不動産やローンを伴う負担付贈与では、受贈者の贈与税だけでなく、贈与者の譲渡所得税も同時に検討します。時価評価、負担額、相続対策まで一体で整理します。
不動産やローンを伴う負担付贈与では、受贈者の贈与税だけでなく、贈与者の譲渡所得税も同時に検討します。
受贈者と贈与者の課税関係を分けて見ると、判断の順番が整理できます。
負担付贈与とは、財産を受け取る人が一定の債務や義務を引き受けることを条件にした贈与です。住宅ローン残債の引受け、親の借入金の弁済、兄弟姉妹への代償金支払い、賃貸不動産の敷金返還債務の承継などが典型です。
負担付贈与で最も重要なのは、受贈者側の贈与税だけで終わらない点です。受贈者には財産価額から負担額を控除した純利益に贈与税が問題となり、贈与者には負担額を対価に財産を譲渡したものとして譲渡所得税が問題となることがあります。
次の重要ポイントは、負担付贈与でどの立場にどの税金が関係するかを表しています。最初にこの対応関係を押さえることが重要で、表の左右を見比べると、受贈者と贈与者で見る利益が違うことを読み取れます。
財産の通常の取引価額から、受贈者が実際に負担する債務や義務の額を控除した純利益が出発点になります。暦年課税、相続時精算課税、他の贈与との合算も確認します。
受贈者が債務を引き受けることで贈与者の債務が減る場合、負担額を対価に譲渡したものとして所得税が問題になります。取得費、所有期間、特例の可否が税額を左右します。
贈与税、譲渡所得税、相続税、遺留分、特別受益、不動産評価、登記、金融機関承諾を一体で検討します。節税だけでなく、家族間の公平と将来売却時の税額も見ます。
このページで扱う中心式は、贈与税側では「贈与財産の価額 - 負担額」、譲渡所得税側では「負担額 - 取得費等」です。同じ取引でも、誰のどの利益に課税されるかが異なるため、単純な意味での二重課税とは整理されません。
負担の内容が金銭債務か、第三者への給付か、非金銭義務かで税務上の検討点が変わります。
民法上の贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することで効力を生じる契約です。負担付贈与は、この贈与に受贈者側の債務引受け、弁済、給付、扶養・介護などの義務が付いたものです。
次の比較表は、負担付贈与でよく問題になる類型と税務上の見方を整理したものです。どの類型に当たるかは、負担額の立証や第三者の課税関係に直結するため重要で、右列から主な確認事項を読み取れます。
| 類型 | 典型例 | 税務上の主な検討点 |
|---|---|---|
| 借入金引受型 | 親が土地建物を子に贈与し、子が住宅ローン残債を引き受ける | 負担額、金融機関承諾、贈与者の譲渡所得 |
| 債務弁済型 | 子が親の借金を返済する代わりに土地を取得する | 弁済額が譲渡対価と見られるか |
| 第三者給付型 | 不動産を取得する子が、兄弟姉妹へ一定額を支払う | 受贈者、第三者、贈与者それぞれの課税関係 |
| 賃貸不動産承継型 | 賃貸アパートと敷金返還債務を承継する | 敷金返還債務の扱い、現金同時贈与の有無 |
| 扶養・介護義務型 | 財産をもらう代わりに扶養や介護を約束する | 負担の金銭評価、履行確実性、相続人間紛争 |
住宅ローン付き不動産の典型例では、親から子へ土地建物が移転し、子がローン残債を引き受けます。この判断の流れは、財産移転と債務負担が同時に動くことを示すため重要で、上から順に読むと贈与税と譲渡所得税が同時に生じる理由が分かります。
子は不動産を取得し、親は所有権を手放します。
金融機関の承諾や債務者変更の有無を確認します。
時価から負担額を差し引いた部分を検討します。
取得費を上回ると所得税が問題になります。
法律上は贈与であっても、税務上は負担部分に対価性があるものとして扱われる場合があります。この二面性が、負担付贈与で注意すべき贈与税と譲渡所得税の関係の核心です。
同じ取引から出発しても、受贈者と贈与者では課税される利益の性質が異なります。
負担付贈与を初めて検討すると、同じ取引について受贈者に贈与税がかかり、贈与者に譲渡所得税がかかるように見えます。しかし、課税される人と課税原因が異なるため、整理の仕方を分ける必要があります。
次の比較表は、贈与税と譲渡所得税がどの利益に着目するかを整理したものです。混同すると税額の見落としが起きやすいため重要で、納税者、基本計算、主なリスクの違いを横に見比べてください。
| 観点 | 贈与税 | 譲渡所得税 |
|---|---|---|
| 納税者 | 財産をもらった受贈者 | 財産をあげた贈与者 |
| 着目する利益 | 受贈者が無償または低額で得た純利益 | 贈与者が負担免除などで実現した譲渡益 |
| 基本計算 | 財産価額 - 負担額 | 負担額 - 取得費等 |
| 主なリスク | 時価評価、負担額の認定、他の贈与との合算 | 取得費不明、減価償却、長短区分、特例不適用 |
| 典型的な申告 | 贈与税申告 | 所得税の確定申告 |
たとえば、時価3,000万円の不動産を取得し、受贈者が2,700万円の債務を負担する場合、受贈者の純利益は300万円です。一方、贈与者は2,700万円の債務を免れる対価で不動産を譲渡したものと見られます。
負担額が大きいほど贈与税は小さく見えますが、贈与者側の譲渡所得税が大きくなることがあります。
ここでは計算を単純化し、譲渡費用、減価償却、各種特例、他の贈与、住民税以外の細かな調整などは個別に確認する前提で整理します。数値例は税負担の向きと大きさを把握するために重要で、受贈者側と贈与者側を分けて読みます。
| 例 | 前提 | 受贈者の贈与税側 | 贈与者の譲渡所得税側 |
|---|---|---|---|
| 例1 | 時価1,500万円、ローン残債1,000万円、取得費400万円、長期 | 1,500万円 - 1,000万円 = 500万円。基礎控除後390万円、特例税率15%・控除10万円で48万5,000円 | 1,000万円 - 400万円 = 600万円。所得税90万円、復興特別所得税1万8,900円、住民税30万円で合計121万8,900円 |
| 例2 | 時価1,500万円、負担額1,000万円、取得費1,200万円 | 時価から負担額を差し引いた500万円を基礎に検討 | 1,000万円 - 1,200万円 = △200万円。単純な譲渡益は出ないが、損失処理や親族間取引の評価は個別確認 |
| 例3 | 時価3,000万円、負担額2,700万円、取得費1,000万円、長期 | 3,000万円 - 2,700万円 = 300万円。基礎控除後190万円、税率10%で19万円 | 2,700万円 - 1,000万円 = 1,700万円。所得税255万円、復興特別所得税5万3,550円、住民税85万円で合計345万3,550円 |
次の重要ポイントは、数値例から読み取れる典型的な落とし穴をまとめたものです。贈与税の圧縮だけを見ると判断を誤りやすいため重要で、負担額が贈与者側の収入金額に近い役割を持つ点を読み取ってください。
負担額が大きいと受贈者の純利益は小さくなりますが、贈与者側ではその負担額を対価とする譲渡所得が大きくなることがあります。取得費が低い不動産ほど、全体税負担の逆転が起きやすくなります。
土地建物等の譲渡所得は、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかにより区分されます。税率差は譲渡所得税額に直結するため重要で、表では所得税、住民税、復興特別所得税の関係を確認します。
| 区分 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 |
|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 譲渡年1月1日時点で5年超 | 15% | 5% | 所得税額の2.1% |
| 短期譲渡所得 | 譲渡年1月1日時点で5年以下 | 30% | 9% | 所得税額の2.1% |
長期譲渡所得では、復興特別所得税を含めると所得税部分は15.315%、住民税5%と合わせて20.315%です。短期譲渡所得では所得税部分が30.63%、住民税9%と合わせて39.63%となり、所有期間の判定だけで負担が大きく変わります。
時価、負担額、暦年課税、相続時精算課税、相続開始前贈与加算を順に確認します。
贈与税側の出発点は、贈与財産の価額から受贈者が負担する債務・義務の額を差し引くことです。基本式は「贈与税の課税価格の基礎 = 贈与財産の価額 - 受贈者が負担する債務・義務の額」です。
次の比較表は、贈与税側で特に確認すべき制度と注意点を並べたものです。制度名だけで判断すると申告漏れが起きやすいため重要で、評価、合算、将来の相続税への影響を分けて読み取ってください。
| 論点 | 内容 | 負担付贈与での注意点 |
|---|---|---|
| 通常の取引価額 | 土地、借地権、家屋等では原則として時価を基礎にします | 路線価や固定資産税評価額だけで計算できるとは限りません |
| 負担額の認定 | 受贈者が実際に引き受けた債務や義務の額を確認します | 債務引受、弁済、第三者給付の証拠が必要です |
| 暦年課税 | 1年間の贈与を合算し、基礎控除110万円を差し引きます | 負担付贈与単体で110万円以下でも、他の贈与と合算します |
| 特例税率 | 一定の直系尊属から18歳以上の子や孫への贈与で検討します | 親から成年の子への負担付贈与では税率表の選択を確認します |
| 相続時精算課税 | 原則として60歳以上の父母・祖父母などから18歳以上の子・孫などへの贈与で検討します。2024年以後は年110万円の基礎控除、累計2,500万円の特別控除、超過部分への一律20%課税があります | 贈与者側の譲渡所得税を消す制度ではありません |
| 相続開始前贈与加算 | 2024年以後の暦年課税贈与は段階的に7年加算へ広がります | 高齢の親からの贈与では将来の相続税計算も確認します |
不動産が関係する場合は、通常の取引価額を支える資料の整備が重要です。次の一覧は時価立証に使われる資料の役割を示しており、複数資料を突き合わせる必要があることを読み取れます。
不動産鑑定士による鑑定評価は、税務調査や相続人間の説明で重要な客観資料になります。
近隣取引事例や複数の不動産会社の査定は、市場価値を把握するための補助資料になります。
公示価格、基準地価、固定資産税評価額、路線価は、時価の水準を確認する参考資料になります。
賃貸不動産では賃料、空室率、修繕履歴、敷金、借地借家関係なども評価に影響します。
相続時精算課税は贈与税と将来の相続税をつなぐ制度ですが、負担付贈与では所得税の検討が別に残ります。制度選択後は暦年課税へ戻れないため、贈与者ごとに長期的な承継計画を確認します。
贈与者が現金を受け取らなくても、債務の減少が経済的利益になることがあります。
負担付贈与では、受贈者が贈与者の債務を引き受けたり返済したりすることで、贈与者の債務が減少します。税務上はこの部分を対価として見て、負担額に相当する金額で財産を譲渡したものと扱うことがあります。
次の比較表は、譲渡所得税側で税額を左右する項目を整理したものです。贈与者側の負担を見落とさないために重要で、収入金額、取得費、所有期間、特例の可否を順に確認します。
| 確認項目 | 主な内容 | 負担付贈与での注意点 |
|---|---|---|
| 収入金額 | 典型的には受贈者の負担額 | 第三者給付型や扶養・介護義務型では評価が難しくなります |
| 取得費 | 購入代金、建築代金、手数料、設備費、改良費など | 建物は減価償却費相当額を控除します。古い不動産では資料探索が重要です |
| 概算取得費 | 取得費不明時に譲渡価額の5%を用いる場面があります | 負担額が譲渡価額になると取得費が小さくなり、譲渡所得が大きく出ることがあります |
| 所有期間 | 譲渡年1月1日時点で5年超かどうか | 長期と短期で税率差が大きく、取得日の確認が重要です |
| 居住用財産の3,000万円特別控除 | 一定の自宅売却で使えることがある特例 | 親子や夫婦など特別関係者間では適用が否定される可能性があります |
| 将来売却時の取得費 | 受贈者が後日売却するときの取得費・取得時期 | 負担付贈与は通常の贈与と同じ扱いでよいか、判例も踏まえて確認します |
取得費の資料は、贈与時点の税額だけでなく、受贈者が将来売却するときの税額にも影響します。次の時系列は、贈与前から将来売却までに確認する順番を表しており、早い段階で資料を集める必要があることを読み取れます。
購入契約書、領収書、建築請負契約書、登記簿、固定資産台帳、過去の相続税申告書などを確認します。
契約書、残高証明書、金融機関承諾、弁済資料をそろえ、収入金額に当たる部分を検討します。
長期・短期、減価償却、譲渡費用、親族間取引による特例制限を整理します。
売却、建替え、共有解消の予定がある場合、取得費や取得時期の扱いを事前に検討します。
時価との差額に着目する点は似ていますが、契約形式と課税処理が異なります。
低額譲渡とは、時価より著しく低い価額で財産を売買することです。負担付贈与と低額譲渡は、どちらも時価と対価・負担との差額が受け手の経済的利益になる点で似ています。
次の比較表は、負担付贈与と低額譲渡の違いを、法形式、受け手、渡す側、必要資料の観点から整理したものです。形式だけで選ぶと税務処理を誤りやすいため重要で、どの契約にどの資料が必要かを読み取ってください。
| 項目 | 負担付贈与 | 低額譲渡 |
|---|---|---|
| 法律形式 | 贈与契約に負担が付く | 売買契約 |
| 受け手の課税 | 財産価額 - 負担額に贈与税 | 時価 - 対価にみなし贈与課税 |
| 渡す側の課税 | 負担額を対価とする譲渡所得 | 売買代金を対価とする譲渡所得。著しく低額な場合は別途特則を検討 |
| 中心資料 | 贈与契約書、負担履行資料、債務引受資料 | 売買契約書、代金決済資料、時価資料 |
親族間で売買にするか負担付贈与にするかを検討する場合は、時価、資金移動、債務の実態、金融機関承諾、相続人間の公平、将来売却時の取得費、税務調査リスクを比較します。
金融機関、第三者、賃借人が関係すると、負担額の認定と課税関係が複雑になります。
「子がローンを払う」と「金融機関との関係で債務者が子になる」は別問題です。免責的債務引受では、債権者と引受人の契約、または債務者と引受人の契約に債権者が承諾することが重要になります。
次の判断の流れは、家族内の合意だけで負担額を決められないことを示しています。金融機関承諾の有無が税務上の負担額や登記に影響するため重要で、上から順に確認すると必要資料が見えます。
残高証明書、金銭消費貸借契約、担保設定状況を確認します。
免責的債務引受か、併存的債務引受か、担保変更が必要かを確認します。
契約書、登記、弁済資料を保存し、負担額を説明できるようにします。
親が債務者のまま残る場合、税務上の扱いが複雑になります。
親が長男に不動産を贈与し、長男が次男や長女へ一定額を支払う設計では、金銭を受け取る第三者にも贈与税が問題となる可能性があります。単なる兄弟間の調整金として処理すると、課税関係を見落とすおそれがあります。
次の一覧は、第三者給付型と賃貸不動産承継型で問題になる当事者別の確認点です。関係者が増えるほど課税対象が広がるため重要で、誰にどの利益が移るかを読み取ってください。
不動産の時価から負担額を控除した純利益を確認します。第三者への支払いが負担として認められるか資料化します。
代償金や給付を受ける兄弟姉妹などに、負担額相当の贈与があったものと見られる可能性があります。
債務減少や給付により経済的利益を得る場合、負担額を対価とする譲渡所得を確認します。
賃貸不動産では敷金返還債務、賃貸人の地位、現金同時贈与の有無を確認します。
賃貸アパートや賃貸マンションを贈与する場合、賃借人から預かっている敷金や保証金の返還債務が問題になります。敷金返還債務の承継を負担と見るのか、敷金相当額の現金を同時に贈与するのかで課税関係は変わります。
賃貸不動産では通常の取引価額の算定も難しくなります。収益還元法、取引事例比較法、原価法、賃料水準、空室率、修繕履歴、借地借家関係、建物老朽化、再建築制限、境界問題を総合して検討します。
節税策として単独で見るのではなく、他の承継手段と並べて検討します。
負担付贈与は、相続財産を生前に移転し、受贈者に債務も引き受けさせるため、相続税対策として検討されることがあります。しかし、不動産評価が時価基準になりやすいこと、贈与者に譲渡所得税が発生し得ること、金融機関承諾や遺留分問題が残ることから、単純な節税策として選ぶのは危険です。
次の比較表は、負担付贈与と比較される承継手段を整理したものです。最適な方法は家族構成、資産内容、債務、相続人間の関係で変わるため重要で、長所だけでなく注意点を同時に確認してください。
| 選択肢 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|
| 通常の生前贈与 | 法形式が単純で、取得費等の引継ぎを検討しやすい | 贈与税負担が大きくなり得る |
| 負担付贈与 | 債務付き財産を一体で移転できる | 贈与者の譲渡所得税、時価評価、債務引受が難しい |
| 適正価額による売買 | 対価関係が明確 | 資金準備、譲渡所得税、親族間時価立証が必要 |
| 遺言による承継 | 相続時まで所有権を移さない | 遺留分、相続税、相続登記、相続人間対立が残る |
| 代償分割 | 相続時に不動産取得者が他の相続人へ代償金を払う | 資金調達と評価争いが問題になりやすい |
| 家族信託 | 管理承継を先に設計できる | 税務効果は別途検討し、設計も複雑になります |
| 法人化・事業承継 | 賃貸事業や会社財産の承継に使える場合がある | 所得税、法人税、登録免許税、不動産取得税、評価が複雑です |
法務面では、他の相続人から特別受益、遺留分侵害額請求、不公平な財産移転、意思能力、負担不履行などを主張される可能性があります。税務上の評価と民事上の評価が常に一致するとは限らないため、契約条項と相続全体の整合性を確認します。
次の重要ポイントは、近年の相続税評価の見直し方向も踏まえた位置付けを示しています。貸付用不動産を使った評価差の設計に影響するため重要で、負担付贈与だけでなく相続税評価全体の動きも確認する必要があります。
令和8年度税制改正大綱では、一定の貸付用不動産について、課税時期前5年以内に取得または新築されたものを中心に、2027年1月1日以後の相続等で通常の取引価額により評価する方向が示されています。負担付贈与そのもののルールではありませんが、評価差を使う承継プラン全体に影響します。
2024年4月1日から相続登記の申請義務化も始まっています。負担付贈与は生前贈与による所有権移転登記ですが、前提となる相続未登記不動産が残っている場合、贈与登記の前に名義整理が必要になることがあります。
税務、法務、登記、不動産評価、金融機関対応を分けて準備します。
負担付贈与は、税理士だけ、弁護士だけ、司法書士だけで完結しにくい手続です。役割を分けて早めに連携することで、税額、契約、登記、金融機関承諾、相続人間の公平を同時に確認できます。
次の一覧は、専門家ごとの役割を整理したものです。誰に何を確認するかが曖昧だと手続が止まりやすいため重要で、各専門家の担当範囲を読み取ってください。
贈与税、所得税、相続税、不動産所得、消費税、税務調査リスクを整理します。時価資料、負担額、取得費、減価償却、相続時精算課税も確認します。
税額試算申告相続人間の紛争、遺留分、特別受益、契約の有効性、意思能力、履行確保、解除条項、金融機関や相続人との交渉を確認します。
契約紛争予防所有権移転登記、抵当権変更・抹消・設定登記、登記原因証明情報、本人確認、登記簿調査を担います。
登記名義変更不動産鑑定士、宅地建物取引士、不動産仲介業者は、通常の取引価額、売却可能性、近隣取引事例、重要事項を確認します。
時価資料整備境界、地積、更正登記、分筆、合筆、建物表題登記が問題になる場合に関与します。将来売却や共有解消の予定がある場合は特に重要です。
境界測量実行前の確認は、評価、負担額、贈与税、譲渡所得税、法務、登記・金融機関に分けると抜け漏れを防ぎやすくなります。次の比較表は確認項目を一覧化したもので、左列から順に潰していくと、契約前に集める資料と相談先が分かります。
| 分野 | 最低限の確認項目 |
|---|---|
| 財産評価 | 土地・借地権・家屋等か、通常の取引価額の資料、路線価・固定資産税評価額・鑑定評価・査定書の関係、賃貸不動産の収益性や敷金、建物の減価 |
| 負担額 | 金銭債務か非金銭義務か、残高証明書、金融機関承諾、免責的債務引受か併存的債務引受か、第三者への支払い、履行資料 |
| 贈与税 | 暦年課税か相続時精算課税か、他の贈与との合算、一般税率か特例税率か、基礎控除110万円、相続開始前贈与加算、申告期限 |
| 譲渡所得税 | 贈与者に譲渡所得が生じるか、負担額、取得費資料、減価償却、長期・短期、3,000万円特別控除などの特例、所得税申告期限 |
| 法務・相続紛争 | 意思能力、他の相続人への説明、遺留分、特別受益、負担不履行時の解除条項、公正証書、遺言・任意後見・家族信託との整合性 |
| 登記・金融機関 | 所有権移転登記、登録免許税、不動産取得税、抵当権変更・抹消・設定、金融機関審査、保証人、鑑定費用や専門家報酬 |
贈与税の申告と納税は、原則として贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。譲渡所得がある場合の所得税確定申告は、原則として譲渡した年の翌年2月16日から3月15日までに行います。
個別の結論は財産評価、負担額、契約内容、証拠関係で変わります。
一般的には、時価から負担額を差し引いた純利益がゼロであれば、受贈者側の贈与税の課税価格は生じにくいとされています。ただし、不動産の時価評価、負担額の認定、他の贈与との合算、債務引受の実態によって結論が変わる可能性があります。贈与者側では、負担額を対価とする譲渡所得税が別に問題となるため、具体的な対応は税理士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、土地、借地権、家屋等の負担付贈与では、通常の取引価額から負担額を控除する考え方が示されています。路線価は参考資料にはなりますが、そのまま計算基礎になるとは限りません。具体的な評価は、不動産の状況や資料によって変わるため、税理士や不動産評価の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、相続時精算課税は受贈者の贈与税と将来の相続税計算に関する制度とされています。負担付贈与により贈与者に譲渡所得が生じる場合、所得税の検討は別に必要です。制度選択後の取消しや将来の相続税への影響もあるため、具体的な対応は資料を整理したうえで税理士等へ相談する必要があります。
一般的には、居住用財産の3,000万円特別控除には、売手と買手が親子や夫婦など特別な関係でないことなどの要件があります。そのため、親族間の負担付贈与では適用が難しい可能性があります。ただし、要件該当性は個別事情で変わるため、実行前に税理士等へ確認する必要があります。
一般的には、家族間で返済を約束したことと、金融機関との関係で債務者が変更されることは別に考える必要があります。親が債務者のまま残る場合、税務上どの程度の負担額が認められるかは契約内容、弁済実態、債権者の承諾で変わる可能性があります。具体的には、債務資料を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。
一般的には、負担付贈与で第三者が負担額に相当する利益を受ける場合、その第三者にも贈与税が問題となる可能性があります。誰から誰へどの利益が移ったかは、契約内容、資金移動、相続人間の合意で変わります。具体的な課税関係は、税理士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、通常の贈与では取得費や取得時期の引継ぎが問題になりますが、負担付贈与では対価性があるため、同じ扱いでよいとは限りません。負担額、贈与者の取得費、譲渡益・譲渡損、将来売却時期によって判断が変わる可能性があります。具体的な見通しは税理士等へ相談する必要があります。
一般的には、介護や扶養の負担は金銭債務の引受けと異なり、客観的な金銭評価が難しいとされています。履行可能性、不履行時の扱い、相続人間の公平、遺留分紛争も問題になります。具体的な契約設計と税務評価は、弁護士や税理士等へ相談する必要があります。
一般的には、有利になる場合もあり得ますが、常に有利とは限りません。贈与税、譲渡所得税、相続税、不動産取得税、登録免許税、将来売却時の税金、遺留分紛争、債務引受の可否で結論が変わります。特に取得費が低い不動産では、贈与者側の譲渡所得税が大きくなりやすいため、専門家による試算が必要です。
一般的には、税額試算、時価資料の整備、契約内容と相続紛争リスクの確認、金融機関への相談、登記手続の確認、契約・債務引受・登記・申告の時系列整理という順番で検討されます。ただし、財産内容や家族関係によって必要な順序は変わるため、具体的な進行は専門家と確認する必要があります。
税額を下げる方法ではなく、財産・債務・税金・家族間の公平を同時に設計する方法として考えます。
負担付贈与で注意すべき贈与税と譲渡所得税の関係を一文でいえば、受贈者は「財産の時価から負担額を差し引いた純利益」に贈与税がかかり得る一方、贈与者は「負担額を対価に財産を譲渡した」と見られて譲渡所得税がかかり得る、ということです。
次の一覧は、実務上必ず確認する5つの視点をまとめたものです。結論を急ぐ前に全体を見渡すため重要で、財産価額、負担額、取得費、将来の相続・売却、専門家連携の順に確認してください。
土地建物等では通常の取引価額を基礎にします。路線価だけで安易に計算しないことが重要です。
受贈者が本当に負担したのか、債務者は変わったのか、第三者が利益を受けていないかを確認します。
取得費が低い不動産では、贈与者に大きな譲渡所得税が発生することがあります。
相続開始前贈与加算、遺留分、特別受益、受贈者の将来売却時の取得費を確認します。
税理士、弁護士、司法書士、不動産鑑定士、金融機関を早期に巻き込みます。
負担付贈与は、相続対策、不動産承継、債務整理、兄弟姉妹間の公平調整などに利用されることがあります。しかし、不動産の時価評価、贈与者の譲渡所得税、相続税、遺留分、特別受益、債務引受、登記、金融機関承諾が絡むため、受贈者の贈与税だけで判断するのは危険です。
税務・法務・登記に関する公的資料と主要根拠です。