません。
事故月に欠勤控除が入っていると、事故で下がった給与を基礎にしてしまいます。
月例給与欄では賞与が除かれるため、賞与減額証明書などを別途確認します。
欠勤、年次有給、時間有給、遅刻、早退を分けて記載してもらいます。
次の資料一覧は、給与、休業日数、医学的必要性、社会保険関係を分けてそろえるためのものです。分類ごとに資料の役割が違うため、不足している分類を読み取ります。
| 分類 | 資料 |
|---|---|
| 給与、手当 | 休業損害証明書、事故前3か月の給与明細、源泉徴収票、賃金台帳、雇用契約書、給与規程、賞与明細 |
| 休業日数 | 欠勤、有給、遅刻、早退欄、出勤簿、勤怠打刻記録、シフト表、有給休暇管理簿、復職記録 |
| 医学的必要性 | 診断書、診療報酬明細書、診療録、画像検査結果、リハビリ記録、医師の就労制限意見書 |
| 社会保険関係 | 労災休業給付の決定通知、第三者行為災害届、傷病手当金支給決定通知、会社補償の資料 |
含める、条件付き、原則除外、別枠を一覧で点検します。
最終確認では、給与明細に出てくる金銭を一つずつ分類します。次の詳細分類表は、原則分類と理由をまとめたものです。手当名、分類、確認点を横にたどり、実費弁償や社会保険給付を基礎収入へ混ぜないことを読み取ります。
| 手当、金銭名 | 原則分類 | 理由、確認点 |
|---|---|---|
| 基本給、本給 | 含める | 給与所得者の中心的収入 |
| 役職手当、職務手当、資格手当 | 含める | 職位、職務内容、資格業務への対価 |
| 家族手当、住宅手当、地域手当 | 含める | 給与性のある生活補助手当。ただし減額の有無を確認 |
| 皆勤手当、時間外手当、夜勤手当 | 含める | 勤務実績や勤務時間帯に対応する給与 |
| 固定残業代、危険手当、特殊勤務手当 | 含める | 毎月の賃金または特殊勤務の対価として減額を確認 |
| 歩合給、出来高給 | 含める方向 | 変動が大きいため平均期間と資料が重要 |
| 営業手当、通勤手当、食事手当、在宅勤務手当 | 条件付き | 給与性と実費弁償性を分けて確認 |
| 車両手当 | 条件付き | 車両維持の給与的手当か、走行実費精算かを確認 |
| ガソリン代、駐車場代、出張旅費、宿泊費 | 原則除外 | 実費弁償性が強い |
| 立替経費、慶弔見舞金 | 除外方向 | 本人所得ではなく会社経費または福利厚生 |
| 賞与、ボーナス | 月例基礎からは除外、別枠 | 減額や不支給があれば賞与損害として検討 |
| 労災休業給付、傷病手当金 | 基礎収入には入れない | 社会保険給付であり損害調整の問題 |
次の重要ポイントは、分類表を使うときの結論を表します。分類だけで終わらせず、実際に減ったか、事故がなければ得られたか、証拠があるかまで確認することを読み取ります。
給与性、減収、実費弁償、別枠損害を分けて確認します。
会社員の休業損害で基礎収入に含まれる手当と含まれない手当を分ける基準は、名称ではありません。役職手当、資格手当、家族手当、住宅手当、皆勤手当、残業手当、夜勤手当、歩合給などは含める方向で検討します。通勤手当、食事手当、在宅勤務手当、通信手当、車両手当などは、給与性と実費弁償性を分けて判断します。
次の最終確認表は、保険会社の提示額が低いと感じた場合に見る項目を整理したものです。左の点検項目から右の確認内容へ進み、資料不足や計算漏れを読み取ります。
| 点検項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 付加給漏れ | 休業損害証明書に役職手当、資格手当、住宅手当、残業手当、皆勤手当が反映されているか |
| 手取り計算 | 社会保険料や所得税を引いた後の差引支給額だけで計算されていないか |
| 事故月混入 | 事故による欠勤控除が入った月を事故前3か月に含めていないか |
| 賞与減額 | 月例給与とは別に、賞与減額証明書や会社説明を確認しているか |
| 有給休暇 | 給与が満額でも、有給や時間単位有給の消化が記録されていないか |
| 条件付き手当 | 通勤手当や食事手当について、給与性、実費弁償性、節約された費用を分けているか |
| 社会保険給付 | 労災給付や傷病手当金を基礎収入ではなく損害調整として整理しているか |