2σ Guide

ハラスメント防止規程の
実務設計

企業法務、労務、コンプライアンス、内部統制の視点から、禁止、相談、調査、是正、懲戒、個人情報管理、教育、監査までを一体で設計する考え方を整理します。

8機能 禁止から監査まで
2026/10/1 カスハラ等の義務化予定
5段階 成熟度モデル
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ハラスメント防止規程の 実務設計

単なる禁止宣言ではなく、相談、調査、是正、再発防止まで動く内部統制として設計します。

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ハラスメント防止規程の 実務設計
単なる禁止宣言ではなく、相談、調査、是正、再発防止まで動く内部統制として設計します。
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  • ハラスメント防止規程の 実務設計
  • 単なる禁止宣言ではなく、相談、調査、是正、再発防止まで動く内部統制として設計します。

POINT 1

  • ハラスメント防止規程の全体像
  • 単なる禁止宣言ではなく、相談、調査、是正、再発防止まで動く内部統制として設計します。
  • ハラスメント防止規程は、「ハラスメントをしてはならない」と掲げるだけの文書ではありません。
  • 最初に、ハラスメント防止規程が担う機能を一覧化します。
  • 左から機能、規程で定める内容、運用上の確認点を読み、自社で実際に動く仕組みになっているかを確認してください。

POINT 2

  • ハラスメント防止規程とは何か
  • 「規程」と「規定」を分け、就業規則、労働契約、内部統制との関係を押さえます。
  • 労務管理文書
  • 企業法務文書
  • 内部統制文書

POINT 3

  • ハラスメント防止規程が企業に必要な理由
  • 法令遵守
  • 方針、相談、事後対応、プライバシー、不利益取扱い禁止を社内で実行する中心文書になります。
  • 安全配慮義務
  • 相談を軽視し、調査や再発防止を怠ると、企業側の責任が問題となる可能性があります。

POINT 4

  • ハラスメント防止規程で押さえる法令上の基礎
  • パワハラ、セクハラ、妊娠・育児・介護、SOGI、カスハラ、採用、フリーランスを整理します。
  • 次の分類表は、ハラスメント防止規程で定義すべき主な類型を横断的に示すものです。
  • 読者にとって重要なのは、ひとつの類型だけを定めても、実際の相談は複数領域にまたがる点です。
  • 各行から、規程に定義、典型例、対応方針をどこまで入れるべきかを読み取ってください。

POINT 5

  • ハラスメント防止規程の対象範囲
  • 人的範囲、場所的範囲、時間的範囲を狭くしすぎないことが重要です。
  • 規程の対象者は、正社員だけに限定しないことが重要です。
  • 読者にとって重要なのは、「規程で扱う対象」と「会社が懲戒できる対象」は同じではない点です。
  • 各行から、従業員には懲戒、外部者には契約上の措置や警察相談など、手段が変わることを読み取ってください。

POINT 6

  • ハラスメント防止規程に入れる条項
  • 目的、定義、禁止行為、適正な業務指導、責務、相談、調査、懲戒、記録、見直しを設計します。
  • 目的条項は、規程全体の解釈基準になります。
  • 読者にとって重要なのは、条文名を並べるだけでは運用できない点です。
  • 各行から、条項の目的、必要な文言、運用時に確認すべき事項を読み取ってください。

POINT 7

  • ハラスメント防止規程の相談窓口と調査手順
  • 1. 相談受付:相談内容、希望、緊急性、共有範囲を確認します。
  • 2. 緊急性判断:暴力、脅迫、性的被害、自傷リスク、報復、証拠隠滅のおそれを確認します。
  • 3. 暫定的保護措置:接触回避、勤務調整、医療や産業医への接続、証拠保全を優先します。
  • 4. 調査計画:担当者、利益相反、聴取順、資料収集範囲を決めます。
  • 5. 聴取と資料収集:相談者、被申告者、関係者、客観資料を整理します。
  • 6. 事実認定と措置:合理的根拠に基づき判断し、必要な範囲で結果と措置を説明します。

POINT 8

  • ハラスメント防止規程の措置、懲戒、情報管理
  • 被害者保護、被申告者の手続保障、懲戒、再発防止、プライバシー、不利益取扱い禁止を接続します。
  • 相談者と被害申告者の保護
  • 被申告者の手続保障
  • 組織としての是正

まとめ

  • ハラスメント防止規程の 実務設計
  • ハラスメント防止規程の全体像:単なる禁止宣言ではなく、相談、調査、是正、再発防止まで動く内部統制として設計します。
  • ハラスメント防止規程とは何か:「規程」と「規定」を分け、就業規則、労働契約、内部統制との関係を押さえます。
  • ハラスメント防止規程が企業に必要な理由:法令遵守、安全配慮義務、組織文化、経営責任を同時に扱うテーマです。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

ハラスメント防止規程の全体像

単なる禁止宣言ではなく、相談、調査、是正、再発防止まで動く内部統制として設計します。

ハラスメント防止規程は、「ハラスメントをしてはならない」と掲げるだけの文書ではありません。企業に必要なのは、会社の方針、禁止行為、相談窓口、調査、証拠保全、被害者保護、被申告者の手続保障、懲戒、教育、記録、監査を一体化した仕組みです。

このページでは、企業経営者、法務、人事労務、コンプライアンス、内部監査、個人情報保護、危機管理、取締役会事務局、リーガルオペレーション担当が確認すべき実務論点を、一般情報として整理します。個別の事案では、事実関係、就業規則、雇用契約、労働協約、証拠、業種、従業員規模、過去の運用実績によって結論が変わるため、具体的な対応は弁護士、社会保険労務士等の専門家に相談する必要があります。

最初に、ハラスメント防止規程が担う機能を一覧化します。この一覧は、単なる条文名ではなく、読者が自社の規程に不足している機能を見つけるために重要です。左から機能、規程で定める内容、運用上の確認点を読み、自社で実際に動く仕組みになっているかを確認してください。

機能規程で定める内容運用上の確認点
基本方針人格の尊重、安全で健全な就業環境、公正な職場、法令遵守を明記する。経営層、管理職、従業員が同じ行動基準を理解しているか。
定義パワハラ、セクハラ、妊娠、育児、介護、SOGI、カスハラ、求職者対応を含める。典型例に限定されず、デジタル上の言動も含めているか。
相談窓口、相談方法、匿名相談、利益相反時の迂回経路を定める。誰に、どの方法で、どの範囲まで相談できるかが分かるか。
調査緊急性判断、暫定措置、聴取、証拠収集、事実認定を定める。迅速性と正確性の両方を確保しているか。
保護接触回避、勤務調整、メンタルヘルス支援、二次被害防止を定める。相談者側だけに不利益な異動や負担が集中していないか。
措置指導、研修、配置転換、役職解任、懲戒、契約上の措置を整理する。就業規則上の根拠、相当性、過去事例との均衡を検討しているか。
情報管理秘密保持、アクセス権限、保存期間、廃棄方法、外部提供を定める。機微な個人情報を必要最小限の範囲で扱っているか。
改善教育、周知、モニタリング、内部監査、定期見直しを定める。相談件数、処理期間、再発件数、研修受講率を見ているか。

2026年10月1日からは、カスタマーハラスメント防止措置と、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置が事業主の義務となる予定です。そのため、これからの規程は、従業員間だけでなく、顧客、取引先、就職活動中の学生、インターン、フリーランス、派遣労働者との接点まで視野に入れる必要があります。

重要規程の完成度は、条文の量ではなく、相談が届き、調査が進み、必要な措置と再発防止につながるかで決まります。
Section 01

ハラスメント防止規程とは何か

「規程」と「規定」を分け、就業規則、労働契約、内部統制との関係を押さえます。

企業実務では、「規程」と「規定」が混同されやすいものです。「規程」は、就業規則、ハラスメント防止規程、懲戒規程、内部通報規程、個人情報管理規程のような社内ルールのまとまりを指します。一方、「規定」は、規程や契約書の中に置かれる個々の条項を指します。

したがって、ハラスメント防止規程とは、ハラスメントの禁止、相談対応、調査、是正措置、懲戒、再発防止、教育、記録管理などを体系的に定めた社内ルールのまとまりです。就業規則の一部または付属規程として位置づけられる場合には、労働契約関係や懲戒処分の根拠にも影響します。

次の比較一覧は、ハラスメント防止規程が単なる社内文書にとどまらない理由を整理したものです。読者にとって重要なのは、どの法領域と接続するかを把握し、規程を人事部だけの文書に閉じないことです。各行から、労務管理、企業法務、内部統制、人的資本経営のどこに波及するかを読み取ってください。

RULE

労務管理文書

就業規則、服務規律、懲戒規程と接続し、従業員の行動基準、相談体制、懲戒の根拠を整理します。

LEGAL

企業法務文書

労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、個人情報保護法、民法上の安全配慮義務と関係します。

CONTROL

内部統制文書

相談窓口、調査、記録、経営報告、内部監査、再発防止を通じて、組織リスクの把握と改善につなげます。

懲戒処分の根拠として使う場合には、就業規則上の根拠、従業員への周知、処分の合理性、相当性が問題になります。規程に書いただけでは足りず、日常の周知、研修、相談対応、記録管理まで含めて整備する必要があります。

Section 02

ハラスメント防止規程が企業に必要な理由

法令遵守、安全配慮義務、組織文化、経営責任を同時に扱うテーマです。

職場のパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産、育児休業、介護休業等に関するハラスメントについて、事業主には雇用管理上必要な措置が求められています。厚生労働省は、方針の明確化、相談体制の整備、事案発生後の迅速かつ適切な対応、プライバシー保護、不利益取扱い禁止などを示しています。

ハラスメントを放置すると、メンタルヘルス不調、休職、退職、損害賠償請求、労働審判、訴訟、行政相談、報道、SNS拡散につながる可能性があります。企業は、労働契約上、労働者の生命、身体、心身の安全に配慮する義務を負います。

次の重要ポイントは、ハラスメント防止規程を整備する意義を4つの側面から整理したものです。読者にとって重要なのは、法令対応だけに見える課題が、人材確保や取締役会の監督にもつながる点です。各項目から、自社の弱い側面を読み取ってください。

法令遵守

方針、相談、事後対応、プライバシー、不利益取扱い禁止を社内で実行する中心文書になります。

安全配慮義務

相談を軽視し、調査や再発防止を怠ると、企業側の責任が問題となる可能性があります。

組織文化

心理的安全性が低い職場では問題提起が抑制され、不祥事の芽も見えにくくなります。

経営責任

役員関与、報復人事、調査妨害、窓口不全は、現場の人事問題を超えてガバナンス問題になります。

規程が適切に設計され、管理職教育、相談窓口、調査手順、記録管理、再発防止まで運用されていれば、企業はリスクを早期に把握し、被害拡大を防ぎやすくなります。逆に、規程だけが存在しても、窓口が信頼されず、記録も残らず、処理が属人的であれば、形骸化します。

Section 03

ハラスメント防止規程で押さえる法令上の基礎

パワハラ、セクハラ、妊娠・育児・介護、SOGI、カスハラ、採用、フリーランスを整理します。

パワーハラスメントは、一般に、優越的な関係を背景とした言動、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動、労働者の就業環境が害されることの3要素で整理されます。優越的な関係は、上司から部下だけでなく、専門知識、経験、人間関係、集団的影響力、情報へのアクセスなどによって生じることがあります。

次の分類表は、ハラスメント防止規程で定義すべき主な類型を横断的に示すものです。読者にとって重要なのは、ひとつの類型だけを定めても、実際の相談は複数領域にまたがる点です。各行から、規程に定義、典型例、対応方針をどこまで入れるべきかを読み取ってください。

類型規程で明確にする事項実務上の注意点
パワーハラスメント優越的関係、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動、就業環境悪化。適正な業務指導との区別を併せて定めます。
代表的な6類型身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害。限定列挙ではなく、デジタル上の言動も含めます。
セクシュアルハラスメント性的言動、対価型、環境型、同性間、性的指向、性自認に関する言動。性的な冗談、身体接触、性的画像表示、性的噂の流布も例示します。
妊娠、育児、介護制度利用や状態を理由とする嫌がらせ、不利益評価、退職や異動の強要。制度利用を個人の事情ではなく、法令上保護される利用として扱います。
SOGI、アウティング性的指向、性自認に関する侮辱、差別、排除、本人同意のない開示。本人の同意なく機微情報を第三者に共有しない管理が必要です。
カスタマーハラスメント顧客等からの社会通念上相当な範囲を超える言動による就業環境悪化。正当な苦情と、暴言、脅迫、長時間拘束、過大要求を区別します。
求職者等へのセクハラ採用面接、説明会、インターン、OB・OG訪問等における性的言動。採用担当者、面接官、リクルーター、役員まで対象を広げます。
フリーランス特定受託事業者に対するハラスメントの相談体制、契約、取引先管理。従業員向け規程だけでなく、委託契約書や行動規範と接続します。

法令や行政指針は、方針の明確化と周知、相談体制、事後対応、プライバシー保護、不利益取扱い禁止を重視しています。規程では、抽象定義だけでなく、具体例を示しながら「これらに限られない」と定めることが望ましいです。

2026年10月1日から予定されるカスタマーハラスメント防止措置と求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置は、社内の従業員間対応だけでは足りないことを示しています。採用、顧客対応、取引先管理、委託先管理まで含めた横断設計が必要です。

Section 04

ハラスメント防止規程の対象範囲

人的範囲、場所的範囲、時間的範囲を狭くしすぎないことが重要です。

規程の対象者は、正社員だけに限定しないことが重要です。契約社員、嘱託社員、パート、アルバイト、派遣労働者、役員、出向者、業務委託先、フリーランス、インターン、求職者、顧客、取引先、利用者まで、会社と関係する人の範囲を整理します。

次の比較表は、規程が対象とすべき人と、会社が取り得る対応を分けて示したものです。読者にとって重要なのは、「規程で扱う対象」と「会社が懲戒できる対象」は同じではない点です。各行から、従業員には懲戒、外部者には契約上の措置や警察相談など、手段が変わることを読み取ってください。

区分規程上の扱い主な対応手段
正社員、非正規社員直接の対象とする。指導、配置調整、懲戒、研修、フォローアップ。
派遣労働者派遣元、派遣先双方の責任を踏まえて対象に含める。派遣元との連携、派遣先責任者の対応、就業環境調整。
役員役員規程、役員服務規程、取締役会規則と接続する。監査役等への報告、外部調査、役職解任、会社法上の対応。
業務委託先、フリーランス契約、委託先規程、相談窓口で対応する。委託契約上の是正、解除、窓口案内、取引先管理。
インターン、求職者採用活動に関する行動基準を設ける。面談記録、相談窓口、採用担当者研修、委託先管理。
顧客、取引先、利用者直接懲戒はできないが、対応方針を定める。取引停止、入店拒否、警告、弁護士対応、警察相談。

場所的範囲では、会社の事業所だけでなく、出張先、顧客先、取引先、会食、懇親会、社員旅行、研修、採用イベント、オンライン会議、業務チャット、在宅勤務環境、社用端末上のコミュニケーションも、業務と関連する限り対象となり得ます。

時間的範囲では、勤務時間外であっても、業務上の上下関係、職場の人間関係、会社行事、取引関係、採用活動と関連する行為は対象となり得ます。一方、私生活上の完全に独立した紛争まで会社が無制限に介入するわけではありません。業務関連性、職場環境への影響、会社設備や社用アカウントの利用、被害拡大のおそれを踏まえて判断します。

Section 05

ハラスメント防止規程に入れる条項

目的、定義、禁止行為、適正な業務指導、責務、相談、調査、懲戒、記録、見直しを設計します。

目的条項は、規程全体の解釈基準になります。単に「ハラスメントを防止する」と書くのではなく、人格の尊重、安全で健全な就業環境、能力発揮、公正な職場、企業の社会的責任、法令遵守を明記します。

次の一覧は、ハラスメント防止規程に入れるべき条項を、設計意図と注意点に分けて整理したものです。読者にとって重要なのは、条文名を並べるだけでは運用できない点です。各行から、条項の目的、必要な文言、運用時に確認すべき事項を読み取ってください。

条項設計意図注意点
目的人格と尊厳、安全な就業環境、能力発揮、法令遵守を定める。規程全体の解釈基準になるため抽象的すぎないようにします。
基本方針会社がハラスメントを許容せず、相談を歓迎し、公正に調査することを定める。被害者保護と被申告者の手続保障を対立させない書き方にします。
定義類型ごとの要件と典型例を定める。読み手が専門家でないことを前提に具体例を併記します。
禁止行為暴行、侮辱、孤立化、過大要求、性的言動、調査妨害、報復等を禁じる。細かく限定しすぎず、「これらに限られない」と定めます。
適正な業務指導業務上必要かつ相当な指示、注意、評価は直ちにハラスメントにならないことを示す。人格否定、侮辱、威圧、社会通念上相当な範囲を超える方法は除外します。
責務会社、役員、管理職、従業員の役割を分ける。人事部だけの仕事にせず、管理職の初動責任を明確にします。
相談窓口相談方法、利用者、匿名相談、利益相反、初期対応、記録を定める。窓口が信頼されなければ規程全体が機能しません。
調査担当者、聴取、証拠、被申告者の弁明機会、事実認定を定める。迅速性と正確性、秘密保持と情報共有のバランスを取ります。
措置、懲戒被害者保護、就業環境調整、行為者への措置、懲戒の根拠を定める。処分は個別事情に応じ、合理性と相当性を検討します。
教育、記録、見直し研修、周知、保存期間、アクセス権限、定期改訂を定める。法改正、相談状況、内部監査結果を踏まえて更新します。

禁止行為には、暴行、人格否定、侮辱、脅迫、見せしめ的叱責、必要性のない長時間拘束、私的命令、達成不能な要求、過度に低い業務だけを与えること、情報遮断、性的な発言や接触、妊娠、育児、介護、病気、障害、性的指向、性自認に関する侮辱、本人同意のない機微情報の開示、報復、秘密漏えい、証拠隠滅、SNSやチャットを用いた誹謗中傷を含めます。

規程では、会社の責務として、方針の明確化、教育、相談体制、調査体制、是正措置、再発防止、記録管理、監査を定めます。管理職には、兆候の把握、相談を受けた場合の接続、報復や二次被害の防止を求めます。従業員には、人格尊重、相談または報告、調査への誠実な協力を求めます。

条文の軸条項は「禁止すること」だけでなく、「相談した人を守ること」「事実を公正に確認すること」「再発を防ぐこと」まで含めて設計します。
Section 06

ハラスメント防止規程の相談窓口と調査手順

窓口設計、匿名相談、利益相反、緊急性判断、証拠保全を一連の動きとして定めます。

相談窓口は、ハラスメント防止規程の中心です。窓口が信頼されなければ、被害申告も目撃情報も集まりません。窓口は、人事、法務、コンプライアンス、外部窓口、複数の担当者などを組み合わせ、被申告者が窓口担当者や上位者である場合の迂回経路も設けます。

次の比較表は、相談窓口条項に入れる事項を、実務で迷いやすい観点ごとに整理しています。読者にとって重要なのは、相談方法だけでなく、利益相反、初期対応、記録まで同時に設計することです。各行から、相談者が安心して情報を出せる状態かを読み取ってください。

項目実務上のポイント規程での書き方
窓口の種類人事、法務、コンプライアンス、外部窓口、複数の相談員を組み合わせる。相談先を複数示し、直属上司を経由しないルートを明記します。
利用者本人、目撃者、管理職、取引先、派遣労働者、求職者等を含める。被害申告だけでなく、目撃や相談も受け付けると定めます。
相談方法面談、電話、メール、フォーム、匿名または仮名相談の可否を定める。匿名相談の限界と、追加情報が必要となる場合を説明します。
初期対応安全確保、接触回避、証拠保全、秘密保持説明を行う。緊急時の連絡経路と暫定措置を定めます。
記録相談受付記録、対応履歴、調査方針を保存する。アクセス権限、保存期間、廃棄方法と接続します。

匿名相談は、初期の不安を下げる利点があります。一方、被申告者への具体的な聴取や是正措置には限界があります。匿名相談を理由に放置するのではなく、複数の相談が集まる場合や特定部署に同種の兆候がある場合には、職場アンケート、管理職ヒアリング、業務点検などで対応できます。

次の判断の流れは、相談受付から事実認定、措置、フォローアップまでの順番を示しています。読者にとって重要なのは、最初に安全確保と証拠保全を行い、その後に公正な調査へ進む点です。上から順に、どの段階で誰が何を決めるかを読み取ってください。

相談受付後の判断の流れ

相談受付

相談内容、希望、緊急性、共有範囲を確認します。

緊急性判断

暴力、脅迫、性的被害、自傷リスク、報復、証拠隠滅のおそれを確認します。

高い
暫定的保護措置

接触回避、勤務調整、医療や産業医への接続、証拠保全を優先します。

通常
調査計画

担当者、利益相反、聴取順、資料収集範囲を決めます。

聴取と資料収集

相談者、被申告者、関係者、客観資料を整理します。

事実認定と措置

合理的根拠に基づき判断し、必要な範囲で結果と措置を説明します。

証拠としては、メール、チャット、日報、勤怠記録、録音、録画、入退室記録、評価資料、業務指示書、SNS投稿、診断書、相談履歴、過去の同種事案が考えられます。ただし、私物端末、私的SNS、医療情報、性的指向や性自認に関する情報を扱う場合は、必要性、相当性、本人同意、アクセス権限、目的外利用の制限を慎重に検討します。

Section 07

ハラスメント防止規程の措置、懲戒、情報管理

被害者保護、被申告者の手続保障、懲戒、再発防止、プライバシー、不利益取扱い禁止を接続します。

被害者保護には、相談を聞くだけでなく、接触回避、座席変更、勤務場所や時間、担当業務の一時調整、休暇取得や産業医面談の案内、業務負担の軽減、メンタルヘルス支援、外部相談機関の案内、人事評価への不利益影響の排除、二次被害防止、定期フォローアップが含まれます。

次の比較一覧は、ハラスメント対応で同時に守るべき権利利益を整理したものです。読者にとって重要なのは、相談者保護、被申告者の手続保障、組織秩序の回復を同時に扱う点です。各項目から、片方だけに偏った運用になっていないかを読み取ってください。

CARE

相談者と被害申告者の保護

安全確保、接触回避、秘密保持、二次被害防止、評価への不利益影響の排除、定期フォローアップを行います。

FAIR

被申告者の手続保障

必要な範囲で申告内容を示し、説明または弁明の機会を確保します。事実未確認の段階で名誉信用を不必要に害しないよう配慮します。

FIX

組織としての是正

行為者への指導、研修、配置転換、役職解任、懲戒、制度見直し、管理職教育、職場アンケートを組み合わせます。

ハラスメントが認定された場合、会社は、注意、指導、研修受講、始末書、配置転換、職務変更、評価への反映、懲戒処分、役職解任、契約解除などの措置を検討します。懲戒処分を行う場合は、就業規則上の根拠、行為の内容、悪質性、反復性、被害の程度、過去の処分例、反省の有無、職場秩序への影響、手続の適正を検討します。

次の表は、情報管理と不利益取扱い禁止の確認事項をまとめています。読者にとって重要なのは、ハラスメント調査では氏名、評価、病歴、家庭状況、妊娠、出産、育児、介護、性的指向、性自認、通信履歴など、機微性の高い情報を扱う点です。列ごとに、どの情報を誰がどの範囲で扱うかを読み取ってください。

論点規程に入れる内容運用上のリスク
プライバシー保護相談、調査、対応に関する情報を必要最小限の関係者に限定する。噂の拡散、二次被害、名誉信用の侵害。
アクセス権限記録の閲覧者、保存場所、アクセスログ、保存期間、廃棄方法を定める。情報漏えい、目的外利用、無期限保存によるリスク。
外部提供外部窓口、弁護士、産業医、専門家への提供範囲を整理する。本人説明不足、第三者提供の管理不足。
不利益取扱い禁止相談、通報、被害申告、調査協力を理由とする解雇、降格、減給、不利益評価、配置転換等を禁じる。報復、萎縮、相談抑制。
虚偽申告認定されなかったことのみを理由に相談者を処分しない。ただし悪意ある虚偽申告は別に扱う。相談抑制と濫用防止のバランスを誤ること。

再発防止では、行為者を処分するだけでは足りない場合があります。関係部署への研修、管理職教育、業務量や人員配置の見直し、評価制度やノルマ設定の見直し、相談窓口の改善、職場アンケート、部署長への改善命令、定期モニタリング、経営層への報告、内部監査による検証を組み合わせます。

Section 08

ハラスメント防止規程のモデル骨子と条文例

総則、禁止行為、相談、調査、措置、教育監査の順で、使いやすい骨子を組みます。

実務では、会社の規模、業種、就業規則、労働協約、既存規程、組織体制、相談窓口、海外拠点、労働組合の有無に応じて修正できる骨子が必要です。以下の骨子は、独立した付属規程としても、就業規則の関連章と接続する文書としても使いやすい構成です。

次の構成一覧は、ハラスメント防止規程を章立てするときの標準的な順序を示しています。読者にとって重要なのは、禁止行為の前後に、相談、調査、措置、教育監査を置くことで、実際の運用につながる点です。左から章、主な項目、設計上の読み取りポイントを確認してください。

主な項目設計上の読み取りポイント
第1章 総則目的、基本方針、定義、適用範囲、責務。規程全体の価値判断と対象範囲を固めます。
第2章 禁止行為パワハラ、セクハラ、妊娠、育児、介護、SOGI、カスハラ、求職者対応、報復、調査妨害。典型例と「これらに限られない」構造を併用します。
第3章 相談、通報、初期対応相談窓口、匿名相談、緊急時対応、利益相反、記録、秘密保持。相談者が迷わない入口と初動を定めます。
第4章 調査調査開始、担当者、聴取、証拠収集、弁明機会、事実認定、外部専門家。迅速性、公正性、証拠性を確保します。
第5章 措置被害者保護、行為者への措置、懲戒、外部者対応、再発防止、フォローアップ。処分だけでなく就業環境の回復を含めます。
第6章 教育、監査、見直し研修、周知、相談状況分析、内部監査、経営報告、改廃。形骸化を防ぎ、法改正や社内事案を反映します。

条文例の考え方

目的条項では、「すべての就業者が人格と尊厳を尊重され、安全で健全な就業環境の下で能力を発揮できる職場を形成すること」を目的に置きます。基本方針では、会社がハラスメントを許容しないこと、相談者や調査協力者に不利益な取扱いをしないこと、被申告者にも公正な事実確認の機会を確保することを定めます。

パワーハラスメントの定義では、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超え、就業環境を害するものと定義します。優越的な関係には、職位上の上下関係だけでなく、知識、経験、人間関係、情報、雇用上の地位その他の事情により、相手方が抵抗または拒絶しにくい関係を含めます。

相談窓口条項では、相談者の意向を尊重しつつ、必要に応じて人事、法務、コンプライアンス、産業医、外部専門家と連携することを定めます。調査条項では、相談者、被申告者、関係者のプライバシーに配慮し、二次被害、報復、証拠隠滅、調査妨害の防止に努めることを明記します。

措置条項では、被害者保護、就業環境の調整、行為者への指導、研修、配置転換、役職解任、懲戒処分、契約上の措置、顧客または取引先への申入れ、警察または弁護士への相談、再発防止策を含めます。記録管理条項では、相談、通報、調査、措置、再発防止、フォローアップに関する記録を、必要な範囲で作成し、適切に保存することを定めます。

Section 09

ハラスメント防止規程と他規程の接続

就業規則、懲戒規程、内部通報規程、個人情報管理規程との整合性を確認します。

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。就業規則を変更する場合も同様で、労働者代表等からの意見聴取も必要となります。ハラスメント防止規程を就業規則の一部または付属規程として整備する場合、変更手続が必要となることがあります。

次の接続一覧は、ハラスメント防止規程が単独で完結しない理由を示しています。読者にとって重要なのは、相談、懲戒、情報管理、通報、休職復職などが別規程に分散しやすい点です。各行から、どの規程と文言や手続をそろえるべきかを読み取ってください。

接続先確認する事項不整合がある場合のリスク
就業規則服務規律、懲戒根拠、相談窓口、配置転換、休職復職、評価への影響。処分根拠や周知手続が不十分になる。
懲戒規程懲戒事由、処分種類、弁明機会、懲戒委員会、過去処分との均衡。処分無効リスク、重すぎる処分または軽すぎる処分。
内部通報規程公益通報、経営層や監査役へのエスカレーション、報復禁止。ハラスメント相談と法令違反通報の扱いが混線する。
個人情報管理規程アクセス権限、保存期間、委託先管理、クラウド利用、漏えい時対応。相談記録や医療情報の漏えい、目的外利用。
採用、顧客対応、委託先管理求職者対応、カスハラ対応、フリーランス相談体制、契約解除基準。従業員間以外の接点で対応漏れが起きる。

ハラスメント相談と内部通報は重なることがありますが、完全に同じではありません。ハラスメント相談は、被害申告、職場環境調整、メンタルヘルス支援、対人関係調整を含みます。一方、内部通報は、法令違反、規程違反、不正行為、会社損害などを通報する仕組みであり、公益通報者保護法とも関係します。

相談記録をクラウドサービスで管理する場合は、委託先管理、アクセスログ、保存場所、越境移転、情報漏えい時対応も確認します。個人情報保護法上、要配慮個人情報に該当する情報を扱う可能性があるため、取得、利用、保管、第三者提供について特に慎重な管理が必要です。

Section 10

ハラスメント防止規程の企業規模、業種別設計

中小企業、大企業、上場企業、医療、介護、教育、金融、ITで重点が変わります。

中小企業では、専任の法務部や人事部がない場合でも、ハラスメント防止規程は必要です。就業規則に基本条項を置き、付属規程としてハラスメント防止規程を作成し、社外の社会保険労務士または弁護士を相談先に含める設計が現実的です。経営者、役員、管理職向け研修を重点的に行い、社長や役員が被申告者となる場合の外部窓口も確保します。

次の比較一覧は、企業規模と業種ごとに、規程設計で重視すべきポイントを整理したものです。読者にとって重要なのは、同じひな形でも、組織構造や顧客接点によって不足しやすい条項が変わる点です。各行から、自社の重点リスクを読み取ってください。

区分重点設計注意点
中小企業外部窓口、経営者研修、直属上司を経由しない相談ルート。経営者自身の言動が職場文化に直結しやすい。
大企業、上場企業グループ共通方針、海外子会社、役員案件のエスカレーション、指標化、内部監査。相談件数、処理期間、再発件数、研修受講率を経営指標として扱う。
医療、介護、福祉患者、利用者、家族からのカスハラ、夜勤、少人数勤務、身体接触を伴う業務。現場担当者を孤立させない複数名対応と安全確保が必要。
教育、自治体関連教職員間、学生や保護者対応、研究室内の権力関係、アカデミックハラスメント。閉鎖的な人間関係と報復懸念に配慮する。
金融、保険、証券コンプライアンス、顧客保護、営業ノルマ、支店文化、内部通報連携。過度なノルマや評価制度が背景要因にならないか確認する。
IT、スタートアップチャット文化、リモートワーク、フリーランス、深夜対応、創業者権限。未整備の人事制度と強い創業者権限がリスクになりやすい。

大企業や上場企業では、規程だけでなく、グループ全体の内部統制として設計します。役員関与案件を監査役、監査等委員、社外取締役にエスカレーションし、内部通報制度や人的資本開示、サステナビリティ報告とも整合させます。

Section 11

ハラスメント防止規程に組み込むカスハラ、採用、フリーランス対応

2026年10月1日予定の義務化を見据え、外部接点のルールを具体化します。

カスタマーハラスメント対応で最も重要なのは、会社が従業員を孤立させないことです。正当な苦情には誠実に対応する一方、暴力、脅迫、暴言、差別、性的言動、長時間拘束、過度な要求、SNSでの晒し行為などには、組織として対応することを明記します。

次の対応基準は、顧客等からの著しい迷惑行為があった場合に、現場がどの段階で上長や法務に移すかを示しています。読者にとって重要なのは、現場担当者が一人で判断を抱え込まないことです。状況ごとに、最初の安全確保、記録、組織対応の順番を読み取ってください。

状況対応規程での位置づけ
暴力、脅迫、器物損壊直ちに安全確保、上長報告、警察相談を検討。緊急時対応と従業員保護の基準に入れます。
性的言動、身体接触対応者交代、記録、上長報告、出入り禁止等を検討。カスハラとセクハラの両面から扱います。
長時間拘束対応時間の上限を伝え、複数名対応、録音記録を検討。対応打切り基準を内部マニュアルと一致させます。
過大な金銭要求現場判断で応じず、法務または管理部門に移管。権限規程、苦情対応方針、取引条件と接続します。
SNS投稿による晒し証拠保存、法務相談、削除請求や警告を検討。証拠保全、情報管理、広報対応と接続します。
従業員個人への接触個人情報保護、連絡先遮断、会社窓口への一本化。従業員の安全確保と個人情報保護を明記します。

採用活動では、企業が求職者に強い影響力を持ちます。採用担当者、面接官、リクルーター、OB・OG訪問対応者、インターン受入部署、役員が不適切な言動を行えば、企業の信用を大きく損ないます。規程では、性的言動、採用可否と関係のない交際、恋愛、結婚、妊娠、出産、性的指向、性自認に関する質問、私的な食事や飲酒への誘導、個人SNSでの不必要な接触を禁止します。

フリーランスとの関係では、従業員向けの規程だけで閉じず、業務委託契約、委託先管理、ベンダー行動規範、相談窓口と接続させます。個人事業主、クリエイター、ITエンジニア、講師、配送、編集、デザイン、コンサルティングなど、継続的に協働する相手には、相談体制と契約上の是正手段を示すことが重要です。

注意カスハラ対策では、苦情を一律に排除しないことも重要です。正当な申出、合理的配慮を要する申出、消費者保護上対応すべき苦情と、社会通念上相当な範囲を超える言動を区別します。
Section 12

ハラスメント防止規程の調査実務とガバナンス

初動、聴取、事実認定、報告書、役員案件、外部専門家の使い分けを整理します。

相談直後には、緊急性の有無、相談者の安全確保、被申告者との接触回避、医療、産業医、EAPにつなぐ必要性、証拠保全、調査担当者、外部専門家の関与、経営層または監査役等への報告要否、個人情報のアクセス範囲、調査完了までの暫定措置を決めます。

次の時系列は、重大事案での調査実務を段階ごとに整理したものです。読者にとって重要なのは、初動で軽視すると後から修正しにくい点です。上から順に、どの段階で証拠、聴取、判断、説明、再発防止へ進むかを読み取ってください。

初動

安全確保と暫定措置

暴力、脅迫、性的被害、自傷リスク、休職、退職示唆、役員関与、報復、証拠隠滅のおそれを確認します。

計画

調査体制と利益相反の確認

被申告者の直属上司や親しい担当者が調査しないよう、担当者、外部専門家、報告ラインを決めます。

聴取

具体的事実と証拠の確認

日時、場所、発言、行為、目撃者、証拠、影響、希望する対応を確認し、誘導的な聴取を避けます。

判断

合理的根拠に基づく事実認定

供述の具体性、一貫性、客観資料、第三者供述、利害関係、同種行為、直後の相談記録を総合します。

完了後

措置、説明、再発防止

必要な範囲で結果と措置の概要を説明し、職場改善、研修、監査、フォローアップへつなげます。

調査報告書には、調査の目的、調査体制、対象期間、方法、聴取対象者、確認資料、認定事実、認定できなかった事実、評価、措置案、再発防止案、個人情報取扱い上の注意を含めます。相談者に全文を渡すことが常に適切とは限りませんが、認定結果、会社が講じた措置の概要、再発防止策、就業環境調整について必要な範囲で説明する運用が必要です。

次の専門家一覧は、ハラスメント調査で関与し得る外部・内部専門職の役割を整理しています。読者にとって重要なのは、法的評価、労務手続、内部統制、個人情報、メンタルヘルス、デジタル証拠を一人の担当者に背負わせないことです。各項目から、どの場面で誰と連携するかを読み取ってください。

1

弁護士

法的評価、調査設計、証拠評価、懲戒の相当性、労働審判や訴訟、役員関与案件、メディア対応を支援します。

重大事案独立性
2

社会保険労務士

就業規則、付属規程、労使手続、届出、労務管理、研修、管理職教育で重要です。

規程整備
3

内部監査担当

窓口運用、記録管理、処理期間、再発防止策、取締役会報告、グループ展開を検証します。

内部統制
4

個人情報保護、情報セキュリティ担当

アクセス権限、ログ、クラウド利用、外部委託、証拠データ保全、漏えい時対応を設計します。

情報管理
5

産業医、臨床心理士、EAP

メンタルヘルス、休職復職、職場復帰支援で関与します。医療情報は特に慎重に扱います。

健康管理
6

デジタルフォレンジック専門家

チャット、メール、端末、ログ、SNS、削除データが関係する場合に証拠性を保つ支援を行います。

証拠保全

役員や経営者が被申告者となる場合、通常の人事ルートでは機能しないことがあります。監査役、監査等委員、社外取締役、親会社、外部弁護士、外部通報窓口などへのエスカレーションルートを規程上に設けておく必要があります。

Section 13

ハラスメント防止規程の導入手順と失敗防止

現状把握、リスクマッピング、規程案、労使手続、研修、検証を順番に進めます。

導入時は、既存の就業規則、服務規律、懲戒規程、内部通報規程、個人情報管理規程、採用規程、顧客対応マニュアル、委託契約書を確認します。あわせて、過去の相談件数、退職理由、休職者数、労働時間、部署別離職率、エンゲージメント調査、ストレスチェック、内部監査結果、労働組合からの申入れを分析します。

次の手順図は、ハラスメント防止規程を導入して運用開始後に検証するまでの順番を示しています。読者にとって重要なのは、規程案の作成前に現状とリスクを把握し、制定後も相談件数や処理期間を見直す点です。上から順に、各段階で作る成果物と確認事項を読み取ってください。

導入から検証までの行動順序

現状把握

既存規程、相談件数、退職理由、休職者数、内部監査結果を確認します。

リスクマッピング

管理職指導、営業ノルマ、店舗、夜勤、会食、採用、顧客対応、委託先、リモートワークを洗い出します。

規程案の作成

人事だけでなく、法務、コンプライアンス、労務、内部監査、個人情報保護、情報システム、現場責任者の意見を反映します。

労使手続と届出

就業規則の一部または付属規程とする場合、意見聴取、届出、周知の要否を確認します。

周知、研修、検証

管理職、全社員、採用担当、顧客対応部門、窓口担当者へ研修し、相談経路と処理状況を継続的に確認します。

よくある失敗は、規程はあるが相談窓口が機能していないこと、定義が狭すぎること、調査の独立性がないこと、被害者保護が不十分なこと、処分が重すぎるまたは軽すぎること、カスタマーハラスメントを現場任せにすることです。

次の失敗防止一覧は、導入後に形骸化しやすいポイントを整理しています。読者にとって重要なのは、問題が起きてから都度判断するのではなく、事前に回避策を規程と運用へ入れておくことです。各行から、自社の運用で不足しやすい防止策を読み取ってください。

失敗例起きる問題防止策
窓口が機能していない誰に相談すればよいか分からず、相談後に噂が広がる。窓口を複数化し、担当者を教育し、相談後の流れを見える化します。
定義が狭すぎる同僚間、部下から上司、顧客、求職者、委託先の問題が漏れる。人的範囲、場所的範囲、デジタル上の言動、外部者との関係を広く設計します。
調査の独立性がない被申告者と近い担当者が調査し、信用性が損なわれる。利益相反排除条項を置き、外部専門家や監査機関を使えるようにします。
被害者保護が不十分接触継続、相談内容の漏えい、被害者側だけの異動、評価低下が起きる。暫定措置、不利益取扱い禁止、秘密保持、フォローアップを明記します。
カスハラを現場任せにする従業員の安全が損なわれ、録音や警察相談の判断を一人で背負う。エスカレーション基準、複数名対応、対応打切り基準、警察相談基準を整備します。
Section 14

ハラスメント防止規程の実務チェックリスト

規程、運用、記録、監査の抜け漏れを一覧で確認します。

ハラスメント防止規程は、制定時だけでなく、毎年の見直しや重大事案後の再点検で確認する必要があります。相談件数がゼロであることは、必ずしも良い状態を意味しません。相談しにくいだけかもしれないため、相談経路、処理期間、未解決案件、再発件数、研修受講率、退職理由をあわせて見ます。

次のチェックリストは、規程の有無だけでなく、実際に運用されるかを確認するためのものです。読者にとって重要なのは、「未整備の場合のリスク」を見ながら優先順位を付ける点です。各行から、すぐに改訂すべき項目を読み取ってください。

項目確認事項未整備の場合のリスク
基本方針ハラスメントを許容しない方針が明記されているか。会社の姿勢が不明確になる。
定義パワハラ、セクハラ、妊娠、育児、介護、SOGI、カスハラ、求職者対応を含むか。対象漏れが生じる。
適用範囲役員、非正規、派遣、委託、求職者、顧客を整理しているか。外部者や役員案件に対応できない。
相談窓口複数窓口、外部窓口、利益相反回避があるか。相談が上がらない。
匿名相談可否と限界を明記しているか。放置または過剰期待が生じる。
初期対応緊急性判断、接触回避、証拠保全があるか。被害拡大、証拠散逸が生じる。
調査担当者、聴取、証拠、弁明機会を定めているか。調査の信用性が損なわれる。
プライバシーアクセス権限、共有範囲、保存期間を定めているか。情報漏えい、二次被害が生じる。
懲戒就業規則と接続しているか。処分無効リスクがある。
再発防止研修、配置、制度見直しを定めているか。同種事案が繰り返される。
カスハラ顧客対応方針、エスカレーション基準があるか。現場が孤立する。
採用、フリーランス求職者等への防止措置、委託先相談ルートがあるか。採用ブランド、取引先トラブルが拡大する。
監査定期見直しと経営報告があるか。形骸化する。
Section 16

ハラスメント防止規程のFAQ

個別事案への断定を避け、一般的な制度説明として整理します。

Q1. ハラスメント防止規程は必ず独立文書で作る必要がありますか。

一般的には、必ず独立文書でなければならないわけではなく、就業規則、服務規律、懲戒規程、内部通報規程、相談窓口規程に分散して定めることも可能とされています。ただし、従業員が参照しやすく、窓口担当者が運用しやすいように、独立した規程または付属規程として整理することが望ましい場合があります。具体的な構成は、会社の規模、既存規程、届出要否、懲戒根拠によって変わるため、専門家に確認する必要があります。

Q2. 小規模企業でもハラスメント防止規程は必要ですか。

一般的には、企業規模にかかわらず、ハラスメント防止措置を整える必要があるとされています。就業規則の届出義務は常時10人以上の労働者を使用する場合に問題となりますが、相談しやすい体制や禁止方針は企業規模だけで不要になるものではありません。具体的な整備方法は、人数、組織体制、外部窓口の有無によって変わるため、社会保険労務士や弁護士等に相談する必要があります。

Q3. 業務指導とパワーハラスメントの境界はどこですか。

一般的には、業務上の必要性、目的の正当性、手段の相当性、表現、頻度、場所、相手への影響によって判断されるとされています。ミスを指摘し改善を求めること自体は必要な業務指導になり得ますが、人格否定、侮辱、長時間拘束、見せしめ、達成不能な要求、私生活への過度な干渉は問題となる可能性があります。具体的な評価は事実関係や証拠によって変わるため、専門家に相談する必要があります。

Q4. 相談者が匿名を希望した場合、会社は調査できますか。

一般的には、匿名性を尊重しながら可能な範囲で対応することが考えられます。ただし、匿名のままでは被申告者への具体的な聴取や措置に限界があります。会社は、追加情報の提供を求めたり、職場全体の状況調査を行ったりすることがあります。具体的な調査方法は、緊急性、証拠、職場環境への影響によって変わります。

Q5. 調査結果を相談者にすべて開示すべきですか。

一般的には、常に全文開示すべきとは限らないとされています。被申告者や第三者の個人情報、会社の人事情報、証拠情報が含まれるためです。一方、相談者に何も説明しない運用も不信感につながる可能性があります。認定結果、講じた措置の概要、再発防止策、相談者に関係する就業環境調整について、必要な範囲で説明する方法を検討する必要があります。

Q6. ハラスメントが認定できなかった場合、何もしなくてよいですか。

一般的には、ハラスメントとまでは認定できない場合でも、コミュニケーション不全、管理職の指導方法、業務量、評価制度、職場文化に問題が残る可能性があります。必要に応じて、研修、配置調整、職場改善、管理職指導、モニタリングを検討することがあります。具体的な対応は、調査で確認された事実と職場への影響によって変わります。

Q7. 顧客からの暴言は、会社が対応すべき問題ですか。

一般的には、顧客対応は業務の一部であり、顧客からの著しい迷惑行為によって従業員の就業環境が害される場合、会社は従業員保護の観点から対応を検討する必要があります。ただし、正当な苦情対応と、暴力、脅迫、侮辱、過大要求への対応は区別されます。具体的な対応は、言動の内容、緊急性、証拠、業種、顧客との契約関係によって変わります。

Q8. 求職者への不適切発言も社内規程で扱うべきですか。

一般的には、採用活動は会社の業務であり、採用担当者、面接官、リクルーター、OB・OG訪問対応者の言動は会社の信用に影響するとされています。求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置が事業主の義務となる予定であることも踏まえ、規程と採用マニュアルに明記することが望ましい場合があります。具体的な設計は採用方法や委託先の有無によって変わります。

Q9. 役員によるハラスメントは、通常の人事部で処理できますか。

一般的には、役員が被申告者である場合、調査の独立性に疑義が生じやすいとされています。監査役、監査等委員、社外取締役、外部弁護士、親会社窓口、第三者委員会などの関与を検討することがあります。具体的な調査体制は、会社の機関設計、被申告者の地位、事案の重大性、証拠関係によって変わります。

Q10. 研修は年1回で十分ですか。

一般的には、年1回の研修は出発点にすぎないとされています。新任管理職研修、採用担当研修、顧客対応研修、窓口担当研修、重大事案後の再発防止研修、eラーニング、ケーススタディを組み合わせることが望ましい場合があります。具体的な頻度と内容は、相談状況、業種、従業員規模、リスクの高い接点によって調整する必要があります。

Section 17

ハラスメント防止規程の成熟度モデルと内部監査

規程が存在するだけの状態から、組織文化に統合された状態まで段階的に確認します。

企業は、自社の成熟度を5段階で確認できます。多くの企業は、規程はあるが形式的なレベル2、または基本運用があるレベル3で止まりやすいものです。レベル4以上に進むには、相談件数や処理件数を単なる人事データではなく、組織リスクの指標として扱う必要があります。

次の成熟度一覧は、規程の有無から内部統制、組織文化への統合までの段階を示しています。読者にとって重要なのは、自社がどの段階にいるかを把握し、次の段階へ進むための課題を見つけることです。レベル、状態、典型的な課題の列を順に見てください。

段階状態典型的な課題
レベル1規程がない。相談が属人的で、処分根拠も不明確。
レベル2規程はあるが形式的。相談窓口、調査手順、記録管理が弱い。
レベル3基本運用がある。事案ごとのばらつき、管理職教育不足が残る。
レベル4内部統制として運用。指標、監査、経営報告、再発防止が機能している。
レベル5組織文化に統合。心理的安全性、透明性、継続改善が定着している。

内部監査では、規程の有無だけでなく、実際の相談記録、研修記録、是正措置、フォローアップまで確認します。特に、相談窓口の周知、窓口担当者の研修、処理期間、利益相反確認、被害者保護措置、被申告者の弁明機会、懲戒処分の判断理由、再発防止策、報復の有無、顧客からの著しい迷惑行為への対応記録、採用活動における行動基準、フリーランスや委託先の相談ルート、経営層または監査機関への報告が重要です。

次の強調表示は、成熟度を引き上げるうえで最も重要な考え方をまとめたものです。読者にとって重要なのは、相談件数が増えることを単純な悪化と見ず、相談しやすさや早期発見の指標としても扱う点です。ここから、数値を使って組織改善につなげる視点を読み取ってください。

相談件数ゼロは安全の証明ではない

相談件数、相談経路、処理期間、未解決案件、再発件数、研修受講率、退職理由を組み合わせて、職場の声が上がる仕組みになっているかを確認します。

Guide

ハラスメント防止規程で次に確認したいこと

目的に近い詳しい解説へ進めるよう、関連するテーマを整理しました。

知りたい内容を選ぶと、手続、費用、地域、具体的な論点などの詳しい解説に進めます。

このテーマから次に確認されやすい詳しい解説を8件表示しています。

Reference

参考資料

制度や実務運用の確認に用いた公的資料、法令、ガイドラインです。

公的資料、法令、ガイドライン

  • 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
  • 厚生労働省「あかるい職場応援団 ハラスメントに関する法律とハラスメント防止のために講ずべき措置」
  • 厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査報告書 概要版」
  • 厚生労働省「職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等の指針」
  • 厚生労働省「職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等の指針」
  • 厚生労働省「モデル就業規則」
  • 厚生労働省「令和7年改正労働施策総合推進法等について」
  • 厚生労働省「あかるい職場応援団 フリーランスに対するハラスメント防止について」
  • 厚生労働省「労働契約法」
  • 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」
  • 政府広報オンライン「職場でのハラスメントにお悩みの方へ」