保護命令とは、DV被害者の安全確保を目的として地方裁判所が相手方の接近・連絡・退去拒否などを制限する制度です。要件、種類、手続、証拠、違反時対応を一般向けに整理します。
保護命令とは、DV被害者の安全確保を目的として地方裁判所が相手方の接近・連絡・退去拒否などを制限する制度です。
保護命令はDV被害から身を守るための裁判所命令です。緊急時は制度の理解よりも安全行動が優先されます。
保護命令とは、配偶者等からの暴力、脅迫、支配的言動により生命・身体・心身の安全が脅かされる場面で、被害者の申立てにより地方裁判所が相手方に一定の行為を禁止し、または退去等を命じる制度です。離婚、親権、慰謝料を直接決める制度ではなく、安全確保を中心に置く制度です。
次の重要ポイント一覧は、保護命令とは何を目的とする制度なのかを短時間で整理するためのものです。制度の目的と限界を分けることが重要で、どの手続が安全確保、どの手続が離婚・親権・金銭問題に関わるかを読み取ってください。
接近、連絡、子や親族への接触、住居からの退去などを法的に制限します。
警察が出す命令ではなく、被害者の申立てにより地方裁判所が判断します。
命令に違反した者は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象です。
保護命令を考える場面では、記事を読み進める前に、警察、配偶者暴力相談支援センター、DV相談ナビ、DV相談プラス、医療機関などの安全支援につながることが重要になる場合があります。個別の危険度や対応方針は、専門機関や弁護士等に相談する必要があります。
DV防止法に基づき、配偶者等からの暴力・脅迫による重大な危害を防ぐための制度です。
次の比較表は、保護命令とは日常語のDVや離婚手続とどこが違うのかを示しています。制度の目的を混同しないことが重要で、保護命令で扱う安全確保と、別手続で扱う離婚・親権・金銭問題の違いを読み取ってください。
| 項目 | 保護命令で扱うこと | 別途検討されること |
|---|---|---|
| 目的 | 更なる暴力・脅迫・接触・監視等による重大な危害の防止 | 離婚成立、親権、慰謝料、財産分与、養育費 |
| 機関 | 地方裁判所またはその支部 | 家庭裁判所、警察、検察、民事裁判所など |
| 効果 | 接近・連絡・退去拒否等を法的に制限 | 離婚条件、刑事処罰、損害賠償など |
| 違反時 | 刑罰の対象 | 個別の犯罪や民事責任は別途判断 |
内閣府はDVを、親密な関係にある、またはあった者から振るわれる暴力という意味で使用されることが多いと説明しています。ただし、日常語としてのDVすべてが直ちに保護命令の発令要件に当たるわけではありません。保護命令では、過去の暴力・脅迫の内容と、将来の重大な危害のおそれを具体的に示す必要があります。
法律婚、事実婚、生活の本拠を共にする交際相手、一定の元配偶者等が問題になります。
この一覧は、保護命令とはどの関係の相手に対して検討される制度なのかを整理しています。戸籍上の婚姻だけで判断しないことが重要で、共同生活の実態、別離後の危険、暴力等の時期を読み取ってください。
現在の配偶者が典型です。別居中でも暴力・脅迫と危険の有無が問題になります。
婚姻届がなくても、夫婦同様の共同生活の実態があれば対象になり得ます。
単なる交際ではなく、婚姻関係に類する共同生活があるかが問題になります。
離婚等の前に暴力等を受け、離婚等の後も引き続き危険がある場合に問題になります。
同性カップル間の暴力についても対象となった例があるとされています。
単なる友人としての同居、就学・就業・福祉上の理由による共同生活、血縁・親族関係に基づく共同生活などは、生活の本拠を共にする交際から除外される場合があります。対象に当たるかは関係の実態で変わるため、早期に専門機関へ相談する必要があります。
接近禁止、電話等禁止、子・親族への命令、退去等命令などを危険に応じて検討します。
次の比較表は、保護命令とはどの行為を禁止・制限する制度なのかを類型別に示しています。命令の種類ごとに期間や同意要件が違うため重要で、自分の危険に対応する命令がどれかを読み取ってください。
| 類型 | 命令の内容 | 期間・特徴 |
|---|---|---|
| 被害者への接近禁止命令 | つきまとい、住居・勤務先等付近のはいかいを禁止します。 | 期間は1年間です。 |
| 被害者への電話等禁止命令 | 面会要求、監視告知、連続電話、メール、SNS、深夜早朝連絡、名誉侵害、位置情報取得等を禁止します。 | 接近禁止命令と同時または発令後に命じられます。 |
| 同居の子への接近禁止命令 | 未成年の子へのつきまとい、学校等付近のはいかいを禁止します。 | 子が15歳以上の場合は子の同意が必要です。 |
| 同居の子への電話等禁止命令 | 子への一定の連絡、監視、粗野乱暴な言動等を禁止します。 | 令和5年改正で創設されました。 |
| 親族等への接近禁止命令 | 親族や密接な関係者へのつきまとい等を禁止します。 | 親族等の同意が必要です。 |
| 退去等命令 | 共同生活の本拠からの退去、住居付近のはいかい禁止を命じます。 | 原則2か月。一定の場合に6か月となることがあります。 |
接近禁止命令は中心的な類型で、待ち伏せ、追跡、通勤経路での出没、職場や実家周辺での監視などが問題になります。電話等禁止命令は、非対面の支配・威迫・監視を抑える制度です。子や親族への命令は、相手方が子や親族を通じて被害者に接触する危険がある場合に問題になります。
過去の暴力・脅迫、対象となる相手、将来の重大な危害のおそれ、命令の必要性を整理します。
この判断の流れは、保護命令とはどの要件を順に確認する制度なのかを示しています。裁判所は抽象的な不安だけでなく具体的な事実を見ますので、上から下へ、事実と証拠の対応関係を読み取ってください。
身体への暴力、生命・身体・自由・名誉・財産への脅迫を具体化します。
配偶者、事実婚、共同生活を営む交際相手、一定の元配偶者等に当たるかを確認します。
反復性、凶器、監視、追跡、避難後の接触、警察相談後の行為などを整理します。
接近、電話等、子・親族、退去等のどれが危険に対応するかを確認します。
時系列、証拠、危険、秘匿情報を安全に整理します。
「重大な危害を受けるおそれが大きい」とは、単に不快、不安、迷惑というレベルを超え、生命、身体、または心身に重大な被害が生じる具体的危険が高いことを意味します。過去の暴力が重大でも、現在の危険とのつながりを説明できなければ判断が難しくなることがあります。
危険評価では、暴力・脅迫の反復、エスカレート、凶器、首を絞める行為、監禁、性的暴力、子への加害、追跡、待ち伏せ、職場・学校・実家への接触、位置情報監視、警察相談後も止まらない行為などが問題になります。
精神的被害や自由・名誉・財産への脅迫、紛失防止タグによる位置情報取得への対応が重要です。
次の時系列は、保護命令とは社会の実態に合わせて変化してきた制度であることを示しています。改正時期と実務上の意味を分けることが重要で、何が対象に加わり、どの危険に注意すべきかを読み取ってください。
申立てができる被害者の拡大、命令の種類の拡大、期間の伸長、厳罰化が示されました。
接近禁止命令等で、自由・名誉・財産への脅迫も対象に加わりました。
紛失防止タグによる位置情報の無承諾取得も禁止行為の対象に追加されました。
令和5年改正は、心理的支配、性的画像の拡散予告、経済的拘束、行動制限、監視など、身体的暴力だけでは捉えきれないDVの実態を反映するものです。令和7年改正は、日用品に紛れ込ませやすい紛失防止タグによる追跡リスクを制度上明確に扱う点で重要です。
申立先の地方裁判所、警察・配偶者暴力相談支援センターへの事前相談、宣誓供述書を確認します。
この比較表は、保護命令とは申立て前の相談と裁判所の管轄を先に整理する制度であることを示しています。避難先秘匿や安全計画に関わるため重要で、どこに相談し、どの裁判所へ申し立てる余地があるかを読み取ってください。
| 確認項目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 申立先 | 相手方の住所・居所、申立人の住所・居所、暴力等が行われた地を管轄する地方裁判所または支部 | 避難先を知られたくない場合は秘匿情報の扱いを確認します。 |
| 事前相談 | 配偶者暴力相談支援センターまたは警察署への相談 | 申立てを基礎づける事情について事前相談が重要です。 |
| 宣誓供述書 | 事前相談をしていない場合に公証人役場で作成する場合があります。 | 事案により準備期間と安全性を考慮します。 |
| 追加命令の事情 | 子や親族等への命令を求める事情 | 相談または宣誓の段階で必要性を整理します。 |
保護命令の申立ては、単なる書類提出ではなく、安全確保、一時保護、住居、生活費、子どもの安全、勤務先対応、学校対応、医療、心理的支援と結びつきます。警察や支援機関への早期相談は、申立準備だけでなく安全計画の面でも重要です。
申立費用、必要書類、証拠、面接、審尋、発令後の対応を時系列で確認します。
次の比較表は、保護命令とはどの資料で危険を説明する制度なのかを示しています。資料の多さよりも、日時・相手・内容・危険との対応が重要で、各資料から何を示せるかを読み取ってください。
| 資料の種類 | 具体例 | 留意点 |
|---|---|---|
| 医療資料 | 診断書、診療明細、受傷部位の写真 | 受傷日時、原因説明、写真の撮影日時が重要です。 |
| 相談記録 | 警察、支援機関への相談日・内容のメモ | 事前相談要件との関係でも重要です。 |
| 連絡履歴 | LINE、SMS、メール、SNS、着信履歴 | 日時・送信者が分かる形で保存します。 |
| 音声・動画 | 脅迫、暴言、物を壊す音、待ち伏せ状況 | 録音・撮影の安全性と適法性に注意します。 |
| 物的証拠 | 破損写真、GPS機器、紛失防止タグ | 発見日時・場所・状態を記録します。 |
| 時系列表 | 暴力、脅迫、追跡、接触の履歴 | できるだけ具体的に、推測と事実を分けます。 |
この時系列は、保護命令とは申立てから効力発生まで段階的に進む制度であることを示しています。順番と例外を知ることが重要で、申立後すぐに何が起き、どの時点で効力が生じるかを読み取ってください。
警察または配偶者暴力相談支援センターへ相談し、避難先や子どもの安全計画を検討します。
申立手数料は収入印紙1,000円で、郵便切手は裁判所ごとに確認します。
申立人との面接後、通常は1週間程度先に口頭弁論または審尋期日が設けられます。
相手方への決定書送達または期日の言渡しで効力が生じます。緊急例外が問題になる場合もあります。
証拠が少ない場合でも、警察、配偶者暴力相談支援センター、医療機関、弁護士への相談履歴を作ることが重要です。ただし、証拠収集のために相手の近くに戻る、挑発して録音しようとする、危険な場所に単独で行くことは避ける必要があります。
保護命令は安全確保の民事的制度ですが、警察対応、刑事手続、家事事件、ストーカー規制と連動することがあります。
次の比較表は、保護命令とは周辺制度と何が違うのかを整理しています。似た制度を混同すると相談先や準備資料を誤りやすいため重要で、目的・機関・効果の違いを読み取ってください。
| 制度 | 主な目的 | 保護命令との関係 |
|---|---|---|
| 警察対応 | 緊急対応、被害届、刑事事件、違反時対応 | 警察は重要ですが、保護命令そのものは裁判所が発令します。 |
| 離婚・親権 | 離婚条件、監護、面会交流、養育費など | 主に家庭裁判所の家事手続などで別途扱われます。 |
| ストーカー規制法 | 好意感情や怨恨感情に基づくつきまとい等への対応 | 配偶者等のDVとは対象関係や要件が異なります。 |
| 刑事手続 | 過去に発生した犯罪行為への処罰 | 保護命令は将来の危険予防を中心にします。 |
| 民事上の仮処分 | 人格権等に基づく接近禁止など | DV防止法上の保護命令とは要件・効果が異なります。 |
保護命令が出たからといって自動的に離婚できるわけではなく、親権や慰謝料が決まるわけでもありません。一方で、保護命令が必要な危険がある場合、直接交渉、調停期日の移動、住所秘匿、子どもの引渡し方法などを慎重に設計する必要があります。
命令違反が疑われる場合は、直接対応を避け、安全確保、記録、警察・支援機関への連絡を優先します。
この判断の流れは、保護命令とは発令後の違反対応まで含めて考える制度であることを示しています。直接対応は危険を高めるおそれがあるため重要で、危険の有無に応じて何を優先するかを読み取ってください。
相手が近くにいる、接触が切迫している、子や親族に危険があるかを確認します。
自分で問い詰めず、緊急対応につなげます。
着信履歴、メッセージ、位置情報通知、写真、目撃情報を残します。
決定書の内容と相手の行為を照らし、追加対応を相談します。
保護命令違反は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象です。違反の有無は命令の内容に照らして判断されるため、接近禁止命令だけなのか、電話等禁止命令や子・親族等への命令も出ているのかを決定書で確認する必要があります。
申立書・陳述書では具体的事実を時系列で書き、位置情報や秘匿情報の扱いにも注意します。
この一覧は、保護命令とは書面の具体性とデジタル安全対策が結果に影響し得る制度であることを示しています。抽象的な恐怖だけでなく、日時・場所・行為・危険を結びつけることが重要で、どの情報を安全に整理するかを読み取ってください。
いつ、どこで、相手が何を言い、何をし、その後どの危険が続くかを具体化します。
陳述書診断書、相談記録、メッセージ、写真、位置情報通知などを事実と結びつけます。
資料整理住所、勤務先、学校、写真の位置情報、メールヘッダーなどが相手に知られないよう確認します。
安全注意スマートフォン、クラウド、共有アプリ、車、バッグ、鍵、財布、紛失防止タグを確認します。
監視対策避けるべき書き方は、「ずっとひどい」「怖い」「普通ではない」だけで終わる記載です。感情は重要ですが、裁判所が判断するためには、事実、証拠、危険、必要な命令を対応させる必要があります。証拠が少ない場合でも、安全を犠牲にして集めるものではありません。
安全、法的要件、手続準備、弁護士相談を順に確認します。
次の実務チェック一覧は、保護命令とは安全確認から法的要件、手続、相談までを一体で整理する制度であることを示しています。抜けがあると安全や手続に影響するため重要で、各区分から今確認すべき事項を読み取ってください。
| 区分 | 確認すること |
|---|---|
| 安全確認 | 今この瞬間の危険、居場所を知られているか、子ども・親族・職場・学校への危険、位置情報追跡、一時保護の必要性 |
| 法的要件 | 対象関係、身体的暴力、生命・身体・自由・名誉・財産への脅迫、将来の重大な危害のおそれ、必要な命令 |
| 手続準備 | 警察または支援センターへの相談、宣誓供述書、管轄裁判所、申立書、副本、陳述書、証拠、同意書、秘匿情報 |
| 弁護士相談 | 時系列表、証拠、相手との関係、希望する命令、離婚・婚姻費用・親権・面会交流・刑事告訴との関係 |
早期に弁護士へ相談する必要性が高いのは、相手に弁護士がついている、避難先や勤務先を知られたくない、子・親族への命令や退去等命令を求めたい、証拠が少ない、精神的暴力や経済的支配、性的画像の拡散予告、位置情報監視など法的構成が難しい場合です。
制度の主体、対象、期間、費用、違反時、離婚との関係を一般情報として整理します。
一般的には、保護命令は地方裁判所が発令する命令です。警察は相談、緊急対応、被害届、刑事事件、違反時対応などで重要な役割を担いますが、保護命令そのものを発令する機関ではありません。
接近禁止命令等では、身体に対する暴力だけでなく、生命・身体・自由・名誉・財産に対し害を加える旨を告知してする脅迫が問題になり得ます。ただし、具体的言動が法律上の脅迫に当たるか、重大な危害のおそれが大きいかは、証拠と事案に基づき判断されます。
「精神的DV」という言葉だけでは足りない場合があります。一般的には、一定の暴力または脅迫、さらに生命または心身に重大な危害を受けるおそれが大きいことを、具体的な事情で整理する必要があります。
一般的には、被害者の性別は問われません。ただし、対象となる関係、暴力・脅迫の内容、将来の危険、必要な命令については個別事情に基づく整理が必要です。
同性カップル間の暴力についても保護命令の対象となった例があるとされています。ただし、共同生活の実態、暴力等の時期、継続する危険などが問題になるため、早期相談が望まれます。
生活の本拠を共にする交際相手からの暴力等であれば、対象になり得ます。ただし、単なる交際関係や一時的宿泊ではなく、婚姻関係における共同生活に類する共同生活があるかが問題になります。
保護命令手続では、相手方に申立書副本が送付され、審尋期日が設けられることが通常想定されます。ただし、緊急の場合には相手方への審尋期日等を経ずに発令されることがあります。避難先秘匿や書類記載は、裁判所・弁護士・支援機関へ事前に相談する必要があります。
裁判所は、申立書受理後、当日または速やかに申立人本人または代理人と面接し、その後1週間程度先に口頭弁論または審尋の期日を設けると説明しています。ただし、事案、裁判所、緊急性、資料の状況によって変わります。
裁判所は、申立手数料として収入印紙1,000円および郵便切手が必要と案内しています。郵便料は裁判所ごとに異なるため、申立先の裁判所で確認する必要があります。
身の危険がある場合は、一般に110番など安全確保が優先される対応とされています。緊急性がない場合でも、警察、弁護士、配偶者暴力相談支援センターへ相談し、着信履歴、メッセージ、目撃情報、位置情報通知、写真等を保存することが重要です。
自動的に離婚できるわけではありません。離婚、親権、養育費、財産分与、慰謝料は別途、協議、調停、訴訟等で扱われます。危険がある場合の交渉方法は、弁護士等へ相談する必要があります。
法テラスには、DV、ストーカー、児童虐待を受けている方や受けるおそれがある方を対象とする法律相談援助があります。資産が一定基準以下の場合は無料相談となる場合があり、民事・刑事を問わず相談できると案内されています。