2σ Guide

不登校の子どもの
教育を受ける権利と法的保障

不登校は教育からの離脱ではなく、子どもが安心して学ぶ方法を再設計する局面です。学校内外の支援、出席扱い、成績評価、進路保障、安全確保を整理します。

30日調査実務の参考基準
2024年成績評価通知
35.4万令和6年度の小中不登校数
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不登校の子どもの 教育を受ける権利と法的保障

不登校は教育からの離脱ではなく、子どもが安心して学ぶ方法を再設計する局面です。

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不登校の子どもの 教育を受ける権利と法的保障
不登校は教育からの離脱ではなく、子どもが安心して学ぶ方法を再設計する局面です。
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  • 不登校の子どもの 教育を受ける権利と法的保障
  • 不登校は教育からの離脱ではなく、子どもが安心して学ぶ方法を再設計する局面です。

POINT 1

  • 不登校の子どもの教育を受ける権利と法的保障
  • 1. 子どもの安全と体調を確認:いじめ、体調、疲労、不安、本人の希望を確認します。
  • 2. 学校環境に問題があるか:重大事態、合理的配慮、環境調整の必要性を見ます。
  • 3. 安全確保と調査を優先:記録、情報提供、接触回避、再発防止を検討します。
  • 4. 学習と評価を協議:出席扱い、成績評価、所見、進路資料を確認します。

POINT 2

  • はじめに ― 不登校は「教育からの離脱」ではなく、権利保障の再設計が必要な状態である
  • 制度・資料・判断順序を分けて確認します。
  • 日本国憲法第26条は、すべて国民がその能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有すると定めています。
  • また、保護者には、子どもに普通教育を受けさせる義務があり、義務教育は無償とされています。
  • つまり、義務教育という言葉は、子どもを毎日登校させる義務を子ども本人に課すものではありません。

POINT 3

  • 不登校の子どもの教育保障 ― 1. 基本用語の定義
  • 1. 子どもの安全と体調を確認:いじめ、体調、疲労、不安、本人の希望を確認します。
  • 2. 学校環境に問題があるか:重大事態、合理的配慮、環境調整の必要性を見ます。
  • 3. 安全確保と調査を優先:記録、情報提供、接触回避、再発防止を検討します。
  • 4. 学習と評価を協議:出席扱い、成績評価、所見、進路資料を確認します。

POINT 4

  • 2. 法体系から見る不登校の子どもの教育を受ける権利
  • 制度・資料・判断順序を分けて確認します。
  • 2-1. 憲法第26条 ― 教育を受ける権利の出発点
  • 2-2. 教育基本法 ― 機会均等、個人の能力、社会的自立
  • 2-3. 学校教育法 ― 保護者の就学義務と学校制度

POINT 5

  • 不登校の子どもの教育保障 ― 3. 教育機会確保法の意義
  • 制度・資料・判断順序を分けて確認します。
  • 3-1. 法律の目的
  • 3-2. 不登校児童生徒の定義
  • 3-3. 基本理念 ― 安心して教育を受ける環境、多様な学習活動、休養

POINT 6

  • 不登校の子どもの教育保障 ― 4. 「学校復帰だけ」を目的にしない支援の法的位置づけ
  • 制度・資料・判断順序を分けて確認します。
  • この通知は、不登校支援の実務において非常に大きな意味を持ちます。
  • 従来、不登校支援は「登校再開」を中心に語られがちでした。
  • ただし、この考え方は「学校は不要」「学習しなくてもよい」という意味ではありません。

POINT 7

  • 5. 不登校の子どもに保障される具体的な制度
  • 制度・資料・判断順序を分けて確認します。
  • 5-1. 学校における安心・安全な教育環境
  • 5-2. 教育支援センター
  • 5-3. 学びの多様化学校

POINT 8

  • 不登校の子どもの教育保障 ― 6. よくある誤解と法的整理
  • 制度・資料・判断順序を分けて確認します。

まとめ

  • 不登校の子どもの 教育を受ける権利と法的保障
  • 不登校の子どもの教育を受ける権利と法的保障:まず全体像と重要な確認順序を整理します。
  • はじめに ― 不登校は「教育からの離脱」ではなく、権利保障の再設計が必要な状態である:制度・資料・判断順序を分けて確認します。
  • 不登校の子どもの教育保障 ― 1. 基本用語の定義:制度・資料・判断順序を分けて確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

不登校の子どもの教育を受ける権利と法的保障

まず全体像と重要な確認順序を整理します。

次の判断の流れは、不登校支援を制度に結びつける順番を表します。上から順に確認することが重要で、安全確保を先に見るべき場面と、学習・評価の設計へ進む場面を読み取ってください。

支援を組み立てる順番

子どもの安全と体調を確認

いじめ、体調、疲労、不安、本人の希望を確認します。

学校環境に問題があるか

重大事態、合理的配慮、環境調整の必要性を見ます。

ある
安全確保と調査を優先

記録、情報提供、接触回避、再発防止を検討します。

調整可能
学習と評価を協議

出席扱い、成績評価、所見、進路資料を確認します。

Section 01

はじめに ― 不登校は「教育からの離脱」ではなく、権利保障の再設計が必要な状態である

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

不登校の子どもの教育を受ける権利と法的保障を考えるとき、最初に確認すべきことは、子どもにとって教育は「義務」ではなく、基本的な「権利」であるという点です。日本国憲法第26条は、すべて国民がその能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有すると定めています。また、保護者には、子どもに普通教育を受けさせる義務があり、義務教育は無償とされています。つまり、義務教育という言葉は、子どもを毎日登校させる義務を子ども本人に課すものではありません。国・地方公共団体・学校・保護者が、子どもに普通教育を保障するための制度的責任を負うという構造です。

この構造を前提にすると、不登校の問題は、単に「学校に戻すか、戻さないか」という二者択一ではありません。子どもが安心して学べる環境をどのように確保するか、学校内外の学習をどのように評価するか、心理的安全・休養・進路保障・成績評価・出席扱い・いじめ対応・合理的配慮をどのように組み合わせるかという、複合的な権利保障の問題です。

2016年に成立した「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」、いわゆる教育機会確保法は、この考え方を明確にする重要な法律です。同法は、不登校児童生徒の多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の状況に応じた必要な支援を行うこと、学校以外の場における多様で適切な学習活動の重要性、休養の必要性、国・地方公共団体・民間団体等の連携を位置づけています。

さらに、文部科学省は2019年の通知で、不登校児童生徒への支援は「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、子どもが自らの進路を主体的に捉えて社会的に自立することを目指す必要があると示しました。 2024年8月には、不登校児童生徒が欠席中に学校外の機関や自宅等で行った学習成果を、一定の要件の下で成績評価に反映できることが法令上明確化されました。

このページは、企業の法務・広報担当者が、公的資料、法令、文部科学省通知等に基づいて作成した一般向けの専門解説です。個別事案の法的助言ではありませんが、保護者、支援者、学校関係者、弁護士への相談を検討している方が、制度の全体像を理解し、適切な次の一歩を選ぶための実務的な整理を目的とします。

Section 02

不登校の子どもの教育保障 ― 1. 基本用語の定義

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

1-1. 「不登校」とは何か

教育機会確保法における「不登校児童生徒」とは、相当の期間学校を欠席する児童生徒であって、学校における集団生活に関する心理的な負担その他の事由により、就学が困難な状況として文部科学大臣が定める状況にあると認められる者をいいます。

文部科学省の調査実務では、年間30日以上の欠席が一つの参考基準として用いられます。ただし、2024年8月の成績評価通知は、不登校かどうかの判断は学校又は設置者が行うとし、不登校の傾向が見られる児童生徒も対象となり得るとしています。したがって、「30日を超えたら初めて支援対象になる」という理解は狭すぎます。早期の段階から、本人の状態、学校環境、家庭状況、学習状況、医療・心理・福祉との連携可能性を確認する必要があります。

1-2. 「教育を受ける権利」とは何か

教育を受ける権利とは、子どもが人格の完成、能力の伸長、社会的自立に向けて、教育の機会にアクセスできる権利です。これは単に教室に座る権利ではなく、子どもの状態・能力・特性に応じて、実質的に学ぶ機会を保障される権利と理解すべきです。

教育基本法は、すべての国民がひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられ、教育上差別されないことを定めています。また、国及び地方公共団体は、障害のある者がその障害の状態に応じて十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならないとしています。

1-3. 「義務教育」は誰の義務か

誤解されやすい点ですが、義務教育における義務は、子ども本人が学校に通う義務ではありません。憲法、教育基本法、学校教育法は、保護者が子に普通教育を受けさせる義務を負うこと、国・地方公共団体が義務教育の機会を保障し、水準を確保する責任を負うことを定めています。

したがって、「義務教育なのだから、子どもは何があっても学校に行かなければならない」という言い方は、法的には不正確です。より正確には、保護者、学校、教育委員会、国・地方公共団体が、子どもに普通教育の機会を保障する責任を負う、ということです。

1-4. 「法的保障」とは何か

このページでいう法的保障とは、子どもの教育を受ける権利を実効的にするための制度的な裏付けを意味します。具体的には、次のようなものが含まれます。

不登校の子どもの教育保障 ― 1. 基本用語の定義に関する次の表は、直前の説明を項目別に整理したものです。列ごとの違いを確認することが重要で、どの制度・期間・資料がどの場面に対応するかを読み取ってください。

分野法的保障の内容
憲法上の保障教育を受ける権利、義務教育の無償
法律上の保障教育基本法、学校教育法、教育機会確保法、いじめ防止対策推進法、こども基本法等
行政上の保障文部科学省通知、基本指針、教育委員会の運用、教育支援センター、学びの多様化学校等
記録・評価上の保障出席扱い、指導要録、成績評価、所見欄への記載、進路指導
安全・福祉上の保障いじめ対応、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、児童相談所、医療・福祉連携
司法・準司法的保障弁護士相談、行政手続、情報開示、損害賠償請求、調停、訴訟等

重要なのは、これらが一つの制度だけで完結するわけではないということです。不登校の法的保障は、学校教育、子どもの権利、福祉、医療、家庭支援、進路保障、個人情報、行政法、場合によっては民事責任や損害賠償の問題が交差する領域です。

次の判断の流れは、不登校支援を制度に結びつける順番を表します。上から順に確認することが重要で、安全確保を先に見るべき場面と、学習・評価の設計へ進む場面を読み取ってください。

支援を組み立てる順番

子どもの安全と体調を確認

いじめ、体調、疲労、不安、本人の希望を確認します。

学校環境に問題があるか

重大事態、合理的配慮、環境調整の必要性を見ます。

ある
安全確保と調査を優先

記録、情報提供、接触回避、再発防止を検討します。

調整可能
学習と評価を協議

出席扱い、成績評価、所見、進路資料を確認します。

Section 03

2. 法体系から見る不登校の子どもの教育を受ける権利

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

2-1. 憲法第26条 ― 教育を受ける権利の出発点

憲法第26条は、教育を受ける権利を定めるとともに、保護者に普通教育を受けさせる義務を課し、義務教育を無償としています。ここでいう教育を受ける権利は、能力に応じてひとしく保障されるべき権利です。

不登校の子どもについても、この権利は当然に失われません。学校に通えていない状態は、教育を受ける権利を放棄した状態ではなく、むしろ教育を受ける権利をどのように回復・再構成するかが問われる状態です。

2-2. 教育基本法 ― 機会均等、個人の能力、社会的自立

教育基本法は、教育の目的を人格の完成に置き、教育の機会均等を定めています。また、義務教育として行われる普通教育は、各個人の能力を伸ばしつつ、社会において自立的に生きる基礎を培うことを目的としています。

この「社会において自立的に生きる基礎」という考え方は、不登校支援の中心概念です。学校復帰は重要な選択肢の一つですが、それ自体が唯一の目的ではありません。子どもが将来にわたって学び、働き、人と関わり、自分の人生を構築していく基礎をどう確保するかが本質です。

2-3. 学校教育法 ― 保護者の就学義務と学校制度

学校教育法は、保護者が子に9年の普通教育を受けさせる義務を負うことを定めています。小学校段階、中学校段階の就学義務も、保護者に課されるものです。

もっとも、これは保護者が子どもを精神的・身体的に追い詰めてでも登校させなければならないという意味ではありません。子どもの心身の安全、いじめ、障害特性、病気、家庭環境、学校環境の問題がある場合、保護者は学校・教育委員会・関係機関と連携し、子どもに適した教育機会を確保する方向で行動する必要があります。

2-4. 児童の権利に関する条約 ― 子どもを権利主体として見る

児童の権利に関する条約第28条は、教育についての児童の権利を認め、機会の平等を基礎としてこの権利を達成することを求めています。また、学校の規律は児童の人間の尊厳に適合する方法で運用されなければなりません。

不登校支援では、子ども本人の意思、苦痛、恐怖、不安、疲労、希望、学習意欲を丁寧に聞くことが不可欠です。子どもを「問題行動の主体」と見るのではなく、権利主体として扱うことが、現代の法的整理の中心にあります。

2-5. こども基本法 ― 子どもの最善の利益と意見表明

こども基本法は、すべてのこどもが将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指し、こども施策を総合的に推進する基本法です。こども施策の基本理念や、こども等の意見の反映を位置づけています。

不登校の子どもの支援においても、「大人が決めた正解」を押し付けるのではなく、子どもの状態に応じて、本人の意見を聴き、最善の利益を検討する姿勢が求められます。

Section 04

不登校の子どもの教育保障 ― 3. 教育機会確保法の意義

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

3-1. 法律の目的

教育機会確保法は、教育基本法及び児童の権利に関する条約等の趣旨にのっとり、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進することを目的としています。

この法律が重要なのは、不登校を単なる欠席管理の問題としてではなく、教育機会の確保という権利保障の問題として捉え直した点です。

3-2. 不登校児童生徒の定義

同法は、不登校児童生徒を、相当の期間学校を欠席する児童生徒で、学校における集団生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難な状況にあると認められる者と定義しています。

ここで重要なのは、不登校の背景が単純な怠学や反抗に限定されていないことです。心理的負担、学校集団への適応困難、いじめ、発達特性、家庭環境、身体症状、精神的疲弊など、さまざまな要因が複合し得ます。

3-3. 基本理念 ― 安心して教育を受ける環境、多様な学習活動、休養

教育機会確保法第3条は、全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるようにすること、不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の状況に応じた必要な支援を行うことを基本理念としています。

また、同法第13条は、学校以外の場における多様で適切な学習活動の重要性を踏まえ、個々の不登校児童生徒の休養の必要性を考慮しつつ、状況に応じた学習活動が行われるよう、本人及び保護者に情報提供、助言その他の支援を行うために必要な措置を講ずるものとしています。

これは実務上、極めて重要です。休むことは、常に教育の敵ではありません。一定の場合には、心身を回復し、自分を見つめ直し、再び学びに向かうための条件になります。もちろん、休養が長期化することで学習の遅れや進路上の不利益が生じるリスクもあります。そのため、支援は「無理に登校させる」でも「完全に放置する」でもなく、休養と学習機会のバランスを取りながら設計する必要があります。

3-4. 国・地方公共団体の責務

教育機会確保法は、国及び地方公共団体に対し、教育機会の確保等に関する施策を策定・実施する責務を定めています。また、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとしています。

この点は、保護者だけに責任を負わせないという意味を持ちます。不登校の子どもに教育機会を保障する責任は、家庭だけで完結するものではありません。学校、教育委員会、自治体、国、民間支援団体、医療・福祉・心理の専門職が連携して、子どもの学習と安全を支える体制を作る必要があります。

Section 05

不登校の子どもの教育保障 ― 4. 「学校復帰だけ」を目的にしない支援の法的位置づけ

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

文部科学省の2019年通知は、不登校児童生徒への支援について、「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、子どもが自らの進路を主体的に捉え、社会的に自立することを目指す必要があるとしています。

この通知は、不登校支援の実務において非常に大きな意味を持ちます。従来、不登校支援は「登校再開」を中心に語られがちでした。しかし、現在の公的整理では、学校復帰は重要な選択肢であっても、唯一のゴールではありません。

ただし、この考え方は「学校は不要」「学習しなくてもよい」という意味ではありません。同通知は、学校教育の意義・役割が大きいこと、学業の遅れや進路選択上の不利益、社会的自立へのリスクにも留意する必要があることを同時に示しています。

したがって、法的に妥当な支援は、次の三つの視点を同時に満たす必要があります。

  1. 子どもの心身の安全を守ること
  2. 子どもの教育機会を確保すること
  3. 子どもの将来の社会的自立につながること

この三つのうち、どれか一つだけを強調すると、支援は歪みます。安全を無視して登校を促せば、権利侵害になり得ます。学習機会を全く確保しなければ、将来の進路保障を損ないます。社会的自立を急ぎすぎれば、子どもの回復を妨げます。法的保障とは、このバランスを制度的に支えることです。

Section 06

5. 不登校の子どもに保障される具体的な制度

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

5-1. 学校における安心・安全な教育環境

教育機会確保法は、全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、学校における環境の確保を基本理念としています。

不登校の背景に、いじめ、教師との関係、クラスの雰囲気、過度な校則、学習困難、感覚過敏、発達特性、部活動、進路不安などがある場合、学校は「本人が来ないから対応できない」とするのではなく、何が登校困難を生んでいるのかを把握し、環境調整を検討する必要があります。

実務上は、別室登校、保健室登校、校内教育支援センター、時間差登校、オンライン面談、課題の個別提供、座席・教室・授業参加方法の調整、担任以外の窓口設定、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーとの連携などが検討されます。

5-2. 教育支援センター

教育支援センターは、不登校の子どもに対する相談・学習支援等を担う公的な支援機関です。自治体によって名称や運用は異なり、かつて「適応指導教室」と呼ばれていたものが教育支援センターとして整備・機能強化されている地域もあります。

教育機会確保法第11条は、不登校児童生徒の学習活動に対する支援を行う公立の教育施設の整備及び教育の充実のために必要な措置を講ずるよう努めるものとしています。

教育支援センターは、学校に戻るためだけの場所ではありません。子どもが安心して学び直し、生活リズムを整え、人と関わる力を回復し、進路を考えるための中間的な支援拠点として機能します。

5-3. 学びの多様化学校

学びの多様化学校は、不登校児童生徒の実態に配慮した特別の教育課程に基づく教育を行う学校です。教育機会確保法第10条は、不登校児童生徒に対し、その実態に配慮して特別に編成された教育課程に基づく教育を行う学校の整備等を定めています。

通常の学校に在籍し続けることが難しい子どもにとって、学びの多様化学校は、制度内で学習と生活を再構築する選択肢となります。ただし、設置状況、入学・転入条件、通学可能性、教育内容は自治体や学校によって異なります。

5-4. フリースクール等の民間施設

フリースクール等の民間施設は、学校外で子どもの学習・居場所・相談支援を担う重要な選択肢です。教育機会確保法は、国、地方公共団体、民間団体その他の関係者の密接な連携を基本理念としています。

もっとも、フリースクールに通えば自動的に学校の出席扱いになるわけではありません。文部科学省は、義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設で相談・指導を受けている場合、一定の要件を満たし、校長が適切と判断すれば、指導要録上出席扱いとすることができるとしています。

要件の中心は、保護者と学校との十分な連携・協力関係、施設での相談・指導が社会的自立を目指すものであること、本人が登校を希望した際に円滑な学校復帰が可能となるよう個別支援が行われていること、校長が教育委員会と連携して判断することです。

5-5. 自宅でのICT等を活用した学習

自宅でのICT学習も、一定の要件を満たす場合には、指導要録上出席扱いとすること及びその成果を評価に反映することができます。文部科学省は、ICT、郵送、FAX等を活用した学習活動について、保護者と学校の連携、対面指導、計画的な学習プログラム、学校による学習状況の把握などを要件として示しています。

ここでいうICT学習は、単に動画を見ているだけでは足りません。学校や教育委員会、教育支援センター、民間事業者等が提供する学習活動について、子どもの状態に応じた計画、学校との連携、学習状況の把握、本人への継続的支援が必要になります。

5-6. 欠席中の学習成果の成績評価

2024年8月、文部科学省は、不登校児童生徒が欠席中に行った学習成果の成績評価について通知を発出しました。これにより、小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校前期課程、特別支援学校小学部・中学部に在籍する不登校児童生徒について、一定の要件の下、学校外の機関や自宅等で行った学習成果を学校の判断で成績評価に考慮できることが法令上明確化されました。

要件は大きく三つです。

5. 不登校の子どもに保障される具体的な制度に関する次の表は、直前の説明を項目別に整理したものです。列ごとの違いを確認することが重要で、どの制度・期間・資料がどの場面に対応するかを読み取ってください。

要件内容
学習計画・内容の適切性在籍校の教育課程に照らして、学習計画・内容が適切と認められること
学校と保護者等の連携学校と保護者、教育支援センター、民間施設等との間に十分な連携協力体制があり、学校が学習状況等を定期的・継続的に把握できること
学校と本人の直接的関わり学校が訪問やオンライン相談・指導等を通じて、本人の学習状況等を定期的・継続的に把握し、適切な関わりを維持すること

この制度は、子どもが学校外で努力している学習を「学校に来ていないから評価できない」と切り捨てないための重要な仕組みです。他方で、すべての教科・観点について必ず評定を記載しなければならないわけではありません。十分な評価材料がない場合には、所見欄に学習状況を文章で記載するなど、次年度以降の指導改善に活かすことも想定されています。

5-7. 高等学校段階の柔軟な学び

義務教育段階と異なり、高等学校は義務教育ではありません。しかし、不登校の高校生についても、学びを継続するための制度的対応が進められています。文部科学省は、高等学校段階において、全日制・定時制課程に在籍する不登校生徒を対象として、遠隔授業や通信教育による単位認定を一定範囲で可能とする制度の活用を進めています。

高等学校では、単位修得、出席日数、進級、卒業要件、転学、通信制への移行、休学、退学、再入学など、学校ごとの規程と法制度が絡みます。義務教育段階以上に、早期の情報確認と記録化が重要です。

Section 07

不登校の子どもの教育保障 ― 6. よくある誤解と法的整理

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

不登校の子どもの教育保障 ― 6. よくある誤解と法的整理に関する次の表は、直前の説明を項目別に整理したものです。列ごとの違いを確認することが重要で、どの制度・期間・資料がどの場面に対応するかを読み取ってください。

よくある誤解法的に正確な整理
義務教育だから、子ども本人に登校義務がある義務は主に保護者・国・地方公共団体側にある。子どもは教育を受ける権利の主体である。
不登校は問題行動である文部科学省は、不登校は取り巻く環境によってはどの児童生徒にも起こり得るもので、不登校というだけで問題行動と受け取られない配慮が必要としている。
目標は必ず学校復帰である支援は登校という結果のみを目標にするのではなく、社会的自立を目指す必要がある。
フリースクールに通えば自動的に出席になる自動ではない。一定の要件を満たし、校長が教育委員会と連携して判断する。
自宅学習は評価されない一定の要件を満たせば、ICT等を活用した自宅学習の出席扱いや評価反映が可能である。
欠席中の学習は成績に反映できない2024年8月の制度改正により、一定の要件の下で成績評価に考慮できることが法令上明確化された。
学校が何もしないなら家庭だけで抱えるしかない教育機会確保法は、国・地方公共団体・学校・民間団体等の連携を前提としている。
弁護士に相談すると必ず裁判になる弁護士相談の主な価値は、事実整理、証拠化、学校・教育委員会との交渉、権利侵害の予防にある。訴訟は選択肢の一つにすぎない。
Section 08

不登校の子どもの教育保障 ― 7. 保護者が実務上確認すべきこと

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

7-1. まず「登校させるか」ではなく「何が権利保障を妨げているか」を整理する

不登校が始まると、家庭では「どうしたら学校に行けるか」に意識が集中しがちです。しかし、法的・実務的には、まず次の点を整理することが重要です。

  • 学校で安全上の問題があるか
  • いじめ、からかい、暴力、無視、SNSトラブルがあるか
  • 教師との関係で恐怖や不信があるか
  • 学習面のつまずきがあるか
  • 発達特性、感覚過敏、睡眠障害、起立性調節障害、精神的疲弊等があるか
  • 家庭内の事情、経済的事情、介護、きょうだい関係などが影響しているか
  • 本人が望む学び方、会える大人、行ける場所は何か
  • 学校内で調整すれば通える可能性があるか
  • 学校外の学習・相談機関が必要か

この整理は、学校との面談、教育委員会への相談、医療機関・心理職との連携、弁護士相談のすべてで基礎資料になります。

7-2. 記録を残す

権利保障を実効的にするには、記録が不可欠です。感情的な対立を避けるためにも、事実を時系列で整理しましょう。

不登校の子どもの教育保障 ― 7. 保護者が実務上確認すべきことに関する次の表は、直前の説明を項目別に整理したものです。列ごとの違いを確認することが重要で、どの制度・期間・資料がどの場面に対応するかを読み取ってください。

記録すべき事項具体例
欠席・遅刻・早退の状況日付、理由、体調、本人の発言
学校とのやり取り面談日、担当者、説明内容、約束事項
学習状況使用教材、学習時間、提出物、オンライン学習、成果物
外部機関の利用教育支援センター、フリースクール、医療機関、相談機関
心身の状態睡眠、食事、体調、受診、診断書、心理検査等
いじめ・安全問題加害行為、目撃者、SNS、学校の対応、被害の影響
子どもの意思本人が希望する支援、嫌がる対応、安心できる条件

記録は、学校を責めるためだけのものではありません。子どもの状態を正確に把握し、関係者間で支援方針を共有するための道具です。

7-3. 学校への相談は「要望」ではなく「協議」にする

学校に相談する際は、単に「出席扱いにしてください」「成績をつけてください」と求めるだけではなく、制度要件を満たすための協議として進めることが有効です。

たとえば、次のような観点で話し合います。

  • どの学習活動を学校の教育課程に照らして評価対象にできるか
  • 学習計画を誰が作成し、誰が確認するか
  • 学習状況をどの頻度で学校に共有するか
  • 学校は本人とどのように継続的に関わるか
  • フリースクール等の活動記録をどう提出するか
  • 指導要録上の出席扱いの判断に必要な資料は何か
  • 成績評価が困難な教科について、所見欄に何を記載できるか
  • 進路指導上、どの情報をどのタイミングで確認すべきか

このように、制度の要件に沿って協議すると、学校側も判断しやすくなります。

7-4. 書面で依頼する

口頭相談だけでは、内容が曖昧になりやすく、後から「言った・言わない」の問題が生じます。重要な相談は、メールや文書で要点を残すことが望ましいです。

文面は攻撃的にする必要はありません。たとえば、次のような構成が考えられます。

> 当方は、子どもの心身の安全と教育機会の確保を両立させるため、学校と継続的に協議したいと考えています。現在の欠席状況、家庭での学習状況、外部機関の利用状況を踏まえ、指導要録上の出席扱い、欠席中の学習成果の評価、今後の支援体制について、制度上どのような対応が可能かご相談させてください。

この程度の文面でも、学校側に「制度に基づく協議をしたい」という趣旨が伝わります。

Section 09

不登校の子どもの教育保障 ― 8. いじめ・安全問題がある場合の法的保障

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

不登校の背景にいじめがある場合、問題は教育機会の確保だけでなく、安全配慮、調査、再発防止、情報提供、場合によっては損害賠償の問題に発展します。

いじめ防止対策推進法は、いじめにより児童生徒の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがある場合、又はいじめにより相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある場合を「重大事態」とし、学校の設置者又は学校に調査を行うことを求めています。また、調査を行ったときは、いじめを受けた児童生徒及び保護者に対し、必要な情報を適切に提供するものとされています。

したがって、いじめが原因で登校できない場合、単に「本人が学校に来ない」という扱いで終わらせることはできません。学校・設置者は、事実関係を確認し、安全を確保し、再発防止策を講じ、被害児童生徒の教育機会を回復する必要があります。

弁護士相談を検討すべき典型例は、次のような場合です。

  • いじめ被害を訴えているのに学校が調査しない
  • 重大事態に該当する疑いがあるのに、重大事態として扱われない
  • 学校の説明が一貫しない、記録が開示されない
  • 加害児童生徒との接触回避や安全確保が不十分
  • 学校の不適切対応により被害が拡大した疑いがある
  • 心身の被害、医療費、転校、進路不利益などが生じている

弁護士は、訴訟だけでなく、学校・教育委員会への申入れ、資料開示、調査手続への関与、被害状況の整理、再発防止策の協議、損害賠償可能性の検討などを支援できます。

Section 10

不登校の子どもの教育保障 ― 9. 障害・発達特性・病気がある場合の配慮

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

不登校の背景に、発達障害、知的障害、精神疾患、身体疾患、起立性調節障害、感覚過敏、学習障害、聴覚・視覚・肢体不自由、医療的ケア、慢性疾患などがある場合、教育上必要な支援や合理的配慮の問題が生じます。

教育基本法は、国及び地方公共団体に対し、障害のある者がその障害の状態に応じて十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならないと定めています。

文部科学省も、発達障害のある児童生徒が十分な教育を受けるためには、学校における合理的配慮の提供が、個別の実態把握に基づき適切に行われる必要があるとしています。

合理的配慮としては、次のようなものが考えられます。

  • 別室での学習
  • 登校時間の調整
  • 課題量の調整
  • 板書の写真撮影やプリント提供
  • ICT機器の利用
  • 試験時間・試験方法の調整
  • 休憩場所の確保
  • 感覚過敏に配慮した座席・環境調整
  • 対人不安に配慮した面談方法
  • オンラインでの相談・学習支援
  • 医療機関・福祉機関との連携

重要なのは、「不登校だから支援しない」ではなく、不登校の背景にある困難を把握し、その困難に応じて教育機会を保障することです。

Section 11

不登校の子どもの教育保障 ― 10. 外国籍・無国籍・日本語指導が必要な子ども

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

教育機会確保法第3条は、義務教育段階の普通教育に相当する教育を十分に受けていない者について、年齢、国籍その他の置かれている事情にかかわりなく、その能力に応じた教育を受ける機会が確保されるようにすることを基本理念に掲げています。

外国籍の子どもは、日本国籍の子どもと制度上まったく同一ではない部分がありますが、児童の権利に関する条約や教育機会確保法の趣旨から、教育機会の確保は重要な課題です。日本語指導、通訳、進路情報、在留資格、家庭への情報提供、地域支援との連携が必要になることがあります。

不登校の背景に、日本語理解の困難、文化的孤立、差別、経済的困難、家庭の在留不安がある場合には、学校だけで抱えず、自治体の多文化共生窓口、国際交流協会、NPO、弁護士、行政書士、福祉機関などとの連携が有効です。

Section 12

不登校の子どもの教育保障 ― 11. 進路・成績・内申への影響

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

不登校の家庭にとって、最も大きな不安の一つが進路です。特に中学生の場合、高校入試における調査書、内申点、出席日数、欠席理由、所見欄が気になります。

ここで重要なのは、欠席そのものを消す制度ではなく、欠席中の学習や支援状況を適切に記録し、評価可能なものは評価し、評価が困難なものは所見として残す制度を活用することです。

2024年8月の通知は、欠席中の学習成果を成績評価に反映できることを明確化しました。ただし、すべての教科について必ず評定をつける制度ではありません。学習計画・内容が教育課程に照らして適切であること、学校と保護者等が連携していること、学校が本人と直接関わりを継続していることが必要です。

進路保障のためには、次の点を早めに確認することが重要です。

  • 在籍校での評価方針
  • 学校外学習の成績反映の可否
  • 出席扱いの判断基準
  • 指導要録・通知表・調査書への記載方針
  • 高校入試で欠席日数がどのように扱われるか
  • 都道府県の公立高校入試制度
  • 私立高校・通信制高校・定時制高校・チャレンジスクール等の選択肢
  • 本人に合う学習ペースと受験方法

進路については、自治体・学校・入試制度によって差が大きいため、一般論で判断せず、早めに具体的な制度確認を行う必要があります。

Section 13

不登校の子どもの教育保障 ― 12. 学校・教育委員会に求められる対応

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

不登校支援では、学校や教育委員会にも相応の責任があります。教育機会確保法は、国及び地方公共団体に、学校における取組への支援、支援状況等の情報共有、学びの多様化学校や公立教育施設の整備、学校以外の場における学習活動や心身の状況の継続的把握を求めています。

学校・教育委員会に求められる対応は、少なくとも次のようなものです。

不登校の子どもの教育保障 ― 12. 学校・教育委員会に求められる対応に関する次の表は、直前の説明を項目別に整理したものです。列ごとの違いを確認することが重要で、どの制度・期間・資料がどの場面に対応するかを読み取ってください。

領域求められる対応
早期把握欠席の背景、本人の意思、家庭状況、心身の状態を確認する
安全確保いじめ、暴力、ハラスメント、過度な指導がないか確認する
環境調整別室登校、時間差登校、担任以外の窓口、校内教育支援センター等を検討する
学習保障課題提供、ICT学習、教育支援センター、外部機関との連携を検討する
記録・評価出席扱い、成績評価、所見欄、進路指導を適切に行う
関係機関連携スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、医療、福祉、民間施設と連携する
保護者支援保護者を責めるのではなく、相談・情報提供・制度説明を行う

2025年10月の文部科学省通知では、令和6年度調査において小・中学校の不登校児童生徒数が約35万4千人と過去最多となったこと、学校内外の機関等で専門的な相談・指導等を受けていない児童生徒が約13万6千人に上ることが示されました。 この数字は、不登校支援が個別家庭だけの問題ではなく、制度全体で対応すべき社会的課題であることを示しています。

Section 14

不登校の子どもの教育保障 ― 13. 弁護士に相談すべき場面

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

不登校のすべてのケースで弁護士が必要なわけではありません。多くの場合、まずは学校、教育委員会、教育支援センター、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、医療機関、民間支援団体との連携が中心になります。

しかし、次のような場面では、早めに弁護士へ相談する価値があります。

13-1. いじめ・安全問題がある

いじめ、暴力、SNS被害、教師による不適切指導、部活動でのハラスメントなどがあり、学校が十分に対応しない場合です。重大事態に該当する可能性があるときは、調査・情報提供・再発防止の手続が重要になります。

13-2. 学校や教育委員会が制度説明をしない、又は一方的に拒否する

出席扱い、ICT学習、学校外学習の評価、指導要録への記載について、学校が制度を確認せず「できません」とだけ回答する場合、法令・通知に基づく協議が必要になることがあります。

13-3. 成績・進路に重大な不利益が生じそうである

中学3年生や高校生では、成績評価、調査書、出席日数、進級、卒業、単位認定が進路に直結します。学校との協議を記録化し、評価資料を整え、制度上の判断理由を明確にすることが重要です。

13-4. 障害・病気への合理的配慮が拒否されている

発達特性、精神疾患、身体疾患、起立性調節障害等があるにもかかわらず、合理的配慮や個別支援が検討されない場合、教育上の差別や支援義務の問題として整理する必要があります。

13-5. 私立学校で退学・停学・原級留置・契約上の問題がある

私立学校では、学校法人との在学契約、学則、懲戒、退学、授業料、転学、個人情報、説明義務などの問題が絡むことがあります。公立学校とは異なる法的整理が必要です。

13-6. 学校記録・個人情報・調査報告書の開示が問題になっている

いじめ調査、事故報告、指導記録、面談記録、調査書、通知表、指導要録等について、何を開示できるか、どのように請求するか、開示された情報をどう読むかは、法的知識が必要になる場合があります。

13-7. 児童相談所・虐待通告・親権者間対立が絡んでいる

子どもの不登校が、家庭内葛藤、親権者間対立、監護者指定、面会交流、虐待通告、児童相談所対応と結びつく場合、教育法だけでなく家族法・児童福祉法の観点が必要になります。

Section 15

不登校の子どもの教育保障 ― 14. 弁護士に相談する前に準備するとよい資料

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

弁護士に相談する場合、次の資料をできる限り準備すると、相談の精度が上がります。

不登校の子どもの教育保障 ― 14. 弁護士に相談する前に準備するとよい資料に関する次の表は、直前の説明を項目別に整理したものです。列ごとの違いを確認することが重要で、どの制度・期間・資料がどの場面に対応するかを読み取ってください。

資料内容
時系列表欠席開始、学校との面談、トラブル、受診、外部機関利用の流れ
学校とのやり取りメール、連絡帳、面談メモ、配布文書、学校からの回答
欠席・出席記録欠席日数、遅刻早退、別室登校、教育支援センター利用日
学習記録教材、提出物、オンライン学習、フリースクールの活動記録
医療・心理資料診断書、意見書、検査結果、カウンセリング記録の概要
いじめ・安全資料SNS、写真、録音、目撃者、学校への申告内容
成績・進路資料通知表、評定、調査書に関する説明、入試制度資料
学則・規程私立学校の場合の学則、懲戒規程、単位認定規程等

相談時には、「何を実現したいか」も整理しておくとよいでしょう。たとえば、謝罪、調査、再発防止、別室登校、出席扱い、成績評価、転校、損害賠償、情報開示、進路保障など、目的によって取るべき手段は変わります。

Section 16

不登校の子どもの教育保障 ― 15. 家庭でできる権利保障の実務

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

15-1. 子どもを責めない

不登校の初期対応で最も避けたいのは、子どもを「怠けている」「甘えている」と決めつけることです。もちろん生活リズムや学習習慣の問題がある場合もあります。しかし、背景に強い不安、恐怖、疲労、いじめ、発達特性、身体症状がある場合、叱責は状態を悪化させることがあります。

法的保障の出発点は、子どもを権利主体として扱うことです。本人の話を聴き、安心できる環境を作り、必要な支援につなげることが、教育機会の回復につながります。

15-2. 学びを完全に止めない

休養が必要な時期であっても、子どもが少しでも取り組める学びの回路を残すことは重要です。読書、動画教材、オンライン教材、探究学習、生活スキル、工作、プログラミング、英会話、地域活動なども、本人の状態によっては学びになります。

ただし、学校の成績評価や出席扱いにつなげるには、学校の教育課程との関係、学習計画、記録、学校との連携が必要です。家庭内だけで完結させず、学校と協議しておくことが重要です。

15-3. 子どもの「行ける場所」を増やす

教育機会は、学校の教室だけではありません。教育支援センター、校内教育支援センター、保健室、図書室、フリースクール、地域の学習支援、オンライン学習、医療機関、相談機関など、子どもが安心してつながれる場所を増やすことが大切です。

社会的自立は、いきなり通常登校に戻ることだけで実現するものではありません。小さな接点を積み重ねることが、将来の学びと進路につながります。

Section 17

不登校の子どもの教育保障 ― 16. 実務チェックリスト

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

16-1. 初期段階のチェック

  • 子どもの安全を確認した
  • いじめ、暴力、ハラスメントの有無を確認した
  • 体調不良や睡眠の問題を確認した
  • 本人の希望や不安を聴いた
  • 欠席状況を記録し始めた
  • 学校に現状を共有した
  • 担任以外の相談窓口を確認した
  • スクールカウンセラー等の利用可能性を確認した

16-2. 学習保障のチェック

  • 家庭で可能な学習内容を整理した
  • 学校から課題や教材提供を受けている
  • ICT学習の利用可能性を確認した
  • 教育支援センターを確認した
  • フリースクール等の民間施設を検討した
  • 学習記録を残している
  • 学校と学習状況の共有方法を決めた

16-3. 出席扱い・成績評価のチェック

  • 指導要録上の出席扱いの制度を確認した
  • 学校外施設の活動記録を提出できる
  • 自宅ICT学習の要件を確認した
  • 欠席中の学習成果の成績評価について協議した
  • 評価対象にできる教科・単元を確認した
  • 所見欄への記載可能性を確認した
  • 進路に必要な情報を学校と共有した

16-4. 法的相談のチェック

  • 学校の対応に安全上の重大な問題がある
  • いじめ重大事態の可能性がある
  • 成績・進路上の重大な不利益が迫っている
  • 合理的配慮が拒否されている
  • 学校記録や調査報告の開示が問題になっている
  • 私立学校の退学・停学・単位・契約問題がある
  • 児童相談所や親権問題が絡んでいる

一つでも深刻な項目がある場合は、教育相談だけでなく、法律相談の利用も検討すべきです。

Section 18

17. FAQ

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

Q1. 不登校になると、親は法律違反になりますか。

不登校であることだけで、直ちに保護者が法律違反になるわけではありません。保護者には子どもに普通教育を受けさせる義務がありますが、子どもの心身の状態、学校環境、安全上の問題を無視して登校を強制することが求められているわけではありません。重要なのは、学校や関係機関と連携し、子どもの教育機会を確保するために合理的な対応をしているかです。

Q2. 子どもに学校へ行く義務はありますか。

法的には、義務教育の義務は主に保護者側に課されるものです。子ども本人は教育を受ける権利の主体です。したがって、「子どもが義務を怠っている」と捉えるのは不正確です。

Q3. フリースクールに行けば出席扱いになりますか。

自動的にはなりません。一定の要件を満たし、校長が教育委員会と連携して適切と判断する必要があります。保護者と学校との連携、施設の支援内容、活動記録、本人の社会的自立に向けた支援が重要です。

Q4. 自宅でオンライン教材を使えば出席扱いになりますか。

自動的にはなりません。ICT等を活用した自宅学習についても、保護者と学校の連携、対面指導、計画的な学習、学校による把握などの要件があります。

Q5. 欠席中の学習は成績に反映されますか。

一定の要件を満たせば、学校の判断で成績評価に考慮できます。2024年8月の制度改正により、この点が法令上明確化されました。ただし、評価材料が不足する場合、すべての教科について評定をつけることが求められるわけではありません。

Q6. 不登校の時期は完全に休ませてもよいですか。

子どもによっては、休養が必要であり、回復のために積極的な意味を持つことがあります。他方で、学習の遅れや進路上の不利益、社会的孤立のリスクもあります。休養と学習機会のバランスを取り、本人の状態に応じて段階的に支援することが重要です。

Q7. 学校が何もしてくれない場合、どうすればよいですか。

まずは面談内容を記録し、制度に基づいて書面で協議を求めます。担任だけでなく、管理職、教育相談担当、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、教育委員会、教育支援センターに相談することも考えられます。安全問題、いじめ、評価・進路上の重大な不利益がある場合は、弁護士相談も検討してください。

Q8. いじめが原因で不登校になった場合、学校には調査義務がありますか。

いじめにより相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある場合、いじめ防止対策推進法上の重大事態に該当し得ます。その場合、学校の設置者又は学校は調査を行い、被害児童生徒及び保護者に必要な情報を適切に提供することが求められます。

Q9. 発達障害や病気がある場合、学校に配慮を求められますか。

求められます。教育基本法は、障害のある者がその状態に応じて十分な教育を受けられるよう、国及び地方公共団体が必要な支援を講じることを定めています。個別の実態把握に基づき、合理的配慮や教育上の支援を検討することが重要です。

Q10. 弁護士に相談すると学校と対立してしまいますか。

必ずしもそうではありません。弁護士相談は、事実を整理し、制度上どのような協議が可能かを確認し、学校とのやり取りを適切に記録するためにも利用できます。訴訟や損害賠償請求は選択肢の一つにすぎません。むしろ早期相談により、対立を深刻化させずに解決する場合もあります。

Q11. 不登校でも高校進学は可能ですか。

可能です。ただし、進学先や入試制度によって、調査書、出席日数、面接、学力検査、作文、自己申告書等の扱いが異なります。早めに在籍校、教育委員会、志望校、支援機関と情報を確認し、学習記録や支援状況を整理することが重要です。

Q12. 学校に戻らない選択は法的に認められますか。

「学校に戻らないこと」自体が一律に違法というわけではありません。ただし、義務教育段階では、保護者・学校・自治体が子どもの普通教育の機会を確保する責任を負います。したがって、学校外の学びを選ぶ場合でも、学習内容、支援体制、学校との連携、出席扱い・評価・進路への影響を具体的に確認する必要があります。

Section 19

不登校の子どもの教育保障 ― 18. 法的保障の核心 ― 登校圧力ではなく、学びへのアクセスを回復すること

制度・資料・判断順序を分けて確認します。

不登校の子どもの教育を受ける権利と法的保障の核心は、子どもを無理に学校へ戻すことではありません。子どもが安心して学び、成長し、将来の選択肢を失わないように、学校内外の学習・支援・評価・安全確保を組み合わせることです。

教育機会確保法、文部科学省通知、出席扱い制度、ICT学習、欠席中の学習成果の成績評価、教育支援センター、学びの多様化学校、フリースクールとの連携は、いずれもこの目的のために存在します。

もちろん、制度があるだけでは十分ではありません。学校現場の理解、教育委員会の運用、保護者の記録化、民間支援機関との連携、医療・福祉の支援、必要に応じた弁護士の関与があって初めて、子どもの権利は実効的に守られます。

不登校は、子どもの人生の失敗ではありません。法的には、教育を受ける権利をどのように実質化するかが問われる局面です。子どもが学校に行けないときこそ、「この子にとって、いま安全に学べる方法は何か」「将来の選択肢を守るために、いま記録し、協議し、支援すべきことは何か」を、冷静に検討する必要があります。

Reference

この記事の参考情報源

法令・公的資料

  • 文部科学省「小・中学校等への就学について」
  • 文部科学省「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」
  • 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について」
  • 文部科学省「不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果に係る成績評価について」
  • 文部科学省「教育基本法」
  • 外務省「児童の権利に関する条約」
  • こども家庭庁「こども基本法」
  • 文部科学省「いじめ防止対策推進法」
  • 文部科学省「発達障害の可能性のある児童生徒の多様な特性に応じた合理的配慮研究事業」