遺言書で法定相続分と異なる配分を指定することは可能です。ただし、遺留分、相続税、債務、不動産登記、遺言方式の限界を分けて確認する必要があります。
遺言書で 法定相続分と異なる配分を指定することは可能です。
遺言で変えられる範囲と、変えられない限界を最初に整理します。
「法定相続分は遺言書で変えられるか」という問いへの結論は、実質的には変えられるものの、何でも自由に確定できるわけではない、というものです。法定相続分は民法上の標準的な取り分ですが、遺言による指定相続分や遺産分割方法の指定、遺贈により、法定相続分とは異なる財産承継を設計できます。
この重要ポイントは、遺言書が優先する場面と、遺留分・税務・登記・債務のように別の基準が残る場面を分けて示しています。読者にとって大切なのは、「遺言で自由に書けること」と「その後に争点として残ること」を混同しないことです。
法定相続分そのものの法律規定を消すものではなく、法定相続分と異なる取得内容を原則として優先させる仕組みです。
次の比較表は、「変えられる」という言葉が実務上どの意味で使われるかを整理したものです。答えの列だけでなく、右端の注意点を読むことで、遺言作成後や相続開始後に何を確認すべきかが分かります。
| 問いの意味 | 答え | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 民法が定める法定相続分そのものを書き換えられるか | いいえ | 法律上の基準として残ります。 |
| 遺産を法定相続分と異なる割合で分けられるか | はい | 相続分の指定、遺産分割方法の指定、遺贈が使われます。 |
| 特定の相続人に一切渡さない内容にできるか | 一部可能 | 遺留分、廃除、相続放棄、無効主張が問題になります。 |
| 税金、債務、登記、第三者との関係まで完全に変えられるか | いいえ | 相続税計算、債権者の権利行使、対抗要件は別に検討します。 |
たとえば、配偶者に4分の3、長男に4分の1とする指定、自宅は配偶者、預貯金は子とする指定、法定相続人ではない内縁の相手や団体への遺贈などは、遺言書で設計できます。一方で、兄弟姉妹以外の一定の相続人には遺留分があり、方式不備、遺言能力、あいまいな財産特定、相続税、債務承継、不動産登記によって手続が止まることがあります。
被相続人、法定相続人、指定相続分、遺贈、遺留分を整理します。
まず用語をそろえると、遺言書で何を動かせるのかが明確になります。次の一覧は、相続の場面で混同しやすい概念を並べたものです。誰が権利を持つのか、遺言で割合を指定するのか、最低限の利益が残るのかを読み取ってください。
亡くなった人のことです。相続は被相続人の死亡によって開始します。
配偶者は常に相続人となり、子、直系尊属、兄弟姉妹が順位に従って相続人になります。
民法が定める標準的な相続割合です。合意や遺言がない場合の基準として機能します。
遺言によって指定された相続分です。原則として法定相続分より優先されます。
割合ではなく、自宅や預貯金など特定の財産を誰に取得させるかを定めます。
兄弟姉妹以外の一定の相続人に保障される最低限の利益です。
法定相続分の基本割合は、相続人の組合せによって変わります。次の表は標準的な組合せを示すもので、遺言で別の配分を考えるときも、比較の出発点として確認することが重要です。
| 相続人の組合せ | 法定相続分 |
|---|---|
| 配偶者のみ | 配偶者が全部 |
| 配偶者と子 | 配偶者2分の1、子全体で2分の1 |
| 配偶者と直系尊属 | 配偶者3分の2、直系尊属全体で3分の1 |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者4分の3、兄弟姉妹全体で4分の1 |
| 同順位者が複数いる場合 | 原則として均等に分けます。 |
遺贈は、遺言によって財産を無償で与える方法です。相続人にも、相続人以外の人や法人にも行えます。内縁の相手、長年世話をしてくれた人、公益法人や学校法人などに財産を渡したい場合に重要です。遺言執行者は、遺言内容を実現するために預貯金の解約、登記前提書類の整理、遺贈の履行、相続人との連絡調整などを行います。
相続分の指定、遺産分割方法の指定、遺贈を使い分けます。
遺言書で法定相続分と異なる配分を実現する方法は、主に3つあります。次の一覧は、何を決める方法なのか、どのような場面に向くのかを並べたものです。抽象的な割合だけで足りるのか、具体的な財産まで指定すべきかを読み取ってください。
妻Aの相続分を4分の3、長男Bを8分の1、長女Cを8分の1とするように、遺産全体の割合を指定します。
割合財産特定に注意土地建物を妻Aに、預貯金を長女Bに、株式を長男Cに取得させるように、財産の帰属を指定します。
財産別実務で使いやすい預貯金500万円を内縁の相手に、遺産の10分の1を団体に渡すように、相続人以外へ承継させる場面で使われます。
相続人以外遺留分と税務に注意配偶者と子2人が相続人の例では、法定相続分と遺言による指定の違いが分かりやすくなります。次の表は左側の法定相続分を、右側の指定例へ変えるイメージを示しています。長男と長女の取得割合が減るため、遺留分の確認が必要になる点も読み取れます。
| 相続人 | 法定相続分 | 遺言による指定例 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 2分の1 | 4分の3 |
| 長男 | 4分の1 | 8分の1 |
| 長女 | 4分の1 | 8分の1 |
ただし、遺言書は「法律上の法定相続分を消す」ものではありません。相続税や遺留分、債務承継、不動産登記、第三者対抗要件の場面では、法定相続分が引き続き参照されます。
法定相続分と異なる遺言が有効に機能する場面は、家族構成や財産の性質によって変わります。次の一覧は、典型場面ごとの目的と注意点を整理したものです。誰の生活や事業を守るのか、どの論点が争いになりやすいのかを読み取ってください。
長年介護した相続人や家業を支えた相続人に多く取得させる設計が考えられます。付言事項は紛争予防に役立つことがありますが、法的拘束力はありません。
現在の配偶者と前婚の子が共同相続人になると、住居、預貯金、祭祀、家族感情をめぐる対立が起こりやすくなります。
内縁の相手、同性パートナー、友人、甥姪、団体などに財産を渡したい場合は、遺贈が重要になります。
どの場面でも、遺留分、相続税、登記、受遺者の受入意思、遺言執行者の有無が重要です。特に不動産、非上場株式、農地、収益物件など、共有にすると管理や処分が難しくなる財産では、具体的な財産の指定と専門職の連携が必要になりやすいです。
遺言でも変えられないもの、変えにくいものを整理します。
遺言書の効力を過大に見積もると、相続開始後に想定外の請求や手続停止が起こります。次の一覧は、遺言で配分を変えても残る制約をまとめたものです。各項目で「誰に対して効く話なのか」を分けて読むことが重要です。
「長男を相続人ではないものとする」と書いても、それだけで法定相続人の地位が当然に消えるわけではありません。廃除には家庭裁判所の関与が必要です。
兄弟姉妹以外の相続人には遺留分が認められます。侵害時は金銭支払の問題として処理されます。
「借金は長男だけが負担する」と書いても、債権者に当然に対抗できるとは限りません。
相続税の総額計算では、法定相続分に従って取得したものと仮定して計算する場面があります。
法定相続分を超える権利承継は、第三者に対抗するための登記が重要になります。
相続人から外したい場合の考え方は、単に遺言書の文言だけで結論が出るものではありません。次の判断の流れは、遺言、廃除、遺留分、相続放棄の位置づけを順番に示しています。どこで家庭裁判所や本人の意思が関係するかを読み取ってください。
配分を変えることはできますが、地位そのものは消えません。
兄弟姉妹以外は最低限の利益が残る可能性があります。
侵害額請求への備えが必要です。
方式、登記、税務、執行を確認します。
廃除は家庭裁判所、相続放棄は相続人本人の手続が関係します。
不動産については、2024年4月1日から相続登記が義務化されています。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をする必要があり、正当な理由なく申請しない場合は10万円以下の過料が科される可能性があります。
最大の制約である遺留分を、権利者・割合・期限から確認します。
遺留分は、法定相続分と異なる遺言を作るときの最大の制約です。次の表は、誰に遺留分があるかを示しています。兄弟姉妹と甥姪には遺留分がない点が、配偶者に全財産を残したい夫婦などで特に重要です。
| 相続人 | 遺留分の有無 |
|---|---|
| 配偶者 | あり |
| 子 | あり |
| 孫などの代襲相続人 | あり |
| 父母、祖父母などの直系尊属 | あり |
| 兄弟姉妹 | なし |
| 甥姪 | なし |
遺留分は、まず相続人全体としての割合を確認し、そのうえで各人の法定相続分を掛けて個別に考えます。次の表では、相続人の構成ごとに全体割合がどう変わるかを示しています。直系尊属のみの場合だけ3分の1になる点を読み取ってください。
| 相続人の構成 | 全体としての遺留分 |
|---|---|
| 配偶者のみ | 2分の1 |
| 子のみ | 2分の1 |
| 配偶者と子 | 2分の1 |
| 配偶者と直系尊属 | 2分の1 |
| 直系尊属のみ | 3分の1 |
| 兄弟姉妹のみ | なし |
配偶者A、長男B、長女Cがいるのに「全財産を長男Bに相続させる」とした例では、法定相続分と個別的遺留分の目安を同時に見る必要があります。次の表は、長男Bが全部を取得する一方で、配偶者Aと長女Cから金銭請求を受ける可能性があることを示しています。
| 人 | 法定相続分 | 個別的遺留分の目安 |
|---|---|---|
| 配偶者A | 2分の1 | 4分の1 |
| 長男B | 4分の1 | 8分の1 |
| 長女C | 4分の1 | 8分の1 |
遺留分の期限は、請求する側にも請求を受ける側にも重要です。次の時系列は、いつから権利が消滅し得るかを整理しています。1年と10年の両方があるため、相続開始と遺言内容を知った時期を分けて確認してください。
相続開始、遺留分を侵害する贈与又は遺贈を知った時期を整理します。
請求意思を明確にする、記録を残す、調停や訴訟を検討するなど、期限管理が重要です。
知った時期にかかわらず、相続開始から10年で問題になる期限があります。
配偶者と兄弟姉妹だけが相続人で、全財産を配偶者に相続させる遺言では、兄弟姉妹に遺留分がないため、遺留分侵害額請求は通常問題になりません。一方、父母のみが相続人で第三者に全財産を遺贈する遺言では、直系尊属の遺留分が問題になります。
自筆証書遺言、保管制度、公正証書遺言、検認を確認します。
遺言書は、書けば必ず有効になるわけではありません。次の一覧は、遺言方式ごとの特徴と注意点を整理したものです。費用や手軽さだけでなく、無効リスク、紛失リスク、検認の要否を読み取ってください。
本人が全文、日付、氏名を自書して押印します。財産目録はパソコン作成や代筆も可能ですが、全ページの署名押印が必要です。
費用を抑えやすい方式不備に注意法務局で原本と画像データを保管し、外形的な方式確認を受けられます。保管された遺言書は家庭裁判所の検認が不要です。
保管内容保証ではない公証人が作成し、2人以上の証人が立ち会います。無効リスクや紛失リスクを抑えやすく、家庭裁判所の検認は不要です。
無効リスク軽減複雑な配分に向く自宅等で保管されていた自筆証書遺言では必要になる場合があります。検認は存在と内容を知らせる手続で、有効無効を判断する手続ではありません。
家庭裁判所有効性判断ではない法定相続分と大きく異なる配分、遺留分が問題になりそうな配分、不動産や会社株式がある配分では、公正証書遺言の利用価値が高くなります。自筆証書遺言を使う場合も、日付、署名押印、財産特定、訂正方法、遺言能力資料、保管方法を慎重に確認する必要があります。
割合、財産特定、予備的条項、遺留分、遺言執行者を一体で設計します。
法定相続分と異なる配分を安全に実現するには、誰に多く渡すかだけでなく、財産の特定、予備的条項、遺留分、実行役まで整える必要があります。次の判断の流れは、遺言書作成時に確認する順番を示しています。上から順に、抽象的な意思を実務で使える文言へ落とし込む過程を読み取ってください。
戸籍を確認し、基準となる割合と遺留分の有無を把握します。
不動産、預貯金、株式、保険、債務を整理します。
妻に4分の3という割合だけでなく、自宅や預貯金の帰属も明確にします。
受取人が先に死亡した場合の承継先を定めます。
相続人が協力しない場合でも手続を進めやすくします。
遺留分を意識した対策は、相続開始後の資金不足や紛争を防ぐために重要です。次の表は、主な対策と注意点を並べたものです。現金を残すだけでなく、保険、生前贈与、付言事項、家族間の共有まで含めて検討する必要があることを読み取ってください。
| 対策 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 遺留分相当額を現金で残す | 侵害額請求に備えます。 | 相続税納税資金とも競合します。 |
| 代償金を予定する | 特定財産取得者が他の相続人に金銭を支払います。 | 支払能力が必要です。 |
| 生命保険を活用する | 受取人固有財産として資金を準備します。 | 税務と遺留分評価は個別判断が必要です。 |
| 生前贈与を整理する | 特別受益、持戻し、税務を確認します。 | 過去の贈与資料が必要です。 |
| 付言事項を書く | 配分理由を説明します。 | 法的拘束力はありません。 |
| 家族会議を行う | 生前に意図を共有します。 | 強制や不当影響を疑われないよう配慮します。 |
不動産は登記事項証明書の記載に合わせて所在、地番、地目、地積、家屋番号、構造、床面積を確認します。預貯金は金融機関名、支店名、預金種別、口座番号を、株式は銘柄、株数、証券口座、非上場株式であれば会社名と株式数を確認します。
遺産分割協議、相続税、不動産登記を分けて確認します。
相続開始後は、遺言があるかどうかだけで手続が完結するとは限りません。次の時系列は、遺言書の確認から税務・登記までの順番を示しています。どの段階で全員合意、検認、申告期限、登記期限が関係するかを読み取ってください。
公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言は検認不要です。自宅保管の自筆証書遺言は検認が必要になる場合があります。
全財産が明確に指定されていない場合、協議や追加手続が必要になることがあります。
原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内に申告と納税を行います。
不動産取得を知った日から3年以内の申請義務が問題になります。
相続人全員が合意すれば、遺言と異なる分け方をできる場合があります。ただし、受遺者、遺言執行者、税務、登記、未成年者や後見制度利用者の利益相反が関係すると、相続人だけの合意では足りないことがあります。
相続税では、実際の取得割合が遺言で変わっていても、総額計算で法定相続分を使う場面があります。次の表は、税務で押さえる数値と意味を整理しています。遺言の指定割合と税額計算の基準が同じではないことを読み取ってください。
| 項目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 | 法定相続人の数が計算に影響します。 |
| 相続税の総額 | 課税遺産総額を法定相続分であん分したものとして仮計算します。 | 遺言で配分を変えても法定相続分は参照されます。 |
| 実際の負担 | 相続税の総額を実際に財産を取得した人の課税価格に応じて割り振ります。 | 取得財産、控除、特例により負担が変わります。 |
| 配偶者の税額軽減 | 1億6千万円又は配偶者の法定相続分相当額の多い金額までが重要です。 | 二次相続や未分割財産の扱いまで検討します。 |
不動産がある場合は、登記しないまま放置すると第三者との関係で不利益が生じる可能性があります。遺言で特定の相続人に不動産全部を取得させても、登記の遅れにより他の相続人の債権者や持分処分との関係が問題になることがあります。
法定相続分と大きく異なる遺言書が出てくると、争点は一つに限られません。次の表は、典型的な裁判所手続や主張を整理したものです。遺産分割の問題、遺留分の問題、遺言の有効性の問題を分けて読むことが重要です。
| 争点 | 主な手続・主張 | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 遺産分割 | 家庭裁判所の遺産分割調停・審判 | 相続人、遺産目録、評価資料、遺言にない財産 |
| 遺留分 | 遺留分侵害額請求、調停、訴訟 | 遺言書、財産評価、贈与、債務、特別受益 |
| 遺言無効 | 遺言無効確認の争い | 遺言能力資料、医療記録、作成過程、筆跡、方式 |
遺言無効の主張では、理由ごとに確認すべき事実が変わります。次の比較表は、典型的な無効主張と例を整理しています。方式の不備と判断能力の問題、偽造や強迫の問題を区別して読むことが大切です。
| 無効主張の理由 | 典型例 |
|---|---|
| 遺言能力がない | 認知症、精神疾患、重度の判断力低下 |
| 方式不備 | 日付がない、署名押印がない、自書されていない |
| 偽造、変造 | 筆跡が違う、押印が不自然 |
| 錯誤、詐欺、強迫 | 特定相続人が誘導した、不当な圧力があった |
| 内容が不明確 | 財産や受取人が特定できない |
| 後の遺言による撤回 | 複数の遺言書があり内容が矛盾する |
専門職の役割は、法律、税務、登記、不動産、金融、事業承継で異なります。次の表は、どの専門職がどの場面で関わるかを示しています。相談先を一つに決める前に、争点がどの分野にまたがるかを読み取ってください。
| 専門職 | 主な役割 | 相談を検討する場面 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 相続争い、遺留分、交渉、調停、審判、訴訟 | 争いがある、遺言無効や遺留分が問題 |
| 司法書士 | 相続登記、不動産名義変更、戸籍収集支援 | 不動産がある、登記を早く済ませたい |
| 税理士 | 相続税申告、税務相談、税務調査対応 | 基礎控除を超えそう、特例を使いたい |
| 行政書士 | 紛争、税務、登記申請を除く書類作成支援 | 争いがない書類作成や遺言作成支援 |
| 公証人 | 公正証書遺言作成 | 無効リスクを下げたい、複雑な遺言を作りたい |
| 不動産鑑定士・土地家屋調査士 | 不動産価格評価、境界、分筆、表示登記 | 不動産評価、土地分割、境界が問題 |
| 宅地建物取引士・不動産仲介業者 | 売却、査定、取引実務 | 不動産を売却して現金分割する |
| 公認会計士・中小企業診断士 | 会社価値、非上場株式、事業承継計画 | 会社株式や事業承継がある |
作る側と受け取る側で確認項目を分けます。
遺言書を作る側は、配分の希望だけでなく、相続人、財産、税務、保管方法まで確認する必要があります。次の表は作成前の確認項目を示しています。左列で確認テーマを押さえ、右列で具体的に何を整えるかを読み取ってください。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 相続人の確定 | 戸籍を確認し、相続人漏れを防ぎます。 |
| 法定相続分の確認 | 現在の法律上の基準を把握します。 |
| 遺留分の確認 | 侵害する場合の金銭請求リスクを見積もります。 |
| 財産目録の作成 | 不動産、預金、株式、保険、債務を整理します。 |
| 不動産評価 | 時価、相続税評価、固定資産税評価の違いを確認します。 |
| 納税資金 | 相続税や遺留分支払資金を確保します。 |
| 具体的文言 | 誰に何を相続させるか明確に書きます。 |
| 予備的条項 | 受取人が先に死亡した場合を定めます。 |
| 遺言執行者 | 中立かつ実務能力のある者を指定します。 |
| 保管方法 | 公正証書遺言又は法務局保管制度を検討します。 |
| 付言事項 | 配分理由を説明し、感情的対立を緩和します。 |
| 定期見直し | 家族構成、財産、税制の変化に応じて更新します。 |
遺言書を受け取る側は、遺言の種類、検認、財産調査、遺留分、登記期限、相続税期限を短期間で確認する必要があります。次の表では、相続開始後に何を見落としやすいかを整理しています。期限がある項目を優先して読むことが重要です。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 遺言書の種類 | 公正証書、自筆証書、法務局保管の有無を確認します。 |
| 検認の要否 | 自宅保管の自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要な場合があります。 |
| 相続人調査 | 戸籍を取得し相続人を確定します。 |
| 財産調査 | 不動産、預金、証券、保険、債務を確認します。 |
| 遺留分 | 自分又は他人の遺留分侵害を確認します。 |
| 登記期限 | 不動産取得を知った日から3年以内を意識します。 |
| 相続税期限 | 相続税申告と納税は原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内です。 |
| 争いの有無 | 遺言の有効性、遺留分、財産評価、債務を確認します。 |
| 専門家連携 | 登記は司法書士、税務は税理士など、分野ごとに確認します。 |
FAQは一般的な制度説明として整理しています。
一般的には、遺言書で相続分を指定したり、特定の財産を特定の相続人に取得させたり、相続人以外の人に遺贈したりすることで、法定相続分と異なる配分を実現できる場合があります。ただし、遺留分、方式、税務、登記、債務、第三者対抗要件によって結論や手続は変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、他の相続人が兄弟姉妹以外であれば、遺留分侵害額請求が問題になる可能性があります。遺言自体が当然に全部無効になるとは限りませんが、長男が金銭の支払を求められることがあります。具体的な見通しは、相続人構成、財産評価、贈与、債務などで変わります。
一般的には、兄弟姉妹には遺留分がないとされています。子や直系尊属がいない夫婦で配偶者に全財産を残したい場合、遺言書の有無が重要になる可能性があります。ただし、相続人の範囲や遺言の方式に問題がないかは個別に確認が必要です。
一般的には、遺言書の内容が全財産について明確で、遺言執行により手続できる場合には、遺産分割協議を省略できることがあります。ただし、遺言に記載されていない財産、解釈が不明な財産、受遺者の放棄、相続人全員の別合意、遺留分紛争がある場合には、協議や裁判所手続が必要になる可能性があります。
一般的には、相続人全員が合意すれば、遺言と異なる分け方が可能となる場合があります。ただし、相続人以外の受遺者、遺言執行者、税務、登記、未成年者や後見制度利用者の利益相反によって結論が変わる可能性があります。具体的な進め方は専門家への確認が必要です。
一般的には、単純な内容で費用を抑えたい場合は自筆証書遺言も選択肢になり得ます。一方で、法定相続分と大きく異なる配分、遺留分が問題になりそうな配分、不動産や会社株式がある配分では、公正証書遺言の方が無効リスクや紛失リスクを抑えやすいとされています。財産構成や家族関係で適切な方式は変わります。
一般的には、相続人間の内部的な負担割合を示すことはできますが、債権者に当然に対抗できるわけではありません。金融機関や債権者は、法定相続分に応じて各相続人に請求できる場合があります。債務がある相続では、債権者との関係、保証債務、担保権を含めて確認する必要があります。
一般的には、速やかな相続登記が重要とされています。2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内の申請が必要です。正当な理由なく申請しない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。具体的な期限や必要書類は不動産の状況によって確認が必要です。
一般的には、相続税の総額計算ではまず法定相続分を使って仮計算し、その後、実際に財産を取得した人の課税価格に応じて税額を割り振ります。遺言で取得割合を変えても、相続税計算で法定相続分が無関係になるわけではありません。具体的な税額や特例適用は税理士等へ確認する必要があります。
一般的には、遺言書の形式、作成時の遺言能力、財産内容、遺留分侵害の有無を分けて確認します。遺産分割の問題、遺留分の問題、遺言の有効性の問題で手続が異なるため、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
遺言は有力な手段ですが、遺留分・方式・税務・登記まで設計する必要があります。
法定相続分は遺言書で実質的に変えられます。指定相続分や遺産分割方法の指定は、原則として法定相続分より優先されます。しかし、法定相続分という法律上の基準そのものを消すことはできません。
最後に、法定相続分を遺言で変えるときに残る主な限界を一覧で確認します。この表は、実際に遺言を書く前後で見落としやすい論点をまとめたものです。左列の限界と右列の確認事項を対応させて、専門家に相談する前の整理に使えます。
| 限界 | 確認事項 |
|---|---|
| 法律上の基準 | 法定相続分そのものは民法上の基準として残ります。 |
| 遺留分 | 兄弟姉妹以外の相続人には金銭請求の余地があります。 |
| 方式と能力 | 方式不備や遺言能力の問題があれば、遺言無効が争われる可能性があります。 |
| 債務 | 債権者への対抗関係は、遺言だけで完全に変わるとは限りません。 |
| 税務 | 相続税の総額計算では法定相続分が引き続き使われます。 |
| 登記 | 不動産は相続登記と第三者対抗要件が重要です。 |
| 別合意 | 相続人全員の合意により遺言と異なる分割が可能な場合もありますが、受遺者、税務、登記、遺言執行者を確認します。 |
したがって、法定相続分と異なる配分を望む場合には、単に誰に多く渡すかを書くのでは不十分です。相続人調査、財産調査、遺留分試算、税務試算、不動産登記、債務確認、遺言執行者の指定、保管方法、紛争予防まで一体として設計する必要があります。
公的機関・法令・裁判所・税務情報を中心に整理しています。