相続で非上場株式が含まれる場合に、評価方式の入口、会社規模判定、計算方式、民事上の評価との違いを体系的に確認するための解説です。
相続で非上場株式が含まれる場合に、評価方式の入口、会社規模判定、計算方式、民事上の評価との違いを体系的に確認するための解説です。
類似業種比準方式と純資産価額方式の前に、株主区分、会社規模、特定評価会社を順に確認します。
このページは、2026年5月16日時点で確認できる公的情報を基礎にしています。一般的な解説であり、個別案件の税務申告、法律判断、鑑定意見を代替するものではありません。実際の評価では、課税時期、株主構成、議決権割合、会社規模、資産内容、会計資料、過年度取引、同族関係者の範囲などを精査する必要があります。
次の判断の流れは、非上場株式評価で確認する順序を示したものです。市場価格がない株式では、いきなり計算式に入ると評価方式を誤るため重要です。上から順に、株式の種類、株主区分、特定評価会社、会社規模、評価方式、税務・民事への影響を読み取ってください。
上場株式、気配相場等のある株式、取引相場のない株式を分けます。
同族株主等か、一定の少数株主かで評価方式の入口が変わります。
株式等保有、土地保有、開業後3年未満などに該当しないかを見ます。
総資産価額、従業員数、取引金額、業種区分から大会社、中会社、小会社を判定します。
大会社は類似業種比準方式、中会社は併用方式、小会社は純資産価額方式を中心に検討します。
次の注意点一覧は、相続で非上場株式が問題になりやすい理由を整理したものです。評価額が税額、遺産分割、遺留分、経営権に同時に影響するため重要です。各項目から、どの資料と専門家連携が必要になるかを読み取ってください。
会社の資産、収益、配当、業種、株主構成、経営権の有無から価値を推定します。
相続税評価は重要な出発点ですが、遺産分割や遺留分の最終価格とは限りません。
決算書、申告書、株主名簿、定款、不動産資料、借入金資料などを集めます。
同族関係者、名義株、役員、同族会社の範囲により評価方式が変わります。
株式は現金化しにくく、代償金、遺留分、会社支配権の調整が必要になります。
非上場株式の評価方法を理解するうえで最初に押さえるべき点は、評価は単なる会計上の株価算定ではなく、相続税法上の「時価」を具体化するための実務的ルールに沿って行われるという点です。相続税法は、相続、遺贈、贈与により取得した財産の価額について、原則として取得時の時価によるものとする考え方を採っている。もっとも、非上場株式には市場価格がないため、国税庁の財産評価基本通達や評価明細書の体系に従い、取引相場のない株式として評価するのが相続税実務の中心です。
国税庁の解説では、取引相場のない株式は、取得者が同族株主等に該当するか、それ以外の株主に該当するかによって、原則的評価方式または配当還元方式に分かれる。さらに原則的評価方式の内部では、会社規模に応じて、大会社は類似業種比準方式を中心に、小会社は純資産価額方式を中心に、中会社は両方式の併用により評価する構造が示されている。
このページの主題です「非上場株式の評価方法 ― 類似業種比準方式と純資産価額方式の使い分け」は、相続税評価だけでなく、遺産分割交渉、遺留分侵害額請求、後継者への株式承継、少数株主対策、同族会社の経営権争いにも直結する。評価額が数千万円単位で変動することも珍しくないため、早い段階で評価方式の入り口を誤らないことが重要です。
相続で非上場株式が問題になりやすい理由は、主に五つある。
第一に、市場価格がない。上場株式であれば、証券取引所の終値や一定期間の平均値を基礎に評価できる。しかし、非上場株式は日々売買されておらず、会社の資産、収益、配当、業種、株主構成、経営権の有無を総合して価値を推定しなければなりません。
第二に、税務上の評価と民事上の評価が一致するとは限らない。相続税申告では財産評価基本通達に従った評価が中心になるが、遺産分割や遺留分の場面では、民法上の公平、具体的な換価可能性、経営支配権、会社の将来性、当事者の交渉経緯などが問題になります。税務上の評価額は重要な出発点ですが、常に民事紛争の最終価格になるわけではありません。
第三に、会社の内部資料が必要になります。評価には、決算書、法人税申告書、勘定科目内訳明細書、株主名簿、定款、登記簿、議事録、固定資産台帳、不動産資料、有価証券明細、借入金資料、役員貸付金や役員借入金の資料などが必要です。後継者側が会社資料を持っている一方、他の相続人が資料にアクセスできません場合、評価以前に情報開示をめぐる対立が生じる。
第四に、同族関係者の範囲と議決権割合が複雑です。親族、同族会社、役員、持株会、名義株の有無により、同族株主等に該当するか、少数株主として配当還元方式の対象になるかが変わる。
第五に、納税資金と経営権が衝突する。株式の評価額が高ければ相続税負担は増えるが、会社株式は現金化しにくい。後継者が会社を維持したい場合、株式を売却して納税資金を作ることができませんことが多い。結果として、相続税、代償金、遺留分、会社支配権が一体の問題になります。
取引相場のない株式、課税時期、同族株主等、原則的評価方式、配当還元方式を確認します。
次の一覧は、非上場株式評価で混同しやすい用語を役割ごとに整理したものです。用語の意味を取り違えると、配当還元方式、類似業種比準方式、純資産価額方式の入口を誤るため重要です。各項目から、どの用語が株主区分に関係し、どの用語が計算方式に関係するかを読み取ってください。
上場株式や気配相場等のある株式に該当しない株式で、中小企業や同族会社が典型です。
相続では通常、被相続人の死亡時を基準に財産価額を判定します。
経営支配力を持つ株主グループに属するかどうかが、原則的評価方式との分岐点になります。
会社規模に応じて、類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式で評価します。
非上場株式とは、証券取引所に上場されていない会社の株式をいう。相続税評価の文脈では、上場株式、気配相場等のある株式に該当しない株式を「取引相場のない株式」として扱う。中小企業、同族会社、資産管理会社、医療法人の出資、持株会社などが典型です。
課税時期とは、相続税評価で財産価額を判定する基準時点です。相続の場合は通常、被相続人の死亡時が基準になる。死亡後に会社の業績が急変しても、原則として評価は課税時期の状態を基礎に行う。ただし、決算資料や直前期末数値、課税時期現在の資産負債の補正が必要になることがあります。
同族株主等とは、会社の経営支配力を有する株主グループに属する者などを指す。取引相場のない株式の評価では、取得者が同族株主等に該当するかどうかが、原則的評価方式と配当還元方式の分岐点となる。国税庁の評価明細書でも、第1表において株主の態様、取得後の議決権割合、同族関係者の状況を整理する構成になっている。
原則的評価方式とは、会社の実体価値を反映させる評価方式で、会社規模に応じて、類似業種比準方式、純資産価額方式、または両者の併用方式により評価する。経営支配力のある株主にとって、株式は単なる配当請求権ではなく、会社財産や経営収益に対する実質的な支配権を含むため、この方式が適用される。
配当還元方式とは、同族株主等以外の少数株主など、会社支配力を持たない株主の株式について、過去の配当を基礎に評価する特例的な方式です。少数株主は会社の資産を自由に処分できず、経営判断にも大きな影響を及ぼせないため、株式価値を配当期待に近い形で把握する考え方です。このページは類似業種比準方式と純資産価額方式の使い分けを中心に扱うが、実務ではまず配当還元方式の適用可否を確認する必要があります。
類似業種比準方式とは、評価対象会社と類似する上場会社群の株価を基礎に、評価対象会社の配当、利益、純資産を比較して株価を算定する方式です。会社の収益力と市場評価を反映しやすいため、大会社の評価で中心になります。
純資産価額方式とは、会社の資産と負債を相続税評価額に引き直し、会社を清算した場合に近い純資産価値を基礎として株式価値を算定する方式です。資産保有会社、小規模会社、収益性が乏しい会社、不動産や有価証券を多く持つ会社で重要性が高い。
取得者の株主区分を先に判定し、その後に総資産価額、従業員数、取引金額、業種区分で会社規模を判定します。
取引相場のない株式の評価は、概ね次の順序で検討する。
次の比較表は、4. 評価方式の全体像について、段階、検討事項、実務上の意味を横並びで整理したものです。複数の条件が同時に関係するため重要です。左から順に分類と確認点を見比べ、どの制度、資料、注意点を優先して確認するかを読み取ってください。
| 段階 | 検討事項 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 1 | 株式の種類を確認する | 上場株式か、気配相場等のある株式か、取引相場のない株式かを区別する |
| 2 | 取得者の株主区分を判定する | 同族株主等であれば原則的評価方式、一定の少数株主であれば配当還元方式を検討する |
| 3 | 特定の評価会社に該当するか確認する | 株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社などは通常の会社規模判定と異なる処理になり得る |
| 4 | 会社規模を判定する | 総資産価額、従業員数、取引金額、業種区分により、大会社、中会社、小会社を判定する |
| 5 | 評価方式を適用する | 大会社は類似業種比準方式を中心、小会社は純資産価額方式を中心、中会社は併用方式を中心に評価する |
| 6 | 税務、民事、事業承継上の影響を確認する | 申告、遺産分割、遺留分、納税資金、経営権維持を総合的に検討する |
この順序を飛ばして、いきなり「うちの会社は利益が出ているから類似業種比準方式」「不動産が多いから純資産価額方式」と決めるのは危険です。評価方式は納税者の自由な選択ではなく、株主区分、会社規模、特定会社判定によって枠組みが定まる。
取引相場のない株式の評価で最初に確認する必要があることは、会社の規模ではなく、株式を取得する相続人がどのような株主に該当するかです。国税庁の整理では、同族株主等が取得する株式は原則的評価方式により、それ以外の一定の株主が取得する株式は配当還元方式により評価される。
たとえば、同じ会社の株式であっても、後継者です長男が過半数の議決権を取得する場合と、会社経営に関与しない少数株主です相続人が数株だけ取得する場合では、評価方式が異なり得る。これは、株式の経済的意味が異なるためです。支配株主にとって株式は会社財産を動かす力を含むが、少数株主にとっては主に配当を受ける権利に近い。
株主区分を判定するためには、少なくとも次の資料が必要です。
次の比較表は、5.2 判定で確認する資料について、資料、確認する内容を横並びで整理したものです。複数の条件が同時に関係するため重要です。左から順に分類と確認点を見比べ、どの制度、資料、注意点を優先して確認するかを読み取ってください。
| 資料 | 確認する内容 |
|---|---|
| 株主名簿 | 課税時期の株主、株数、議決権数、名義株の有無 |
| 定款 | 株式の種類、議決権制限、譲渡制限、種類株式の内容 |
| 登記事項証明書 | 発行可能株式数、発行済株式数、役員構成、商号、目的 |
| 親族関係資料 | 同族関係者の範囲、相続人の関係、婚姻、養子縁組 |
| 議決権資料 | 自己株式、無議決権株式、相互保有株式の有無 |
| 過去の株式移動資料 | 贈与、売買、名義変更、株券の有無、株式譲渡承認手続 |
名義株が疑われる場合は、実質所有者が誰かをめぐって紛争化しやすい。株式の払込資金、配当の受領者、議決権行使の実態、株券や譲渡書類の保管状況などを検討する必要があります。
少数株主に該当する相続人の株式について、誤って原則的評価方式を適用すると、評価額が過大になることがあります。逆に、実質的に支配株主グループに属するのに配当還元方式を用いると、税務上否認されるリスクがあります。したがって、株主区分は評価作業の単なる前提ではなく、税務リスクを左右する中核論点です。
原則的評価方式が適用される場合、次に会社規模を判定する。国税庁の解説では、原則的評価方式では、総資産価額、従業員数、取引金額により会社を大会社、中会社、小会社に区分し、それぞれ評価方式を決定する仕組みが示されている。
大会社は、規模が大きく、上場会社に近い経済実態を持つと考えられるため、類似業種比準方式が中心となる。小会社は、個人事業に近く、会社財産そのものの価値が株式価値に強く反映すると考えられるため、純資産価額方式が中心となる。中会社はその中間で、類似業種比準方式と純資産価額方式を併用する。
会社規模の判定では、主に次の要素を確認する。
次の比較表は、6.2 判定要素について、判定要素、内容、注意点を横並びで整理したものです。複数の条件が同時に関係するため重要です。左から順に分類と確認点を見比べ、どの制度、資料、注意点を優先して確認するかを読み取ってください。
| 判定要素 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 総資産価額 | 会社の資産規模 | 帳簿価額だけでなく、評価明細書上の基準に従う必要がある |
| 従業員数 | 常時使用従業員数 | 役員、臨時雇用、出向者、パートなどの扱いを確認する |
| 取引金額 | 売上高など業種ごとの取引規模 | 直前期の損益計算書や法人税申告書と整合させる |
| 業種区分 | 卸売業、小売・サービス業、その他など | 業種により判定基準が異なる |
国税庁の評価明細書の記載方法では、第1表の2で、総資産価額、従業員数、取引金額、業種目を用いて会社規模を判定する構成が示されている。
会社規模判定でよくある誤りは、次のとおりです。
評価方式の結論は会社規模判定に依存するため、ここでの誤りは評価額全体に波及する。
類似業種の株価、配当、利益、純資産、斟酌率、業種選定を確認します。
次の強調表示は、類似業種比準方式の考え方をまとめたものです。上場会社の市場評価を参照する一方で、配当、利益、純資産の三要素や斟酌率が評価額に影響するため重要です。どの要素が会社の収益力と蓄積価値を反映するかを読み取ってください。
評価対象会社と類似する上場会社群の株価を基礎に、配当、利益、純資産を比較して株価を算定します。大会社や一定の中会社で中心となる方式です。
類似業種比準方式は、評価対象会社と事業内容が類似する上場会社の株価を参照し、評価対象会社の配当、利益、純資産を比準して株式価値を求める方式です。上場会社の市場価格を基礎にするため、収益力や市場の評価環境を反映しやすい。
国税庁の評価明細書では、第4表で類似業種比準価額等を計算する構成になっており、類似業種の株価、配当金額、利益金額、純資産価額、評価対象会社の比準要素を用いて計算する。
類似業種比準方式は、概念的には次のように整理できる。
類似業種比準価額
= 類似業種の株価
× 評価会社と類似業種との比準割合
× 斟酌率
× 1株当たり資本金等の額の調整
比準割合は、評価会社の配当、利益、純資産を、類似業種の配当、利益、純資産と比較して求める。現行の評価明細書では、配当、利益、純資産の三要素を用いた計算欄が設けられている。
ここで重要なのは、類似業種比準方式は単に「利益が大きければ高くなる」方式ではありませんという点です。配当政策、内部留保、資産の含み益、業種株価、会社規模に応じた斟酌率などが影響する。
次の比較表は、7.3 三つの比準要素について、比準要素、意味、実務上の確認点を横並びで整理したものです。複数の条件が同時に関係するため重要です。左から順に分類と確認点を見比べ、どの制度、資料、注意点を優先して確認するかを読み取ってください。
| 比準要素 | 意味 | 実務上の確認点 |
|---|---|---|
| 配当 | 会社が株主へ利益を分配している状況 | 特別配当、記念配当、無配、安定配当政策を確認する |
| 利益 | 会社の収益力 | 役員報酬、臨時損益、関連会社取引、節税処理の影響を確認する |
| 純資産 | 会社の蓄積価値 | 含み益、過去利益の蓄積、不動産や有価証券の評価を確認する |
類似業種比準方式は、営業会社の継続価値を反映しやすい一方で、比準要素を意図的に変動させる取引や、株式保有会社、土地保有会社などには通常の方式をそのまま適用すると実態と乖離しやすい。このため、特定の評価会社の判定が重要になります。
類似業種比準方式では、評価対象会社の事業内容に対応する類似業種目を選定し、国税庁が公表する類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等を用いる。
実務上は、登記上の目的や会社案内だけでなく、直前期の売上構成、主要取引、事業部門別売上、利益の源泉を確認する。複数事業を営む会社では、主たる事業の判定や複数業種の扱いが問題になります。
類似業種比準方式は、次のような会社で相対的に実態を反映しやすい。
類似業種比準方式には限界もある。上場会社の株価は市場全体の動向、金利、投資家心理、業界再編、政策、為替などの影響を受ける。非上場会社は上場会社より流動性が低く、情報開示も限定的です。加えて、同族会社では役員報酬、関連会社取引、配当政策が経営者の裁量に左右される。
したがって、相続税評価では通達に従って類似業種比準方式を適用するとしても、遺産分割や遺留分の交渉では、通達評価が会社の経済価値を過不足なく示しているかを別途検討する必要があります。
資産と負債を相続税評価額に引き直し、含み益、負債控除、法人税額等相当額を確認します。
次の強調表示は、純資産価額方式の考え方をまとめたものです。帳簿上の貸借対照表をそのまま使うのではなく、資産と負債を相続税評価へ引き直すため重要です。総資産、負債、評価差額に対する法人税額等相当額、発行済株式数の関係を読み取ってください。
防衛特別法人税を踏まえ、評価差額に対する法人税額等相当額の割合が従来の37%から38%に改正されています。課税時期がどちらに当たるかの確認が必要です。
純資産価額方式は、会社が保有する資産と負債を相続税評価額に引き直し、株主に帰属する純資産価値を株式価値とみる方式です。会社を清算した場合に近い価値を把握するため、資産保有会社、小規模会社、事業実態が弱い会社の評価に適している。
国税庁の解説では、小会社は原則として純資産価額方式で評価され、純資産価額方式は、課税時期における各資産を評価通達に定める方法で評価した価額の合計額から、各負債の合計額及び評価差額に対する法人税額等相当額を控除して評価する方式と説明されている。
純資産価額方式は、概念的には次のように整理できる。
1株当たり純資産価額
= (相続税評価額による総資産価額
- 負債の額
- 評価差額に対する法人税額等相当額)
÷ 課税時期の発行済株式数
評価明細書では、第5表で1株当たり純資産価額を計算し、課税時期現在の資産、負債、評価差額、発行済株式数を記載する構成になっている。
純資産価額方式では、資産を相続税評価額に引き直すことにより、帳簿価額との差額が生じる。この評価差額に対して、一定の法人税額等相当額を控除する。これは、含み益が実現した場合に法人税等が課されることを考慮する調整です。
2026年4月1日以後に相続、遺贈、贈与により取得した取引相場のない株式等については、防衛特別法人税を踏まえ、法人税額等相当額の割合が従来の37%から38%に改正されている。 実務では、相続開始日が2026年3月31日以前か、2026年4月1日以後かにより適用割合が異なるため、課税時期の確認が必須です。
次の比較表は、8.4 資産評価で特に注意する項目について、資産項目、注意点を横並びで整理したものです。複数の条件が同時に関係するため重要です。左から順に分類と確認点を見比べ、どの制度、資料、注意点を優先して確認するかを読み取ってください。
| 資産項目 | 注意点 |
|---|---|
| 土地 | 路線価方式、倍率方式、貸宅地、借地権、貸家建付地、地積、利用区分を確認する |
| 建物 | 固定資産税評価額、賃貸状況、附属設備を確認する |
| 有価証券 | 上場株式、非上場株式、投資信託、関係会社株式を区別する |
| 貸付金 | 回収可能性、役員貸付金、関連会社貸付金、債務超過先への貸付を確認する |
| 売掛金 | 貸倒れ可能性、回収遅延、関連会社取引を確認する |
| 棚卸資産 | 陳腐化、不良在庫、評価損の妥当性を確認する |
| 保険積立金 | 解約返戻金、契約者、被保険者、受取人を確認する |
| ゴルフ会員権 | 取引相場、預託金、名義変更制限を確認する |
| 知的財産 | 特許、商標、著作権、ライセンス収入を確認する |
純資産価額方式は、評価対象会社の貸借対照表をそのまま使う方式ではありません。帳簿価額と相続税評価額の差を個別に把握するため、資産内容が複雑な会社ほど作業量が増える。
負債についても、帳簿に記載されていれば当然に控除できるとは限らない。実在性、確定性、課税時期現在の債務性を確認する必要があります。
次の比較表は、8.5 負債評価で特に注意する項目について、負債項目、注意点を横並びで整理したものです。複数の条件が同時に関係するため重要です。左から順に分類と確認点を見比べ、どの制度、資料、注意点を優先して確認するかを読み取ってください。
| 負債項目 | 注意点 |
|---|---|
| 借入金 | 金銭消費貸借契約、残高証明、返済予定表、役員借入金の実在性を確認する |
| 未払金 | 課税時期現在で債務が確定しているかを確認する |
| 未払法人税等 | 事業年度、申告状況、納付状況を確認する |
| 退職給付債務 | 評価上控除可能な債務かを検討する |
| 偶発債務 | 保証債務、訴訟リスクは直ちに控除できるとは限らない |
| 関連会社債務 | 契約書、取引実態、相殺関係を確認する |
純資産価額方式は、次のような会社で重要性が高い。
大会社、小会社、中会社、特定の評価会社で、評価方式の中心と注意点が変わります。
次の一覧は、会社規模ごとの評価方式の中心を整理したものです。評価方式は有利不利で自由に選ぶものではなく、株主区分、会社規模、特定評価会社判定に従うため重要です。各区分から、類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式のどれを中心に見るかを読み取ってください。
上場会社に近い経済実態を持つため、同業上場会社との比較を重視します。ただし特定評価会社は別途確認します。
類似業種比準価額と純資産価額を一定割合で組み合わせ、営業価値と資産価値を反映します。
会社財産そのものの価値が株式価値に反映しやすいため、資産負債の評価が重要になります。
株式等保有、土地保有、比準要素数1、開業後3年未満などでは特別な評価処理が問題になります。
類似業種比準方式と純資産価額方式の使い分けは、納税者が有利な方を自由に選ぶ問題ではありません。基本的には、取得者の株主区分、会社規模、特定評価会社該当性によって決まる。
次の比較表は、9.1 使い分けの基本原則について、観点、類似業種比準方式、純資産価額方式を横並びで整理したものです。複数の条件が同時に関係するため重要です。左から順に分類と確認点を見比べ、どの制度、資料、注意点を優先して確認するかを読み取ってください。
| 観点 | 類似業種比準方式 | 純資産価額方式 |
|---|---|---|
| 価値の見方 | 継続企業としての収益力と市場比較 | 会社財産の積上げ価値 |
| 主な適用場面 | 大会社、一定の中会社 | 小会社、資産保有会社、特定評価会社 |
| 基礎資料 | 類似業種株価、配当、利益、純資産 | 資産負債の相続税評価額 |
| 反映しやすいもの | 業種の市場評価、収益力、配当状況 | 不動産含み益、有価証券含み益、現預金、負債 |
| 弱点 | 市場株価や配当政策の影響を受ける | 将来収益力や営業権を十分反映しにくい |
| 紛争上の論点 | 業種選定、比準要素、異常値、特定会社判定 | 資産評価、負債控除、含み益、法人税額等相当額 |
大会社は上場会社に近い規模を持つため、類似業種比準方式により評価するのが原則的な考え方です。継続企業としての収益力が株式価値の中心で、個別資産を積み上げるよりも、同業上場会社との比較が実態に近いと考えられる。
ただし、大会社であっても、株式等保有特定会社、土地保有特定会社、比準要素数1の会社などに該当する場合は、通常の類似業種比準方式だけでは評価できませんことがあります。大会社だから常に類似業種比準方式で完結すると考えるのは誤りです。
小会社は、上場会社の市場価格との比較になじみにくく、会社の資産価値が株式価値に直結しやすい。このため、純資産価額方式が中心になります。特に、経営者個人の不動産管理会社、家族経営の資産管理会社、事業実態の小さい会社では、純資産価額方式による評価額が重要になります。
もっとも、小会社でも一定の場合には類似業種比準価額を一部取り入れる併用評価が認められる場面がある。したがって、純資産価額方式だけを計算して終わるのではなく、選択可能な計算方法と税務上の要件を確認する必要があります。
中会社は、大会社と小会社の中間に位置するため、類似業種比準価額と純資産価額を一定割合で併用する。会社規模が大会社に近いほど類似業種比準価額の比重が高く、小会社に近いほど純資産価額の比重が高くなる。
併用方式は、営業会社としての継続価値と、会社財産の実体価値をバランスさせる方式です。中会社では、どの区分に該当するか、併用割合がどれだけかにより評価額が大きく変わるため、会社規模判定が特に重要です。
実務では、類似業種比準価額と純資産価額のどちらが低いかに関心が向きやすい。しかし、評価方式の使い分けは、単なる節税選択ではありません。評価通達上の要件に合わない方式を採用すれば、税務調査で更正処分を受けるリスクがあります。また、相続人間の交渉では、低すぎる評価を主張すると、他の相続人から情報隠しや不公平な承継と見られ、紛争を激化させることがあります。
適切な使い分けとは、税務上の要件を満たし、資料に基づいて説明でき、相続人や税務署に対して合理的に説明可能な評価を行うことです。
併用評価とは、類似業種比準価額と純資産価額を一定割合で組み合わせる評価方法です。営業会社としての価値と資産価値の双方を反映させることを目的とする。
概念的には、次のように整理できる。
併用評価額
= 類似業種比準価額 × L
+ 純資産価額 × (1 - L)
ここでLは、会社規模に応じて定められる類似業種比準価額の反映割合です。会社規模が大きいほどLが高く、会社規模が小さいほどLが低くなる。
併用方式では、次の三点が重要です。
第一に、会社規模判定を正確に行うこと。中会社の大、中、小の区分や小会社該当性によって、類似業種比準価額と純資産価額の反映割合が変わる。
第二に、類似業種比準価額と純資産価額の双方を正確に計算すること。どちらか一方の計算誤りが併用評価額に影響する。
第三に、純資産価額の計算において、資産評価、負債控除、評価差額に対する法人税額等相当額を適切に処理すること。特に不動産、有価証券、関連会社株式、役員貸付金がある会社では、純資産価額の精査が不可欠です。
併用方式は、複数の評価要素が重なるため、争点も多くなる。相続人間で会社を承継する者と承継しない者が対立している場合、後継者側は類似業種比準価額を重視し、非後継者側は純資産価額を重視する傾向がある。特に会社が多額の不動産を保有している場合、純資産価額をどう見るかが遺産分割や遺留分の中心争点になる。
特定の評価会社とは、通常の会社規模別評価をそのまま適用すると、実態に合わない評価になりやすい会社をいう。国税庁の解説では、特定の評価会社として、比準要素数1の会社、株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社、開業前または休業中の会社、清算中の会社などが挙げられている。
これらの会社では、通常の類似業種比準方式または併用方式ではなく、純資産価額方式その他の特別な評価方法が求められることがあります。
株式等保有特定会社とは、資産の相当部分を株式や出資が占める会社です。実質的には株式ポートフォリオを保有する会社で、通常の営業会社と同じように類似業種比準方式を適用すると、保有株式の含み益や市場リスクが十分に反映されない可能性があります。
持株会社、資産管理会社、グループ会社株式を多く保有する会社では、この判定が重要です。相続前の組織再編や株式移転、持株会社化が行われている場合は、過去の取引経緯も確認する必要があります。
土地保有特定会社とは、資産の相当部分を土地等が占める会社です。不動産管理会社、地主会社、同族会社が賃貸不動産を保有しているケースで問題になりやすい。
土地保有特定会社に該当すると、会社の株式評価は実質的に保有土地の評価に大きく左右される。路線価、地積、利用区分、借地権、貸家建付地、広大地に代わる地積規模の大きな宅地評価、賃貸借契約、境界、都市計画、土壌汚染、建築制限など、不動産評価の専門論点が必要になります。
比準要素数1の会社とは、配当、利益、純資産の比準要素のうち、一定数が欠ける会社をいう。たとえば、無配で利益も乏しく、純資産だけがある会社などでは、類似業種比準方式で上場会社と比較しても実態を反映しにくい。
この判定を見落とすと、類似業種比準価額が過度に低く、または高く算定される可能性があります。節税目的で配当や利益を操作したように見える場合は、税務上のリスクも高まる。
開業後3年未満の会社は、過去実績が十分に蓄積しておらず、類似業種比準方式に必要な比準要素が安定しない。休業中や清算中の会社は、継続企業としての価値よりも、資産を処分した場合の価値が重要になります。このため、純資産価額方式を中心に検討する必要があります。
相続税申告の評価を出発点にしつつ、民事上は換価可能性、経営権、代償金、将来性も問題になります。
相続税申告では、財産評価基本通達に従った評価が実務上の中心です。税務署に対して説明可能な評価明細書を作成し、必要資料を保存し、会社規模判定、株主区分判定、特定評価会社判定、類似業種比準価額、純資産価額の計算根拠を明確にする必要があります。
遺産分割では、相続財産をどのように分けるかが問題になります。民法は、遺産分割について、遺産に属する物または権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮する趣旨の規定を置いている。
そのため、非上場株式の評価についても、相続税評価額だけでなく、会社支配権、換価可能性、後継者の経営継続、他の相続人への代償金、会社からの退職金や役員報酬、過去の贈与、特別受益、寄与分などが交渉上の論点になる。
遺留分侵害額請求では、遺留分算定の基礎となる財産価額をどのように評価するかが問題になります。非上場株式については、相続税評価額、純資産価額、収益還元的評価、第三者評価、裁判所鑑定などが争点になり得る。
後継者に株式を集中させた遺言や生前贈与がある場合、非後継者は、株式評価が低すぎるとして遺留分侵害を主張することがあります。一方、後継者側は、株式は自由に売却できず、会社経営に必要な財産で、過大評価は事業継続を困難にすると主張することがあります。
相続税評価額は、公的な評価体系に基づくため、民事交渉でも重要な資料になる。しかし、相続税評価は課税の公平と実務処理を目的とする標準化された評価で、個別の売買価格や裁判上の相当価額と同一とは限らない。
したがって、弁護士、税理士、公認会計士が連携し、相続税評価額を出発点にしつつ、民事上の主張としてどこまで補正が必要かを検討することが望ましい。
会社資料、税務資料、会計資料、株主資料、不動産資料、負債資料を早期に集めます。
非上場株式評価では、次の資料を早期に収集する。
次の比較表は、13.1 必要資料一覧について、分野、主な資料を横並びで整理したものです。複数の条件が同時に関係するため重要です。左から順に分類と確認点を見比べ、どの制度、資料、注意点を優先して確認するかを読み取ってください。
| 分野 | 主な資料 |
|---|---|
| 会社基本資料 | 定款、登記事項証明書、株主名簿、株券、株式取扱規程、議事録 |
| 税務資料 | 法人税申告書、勘定科目内訳明細書、地方税申告書、消費税申告書 |
| 会計資料 | 決算書、総勘定元帳、固定資産台帳、試算表、部門別損益 |
| 株主資料 | 親族関係図、議決権一覧、過去の株式譲渡契約、贈与契約 |
| 不動産資料 | 固定資産税課税明細、登記簿、公図、地積測量図、賃貸借契約、路線価図 |
| 金融資産資料 | 預金残高証明、有価証券明細、投資信託明細、保険証券 |
| 負債資料 | 借入金残高証明、返済予定表、契約書、保証資料、未払金明細 |
| 関連会社資料 | 関係会社株式、貸付金、借入金、取引条件、グループ内契約 |
| 紛争資料 | 遺言書、遺産分割協議書案、過去の贈与資料、役員報酬資料、退職金資料 |
次の比較表は、13.2 専門家の役割分担について、専門家、主な役割を横並びで整理したものです。複数の条件が同時に関係するため重要です。左から順に分類と確認点を見比べ、どの制度、資料、注意点を優先して確認するかを読み取ってください。
| 専門家 | 主な役割 |
|---|---|
| 税理士 | 相続税申告、取引相場のない株式の評価明細書作成、税務署対応、税務調査対応 |
| 弁護士 | 相続人間の交渉、遺産分割調停、遺留分、株式の帰属争い、資料開示請求、訴訟対応 |
| 公認会計士 | 財務分析、非上場株式評価、会計処理の検証、事業価値の分析、内部統制資料の確認 |
| 不動産鑑定士 | 土地建物の鑑定評価、賃貸不動産の評価、特殊不動産の評価 |
| 司法書士 | 相続登記、商業登記、株式承継に伴う登記、不動産名義変更 |
| 行政書士 | 遺産分割協議書など争いのない書類作成、許認可承継手続の確認 |
| 中小企業診断士 | 事業承継計画、経営改善、後継者支援、事業計画作成 |
| ファイナンシャル・プランナー | 納税資金、保険、生活設計、専門家連携の整理 |
相続登記については、2024年4月1日から義務化され、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。非上場会社が不動産を保有している場合だけでなく、被相続人個人にも不動産がある場合、株式評価と不動産承継を並行して整理する必要があります。
相続税申告が必要な可能性が高い場合は、まず税理士に相談するのが自然です。ただし、相続人間で争いがある場合、資料開示に応じてもらえない場合、遺留分侵害が疑われる場合、会社支配権をめぐる対立がある場合は、弁護士を早期に関与させるべきです。
会社の規模が大きい、関連会社が多い、財務内容が複雑、不動産や有価証券の含み益が大きい場合は、公認会計士や不動産鑑定士の関与が有効です。評価は単独の専門家だけで完結しないことが多く、税務、法務、会計、不動産の連携が重要です。
初期確認、類似業種比準方式、純資産価額方式、紛争対応の確認事項を整理します。
次の一覧は、非上場株式評価で実務上確認する必要がある項目を段階別にまとめたものです。ひとつの資料漏れが評価方式や金額全体に波及するため重要です。上から順に、初期確認、類似業種比準方式、純資産価額方式、紛争対応のどこが未確認かを読み取ってください。
相続開始日、株式数、議決権割合、同族関係者、会社規模、特定評価会社を確認します。
入口業種目、業種目別株価等、配当、利益、純資産、斟酌率、異常値を確認します。
市場比較土地、有価証券、貸付金、在庫、負債、評価差額、法人税額等相当額を確認します。
資産負債資料開示、代償金、遺留分、会社支配権、調停や鑑定費用の見通しを確認します。
利害調整営業利益が安定している会社、不動産保有会社、少数株主、赤字会社、相続直前取引のある会社を比べます。
被相続人が、従業員100名、安定した売上と利益を有する製造業会社の株式を保有していた。長男が後継者で、相続後に過半数の議決権を取得する予定です。
この場合、長男は同族株主等に該当する可能性が高く、原則的評価方式を検討する。会社規模判定で大会社または中会社に該当すれば、類似業種比準方式または併用方式が中心になります。類似業種の選定、配当、利益、純資産の比準要素、直前期の異常損益を確認する必要があります。
遺産分割上は、長男が会社株式を取得し、他の相続人には預金、不動産、代償金を配分する設計が考えられる。代償金が過大になると会社資金の流出や長男個人の資金難を招くため、相続税額とあわせて資金計画を立てる必要があります。
被相続人が、賃貸マンション、駐車場、上場株式を保有する同族会社の株式を保有していた。会社の売上は賃料収入が中心で、従業員はほとんどいない。
この場合、会社規模が小会社に該当する可能性があり、純資産価額方式が中心になります。また、土地保有特定会社や株式等保有特定会社への該当性も検討する必要があります。評価の中心は、保有不動産の相続税評価、有価証券評価、借入金、評価差額に対する法人税額等相当額です。
相続人間では、不動産の含み益が大きい場合、株式評価額が高額になりやすい。後継者が株式を取得する場合、他の相続人への代償金や遺留分への対応が大きな課題になる。
被相続人が、親族会社の株式を少数だけ保有していた。経営には関与しておらず、相続人も会社役員ではありません。
この場合、取得者が同族株主等に該当しない可能性があります。配当還元方式の適用可否を最初に確認する必要がありますで、いきなり類似業種比準方式や純資産価額方式で評価すると過大評価になる可能性があります。
もっとも、同族関係者の範囲や議決権割合によって結論は変わる。少数保有に見えても、親族全体で支配グループを形成している場合は、原則的評価方式が必要になることがあります。
会社は近年赤字で配当もないが、多額の現預金、土地、有価証券を保有している。この場合、類似業種比準方式だけを見ると低い評価になる可能性があるが、純資産価額方式では高い評価になる可能性があります。
会社規模や特定評価会社判定によっては、純資産価額方式または併用方式が重視される。税務上は、比準要素数1の会社や土地保有特定会社への該当性を慎重に確認する必要があります。民事上は、会社が赤字であっても、資産価値が相続人間の公平に大きく影響する。
相続直前に、役員退職金の支給、配当方針の変更、株式移転、会社分割、資産売却などが行われた場合、評価額に大きな影響が出る。これらが通常の経営判断として合理的か、相続税評価を引き下げる目的が強いか、同族関係者間で利益移転がないかを検討する必要があります。
税務調査では、相続前後の不自然な取引、評価要素の急変、関連会社取引、役員報酬や退職金の妥当性が確認されることがあります。資料と議事録を整備し、取引の経済合理性を説明できる状態にしておくべきです。
税務調査で確認されやすい論点と、判定過程の説明可能性、制度見直しの動向を押さえます。
非上場株式評価について税務調査で見られやすい論点は、次のとおりです。
税務上の評価では、最終的な評価額だけでなく、そこに至る判定過程が重要です。株主区分、会社規模、特定評価会社判定、類似業種選定、資産負債評価について、第三者が追跡できる資料を残す必要があります。
特に、複数の評価方式が関係する中会社、小会社、特定評価会社では、どの方式を採用したかだけでなく、なぜその方式が適用されるのかを明確に説明することが求められる。
取引相場のない株式の評価については、国税庁が有識者会議を開催し、財産評価基本通達に定める評価方法の課題を検討している。開催趣旨では、会計検査院の指摘などを踏まえ、会社規模や評価方式により時価との乖離が生じ得ること、類似業種比準価額が相対的に低くなる事例があること、配当還元方式のあり方などが論点とされている。
したがって、非上場株式評価は固定的な制度ではなく、改正や運用見直しの可能性がある領域です。申告時点の法令、通達、国税庁公表資料、評価明細書を確認することが不可欠です。
評価方式の選択、赤字会社、遺産分割、資料開示、評価対策について一般的な考え方を整理します。
一般的には、単に低い方を自由に選ぶものではなく、取得者の株主区分、会社規模、特定評価会社該当性によって評価方式を確認するとされています。ただし、一定の場合に選択または併用が認められることがあります。具体的な評価方針は、株主構成や会社資料を整理したうえで税理士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、赤字であっても会社に不動産、現預金、有価証券、貸付金などの資産がある場合、純資産価額が高くなる可能性があります。ただし、会社規模、比準要素、特定評価会社該当性で結論は変わります。具体的には決算書と資産負債の資料を確認する必要があります。
一般的には、相続税評価額は民事交渉でも重要な資料になりますが、常に遺産分割や遺留分の最終価格と一致するとは限りません。換価可能性、経営権、代償金、会社の将来性などで評価の見方が変わる可能性があります。争いがある場合は、弁護士、税理士、公認会計士等の連携が必要です。
一般的には、必要資料を具体的に特定して任意開示を求めることが出発点とされています。応じない場合は、紛争性や株主としての立場に応じて、弁護士を通じた交渉、遺産分割調停、資料取得手続などを検討することがあります。具体的な対応は、相続人の立場と保有株式の内容で変わります。
一般的には、事業承継対策、配当政策、退職金、生命保険、贈与、種類株式、納税猶予制度などを検討することがあります。ただし、相続直前の不自然な取引や経済合理性の乏しい設計は、税務上の否認や相続人間の紛争につながる可能性があります。具体的には税務、会社法、遺留分、納税資金を一体で検討する必要があります。
一般的には、相続税評価では財産評価基本通達に従い、路線価方式、倍率方式、利用区分、権利関係を確認するとされています。一方、民事上の争いでは不動産鑑定評価額が問題になることもあります。目的に応じて評価の前提を区別する必要があります。
一般的には、相続税申告だけで争いがなく資料も整っている場合は、税理士中心で進められることが多いとされています。ただし、相続人間の対立、遺留分、資料開示、会社支配権、不動産評価が問題になる場合は、弁護士、公認会計士、不動産鑑定士などの関与が必要になる可能性があります。
株主区分、会社規模、特定評価会社、類似業種比準価額、純資産価額を説明可能な資料で残します。
非上場株式の評価方法において、類似業種比準方式と純資産価額方式の使い分けは、相続税額、遺産分割の公平、遺留分、事業承継、会社支配権に直結する中核論点です。
実務上の結論は、次の順序で導くべきです。
相続における非上場株式評価は、単なる計算問題ではありません。会社の支配、家族の公平、納税資金、事業の存続を同時に扱う高度な総合実務です。評価方式の名称だけを覚えるのではなく、どの株主に、どの会社について、どの時点で、どの目的で評価するのかを明確にすることが、適正な解決への第一歩です。