2σ Guide

配偶者居住権の
税額比較シミュレーション

配偶者居住権を使う場合と使わない場合で、一次相続・二次相続・小規模宅地等の特例が相続税にどう影響するかを、具体的な金額で整理します。

1.5億円 モデル遺産総額
1,495万円 一次相続の税額総額
約423.7万円 試算2の合計税額差
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配偶者居住権の 税額比較シミュレーション

配偶者居住権を使う場合と使わない場合で、一次相続・二次相続・小規模宅地等の特例が相続税にどう影響するかを、具体的な金額で整理します。

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配偶者居住権の 税額比較シミュレーション
配偶者居住権を使う場合と使わない場合で、一次相続・二次相続・小規模宅地等の特例が相続税にどう影響するかを、具体的な金額で整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 配偶者居住権の 税額比較シミュレーション
  • 配偶者居住権を使う場合と使わない場合で、一次相続・二次相続・小規模宅地等の特例が相続税にどう影響するかを、具体的な金額で整理します。

POINT 1

  • 配偶者居住権の税額比較シミュレーションで最初に押さえる結論
  • 一次相続だけでなく、二次相続と土地評価減の使い方まで重ねて見ることが重要です。
  • 一次相続では税額が変わらないことがあります
  • 二次相続では自宅価値が外れる可能性があります
  • 小規模宅地等の特例で逆転することがあります

POINT 2

  • 配偶者居住権の制度目的と成立しにくい場面
  • 1. 相続開始時の居住を確認:配偶者が対象建物に住んでいたかを確認します。
  • 2. 建物の所有関係を確認:建物が被相続人の財産に属し、配偶者以外との共有に問題がないかを見ます。
  • 3. 設定根拠を整える:遺産分割、遺言、審判等で配偶者居住権を取得する根拠を作ります。
  • 4. 登記まで連動させる:第三者に対抗するため、所有権移転登記と配偶者居住権設定登記を整合させます。

POINT 3

  • 配偶者居住権の税務構造と相続税計算の基本手順
  • 1. 課税価格を合計:各相続人等が取得した財産の課税価格を合計します。
  • 2. 基礎控除を差し引く:3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数を差し引きます。
  • 3. 法定相続分で仮計算:法定相続分で取得したものとして、各人の仮の取得金額を出します。
  • 4. 相続税総額を計算:速算表を使って全体の税額を求めます。
  • 5. 取得割合と控除を適用:実際の取得割合で按分し、配偶者の税額軽減などを適用します。

POINT 4

  • 配偶者居住権の税額比較に使うモデルケース
  • 相続人、遺産総額、居住権評価の前提を固定して、計算の再現性を高めます。
  • 次の前提表は、家族構成、財産、配偶者居住権評価に使う基礎数値をまとめたものです。
  • 後続の比較表はすべてこの条件から計算しているため、法定相続人の数、基礎控除額、自宅評価額を読み取ってください。
  • 次の評価額表は、自宅7,000万円が配偶者側と子側にどう分かれるかを示しています。

POINT 5

  • 配偶者居住権の有無に共通する一次相続の相続税総額
  • まず全体の相続税総額を出し、その後に取得割合で按分します。
  • モデルケースの一次相続では、課税価格合計は1億5,000万円です。
  • 基礎控除額は法定相続人3人なので4,800万円となり、課税遺産総額は1億200万円です。
  • 次の計算表は、課税遺産総額1億200万円を法定相続分で仮に取得したものとして税額を出したものです。

POINT 6

  • 配偶者居住権の税額比較シミュレーション1 ― 配偶者が7,500万円を取得する場合
  • 法定相続分相当の取得では、一次相続の税額は同じでも二次相続で差が出ます。
  • 配偶者居住権を活用しない場合
  • 配偶者居住権を活用した場合
  • 二次相続まで含めた比較

POINT 7

  • 配偶者居住権の税額比較シミュレーション2 ― 配偶者が1億円を取得する場合
  • 生活資金確保を重視する設計でも、二次相続財産の違いが税額差につながります。
  • 配偶者居住権を活用しない場合
  • 配偶者居住権を活用した場合
  • 妻が自宅所有権7,000万円と預貯金3,000万円を取得し、子らが預貯金5,000万円を取得する設計です。

POINT 8

  • 配偶者居住権の税額比較で小規模宅地等の特例を考慮する理由
  • 二次相続の節税効果より、一次相続での土地評価減の失敗が重くなることがあります。
  • 配偶者が被相続人の居住用宅地等を取得する場合、取得者ごとの追加要件はありません。
  • 一方、子などが取得する場合は、同居継続、保有継続、いわゆる家なき子要件などの確認が必要です。
  • 子側の敷地所有権部分に特例が使えないと、二次相続対策の前に一次相続の子側負担が増える可能性を読み取る必要があります。

まとめ

  • 配偶者居住権の 税額比較シミュレーション
  • 配偶者居住権の税額比較シミュレーションで最初に押さえる結論:一次相続だけでなく、二次相続と土地評価減の使い方まで重ねて見ることが重要です。
  • 配偶者居住権の制度目的と成立しにくい場面:住まいを守る制度ですが、設定根拠、登記、共有関係を確認しないと実務上の問題が残ります。
  • 配偶者居住権の税務構造と相続税計算の基本手順:評価額は消えるのではなく、配偶者側と子側へ分解されます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

配偶者居住権の税額比較シミュレーションで最初に押さえる結論

一次相続だけでなく、二次相続と土地評価減の使い方まで重ねて見ることが重要です。

配偶者居住権は、亡くなった人の配偶者が相続開始時に住んでいた建物について、所有権を取得しなくても無償で使用および収益できる権利として設計された制度です。相続税の場面では、居住建物と敷地の価値を、配偶者が取得する居住権部分と、子などが取得する所有権部分に分けて評価します。

次の重要ポイント一覧は、このページ全体の結論を整理したものです。配偶者居住権がどの場面で税額に影響し、どの点を読み違えると危険かを先に把握することで、後続の計算表を理解しやすくなります。

Point 01

一次相続では税額が変わらないことがあります

配偶者居住権は自宅の価値を消す制度ではなく、建物と土地の価値を権利ごとに分ける制度です。同じ課税価格合計、同じ取得割合であれば、一次相続の納付税額が大きく変わらないことがあります。

Point 02

二次相続では自宅価値が外れる可能性があります

配偶者が自宅所有権を持たず、配偶者死亡により配偶者居住権が消滅する構造では、二次相続の課税財産から自宅所有権が外れる可能性があります。

Point 03

小規模宅地等の特例で逆転することがあります

子の同居要件や家なき子要件、将来売却、遺留分、登記、合意解除時の課税を無視して、節税になると決めつけるのは危険です。

次の強調表示は、モデル計算から読み取れる中心的な結果です。一次相続と二次相続を合計して見ると差額が出る一方、その差額は家族構成や特例適用で大きく変わる点を読み取る必要があります。

同じ遺産総額でも、二次相続まで含めると約347.4万円から約423.7万円の差が出る試算があります

この差は、配偶者居住権そのものが一次相続で評価額を消すからではなく、配偶者が自宅所有権を取得しないことで二次相続財産が変わるために生じます。

Section 01

配偶者居住権の制度目的と成立しにくい場面

住まいを守る制度ですが、設定根拠、登記、共有関係を確認しないと実務上の問題が残ります。

配偶者居住権とは、被相続人の配偶者が、被相続人の財産に属した建物に相続開始時に居住していた場合に、遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判等を通じて、その建物全部を無償で使用および収益できる権利です。ここでいう使用は住むことを中心とする利用を意味し、収益は一定の範囲で第三者に使わせることなどを含みます。

制度の狙いは、残された配偶者が自宅に住み続けながら、預貯金などの生活資金も確保しやすくすることにあります。従来型の遺産分割では、配偶者が自宅所有権を取得すると相続分の多くが不動産で埋まり、生活資金を十分に取得できないことがありました。

次の比較表は、配偶者居住権と配偶者短期居住権の違いをまとめたものです。税額比較で扱う権利を取り違えないことが重要で、右列を読むと、相続税評価の対象として検討する中心が配偶者居住権であることが分かります。

項目配偶者居住権配偶者短期居住権
目的終身または一定期間の居住保護と財産設計相続開始後の短期的な居住保護
設定方法遺産分割、遺贈、死因贈与、審判等一定の要件を満たす場合に短期的に保護
相続税評価財産価値を持ち、評価計算の対象になりますこのページの税額試算の対象外です
譲渡性譲渡できません短期居住保護が中心です

次の判断の流れは、配偶者居住権を検討する前提条件を順番に示しています。早い段階で確認するほど、税額試算だけ進めた後に法務や登記で行き詰まるリスクを下げられます。

配偶者居住権を検討する前提確認

相続開始時の居住を確認

配偶者が対象建物に住んでいたかを確認します。

建物の所有関係を確認

建物が被相続人の財産に属し、配偶者以外との共有に問題がないかを見ます。

設定根拠を整える

遺産分割、遺言、審判等で配偶者居住権を取得する根拠を作ります。

登記まで連動させる

第三者に対抗するため、所有権移転登記と配偶者居住権設定登記を整合させます。

次の注意点一覧は、配偶者居住権が成立しにくい、または慎重な確認が必要な場面をまとめたものです。該当項目がある場合は、税額だけでなく権利設定そのものの可否を読み取る必要があります。

第三者共有

被相続人が相続開始時に居住建物を配偶者以外の第三者と共有していた場合は、設定可否の確認が重要です。

居住実態なし

配偶者が相続開始時にその建物に住んでいない場合、制度利用が難しくなる可能性があります。

設定根拠不足

遺産分割、遺言、審判等の根拠が整っていないと、評価以前に権利設計が崩れます。

登記や担保の問題

未登記建物、抵当権、差押え、共有持分、借地権が絡む場合は、登記と権利調整が複雑になります。

Section 02

配偶者居住権の税務構造と相続税計算の基本手順

評価額は消えるのではなく、配偶者側と子側へ分解されます。

相続税の評価では、配偶者居住権を設定した場合、居住建物とその敷地は四つの財産価値に分解されます。一次相続では自宅の評価額がなくなるわけではなく、配偶者が取得する権利と子などが取得する負担付き所有権に分かれるだけです。

次の分類表は、自宅価値がどの権利に分かれ、典型的に誰が取得するかを示しています。配偶者側と子側の列を見比べると、一次相続では価値の置き場所が変わるだけという点を読み取れます。

区分取得者の典型例内容
配偶者居住権配偶者建物を無償で使用および収益する権利
居住建物の所有権部分子など配偶者居住権が付いた建物所有権
敷地利用権配偶者配偶者居住権に基づき敷地を使う権利
居住建物の敷地所有権部分子など敷地利用権が付いた土地所有権

次の計算式一覧は、建物と土地をどのように評価するかを実務向けに整理したものです。建物では耐用年数、経過年数、存続年数が重要で、土地では存続年数に応じた複利現価率が評価額に大きく影響する点を読み取ってください。

評価項目計算の考え方
配偶者居住権の価額居住建物の相続税評価額 - 居住建物の相続税評価額 × (耐用年数 - 経過年数 - 存続年数) / (耐用年数 - 経過年数) × 存続年数に応じた法定利率による複利現価率
居住建物の所有権部分居住建物の相続税評価額 - 配偶者居住権の価額
敷地利用権の価額居住建物の敷地の相続税評価額 - 居住建物の敷地の相続税評価額 × 存続年数に応じた法定利率による複利現価率
居住建物の敷地所有権部分居住建物の敷地の相続税評価額 - 敷地利用権の価額

次の判断の流れは、相続税の総額を出して各人へ按分するまでの順番を示しています。取得財産へ直接税率を掛ける方式ではないため、課税価格合計、法定相続分、取得割合、税額控除の順番を読み取ることが重要です。

相続税計算の基本手順

課税価格を合計

各相続人等が取得した財産の課税価格を合計します。

基礎控除を差し引く

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数を差し引きます。

法定相続分で仮計算

法定相続分で取得したものとして、各人の仮の取得金額を出します。

相続税総額を計算

速算表を使って全体の税額を求めます。

取得割合と控除を適用

実際の取得割合で按分し、配偶者の税額軽減などを適用します。

次の一覧は、配偶者の税額軽減が税額比較に与える意味をまとめています。一次相続の配偶者税額が0円になりやすい一方、配偶者に多く残すほど二次相続財産が増える可能性を読み取る必要があります。

Relief

1億6,000万円までの枠

配偶者が取得した正味の遺産額が1億6,000万円以下であれば、配偶者自身の相続税はかからない扱いになりやすい制度です。

Share

法定相続分相当額との比較

1億6,000万円と配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までが軽減対象になります。

Risk

二次相続の増加

配偶者が多く取得すると一次相続で子の税額は下がりやすい一方、二次相続税が増えることがあります。

Section 03

配偶者居住権の税額比較に使うモデルケース

相続人、遺産総額、居住権評価の前提を固定して、計算の再現性を高めます。

このページでは、読みやすさと再現性を優先し、端数処理、千円未満切捨て、税額の細かな円未満処理、葬式費用、債務、生命保険非課税枠、過去贈与、相続時精算課税、障害者控除、未成年者控除、相次相続控除、2割加算は考慮しません。

次の前提表は、家族構成、財産、配偶者居住権評価に使う基礎数値をまとめたものです。後続の比較表はすべてこの条件から計算しているため、法定相続人の数、基礎控除額、自宅評価額を読み取ってください。

分類項目前提
家族構成被相続人
家族構成相続人妻、子A、子B
家族構成法定相続人の数3人
家族構成法定相続分妻2分の1、子A4分の1、子B4分の1
家族構成基礎控除額4,800万円
相続財産自宅建物2,000万円
相続財産自宅敷地5,000万円
相続財産預貯金等8,000万円
相続財産合計1億5,000万円
評価前提建物の耐用年数33年
評価前提経過年数10年
評価前提存続年数12年
評価前提複利現価率0.701

次の評価額表は、自宅7,000万円が配偶者側と子側にどう分かれるかを示しています。合計欄を見ると、配偶者居住権を設定しても自宅全体の評価額は7,000万円のままで、配分だけが変わることを読み取れます。

評価項目金額
配偶者居住権13,294,783円
居住建物の所有権部分6,705,217円
敷地利用権14,950,000円
居住建物の敷地所有権部分35,050,000円
配偶者が取得する居住権等の合計28,244,783円
子が取得する負担付き所有権の合計41,755,217円
自宅全体の評価額70,000,000円
要点自宅7,000万円の評価額は、配偶者側2,824万4,783円と子側4,175万5,217円に分かれます。一次相続の課税価格合計は、配偶者居住権の有無だけでは減りません。
Section 04

配偶者居住権の有無に共通する一次相続の相続税総額

まず全体の相続税総額を出し、その後に取得割合で按分します。

モデルケースの一次相続では、課税価格合計は1億5,000万円です。基礎控除額は法定相続人3人なので4,800万円となり、課税遺産総額は1億200万円です。

計算式1億5,000万円 - 4,800万円 = 1億200万円

次の計算表は、課税遺産総額1億200万円を法定相続分で仮に取得したものとして税額を出したものです。各人の実際の取得財産ではなく、法定相続分を使って相続税総額を先に求める点を読み取ってください。

相続人法定相続分法定相続分に応ずる取得金額速算税額
2分の15,100万円830万円
子A4分の12,550万円332.5万円
子B4分の12,550万円332.5万円
合計1億200万円1,495万円

次の整理表は、一次相続の税額総額を実際の取得割合で按分する考え方を示しています。配偶者には税額軽減があるため、子側の納付税額が比較の中心になることを読み取れます。

項目金額または考え方
一次相続の相続税総額1,495万円
実際の各人の税額1,495万円を実際の取得割合で按分します
配偶者の税額軽減モデルケースでは配偶者取得財産が1億6,000万円以下のため、配偶者自身の納付税額は0円として扱います
Section 05

配偶者居住権の税額比較シミュレーション1 ― 配偶者が7,500万円を取得する場合

法定相続分相当の取得では、一次相続の税額は同じでも二次相続で差が出ます。

配偶者居住権を活用しない場合

妻が自宅所有権7,000万円と預貯金500万円を取得し、子Aと子Bが預貯金7,500万円を取得するケースです。妻の取得割合は50パーセント、子らの取得割合も50パーセントです。

次の取得内容表は、配偶者居住権を使わない場合に誰が何を取得するかを示しています。一次相続の課税価格合計が1億5,000万円のままで、妻と子らが半分ずつ取得する点を読み取ってください。

取得者取得内容課税価格
自宅所有権7,000万円、預貯金500万円7,500万円
子A、子B預貯金合計7,500万円7,500万円
合計1億5,000万円

次の税額表は、相続税総額1,495万円を取得割合で按分した結果です。妻には配偶者の税額軽減を適用するため、納付税額は子ら合計747.5万円になる点を読み取れます。

取得者按分前税額税額軽減後
747.5万円0円
子A、子B合計747.5万円747.5万円
一次相続の納付税額合計747.5万円

配偶者居住権を活用した場合

妻が配偶者居住権と敷地利用権2,824万4,783円、さらに預貯金4,675万5,217円を取得し、子Aと子Bが自宅の負担付き所有権4,175万5,217円と預貯金3,324万4,783円を取得するケースです。

次の取得内容表は、配偶者居住権を使った場合の価値配分を示しています。妻と子らの課税価格はどちらも7,500万円で、配偶者居住権を使わない場合と取得割合が同じになる点を読み取れます。

取得者取得内容課税価格
配偶者居住権等2,824万4,783円、預貯金4,675万5,217円7,500万円
子A、子B負担付き所有権4,175万5,217円、預貯金3,324万4,783円7,500万円
合計1億5,000万円

次の税額表は、配偶者居住権を使った場合の一次相続税額です。課税価格合計と取得割合が同じなので、一次相続の納付税額も同じになる点を読み取ってください。

取得者按分前税額税額軽減後
747.5万円0円
子A、子B合計747.5万円747.5万円
一次相続の納付税額合計747.5万円

二次相続まで含めた比較

妻の死亡時の二次相続では、妻が一次相続で取得した財産がそのまま残っているものとし、妻固有財産、生活費消費、財産増減は考慮しません。配偶者居住権を使わなかった場合は妻が自宅所有権7,000万円と預貯金500万円を持ち、使った場合は預貯金4,675万5,217円のみが残ると仮定します。

次の比較表は、一次相続と二次相続を合計した税額差を示しています。一次相続は同額でも、二次相続財産が変わるため、合計税額で約347.4万円の差が出る点を読み取れます。

比較項目活用しなかった場合活用した場合
一次相続の子の納付税額747.5万円747.5万円
二次相続財産7,500万円4,675万5,217円
二次相続税額395万円約47.6万円
一次と二次の税額合計1,142.5万円約795.1万円
差額約347.4万円有利
注意この効果は、妻がどれだけ預貯金を残すか、子が何人いるか、妻固有財産がどれだけあるか、小規模宅地等の特例が二次相続で使えるかによって変わります。
Section 06

配偶者居住権の税額比較シミュレーション2 ― 配偶者が1億円を取得する場合

生活資金確保を重視する設計でも、二次相続財産の違いが税額差につながります。

配偶者居住権を活用しない場合

妻が自宅所有権7,000万円と預貯金3,000万円を取得し、子らが預貯金5,000万円を取得する設計です。子らの取得割合は3分の1なので、一次相続税は約498.3万円です。

次の取得内容表は、配偶者が1億円を取得する場合の配分です。妻が自宅所有権を取得するため、二次相続では自宅7,000万円も妻の遺産に残る点を読み取ってください。

取得者取得内容課税価格
自宅所有権7,000万円、預貯金3,000万円1億円
子A、子B預貯金合計5,000万円5,000万円
合計1億5,000万円

次の税額表は、配偶者居住権を使わない場合の一次相続と二次相続の合計です。妻が合計1億円を残す仮定では、子二人の二次相続の基礎控除額4,200万円を差し引いた課税遺産総額が5,800万円になる点が重要です。

項目金額
一次相続の子の納付税額約498.3万円
二次相続税額770万円
一次と二次の税額合計約1,268.3万円

配偶者居住権を活用した場合

妻が配偶者居住権等2,824万4,783円と預貯金7,175万5,217円を取得し、子らが負担付き所有権4,175万5,217円と預貯金824万4,783円を取得する設計です。

次の取得内容表は、同じ1億円取得でも、自宅所有権を妻ではなく子側に置く場合の配分を示しています。妻の取得額は同じでも、二次相続財産に自宅所有権が入らない点を読み取ってください。

取得者取得内容課税価格
配偶者居住権等2,824万4,783円、預貯金7,175万5,217円1億円
子A、子B負担付き所有権4,175万5,217円、預貯金824万4,783円5,000万円
合計1億5,000万円

次の税額表は、配偶者居住権を使った場合の一次相続と二次相続の合計です。妻が所有権を持たないため自宅7,000万円が妻の相続財産に入らず、二次相続税が約346.3万円に下がる点を読み取れます。

項目金額
一次相続の子の納付税額約498.3万円
二次相続税額約346.3万円
一次と二次の税額合計約844.7万円

次の比較表は、シミュレーション2の結論を左右に並べたものです。一次相続の子の納付税額は同じでも、二次相続税額の差が合計税額を約423.7万円変える点を読み取ってください。

比較項目活用しなかった場合活用した場合
一次相続の子の納付税額約498.3万円約498.3万円
二次相続税額770万円約346.3万円
一次と二次の税額合計約1,268.3万円約844.7万円
差額約423.7万円有利
結論このケースの節税効果は、妻が所有権を取得しないことによる二次相続財産の圧縮効果です。配偶者居住権自体が一次相続で評価額を消すわけではありません。
Section 07

配偶者居住権の税額比較で小規模宅地等の特例を考慮する理由

二次相続の節税効果より、一次相続での土地評価減の失敗が重くなることがあります。

自宅敷地が特定居住用宅地等に該当する場合、一定要件のもとで330平方メートルまで80パーセント評価減を受けられることがあります。配偶者が被相続人の居住用宅地等を取得する場合、取得者ごとの追加要件はありません。一方、子などが取得する場合は、同居継続、保有継続、いわゆる家なき子要件などの確認が必要です。

次の比較表は、自宅敷地5,000万円に80パーセント評価減が全額適用された場合の評価額を示しています。土地評価が1,000万円になるため、配偶者が自宅所有権を取得して特例を全額使える場合は、一次相続で有利になる可能性がある点を読み取ってください。

項目特例前特例後
自宅建物2,000万円2,000万円
自宅敷地5,000万円1,000万円
自宅合計7,000万円3,000万円

次の評価表は、配偶者居住権を使った結果、妻の敷地利用権には特例が使える一方、子の敷地所有権部分には特例が使えない場合を示しています。土地全体で3,804万円が課税価格として残り、配偶者が土地全体を取得して特例を使う場合の1,000万円より2,804万円重くなる点を読み取ってください。

区分特例前特例後
妻の敷地利用権1,495万円299万円
子の敷地所有権部分3,505万円3,505万円
土地全体の課税価格5,000万円3,804万円

次の比較表は、妻が課税価格ベースで8,000万円相当を取得する簡略モデルで、特例の使い方による一次相続税の差を示しています。子側の敷地所有権部分に特例が使えないと、二次相続対策の前に一次相続の子側負担が増える可能性を読み取る必要があります。

比較項目配偶者が自宅所有権を取得し特例を全額使う場合配偶者居住権を使い、子の敷地所有権部分に特例が使えない場合
一次相続の課税価格合計1億1,000万円1億3,804万円
一次相続の相続税総額785万円約1,275.7万円
子側の一次相続税負担の概算約214.1万円約536.4万円
重要配偶者居住権を使う税額比較では、小規模宅地等の特例を別に検証する必要があります。配偶者が所有権を取れば土地全体に80パーセント減額が使える一方、子が負担付き所有権を取ると子側に特例が使えない事案では、一次相続での増税が二次相続での節税を上回る可能性があります。
Section 08

配偶者居住権の税額比較で有利・不利になりやすいケース

節税効果だけでなく、売却予定、家族関係、配偶者固有財産も判断材料になります。

次の一覧は、配偶者居住権が税務上も実務上も有利に働きやすい条件をまとめたものです。二次相続、生活資金、子の将来利用、特例要件のどれが自分の状況に近いかを読み取ってください。

Case 01

二次相続で自宅が残ると税負担が大きい

配偶者が自宅所有権を取得すると、配偶者死亡時にその自宅が二次相続財産になります。配偶者の税額軽減が使えない二次相続では差が出ることがあります。

Case 02

配偶者の生活資金を確保したい

自宅所有権を配偶者に渡すと取得分の多くが不動産になりやすいため、配偶者居住権で住まいと預貯金を分ける設計が役立つことがあります。

Case 03

子が将来自宅を使う予定がある

配偶者居住権付き不動産は売却しにくい一方、子が長期保有する予定なら制度と相性がよいことがあります。

Case 04

子側の特例要件を満たせる

子が敷地所有権部分を取得しても、同居継続要件や保有継続要件等を満たせるなら、一次相続の土地評価減も検討できます。

次のリスク一覧は、配偶者居住権が不利または危険になりやすい場面を整理したものです。左上から順に、税額の見落とし、特例不適用、売却困難、紛争、固有財産の順で確認してください。

一次相続だけの節税期待

同じ課税価格合計、同じ取得割合なら、一次相続税が変わらないことがあります。

小規模宅地等の特例不適用

子側が要件を満たせないと、土地の大部分が評価減されず、一次相続税が増える可能性があります。

将来売却や建替え予定

配偶者居住権は譲渡できず、消滅、対価精算、譲渡所得、贈与税などの論点が生じます。

相続人間の信頼関係が弱い

管理費、固定資産税、修繕費、増改築、火災保険、同居親族の扱いで対立が起きることがあります。

配偶者固有財産が多い

配偶者が多額の財産を持つ場合、預貯金を多く取得しすぎると二次相続税が増える可能性があります。

Section 09

配偶者居住権を検討する実務手順と専門家の役割

法務、税務、登記、生活資金を同時に確認すると、見落としを減らせます。

次の時系列は、配偶者居住権を検討するときの実務手順を示しています。上から下へ進むほど具体的な計算・登記・期限確認に入るため、前段階の相続人や財産の確認が後の税額比較の土台になる点を読み取ってください。

Step 01

相続人と相続分を確定する

戸籍を収集し、前婚の子、認知した子、養子、代襲相続人、相続放棄、欠格、廃除の有無を確認します。

Step 02

財産と債務を棚卸しする

自宅建物、土地、預貯金、有価証券、生命保険、退職金、借入金、未払税金、葬式費用などを整理します。

Step 03

成立要件を確認する

配偶者の居住実態、建物の所有関係、配偶者以外との共有の有無、遺産分割や遺言での設定可否を確認します。

Step 04

評価額を算定する

建物評価額、土地評価額、耐用年数、経過年数、存続年数、複利現価率を確認し、四つの権利価額に分けます。

Step 05

小規模宅地等の特例を検証する

配偶者側の敷地利用権、子側の敷地所有権部分について、それぞれ要件を確認します。

Step 06

一次相続と二次相続を試算する

配偶者が所有権を取得する案、配偶者居住権を取得する案、子が自宅を取得して代償金等を渡す案を比較します。

Step 07

登記と期限を確認する

相続登記は取得を知った日から原則3年以内、相続税申告と納税は死亡を知った日の翌日から原則10か月以内です。

次の専門家別一覧は、配偶者居住権の検討で誰がどの役割を担うかを整理したものです。税額だけで判断せず、紛争、税務申告、登記、市場性、生活資金のどの領域に課題があるかを読み取ってください。

弁護士

争いがある遺産分割、遺留分侵害額請求、使い込み疑い、調停、審判、将来売却や代償金の設計に関与します。

紛争遺留分

税理士

相続税申告、配偶者居住権の評価、小規模宅地等の特例、二次相続シミュレーション、税務調査対応を担います。

申告評価

司法書士

所有権移転登記、配偶者居住権設定登記、登記原因証明情報、遺産分割協議書の登記適合性を確認します。

登記対抗力

不動産の専門職

不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士が、時価、境界、分筆、地積更正、将来売却の市場性を確認します。

評価売却

ファイナンシャル・プランナー

配偶者の老後資金、介護費、保険、生活費、年金、施設入所費を含む資金計画を検討します。

生活資金介護費
Section 10

配偶者居住権の税額比較でよくある質問

回答は一般的な制度説明です。個別の税務・法律判断は資料により変わります。

Q1. 配偶者居住権を使えば、相続税は安くなりますか。

一般的には、一次相続だけを見ると自宅価値を配偶者居住権部分と所有権部分に分けるだけなので、税額が変わらないことがあります。二次相続まで含めると有利になる可能性がありますが、小規模宅地等の特例の適用可否、配偶者固有財産、預貯金の残り方によって結論は変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで税理士や弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 配偶者居住権は二次相続で課税されますか。

一般的には、配偶者の死亡により配偶者居住権が消滅する場合、配偶者居住権そのものが配偶者から子へ相続されるわけではないため、二次相続の課税財産に含まれないと整理されています。ただし、存続期間満了前の合意解除、放棄、所有者による消滅請求などでは贈与税や譲渡所得の論点が出る可能性があります。具体的な税務判断は専門家へ確認する必要があります。

Q3. 配偶者居住権を設定した不動産は売却できますか。

一般的には、所有者が不動産を売却すること自体が常に不可能とは限りません。ただし、配偶者居住権が登記されていると買主はその負担を受けるため、市場性は大きく低下しやすいです。配偶者居住権の消滅、対価精算、税務処理の内容によって結論が変わるため、具体的には弁護士、税理士、不動産の専門家へ確認する必要があります。

Q4. 配偶者居住権を設定するには遺言が必要ですか。

一般的には、遺言があると設計しやすい一方、遺産分割協議で取得することも可能です。争いがある場合は家庭裁判所の審判が関係することもあります。遺言の形式、相続人間の合意、遺留分、登記の内容によって結論が変わるため、具体的な設計は専門家へ確認する必要があります。

Q5. 配偶者居住権の存続期間はどう考えますか。

一般的には、配偶者居住権は終身とされますが、遺産分割、遺言、審判で別段の定めを置くことがあります。税務上は存続年数が評価額に直結し、期間が長いほど配偶者居住権と敷地利用権の評価額は大きくなり、所有権部分は小さくなります。生活状況、介護施設入所、売却予定、子の利用予定によって判断が変わるため、具体的な期間設定は専門家へ確認する必要があります。

Q6. 子が同居していない場合でも配偶者居住権は使えますか。

一般的には、子が同居していなくても配偶者居住権の設定自体はあり得ます。ただし、子が敷地所有権部分を取得する場合、小規模宅地等の特例が使えるかは別問題です。同居していない子が要件を満たせないと税務上不利になる可能性があるため、具体的には宅地の利用状況や保有予定を整理して専門家へ確認する必要があります。

Q7. 配偶者居住権は遺留分対策になりますか。

一般的には、配偶者居住権は遺留分を消す制度ではありません。配偶者居住権にも財産的価値があるため、遺留分計算や遺留分侵害額請求の検討対象になる可能性があります。相続人、財産評価、遺言内容、代償金の有無で結論が変わるため、具体的な見通しは弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

実務チェックリスト

次のチェックリストは、配偶者居住権を使う前に確認したい項目を分野別に整理したものです。法務、税務、登記、実務、紛争の列を順に見ると、税額試算だけでは足りない確認事項を読み取れます。

分野確認項目
法務配偶者が相続開始時に居住していたか
法務建物が被相続人の財産に属しているか
法務被相続人が配偶者以外と建物を共有していないか
法務遺言、遺産分割協議、審判で設定根拠を作れるか
税務建物評価額、土地評価額、耐用年数、経過年数、存続年数を確認したか
税務配偶者居住権、敷地利用権、所有権部分を分けて計算したか
税務配偶者の税額軽減を適用できるか
税務小規模宅地等の特例を誰のどの権利に使えるか
税務一次相続と二次相続の合計税額を比較したか
登記所有権移転登記と配偶者居住権設定登記の順序を確認したか
実務将来売却、建替え、施設入所、修繕費負担を想定したか
紛争遺留分、代償金、同居家族、介護貢献の不満を検討したか
Section 11

配偶者居住権の税額比較シミュレーションのまとめ

一次相続、二次相続、小規模宅地等の特例を三層で判断します。

配偶者居住権を活用した場合と活用しなかった場合の税額比較では、単純に節税になると見るのではなく、三つの層で判断する必要があります。

次の整理一覧は、最終判断で見落としやすい三つの層をまとめたものです。一次相続だけでなく、二次相続と特例・実務リスクを分けて読むことで、どこで税額差やリスクが生じるかを把握できます。

Layer 01

一次相続の相続税

配偶者居住権は価値を分割する制度であり、課税価格合計と取得割合が同じなら、一次相続の税額は変わらないことがあります。

Layer 02

二次相続の相続税

配偶者が自宅所有権を取得しない場合、配偶者死亡時に配偶者居住権が消滅し、自宅所有権が配偶者の遺産に入らないため、二次相続税が下がる可能性があります。

Layer 03

特例と実務リスク

配偶者が土地所有権を取得すれば大きな評価減を使えるのに、子が敷地所有権部分を取得すると要件を満たせない場合、配偶者居住権が不利になることがあります。

モデルケースでは、一次と二次の合計税額で約347.4万円から約423.7万円の差が生じました。ただし、将来売却、登記、遺留分、管理費、合意解除時課税、配偶者の生活資金、子の将来利用、相続人間の公平を一体で検討する必要があります。

最終整理配偶者居住権は、税額だけでなく、配偶者の生活保障、子の将来利用、登記可能性、二次相続、売却予定を一体で設計する制度です。実務では、弁護士、税理士、司法書士を中心に、必要に応じて不動産や生活資金の専門家の知見を組み合わせることが重要です。
Reference

この記事の参考情報源

税務・法務の公的資料

  • 国税庁 No.4666 配偶者居住権等の評価
  • 国税庁 No.4152 相続税の計算
  • 国税庁 No.4155 相続税の税率
  • 国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減
  • 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
  • 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
  • 国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
  • 国税庁 配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例について
  • 国税庁 税務大学校論叢 民法相続法改正に伴う相続税・贈与税の課税関係の考察
  • e-Gov法令検索 民法
  • 法務省 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について
  • 法務省 相続登記の申請義務化について
  • 法務省 令和8年4月1日以降の法定利率について