交通事故でご家族を亡くしたとき、将来収入から何%を本人の生活費として差し引くかは、死亡逸失利益の金額を大きく左右します。計算式、裁判実務の目安、自賠責基準、争点、資料の見方を整理します。
交通事故でご家族を亡くしたとき、将来収入から何%を本人の生活費として差し引くかは、死亡逸失利益の金額を大きく左右します。
最初に、生活費控除率が何を差し引く割合なのか、どの数字が金額を動かすのかを確認します。
生活費控除率とは、死亡逸失利益を計算するときに、亡くなった方が生きていれば自分自身の生活のために使ったであろう部分を、将来収入から差し引く割合です。交通事故の死亡事故では、慰謝料や葬儀費だけでなく、亡くなった方が将来得るはずだった収入をどう評価するかが大きな論点になります。
死亡逸失利益は、基礎収入に、生活費控除後の割合とライプニッツ係数を掛けて考えます。この式は金額を見る出発点になるため、提示書を読むときは、基礎収入、生活費控除率、係数の3つがどのように設定されているかを順番に確認することが重要です。
次の強調表示は、生活費控除率の読み方を示しています。低い率ほど遺族に残り得た経済的価値が大きく評価され、高い率ほど死亡逸失利益は小さくなります。この関係を押さえると、保険会社の提示で何が争点になっているかをつかみやすくなります。
同じ基礎収入と同じライプニッツ係数でも、生活費控除率が20ポイント違えば、死亡逸失利益は大きく変わります。
裁判実務でよく参照される目安は、家族構成や扶養実態によって異なります。次の比較表では、代表的な属性ごとの率、実務上見落としやすい確認点を並べています。自分の事案と同じ欄を探すだけでなく、実際の扶養や収入の使われ方を読み取ることが大切です。
| 被害者の属性・生活状況 | 裁判実務上の典型的な目安 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 一家の支柱で、被扶養者が2人以上 | 30% | 家族の生計維持に収入が使われていたことを示す資料が重要です。 |
| 一家の支柱で、被扶養者が1人 | 40% | 配偶者、子、親などの扶養実態で争いになることがあります。 |
| 家事従事者・主婦・主夫 | 30%前後 | 家事労働の経済的評価、家族構成、年齢が問題になります。 |
| 独身男性・男児 | 50%前後 | 若年者、婚約、扶養予定、低収入事案では争点化することがあります。 |
| 女性・女児 | 30%前後 男女計平均賃金を使う場合は40〜45%程度が問題になり得ます。 | 男女格差をめぐる裁判実務の変化に注意が必要です。 |
| 年金収入部分 | 50〜80%程度 | 年金の種類、遺族年金、生活費充当性で大きく変わります。 |
一方、自賠責保険の支払基準では、生活費の立証が困難な場合について、被扶養者がいるときは35%、被扶養者がいないときは50%を生活費として控除する扱いが示されています。これは自賠責保険の支払基準であり、裁判で最終的に認定される損害額の上限を意味するものではありません。
死亡による損害の中で、死亡逸失利益がどこに位置づくのかを整理します。
死亡逸失利益とは、交通事故がなければ亡くなった方が将来得ることができたであろう収入・利益を、損害として金銭評価したものです。国土交通省の自賠責保険・共済の説明でも、死亡による損害には葬儀費、逸失利益、被害者本人および遺族の慰謝料が含まれるとされています。自賠責保険における死亡による損害の限度額は、被害者1人につき3,000万円です。
ここでいう利益は、事業の利益だけではありません。会社員の給与、自営業者の所得、家事従事者の家事労働の経済的価値、将来就労するはずだった子ども・学生の収入可能性、一定の年金収入なども問題になります。
次の比較一覧は、死亡事故で混同しやすい損害項目を分けて示すものです。項目ごとに請求権者や証拠が異なるため、保険会社の提示額を見るときは、どの損害がどの欄に入っているのかを読み取る必要があります。
亡くなった方が死亡しなければ将来得たであろう収入から、本人の生活費相当分と中間利息を控除して評価します。通常は本人に発生した損害賠償請求権が相続人に承継されるものとして扱われます。
死亡という結果による精神的苦痛に対する損害です。被害者本人分と遺族固有分が問題になり、家族構成や事故態様で評価が変わることがあります。
葬儀費、死亡までの治療費、搬送費、文書料などの積極損害です。領収書、請求書、医療機関資料などで支出内容を確認します。
生活費控除率は、亡くなった方が将来得たはずの収入のうち、本人自身の食費、衣服費、住居費、通信費、交際費、娯楽費などとして使ったであろう割合です。損害賠償は、事故がなかった場合の経済状態と事故後の経済状態の差を埋める制度です。そのため、将来収入を全額そのまま損害とすると、本人が生きていれば本人のために使ったはずの生活費まで賠償対象に含まれ、過大な評価になる可能性があります。
次の判断の流れは、生活費控除率がなぜ計算に入るのかを示しています。上から順に、将来収入の評価、本人生活費の控除、現在価値への換算という順序で読むと、死亡逸失利益の構造が理解しやすくなります。
給与、事業所得、家事労働、年金、子どもの将来収入などを検討します。
家計簿の実額を1円単位で再現するのではなく、家族構成や扶養実態を踏まえて率を考えます。
将来分を一時金で受け取るため、中間利息を控除します。
生活費控除率は、家計簿の実額をそのまま再現するものではありません。多くの事案では、将来何十年にもわたる本人の生活費を正確に証明することは困難です。そのため裁判実務では、家族構成、扶養状況、性別・年齢、職業、収入、家事従事の有無、年金の種類などを踏まえて、類型的・規範的に率を定めます。
基礎収入、生活費控除率、ライプニッツ係数の3要素を分けて確認します。
死亡逸失利益は、基礎収入、生活費控除率、ライプニッツ係数という3つの要素で計算します。提示書の総額だけを見ると、どこに問題があるか分かりにくいため、計算の部品を分けて確認することが重要です。
次の一覧は、計算式の3要素がそれぞれ何を表すかをまとめたものです。各要素が低く設定されると死亡逸失利益全体も下がるため、保険会社の提示では、数字の根拠と使われている資料を対応させて読む必要があります。
逸失利益計算の出発点になる年収額です。給与所得者は事故前収入、自営業者は事業所得、家事従事者や子ども・学生は賃金センサスなどが検討されます。
収入資料争点化しやすい基礎収入のうち、亡くなった方ご本人の生活費に使われたであろう部分を控除する割合です。家族構成、扶養実態、年金の種類などが影響します。
控除割合この記事の中心将来の収入を現在の一時金として評価するための係数です。将来分を一括で受け取るため、中間利息を控除する考え方が使われます。
中間利息事故日で変わる賃金センサスとは、実務上、厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとに用いられる平均賃金資料を指すことが多い用語です。雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴などの属性別に賃金結果が提供されており、家事従事者、子ども・学生、若年者の将来収入を考える場面で問題になります。
次の比較表は、ライプニッツ係数と法定利率を見るときの実務上の区切りを示しています。事故日がどちらに属するかによって係数が変わり、同じ生活費控除率でも死亡逸失利益の金額が変わるため、提示書では事故日と係数の対応を確認します。
| 確認項目 | 主な考え方 | 提示書で見る点 |
|---|---|---|
| 2020年4月1日以降の事故 | 原則として年3%の法定利率を前提にライプニッツ係数が用いられます。 | 年5%時代の係数が使われていないか確認します。 |
| 2020年3月31日以前の事故 | 旧法下の年5%が問題になります。 | 事故日に応じた係数かを確認します。 |
| 令和8年4月1日から令和11年3月31日までの第3期 | 法務省は第3期も法定利率が年3%のまま変動しない旨を公表しています。 | 将来取得すべき利益の中間利息控除では、事故時点の法定利率が重要です。 |
民法417条の2は、将来取得すべき利益について損害賠償額を定める場合に、中間利息を控除するときは、損害賠償請求権が生じた時点の法定利率による旨を定めています。不法行為の損害賠償については民法722条によりこの規定が準用されます。
自賠責の35%・50%と、裁判実務で参照される目安は同じものではありません。
死亡逸失利益を理解するうえでは、自賠責保険の支払基準と裁判実務を分けて考えることが重要です。自賠責保険は、自動車事故の被害者に対する基本補償を確保する制度で、迅速かつ公平な支払のために支払基準が設けられています。
次の比較表は、自賠責保険と裁判実務の位置づけの違いを示しています。どちらの基準で計算されているかによって、生活費控除率の見方や最終的な賠償額の検討方法が変わるため、提示書の前提を読み分けることが重要です。
| 区分 | 生活費控除率の扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 自賠責保険の支払基準 | 生活費の立証が困難な場合、被扶養者がいるときは35%、被扶養者がいないときは50%を控除する扱いがあります。 | 基本補償としての性格が強く、裁判で認定される損害額の上限ではありません。 |
| 裁判実務 | 一家の支柱、家事従事者、独身者、子ども、年金受給者などの類型と個別事情を踏まえます。 | 赤い本・青本、裁判例の傾向、扶養実態、基礎収入とのバランスを総合します。 |
| 任意保険会社の提示 | 自賠責基準、社内基準、裁判基準を踏まえた交渉上の提示として出されることがあります。 | 提示額は交渉の出発点であり、裁判で認められる最大額とは限りません。 |
自賠責保険の支払基準では、死亡による逸失利益について、年間収入額または年相当額から本人の生活費を控除した額に、死亡時の年齢における就労可能年数のライプニッツ係数を乗じて算出するとされています。年金等受給者については、年金等から本人の生活費を控除した額を平均余命年数に応じた係数で考える枠組みも示されています。
交通事故損害賠償の実務では、日弁連交通事故相談センター東京支部編の民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準、いわゆる赤い本と、同センター本部編の交通事故損害額算定基準、いわゆる青本が広く参照されます。これらは裁判例の傾向等を斟酌した目安であり、事件ごとの事情に応じて損害額は変わります。
一家の支柱、家事従事者、独身者、子ども、年金受給者、自営業者で論点が変わります。
生活費控除率は、亡くなった方の属性だけで自動的に決まるものではありません。ただし、裁判実務では、よく問題になる類型ごとに目安と争点が形成されています。次の一覧では、各類型でどの資料や事情を読み取るべきかをまとめています。
家族の生活を経済的に支えていた中心人物です。被扶養者が2人以上なら30%、1人なら40%が典型的な目安です。形式上の扶養控除だけでなく、同居・別居、仕送り、介護費、教育費負担などが問題になります。
家事労働には経済的価値があるため、死亡逸失利益が問題になります。専業主婦、専業主夫、兼業家事従事者の実際の家事内容、育児、介護、家族構成を確認します。
本人の収入が主に本人自身の生活費に使われると考えられやすいため、控除率は高めになりやすい類型です。ただし婚約、親への仕送り、きょうだい扶養、将来扶養の蓋然性などで争点になり得ます。
現時点で収入がない場合、将来収入をどう評価するかが中心です。女児・若年女性で男女計平均賃金を使う場合、生活費控除率との調整が問題になります。
年金収入は生活費に充てられる割合が高いと考えられやすく、高めの控除率が争われることがあります。年金の種類、拠出性、遺族年金、同居状況を確認します。
確定申告書上の所得、役員報酬、経費の性質、家族従業員の寄与、事故後の事業継続などを検討します。生活費控除率だけでなく基礎収入の確定が大きな争点になります。
公表裁判例には、被害者が高齢者3名を扶養していた事情などを考慮し、生活費控除割合を30%にとどめるのが相当とした例があります。31歳の専業主婦について生活費控除率30%を相当とした例、3歳の子について男女学歴計全年齢平均を基礎収入とし生活費控除率45%を相当とした例、高校3年生で大学進学予定・将来教師志望の被害者について生活費控除率40%を相当とした例、独身男性について50%を相当とした例もあります。
次の比較表は、率だけでなく、実務で確認する事情を横に並べたものです。数字の高低だけで有利・不利を判断せず、基礎収入との組み合わせ、扶養の実態、将来収入の評価を読み取ることが重要です。
| 類型 | 中心となる確認事項 | 資料の例 |
|---|---|---|
| 一家の支柱 | 被扶養者の人数、家計負担、住宅ローン、教育費、仕送り、介護費 | 通帳、家計簿、住民票、戸籍、学費資料、送金記録 |
| 家事従事者 | 家事労働の内容、育児・介護、家族の生活維持への寄与 | 家族の陳述書、介護資料、外部サービス利用費、学校・保育資料 |
| 子ども・学生 | 将来収入、進学予定、学歴、職業希望、男女計平均賃金の使用 | 在学証明、成績、合格通知、資格資料、進路資料 |
| 年金受給者 | 年金の種類、年金額、遺族年金、平均余命、同居・扶養関係 | 年金振込通知書、年金額改定通知書、家計資料、医療・介護資料 |
| 自営業者・役員 | 申告所得、実態収入、役員報酬、事業継続、家族従業員 | 確定申告書、青色申告決算書、総勘定元帳、法人決算書、売上推移 |
率そのものだけでなく、基礎収入・年金・事故日・過失割合との関係で見ます。
もっとも典型的な争点は、亡くなった方が一家の支柱だったかどうかです。保険会社側は、形式上の扶養親族が少ない、配偶者にも収入がある、子が成人している、親とは別居しているなどの理由で、生活費控除率を高く主張することがあります。これに対して遺族側では、実際の生活費負担、住宅ローン、教育費、仕送り、介護費、同居家族の収入状況、家計口座の入出金などを整理します。
次の注意点の一覧は、生活費控除率が争われる場面を分解したものです。左上から順に、家族関係、収入評価、年金構造、法定利率、過失割合という観点で見ると、提示額が低くなっている原因を切り分けやすくなります。
実際に誰が家計を支えていたか、収入の使途、同居・別居、仕送り、親の介護、子の学費負担が問題になります。
税法上の扶養親族だけではなく、実際に生活費を負担していたか、経済的依存関係があったかを確認します。
女性平均賃金を使うのか、男女計平均賃金を使うのかによって、生活費控除率が調整されることがあります。
就労収入部分と年金部分を分け、就労可能期間と平均余命期間で異なる計算をすることがあります。
2020年4月1日以降は原則年3%、それ以前は旧法下の年5%が問題になります。係数の違いが金額に影響します。
生活費控除率が妥当でも、過失割合、既払金、労災、人身傷害保険との調整で最終受取額が大きく変わります。
特に子ども・若年女性の事案では、生活費控除率だけを見て30%だから有利、45%だから不利と判断するのは危険です。最終的には、基礎収入 ×(1 − 生活費控除率)× 係数の全体で比較する必要があります。
高齢者が亡くなった場合、就労可能期間までは就労収入と年金を合算して検討し、その後は年金のみを平均余命まで評価する構造が問題になることがあります。この場合、就労収入部分の生活費控除率と年金部分の生活費控除率が異なることがあります。保険会社の提示で全体を一括して高い率で処理しているときは、内訳を確認することが重要です。
同じ基礎収入・同じ係数でも、控除率が変わると賠償額は大きく変わります。
生活費控除率の違いは、死亡逸失利益に大きく影響します。ここでは、基礎収入500万円、就労可能年数22年、年3%のライプニッツ係数15.9369で計算する例を使います。
次の試算表は、生活費控除率を30%、40%、50%に変えた場合の死亡逸失利益を比較しています。列には計算式と結果を並べているため、控除率が上がるほど、基礎収入に掛ける残存割合が小さくなることを読み取ってください。
| 生活費控除率 | 計算 | 死亡逸失利益 |
|---|---|---|
| 30% | 500万円 × 0.70 × 15.9369 | 約5,578万円 |
| 40% | 500万円 × 0.60 × 15.9369 | 約4,781万円 |
| 50% | 500万円 × 0.50 × 15.9369 | 約3,984万円 |
次の比較グラフは、30%、40%、50%の試算額を相対的な高さで示しています。高さが大きいほど死亡逸失利益が大きく、30%と50%では約1,594万円の差が生じることを視覚的に確認できます。
この差額は、死亡事故の損害賠償全体を左右する水準です。生活費控除率は、単なる計算上の細部ではありません。保険会社の提示で率だけが書かれている場合も、根拠となる家族構成、扶養実態、年金の扱い、基礎収入の設定を確認する必要があります。
次の強調表示は、この章の読み取りポイントをまとめたものです。金額差の大きさを確認したうえで、生活費控除率だけでなく、基礎収入と係数を含めた全体の計算を見直す姿勢が重要です。
基礎収入500万円、ライプニッツ係数15.9369の例では、生活費控除率が20ポイント違うだけで、死亡逸失利益は数千万円規模で変わります。
提示額の総額ではなく、生活費控除率・基礎収入・係数・過失割合の内訳を見ます。
保険会社から死亡事故の示談提示があった場合、提示書の総額だけでは妥当性を判断しにくいことがあります。生活費控除率が妥当でも、基礎収入が低すぎる、係数が事故日に合っていない、過失割合が大きく不利に置かれている、といった別の原因で金額が下がることもあります。
次の確認一覧は、提示書で見たい項目を6つに分けたものです。上から順に、率の根拠、基準の混同、属性分類、基礎収入、係数、過失相殺を確認すると、低額提示の原因を切り分けやすくなります。
提示書に50%などとだけ記載されている場合、家族構成や扶養実態をどう評価したのか確認します。
率の理由自賠責の被扶養者あり35%、なし50%という扱いと、裁判実務の目安が混同されていないか見ます。
基準の前提家事従事者なのに単なる無職として扱われていないか、実質的な家計支柱が独身者扱いされていないか確認します。
分類会社員は源泉徴収票や給与明細、自営業者は確定申告書や帳簿、学生は進学予定や資格資料などと照合します。
収入資料2020年4月1日以降の事故なのに年5%時代の係数が使われていないか、就労可能年数が短く設定されすぎていないか確認します。
事故日低額の原因が生活費控除率ではなく、過失割合、慰謝料、葬儀費、既払金控除、労災・人身傷害保険との調整にある場合もあります。
総額の内訳示談成立後に、生活費控除率が高すぎた、基礎収入が低すぎたと気づいても、原則としてやり直しは困難です。署名前に、提示額の内訳と根拠資料を整理して確認することが重要です。
家計・扶養・収入・家事・将来可能性・事故資料を分けて準備します。
死亡逸失利益の生活費控除率を争うには、感情的な主張だけでは足りません。家計・扶養・生活実態を示す資料が重要です。死亡事故では、医療、事故態様、保険、社会保障、家計、相続の資料が重なります。
次の資料一覧は、生活費控除率や基礎収入を検討するために、どの種類の資料をどの目的で使うかを整理したものです。左の分類で漏れを確認し、右の資料例から手元にあるものと不足しているものを読み取ってください。
| 資料分類 | 資料例 | 読み取る内容 |
|---|---|---|
| 収入に関する資料 | 源泉徴収票、給与明細、賞与明細、確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書、課税証明書、所得証明書、役員報酬明細、年金振込通知書、年金額改定通知書、雇用契約書、内定通知書、昇進・昇給資料 | 基礎収入の根拠、将来増収の可能性、年金額を確認します。 |
| 扶養・家計に関する資料 | 住民票、戸籍、健康保険の被扶養者資料、家計簿、通帳、口座入出金記録、住宅ローン返済予定表、家賃・公共料金・教育費の支払資料、仕送りの振込記録、親の介護費・医療費、子の学費・塾代・習い事費用 | 誰が誰を支えていたか、収入が家族生活に使われていたかを確認します。 |
| 家事従事を示す資料 | 同居家族の生活状況、家事分担の実態、育児・介護の状況、保育園・学校・介護サービスとの連絡資料、家族の陳述書、事故後に外部サービスを利用した費用資料 | 家事労働の経済的価値と家族生活への寄与を確認します。 |
| 子ども・学生の将来可能性 | 在学証明書、成績資料、進学予定資料、合格通知、入学手続資料、資格取得の準備状況、部活動・受賞歴、将来希望職種に関する資料 | 将来収入をどの平均賃金で評価するか、個別事情を確認します。 |
| 事故・死亡との因果関係 | 交通事故証明書、死亡診断書、死体検案書、診療録、画像資料、救急搬送記録、実況見分調書、供述調書等の刑事記録、ドライブレコーダー、防犯カメラ映像、事故現場写真、車両損傷写真 | 死亡との因果関係、過失割合、事故態様を確認します。 |
次の注意点の一覧は、資料を集めるときに見落としやすい点をまとめたものです。死亡事故では複数の専門職の資料・判断が重なるため、生活費控除率だけでなく、医療、事故解析、社会保障、相続の資料をあわせて確認します。
源泉徴収票や確定申告書だけでは、仕送り、教育費、介護費などの扶養実態が見えないことがあります。
拠出性のある年金か、遺族年金との関係はどうかによって、死亡逸失利益の扱いが変わることがあります。
生活費控除率が妥当でも、過失割合が不利に認定されると最終受取額は大幅に減る可能性があります。
死亡事故では、示談前に資料を整理して相談した方がよい場面が多くあります。
死亡事故の損害賠償では、早い段階で弁護士等の専門家に相談する価値が高い場面があります。特に、生活費控除率、基礎収入、過失割合、年金・労災・人身傷害保険の調整が絡む場合は、提示額の内訳を一つずつ確認する必要があります。
次の一覧は、相談を検討する代表的な場面をまとめたものです。該当する項目が多いほど、生活費控除率だけでなく、死亡慰謝料、葬儀費、相続分、過失割合、損益相殺など複数の項目で金額差が出る可能性があります。
亡くなった方が家族を支えていたにもかかわらず50%が提示されている場合、扶養実態や家計資料の確認が重要です。
生活費控除率、死亡慰謝料、葬儀費、扶養利益、相続分、過失割合などで金額差が出やすい類型です。
現実収入がない、または低い場合でも、死亡逸失利益が問題になることがあります。基礎収入と控除率をセットで確認します。
年金逸失利益、労災保険給付、遺族年金、人身傷害保険などが絡むと、控除や代位の順序が複雑になります。
死亡逸失利益が高額になる事案では、過失割合が10%変わるだけで数百万円から数千万円の差が出ることがあります。
示談成立後に計算の前提を見直すことは原則として困難です。署名前に提示額の内訳と資料を確認します。
ここでいう相談は、個別の結論をこのページで断定するものではありません。事故態様、負傷・死亡の経過、証拠関係、保険契約、相続関係によって判断は変わります。具体的な見通しや対応方針は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
法律だけでなく、保険、医療、事故資料、社会保険、生活再建が関係します。
死亡逸失利益の生活費控除率は、法律上の計算式だけで完結する問題ではありません。死亡事故では、事故と死亡との因果関係、過失割合、年金、労災、人身傷害保険、相続、生活再建が同時に問題になることがあります。
次の一覧は、関係する専門領域ごとに確認したい視点をまとめたものです。各分野の資料がどの計算項目に影響するかを読み取ることで、生活費控除率の議論を損害全体の中に位置づけられます。
生活費控除率、基礎収入、就労可能期間、慰謝料、弁護士費用、遅延損害金まで総合的に検討します。
自賠責基準、任意保険の支払実務、既払金、過失割合を踏まえて提示額が作られます。
事故と死亡との関係、死亡時期、治療経過、既往症、死因を医療資料や検案資料で確認します。
実況見分調書、現場図、信号表示、防犯カメラ、ドライブレコーダー、車両損傷、速度解析などが重要です。
遺族年金、労災、健康保険、介護、障害福祉、生活支援などは死亡事故後の生活再建に直結します。
保険会社の提示額は、加害者側の契約に基づいて作られるものです。遺族側の生活再建や相続関係をすべて代わりに整理してくれるものではありません。計算表の形式が整っていても、生活費控除率、基礎収入、就労可能年数、過失割合、慰謝料、既払金控除のいずれかで不利な設定になっている可能性があります。
誤解を避け、提示書を順番に確認するための実務的な道筋です。
死亡逸失利益の生活費控除率は、30%、40%、50%といった数字だけが独り歩きしやすい論点です。まず誤解しやすい点を押さえると、提示書のどこを確認すればよいかが見えやすくなります。
次の一覧は、死亡逸失利益と生活費控除率でよくある誤解をまとめたものです。各項目では、誤解の内容と、実際に確認したい考え方を対比しています。数字を単純化せず、計算全体を見ることが重要です。
基礎収入から生活費控除を行い、さらにライプニッツ係数による中間利息控除を行います。
計算式家計資料は重要ですが、裁判実務では家族構成・扶養実態・属性に基づく類型的判断も重視されます。
類型判断家族を扶養していた男性なら30%または40%が問題になり、若年女性や女児では基礎収入との調整が問題になります。
個別事情自賠責保険は基本補償です。死亡事故では自賠責限度額3,000万円を超える損害が問題になることがあります。
基準の違い形式が整っていても、基礎収入、生活費控除率、就労可能年数、過失割合、慰謝料、既払金控除で不利な設定があり得ます。
内訳確認次の時系列は、保険会社の提示を受けた後に確認したい順番を示しています。上から下へ進めることで、職業・収入から生活費控除率、係数、保険調整、過失割合、示談前確認までを漏れなく整理できます。
給与所得、事業所得、家事労働、年金、学生・子どもの将来収入など、基礎収入の出発点を整理します。
源泉徴収票、確定申告書、賃金センサス、進学予定資料など、使われている資料と金額を照合します。
何%で、なぜその率なのか、被扶養者の人数と扶養実態に照らして確認します。
事故日に対応した法定利率とライプニッツ係数が使われているかを確認します。
年金、労災、人身傷害保険、過失割合、慰謝料、葬儀費、弁護士費用、遅延損害金まで含めて検討します。
提示書、事故資料、収入資料、戸籍・住民票、保険証券を整理し、具体的な対応は弁護士等の専門家に相談する必要があります。
死亡逸失利益の生活費控除率は、亡くなった方が将来得るはずだった収入から、本人自身の生活費相当分を控除するための割合です。被害者が一家の支柱だったか、被扶養者が何人いたか、家事労働をどう評価するか、子どもや学生の将来収入をどう見るか、年金収入をどう扱うか、基礎収入とのバランスをどう取るかによって結論が変わります。
公的機関、裁判所、実務資料を中心に整理しています。