2σ Guide

損害賠償請求の手順と
必要な準備

請求根拠、証拠整理、損害額の計算、請求書、交渉、裁判所手続、時効、費用、回収可能性まで、損害賠償請求を進める前に確認したい実務上のポイントを体系的に整理します。

9段階 標準的な準備順序
60万円以下 少額訴訟の対象目安
140万円以下 簡易裁判所の訴額目安
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損害賠償請求の手順と 必要な準備

怒りや不満を伝えるだけではなく、根拠、証拠、金額、回収可能性を順に整えることが出発点です。

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損害賠償請求の手順と 必要な準備
怒りや不満を伝えるだけではなく、根拠、証拠、金額、回収可能性を順に整えることが出発点です。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 損害賠償請求の手順と 必要な準備
  • 怒りや不満を伝えるだけではなく、根拠、証拠、金額、回収可能性を順に整えることが出発点です。

POINT 1

  • 損害賠償請求の手順と必要な準備の全体像
  • 1. 事実・証拠・相手方を整理:時系列、証拠、相手方情報、損害資料をそろえます。
  • 2. 請求根拠と損害額を組み立てる:契約違反、不法行為、特別法の根拠と計算式を確認します。
  • 3. 相手方が任意に応じる見込み:責任や金額への争い、回収可能性、時効を見ます。
  • 4. 請求書・交渉・示談書:合意できる場合は書面化して支払条件を明確にします。
  • 5. 調停・支払督促・訴訟等:金額、争点、証拠、緊急性に応じて公的手続を選びます。

POINT 2

  • 損害賠償請求とは何か ― 契約違反・不法行為・特別法
  • どの根拠で請求するかによって、要件、時効、証拠、損害範囲が変わります。
  • 契約違反による請求
  • 不法行為による請求
  • 特別法・特殊類型

POINT 3

  • 損害賠償請求が認められるための基本要件
  • 権利または利益の侵害
  • 身体、財産、名誉、信用、プライバシー、営業上の利益、または契約上の権利が侵害されたかを確認します。
  • 故意・過失または帰責性
  • 不法行為では故意・過失、契約違反では債務者の責めに帰すべき事情が問題になります。

POINT 4

  • 損害賠償請求の準備1 ― 事実関係を時系列で整理する
  • 1. 出来事を日付順に並べる:契約、事故、連絡、被害発生、支払、督促などを日付順に整理します。
  • 2. 事実と評価を分ける:「不誠実だった」ではなく、「○日までに納品すると述べたが、○日時点で納品がなかった」のように記載します。
  • 3. 関係者を確定する:本人、法人、代理人、保険会社、担当者、目撃者、医療機関、修理業者、取引先を整理します。

POINT 5

  • 損害賠償請求の準備2 ― 法的根拠を選別する
  • 契約関係の有無、相手方の義務、複数の根拠の併存を順に確認します。
  • 契約関係を確認
  • 不法行為を検討
  • 併存の可能性

POINT 6

  • 損害賠償請求の準備3 ― 損害額を計算する
  • 請求額は項目ごとに分け、証拠番号と計算式で説明できるようにします。
  • 損害賠償請求では、請求額の根拠を明確にする必要があります。
  • 金額の根拠が曖昧だと、相手方は「なぜその金額なのか分からない」と反論しやすくなります。
  • 金額、計算根拠、証拠番号を横に並べることは、請求書や訴訟資料で説明を一貫させるために重要です。

POINT 7

  • 損害賠償請求の準備4 ― 証拠を集め、保全する
  • 民事手続では、主張を述べるだけでなく、その主張を裏付ける証拠を提出することが重要です。
  • スクリーンショットは全体性を意識する
  • 証拠番号を付ける
  • 損害賠償請求は、証拠の質で大きく変わります。

POINT 8

  • 損害賠償請求の準備5 ― 相手方と回収可能性を見極める
  • 誰に請求するか
  • 個人か法人か、代理人か本人か、保険会社が関与するか、共同不法行為者や使用者責任が問題になるかを確認します。
  • 住所・所在地
  • 裁判を起こす場合、訴状を相手方に送達する必要があります。

まとめ

  • 損害賠償請求の手順と 必要な準備
  • 損害賠償請求の手順と必要な準備の全体像:怒りや不満を伝えるだけではなく、根拠、証拠、金額、回収可能性を順に整えることが出発点です。
  • 損害賠償請求とは何か ― 契約違反・不法行為・特別法:どの根拠で請求するかによって、要件、時効、証拠、損害範囲が変わります。
  • 損害賠償請求が認められるための基本要件:損害が発生した事実だけでは足りず、権利侵害、責任、損害、因果関係、相当性を説明する必要があります。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

損害賠償請求の手順と必要な準備の全体像

怒りや不満を伝えるだけではなく、根拠、証拠、金額、回収可能性を順に整えることが出発点です。

損害賠償請求は、相手の行為で損をしたという感情だけで進めるものではありません。法律上は、請求できる根拠、相手方の責任、発生した損害、行為と損害との因果関係、損害額を裏付ける証拠を、相手方や裁判所に説明できる状態に整える必要があります。

このページでは、請求前の準備から任意交渉、示談、裁判所手続、判決後の回収までを一連の順番で整理します。個別の見通しは契約書、事故状況、相手方の属性、証拠、時効、損害額によって変わるため、実際に請求書を出す、訴訟を起こす、示談書に署名する前には、必要に応じて弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

次の一覧は、損害賠償請求で検討する標準的な段階と準備物を示しています。どの段階で何をそろえるかを把握することは、請求の根拠が曖昧なまま交渉や裁判に進むリスクを避けるうえで重要です。左から順に、目的と準備物を照らし合わせて確認してください。

段階目的主な準備物
1. 事案の把握何が、いつ、誰によって起きたかを確定する時系列表、関係者一覧、契約書、事故記録、メール、写真、診断書
2. 請求根拠の検討契約違反、不法行為、特別法上の請求を整理する契約条項、民法上の根拠、関連法令、相手の義務内容
3. 損害項目の洗い出し請求できる金額の内訳を作る領収書、見積書、給与資料、修理明細、通院記録、損害計算表
4. 証拠の収集・保全後で争われても説明できる形にする原本、スクリーンショット、録音、写真、第三者資料、保管メモ
5. 相手方の特定誰に請求するかを確定する氏名・住所、法人名、代表者、保険会社、勤務先
6. 任意交渉裁判前に支払、謝罪、再発防止等を求める請求書、内容証明郵便、回答期限、示談案
7. 合意書作成合意内容を証拠化し、将来の紛争を防ぐ示談書、和解契約書、支払期日、清算条項、違約条項
8. 裁判所手続交渉不成立時に公的手続で解決を図る民事調停、支払督促、少額訴訟、通常訴訟、民事保全
9. 回収・執行判決・和解後に実際に回収する債務名義、相手財産情報、預金・給与・不動産等の調査

次の判断の流れは、最初から裁判だけを考えるのではなく、準備状況と相手方の反応に応じて手段を選ぶ考え方を表しています。順番を追うことで、証拠が不足している段階、交渉で足りる段階、裁判所手続を検討する段階を読み取れます。

損害賠償請求の進め方

事実・証拠・相手方を整理

時系列、証拠、相手方情報、損害資料をそろえます。

請求根拠と損害額を組み立てる

契約違反、不法行為、特別法の根拠と計算式を確認します。

相手方が任意に応じる見込み

責任や金額への争い、回収可能性、時効を見ます。

見込みあり
請求書・交渉・示談書

合意できる場合は書面化して支払条件を明確にします。

見込みなし
調停・支払督促・訴訟等

金額、争点、証拠、緊急性に応じて公的手続を選びます。

Section 01

損害賠償請求とは何か ― 契約違反・不法行為・特別法

どの根拠で請求するかによって、要件、時効、証拠、損害範囲が変わります。

損害賠償請求とは、他人の行為または不作為によって発生した損害について、金銭等で補填するよう求める請求です。代表的な根拠は、契約違反に基づく損害賠償と、不法行為に基づく損害賠償です。

次の一覧は、代表的な請求根拠を3つに分けて整理したものです。根拠ごとに確認すべき事実が違うため、最初にどの類型に近いかを読むことが重要です。各項目では、契約の有無、相手の注意義務、特別法の影響を確認してください。

CONTRACT

契約違反による請求

契約関係がある場合、相手が契約上の義務を履行しなかったときは、民法415条の債務不履行責任が問題になります。契約の存在、義務内容、期限、品質、違反した条項を整理します。

TORT

不法行為による請求

契約関係がない相手でも、故意または過失により権利や法律上保護される利益を侵害された場合は、民法709条に基づく請求を検討します。身体、財産、名誉、プライバシーなどの侵害が典型です。

SPECIAL LAW

特別法・特殊類型

製造物責任法、国家賠償法、自動車損害賠償保障法、労働契約法、個人情報保護法、消費者契約法、会社法、不正競争防止法などが関係することがあります。

契約違反型で確認すること

契約違反型では、工事の未完成、商品の未引渡し、システム開発の未納品、賃貸借上の義務違反、秘密保持義務違反などが典型です。契約書がある場合は条項を確認し、契約書がない場合でも、メール、見積書、発注書、請求書、納品書、振込記録、チャット履歴などから合意内容を整理します。

不法行為型で確認すること

交通事故、暴行・傷害、名誉毀損、プライバシー侵害、隣人トラブル、財物破損などでは、不法行為に基づく損害賠償が問題になります。民法710条により、身体、自由、名誉、財産権などの侵害では、精神的損害も賠償対象となり得ます。

注意医療、建築、金融、知的財産、労働、個人情報、インターネット投稿などは専門的なルールや判例の影響が大きい分野です。早期に専門家へ相談すべき事案もあります。
Section 02

損害賠償請求が認められるための基本要件

損害が発生した事実だけでは足りず、権利侵害、責任、損害、因果関係、相当性を説明する必要があります。

損害賠償請求は、「損をした」という事実だけで当然に認められるものではありません。不法行為であれば権利または利益の侵害、故意・過失、損害、因果関係が問題になり、契約違反であれば契約上の義務、義務違反、帰責性、損害、損害範囲が問題になります。

次の一覧は、請求が認められるかを検討する際の主要な確認事項を整理しています。各要素のどれかが弱いと、金額以前に責任の有無が争われやすくなるため重要です。読者は、どの要素に証拠があり、どこが不足しているかを読み取ってください。

権利または利益の侵害

身体、財産、名誉、信用、プライバシー、営業上の利益、または契約上の権利が侵害されたかを確認します。

故意・過失または帰責性

不法行為では故意・過失、契約違反では債務者の責めに帰すべき事情が問題になります。

損害の発生

治療費、修理費、休業損害、逸失利益、慰謝料、調査費、遅延損害金などを項目ごとに金額化します。

因果関係

相手方の行為と損害のつながりを説明します。別原因で生じた損害は争点になりやすい部分です。

損害額の相当性

実費、相場、判例傾向、契約上の定め、業界慣行、保険実務を踏まえ、合理的な計算式を用意します。

次の表は、代表的な損害項目と証拠例を整理しています。どの損害を請求するかによって準備資料が変わるため、証拠集めの抜け漏れを防ぐうえで重要です。左列で損害の種類を確認し、右列で保存すべき資料を読み取ってください。

損害項目内容証拠例
治療費通院、入院、薬代診療明細、領収書、診断書
修理費車両、建物、物品の修理見積書、請求書、写真
休業損害事故・被害で働けなかった収入減給与明細、休業証明、確定申告書
逸失利益将来得られたはずの利益の喪失収入資料、後遺障害資料、事業計画
慰謝料精神的苦痛に対する賠償診断書、経緯資料、被害状況資料
調査費・対応費原因調査、復旧、専門家対応契約書、請求書、作業記録
遅延損害金支払遅延による利息相当契約書、請求日、支払期日

過大請求は交渉を硬直させ、裁判での信用を損なうことがあります。一方で、証拠に基づかず低すぎる金額で示談すると、後から追加請求が難しくなる場合があります。

契約違反の場合には、民法416条に基づく損害賠償の範囲も問題になります。通常生ずべき損害は対象になり得ますが、特別な事情から生じた損害については、当事者がその事情を予見すべきであったかが争点になることがあります。

Section 03

損害賠償請求の準備1 ― 事実関係を時系列で整理する

法律論の前に、いつ、誰が、何をしたのかを客観的な資料と結びつけます。

最初の作業は、法律論ではなく事実整理です。法律相談でも裁判でも、最初に確認されるのは「いつ、何が起きたのか」です。感情的評価を入れすぎず、客観的事実と証拠を対応させることが重要です。

次の表は、時系列表の作り方を例示しています。時系列は、相談、社内説明、請求書、訴状の土台になるため重要です。日時、出来事、関係者、証拠、補足を横に並べ、証拠がある事実と推測を分けて読み取れる形にします。

日時出来事関係者証拠補足
2026年○月○日契約締結A社・当方契約書、メール納期は○月○日
2026年○月○日相手が納期延期を連絡A社担当者メール理由は人員不足
2026年○月○日損害発生当方請求書、売上資料取引先への納品遅延

次の時系列は、事実整理でどの順番を意識すべきかを示しています。順番をそろえることは、後から証拠を探す際にも、相手方の反論を予測する際にも重要です。各段階で、評価ではなく証拠に結びついた事実を読み取ってください。

STEP 1

出来事を日付順に並べる

契約、事故、連絡、被害発生、支払、督促などを日付順に整理します。

STEP 2

事実と評価を分ける

「不誠実だった」ではなく、「○日までに納品すると述べたが、○日時点で納品がなかった」のように記載します。

STEP 3

関係者を確定する

本人、法人、代理人、保険会社、担当者、目撃者、医療機関、修理業者、取引先を整理します。

法人相手では、正式な商号、本店所在地、代表者名、担当部署を確認します。個人相手では、氏名、住所、電話番号、メールアドレス、勤務先、保険情報などが重要ですが、相手方情報の取得にあたって違法・不適切な調査をしてはいけません。

Section 05

損害賠償請求の準備3 ― 損害額を計算する

請求額は項目ごとに分け、証拠番号と計算式で説明できるようにします。

損害賠償請求では、請求額の根拠を明確にする必要があります。金額の根拠が曖昧だと、相手方は「なぜその金額なのか分からない」と反論しやすくなります。

次の表は、損害計算表の作り方を示しています。金額、計算根拠、証拠番号を横に並べることは、請求書や訴訟資料で説明を一貫させるために重要です。どの項目が実費で、どの項目が評価や計算を要するかを読み取ってください。

番号損害項目金額計算根拠証拠番号
1修理費180,000円修理業者見積額甲1
2代替品購入費45,000円購入領収書甲2
3休業損害96,000円日額12,000円×8日甲3
4慰謝料300,000円被害内容、期間、通院状況等を考慮甲4〜甲6
5遅延損害金別途計算支払期限翌日から支払済みまで契約書・請求書

次の一覧は、損害額を裏付ける資料を項目別に整理しています。損害の性質によって必要資料が異なるため、請求前の準備漏れを避けるうえで重要です。実費、収入減、将来損害、精神的損害、利息相当額の違いを読み取ってください。

1

実費

治療費、修理費、交通費、宿泊費、調査費は、領収書、請求書、明細書、振込記録を保存します。

領収書原本保管
2

休業損害・逸失利益

会社員は給与明細、源泉徴収票、休業証明書、勤務表、個人事業主や会社経営者は確定申告書、決算書、売上台帳が重要です。

収入資料専門性あり
3

慰謝料

主観的なつらさだけでなく、被害内容、期間、程度、加害行為の悪質性、通院期間、後遺症、社会的影響、裁判例などが考慮されます。

被害状況相場確認
4

遅延損害金

契約で利率を定めていればその条項が問題になります。定めがない場合は法定利率が問題となり、令和8年4月1日から令和11年3月31日までは年3%とされています。

支払期限計算注意

逸失利益は、将来得られたはずの利益を問題にするため、単純な実費より専門的です。交通事故の後遺障害死亡事故、長期休業、営業停止、機会損失などでは、弁護士、税理士、会計士等の専門的検討が必要になることがあります。

Section 06

損害賠償請求の準備4 ― 証拠を集め、保全する

民事手続では、主張を述べるだけでなく、その主張を裏付ける証拠を提出することが重要です。

損害賠償請求は、証拠の質で大きく変わります。裁判では、当事者が主張を述べ、その主張を裏付けるために証拠の提出等を行います。相談段階から、証拠を種類ごとに分類しておくと説明が速くなります。

次の表は、代表的な証拠の種類と注意点を整理しています。証拠は種類ごとに保存方法や争われやすい点が異なるため重要です。文書、電子データ、写真・動画、音声、第三者資料、証人の違いを読み取ってください。

証拠類型注意点
文書契約書、請求書、領収書、診断書、見積書原本を保管し、写しを提出用に用意する
電子データメール、チャット、SNS、クラウドログ送受信日時、相手のアカウント、全文を保存する
写真・動画事故現場、損傷箇所、けが、施工不良撮影日時、場所、撮影者をメモする
音声通話録音、会話録音改ざん疑義を避けるため保存方法に注意する
第三者資料警察資料、医療記録、保険会社資料取得手続や開示範囲に注意する
証人目撃者、担当者、同席者早めに連絡先と記憶内容を確認する

スクリーンショットは全体性を意識する

SNS投稿、メッセージ、ECサイト表示、口コミ、チャット履歴などを証拠化する場合、問題部分だけを切り取ると、相手方から「文脈が違う」「編集されている」と反論されることがあります。URL、日時、アカウント名、前後の文脈、画面全体、投稿ID、プロフィール画面などを含めて保存します。

証拠番号を付ける

裁判や弁護士相談を意識するなら、証拠には番号を付けて整理します。民事訴訟では、原告側の証拠を「甲号証」、被告側の証拠を「乙号証」と呼ぶことがあります。相談段階でも、甲1 契約書、甲2 納期回答メール、甲3 損傷箇所写真、甲4 修理見積書、甲5 請求書、甲6 内容証明郵便控えのように整理すると説明が速くなります。

保管原本は厳重に保管し、提出用にはコピーやPDFを用います。電子データは端末内だけでなく外部ストレージやクラウド等にバックアップします。ただし、個人情報や機密情報を含む場合には、社内規程や個人情報保護の観点から保管方法に注意します。
Section 07

損害賠償請求の準備5 ― 相手方と回収可能性を見極める

誰に請求するか、判決や和解後に実際に回収できるかを早期に検討します。

損害賠償請求では、「勝てるか」と同じくらい「回収できるか」が重要です。判決を得ても、相手に資力がなく、財産も不明であれば、実際の回収は困難になります。

次の一覧は、請求相手と回収可能性を見る際の確認事項を整理しています。相手方を誤ると、手続が進まず、回収の実効性も下がるため重要です。個人、法人、保険、共同責任、財産情報の各観点を読み取ってください。

誰に請求するか

個人か法人か、代理人か本人か、保険会社が関与するか、共同不法行為者や使用者責任が問題になるかを確認します。

住所・所在地

裁判を起こす場合、訴状を相手方に送達する必要があります。法人では登記事項証明書、個人では契約書や事故資料などが手掛かりになります。

差押え対象

預金、給与、不動産、売掛金、動産など、差押え対象になり得る財産があるかを早期に検討します。

財産移転のおそれ

相手が財産を移してしまうおそれがある場合には、民事保全、特に仮差押えを検討することがあります。

交通事故では加害者本人だけでなく保険会社が対応することがあります。業務中の事故では使用者責任や会社の責任が問題になることがあります。工事トラブルでは、元請、下請、設計者、施工者、管理会社など、関係者が複数存在することがあります。

Section 08

損害賠償請求の準備6 ― 請求書・通知書を作成する

任意交渉の入口では、請求内容、回答期限、後日の証拠化を意識します。

任意交渉の入口として、請求書または通知書を送付します。目的は、相手に支払義務を認めさせること、回答期限を設定すること、後日の証拠を残すことです。

次の表は、請求書に記載する基本事項を整理しています。記載漏れがあると、相手方が責任や金額を理解できず、交渉が進みにくくなるため重要です。事実、根拠、金額、期限、今後の対応を分けて読み取ってください。

項目記載する内容
差出人と宛先誰から誰に請求するかを明確にする
件名損害賠償請求であることを示す
事実関係の概要日時、場所、相手方の行為、損害発生を簡潔に記載する
請求の法的根拠契約違反、不法行為、特別法などの根拠を示す
損害項目と請求金額項目別に金額を分け、合計額を示す
支払期限と振込先期限と支払方法を明確にする
期限後の対応回答・支払がない場合に法的手続を検討する旨を冷静に示す

請求書の簡易ひな形

次の記載例は、請求書の一般的な構成を示しています。実際の事案では、事実や根拠が異なるため、文言をそのまま使うのではなく、不必要に威圧的な表現や名誉毀損になり得る記載を避ける観点が重要です。各見出しがどの情報を入れる場所かを読み取ってください。

区分記載例
表題通知書。私は、貴殿に対し、下記のとおり損害賠償を請求します。
事実関係令和○年○月○日、貴殿は○○において○○をしました。その結果、私は○○の損害を被りました。
請求の根拠上記事実は、民法○条に基づき、貴殿に損害賠償責任が発生するものと考えます。
損害額修理費、治療費、休業損害、慰謝料などを項目別に記載し、合計額を示します。
請求本書到達後○日以内に、指定口座へ○円を支払うよう求めます。
今後の対応期限までに誠実な回答または支払がない場合、法的手続を含む対応を検討する旨を冷静に記載します。
末尾日付、住所、氏名、連絡先を記載します。

内容証明郵便の役割

重要な請求や時効が迫る事案では、内容証明郵便を利用することがあります。内容証明は、いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出したかを証明する制度ですが、文書の内容が真実であることを証明するものではありません。配達証明は配達した事実を証明するサービスであり、実際の受取人が誰かを証明するものではない点にも注意が必要です。

限界内容証明は通知内容を証拠化する手段です。送っただけで勝訴したり、直ちに差押えができたりするわけではありません。請求内容そのものの正当性は、契約書、証拠、法律構成で支える必要があります。
Section 09

損害賠償請求の準備7 ― 交渉と示談を進める

合意できる場合でも、口頭で終わらせず、支払条件と清算範囲を書面化します。

裁判に進む前に、任意交渉で解決できることがあります。相手方が事実関係をおおむね認めている場合、保険会社が関与している場合、少額の紛争、継続的関係を維持したい場合は、交渉による解決が合理的なことがあります。

次の表は、交渉で確認すべき事項を整理しています。合意後の支払遅延や追加紛争を防ぐために重要です。金銭条件だけでなく、謝罪、原状回復、守秘義務、期限の利益喪失、清算条項まで読み取ってください。

確認事項見るべきポイント
責任の有無相手方が責任を認めるのか、どこを争っているのか
損害額争いがある項目、一括払いか分割払いか、支払期限
金銭以外の条件謝罪、原状回復、再発防止、投稿削除などの必要性
清算条項後日の追加請求を制限する範囲が適切か
守秘義務当事者がどこまで口外しない義務を負うか
期限の利益喪失分割払いの不履行時に残額を一括請求できるか

次の判断の流れは、交渉がまとまった後に何を書面化するかを示しています。口頭合意だけでは後から争われるおそれがあるため重要です。合意内容、支払条件、将来請求の扱いを順に読み取ってください。

示談書・和解契約書で確認する順番

対象となる紛争を特定

どの出来事についての合意かを明確にします。

支払金額・方法・期限を記載

一括払い、分割払い、振込先、期限を具体化します。

清算条項の範囲を確認

将来損害や後遺障害、追加修理費の可能性が残るかを見ます。

署名前に専門家へ確認

内容が分からない場合、一度署名すると撤回が難しいことがあります。

示談書でよく使われる「本件に関し、当事者間に何らの債権債務がないことを確認する」という清算条項は、後日の追加請求を遮断する効果を持つことがあります。後遺障害、将来損害、追加治療費、修理後に判明する損傷、継続的な営業損害などがあり得る場合は、安易に全面的な清算条項を入れるべきではありません。

Section 10

損害賠償請求で裁判所手続を選ぶ

交渉がまとまらない場合は、金額、争点、証拠、相手方の態度に応じて手続を選びます。

交渉がまとまらない場合、民事調停、支払督促、少額訴訟、通常訴訟、民事保全、強制執行などを検討します。どの手続が適するかは、金額、争点、証拠、相手方の態度、回収可能性によって変わります。

次の表は、主な裁判所手続の向き不向きを整理しています。手続選択を誤ると、時間や費用が増えたり、通常訴訟へ移行したりするため重要です。向いている場面、長所、注意点を比較して読み取ってください。

手続向いている場面長所注意点
民事調停話合いで柔軟に解決したい費用が比較的低額、非公開、円満解決を目指せる相手が合意しなければ成立しない
支払督促金銭請求で、相手が争わない見込み書類審査中心、迅速、費用を抑えやすい異議が出ると通常訴訟へ移行
少額訴訟60万円以下の金銭請求原則1回の審理で迅速複雑な事件には不向き、証拠を早期提出する必要
通常訴訟争点がある、金額が大きい、証拠調べが必要判決により法的判断を得られる時間、費用、労力がかかる
民事保全相手が財産を処分するおそれ将来の強制執行を保全担保が必要なことが多く専門性が高い
強制執行判決・和解後も支払われない財産差押えで回収を図る相手財産の把握が課題

民事調停

民事調停は、勝ち負けを決めるのではなく、話合いによる合意で紛争解決を図る手続です。相手方との関係を完全に壊したくない場合、証拠はあるが訴訟までは避けたい場合、分割払いや謝罪など柔軟な条件を調整したい場合に有用です。

支払督促

支払督促は、金銭その他の代替物等の請求について、簡易迅速に債務名義を得ることを目的とする手続です。債務者は受け取ってから2週間以内に督促異議を申し立てることができ、異議が出ると通常訴訟に移行します。

少額訴訟

少額訴訟は、60万円以下の金銭支払を求める訴えについて、原則として1回の審理で紛争解決を図る手続です。最初の期日までにすべての言い分と証拠を提出する必要があり、複雑な事件には不向きです。

通常訴訟と管轄

通常訴訟では、訴状に請求の趣旨と請求の原因を記載し、手数料を納めることなどが必要です。2026年5月21日以降、書面申立てに加え、民事裁判書類電子提出システムであるmintsを利用したオンライン提出が可能となり、弁護士等の訴訟代理人には電子申立てが義務付けられています。

訴額が140万円以下の請求に係る民事訴訟は簡易裁判所、それ以外の一般的な民事訴訟は地方裁判所が第一審裁判所になるとされています。原則として被告の住所地を管轄する裁判所に提起しますが、不法行為に基づく損害賠償では不法行為が行われた土地を管轄する裁判所にも提起できる場合があります。

民事保全

相手方が財産を隠す、預金を移す、不動産を処分するおそれがある場合、判決前に民事保全を検討することがあります。仮差押えは、金銭債権について将来の強制執行を保全するため、債務者の財産を処分できないようにする手続とされています。専門性が高く、担保提供が必要になることも多いため、弁護士への相談が特に重要です。

Section 11

損害賠償請求は判決・和解後の回収まで考える

最終目的は勝つことだけではなく、債務名義と相手財産を踏まえて回収することです。

判決や和解で支払義務が認められても、相手が支払わなければ、強制執行を検討します。損害賠償請求の最終目的は、法的判断を得ることに加えて、現実に回収することです。

次の表は、強制執行で問題になる債務名義と差押え対象を整理しています。どの書面が執行の土台になるか、どの財産を特定できるかは回収可能性に直結するため重要です。左列で必要な土台を、右列で調査対象を読み取ってください。

区分代表例準備上の注意
債務名義確定判決、仮執行宣言付判決、和解調書、調停調書、仮執行宣言付支払督促、公正証書の一部原則として強制執行の前提になります。
差押え対象預金債権、給与債権、売掛金債権、不動産、動産、保険金請求権対象財産の特定や法的制限が問題になります。
回収不能リスク無資力、勤務先不明、銀行口座不明、法人実態不明初期段階から資力、保険加入、勤務先、資産状況を可能な範囲で確認します。

相手方が無資力の場合、高額な訴訟費用や弁護士費用をかけても実回収が難しいことがあります。請求の初期段階で、相手方の資力、保険加入、勤務先、法人の実態、資産状況を可能な範囲で確認することが重要です。

Section 12

損害賠償請求の時効 ― 先延ばしにしてはいけない理由

時効が完成し、相手方が援用すると、請求が認められない可能性があります。

損害賠償請求には時効があります。交渉が続いているからといって、当然に時効管理が済んでいるわけではありません。時効が迫る場合は、内容証明郵便による催告、訴訟提起、支払督促、調停、仮差押え等を検討する必要があります。

次の表は、このページで扱う主な時効期間を整理しています。時効は請求類型や生命・身体侵害の有無によって変わるため重要です。主観的な起算点と客観的な期間の違いを読み取ってください。

類型主な期間確認ポイント
一般債権権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年契約違反による損害賠償請求では基本的に検討します。
生命・身体侵害による債権客観的期間が20年に伸長される場合民法167条の適用が問題になります。
不法行為損害および加害者を知った時から3年、または不法行為の時から20年民法724条を検討します。
生命・身体を害する不法行為上記3年が5年に読み替え民法724条の2を検討します。
催告・裁判手続完成猶予や更新の検討催告だけで永続的に時効が止まるわけではありません。
重要時効が迫っていると感じたら、自己判断で様子を見るのではなく、早急に専門家へ相談する必要があります。催告による完成猶予には期間や再度催告の効果に制限があり、事案ごとの確認が必要です。
Section 13

損害賠償請求で弁護士に相談すべきタイミングと費用準備

重大性、専門性、時効、証拠散逸、相手方の態度を見て、早期相談を検討します。

損害額が大きい、相手方が事実や責任を強く争っている、時効が迫っている、証拠が消えそうである、財産移転のおそれがある、後遺障害・死亡・重大事故がある、専門性が高い、示談書への署名を求められている、相手方に弁護士がついた場合は、早期相談を検討してください。

次の一覧は、相談前に準備する資料と費用面の確認先を整理しています。相談時間は限られるため、資料をそろえることは見通しや費用の説明を受けやすくするうえで重要です。事実資料、損害資料、相手方情報、費用支援の順に読み取ってください。

1

相談時の資料

時系列表、関係者一覧、契約書・約款・見積書・発注書、メール、チャット、SNS履歴、写真、動画、録音を準備します。

事実整理
2

損害資料

診断書、領収書、修理見積書、損害計算表、相手方との交渉記録、届いている請求書や裁判所書類をまとめます。

金額確認
3

弁護士選び

対象分野の経験、説明の分かりやすさ、費用体系、見通しの説明、連絡体制、利益相反の有無を確認します。

相談先
4

費用支援・保険

法テラスの無料法律相談は、条件を満たす場合に1回30分、同一問題につき3回まで利用できることがあります。交通事故などでは弁護士費用特約や保険契約も確認します。

費用準備条件確認

経済的に余裕がない場合、法テラスの無料法律相談や弁護士・司法書士費用等の立替制度を利用できることがあります。立替制度では、収入・資産が一定基準以下であること、勝訴の見込みがないとはいえないこと、民事法律扶助の趣旨に適することの3条件を満たす必要があるとされています。

交通事故などでは、自動車保険、火災保険、個人賠償責任保険、弁護士費用保険により、弁護士費用が補償されることがあります。請求前に、自分や家族の保険契約を確認してください。

次の表は、損害賠償請求で想定される費用を整理しています。請求額だけでなく回収コストを見込むことは、手続を選ぶうえで重要です。郵送、調査、裁判所、弁護士、専門家、執行の各費用を読み取ってください。

費用内容
郵送費内容証明、配達証明、書類送付等
調査費登記、証拠保全、専門家調査等
裁判所費用申立手数料、訴訟費用等
弁護士費用相談料、着手金、報酬金、実費等
鑑定・専門家費用医療、建築、会計、IT等の専門判断
執行費用差押え申立て、予納金等

2026年5月21日以降の手続変更により、従来必要であった郵便費用が申立手数料に一本化された旨が案内されています。また、電子申立てを利用すると書面申立てより申立手数料が1,100円安くなると説明されています。

Section 14

損害賠償請求でやってはいけないこと

請求側の行動が、名誉毀損、脅迫、証拠の信用低下、時効リスクを招くことがあります。

相手に非があると思っても、請求側の対応しだいで別の法的リスクが生じることがあります。冷静な請求書、証拠保全、時効管理、署名前の確認が重要です。

次の一覧は、損害賠償請求の過程で避けるべき行動を整理しています。被害者側だったはずの人が、逆に反訴や別請求の対象になるリスクを避けるため重要です。公開、改ざん、脅し、署名、放置の各危険を読み取ってください。

SNSで相手を一方的に晒す

氏名、住所、顔写真、勤務先、家族情報などを公開すると、名誉毀損、プライバシー侵害、業務妨害等の問題が発生するおそれがあります。

証拠を改ざんする

メール、チャット、写真、録音、領収書を加工・改ざんすると、証拠の信用性が失われ、刑事・民事上の責任問題に発展することがあります。

相手を脅す

「払わなければ会社に言う」「ネットに公開する」などの表現は、恐喝、脅迫、名誉毀損等のリスクを生みます。

安易に示談書へ署名する

清算条項、守秘義務、違約金、請求放棄、免責条項などが含まれている場合があります。一度署名すると撤回が難しい場合があります。

時効直前まで放置する

交渉が続いていても、時効管理は別問題です。時効が迫る場合は、法的に有効な措置を検討する必要があります。

Section 15

損害賠償請求のケース別準備ポイント

契約、交通事故、ネット投稿、建築、医療、労働では集める資料が変わります。

損害賠償請求といっても、事案類型によって必要な証拠や専門性は大きく異なります。最初に類型を見極めることで、準備の優先順位を決めやすくなります。

次の表は、ケース別に準備すべき資料を整理しています。類型ごとの争点が異なるため、同じ「損害賠償」でも証拠の集め方が変わる点が重要です。自分の事案に近い行を見て、追加で必要になりやすい資料を読み取ってください。

ケース主な準備ポイント
契約不履行契約書、発注書、仕様書、見積書、請求書、納品書、検収記録、メール、議事録を整理します。
交通事故事故証明、実況見分、ドライブレコーダー、車両写真、修理見積、診断書、通院記録、保険会社とのやり取り、休業損害資料が重要です。
名誉毀損・ネット投稿投稿内容、URL、投稿日時、投稿者アカウント、閲覧可能範囲、拡散状況、削除前の証拠化が重要です。発信者情報開示を検討する場合は、ログ保存期間が問題になるため早期対応が不可欠です。
建築・リフォーム契約書、図面、仕様書、工程表、見積書、追加工事の合意、施工写真、第三者検査、補修見積が重要です。
医療・介護事故診療録、看護記録、検査結果、説明文書、同意書、画像資料、時系列、死亡診断書、専門医意見などが重要です。
労働トラブル雇用契約書、就業規則、賃金台帳、勤怠記録、業務命令、ハラスメント記録、録音、メール、医師の診断書、労基署相談記録などが重要です。未払賃金と損害賠償では、法的構成や時効が異なることがあります。

システム開発、建築、業務委託、広告制作、コンサルティングなどでは、成果物の仕様、納期、検収条件、修正範囲、追加費用の合意が争点になります。交通事故では、治療経過、症状固定、後遺障害、逸失利益、慰謝料など専門的論点が多く、保険会社の提示額が妥当かどうかも検討が必要です。

Section 16

損害賠償請求のよくある質問

一般的な制度説明として、判断が分かれやすい点を整理します。

Q1. 損害賠償請求を本人で進められる場合はありますか。

一般的には、少額で争点が単純な場合、本人で請求書を送ったり、民事調停や少額訴訟を利用したりすることはあります。ただし、相手が争っている、証拠が複雑、損害額が大きい、時効が迫っている、後遺障害や専門的判断がある場合には結論や進め方が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 請求書を送る前に弁護士へ相談する必要はありますか。

一般的には、金額が大きい場合、相手との関係が悪化している場合、請求文言が後で不利に使われるおそれがある場合には、送付前の相談が有用とされています。ただし、事案の内容、証拠、時効、相手方の態度によって必要性は変わります。具体的な文言や送付方法は、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q3. 内容証明を送れば時効は止まりますか。

一般的には、内容証明による催告は時効完成猶予との関係で意味を持つことがあります。ただし、永続的に時効を止めるものではなく、催告後に必要な期間内に訴訟等の措置を取る必要がある場合があります。時効が迫る場合は、具体的な期限を資料で確認し、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q4. 相手が「お金がない」と言っている場合、請求を検討する意味はありますか。

一般的には、無資力であれば回収は難しくなりますが、保険、勤務先、預金、不動産、売掛金などが存在する場合もあります。ただし、相手方の資力、財産情報、保険契約、分割払いの実現可能性によって結論は変わります。具体的な回収見通しは、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q5. 慰謝料の目安はどう考えますか。

一般的には、慰謝料は被害の内容、期間、悪質性、通院、後遺障害、社会的影響、過去の裁判例などを踏まえて判断されます。ただし、事案の類型や証拠関係によって金額の見通しは変わります。具体的な相場感や請求額は、類型ごとの実務に詳しい弁護士等へ相談する必要があります。

Q6. 弁護士費用も相手に請求できる場合はありますか。

一般的には、契約で弁護士費用負担条項がある場合や、不法行為に基づく請求で一定範囲の弁護士費用相当額が考慮される場合があります。ただし、実際に支払った弁護士費用の全額が当然に相手負担になるわけではなく、契約内容や請求類型で結論が変わります。具体的には弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q7. 示談後に追加請求が問題になる場合はありますか。

一般的には、示談書の内容、特に清算条項の有無や範囲によって追加請求が制限される可能性があります。ただし、将来損害が未確定か、例外条項があるか、事案の性質によって結論は変わります。署名前に、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Section 17

損害賠償請求の実務チェックリスト

請求前、相談前、裁判手続検討時に、抜け漏れを確認します。

損害賠償請求は、準備すべき資料や判断事項が多いため、チェックリストで確認すると抜け漏れを減らせます。特に、時効、証拠、相手方情報、回収可能性は早めに確認することが重要です。

次の表は、請求前に確認する事項を整理しています。請求書を送る前に土台ができているかを確認するため重要です。事実、相手、証拠、根拠、金額、時効、回収可能性の順に読み取ってください。

請求前チェック確認内容
事実整理何が起きたかを時系列で整理した
相手方特定相手方を特定した
証拠整理契約書、メール、写真、領収書等の証拠を整理した
請求根拠契約違反、不法行為、特別法などを検討した
損害計算損害項目を分けて計算した
時効時効の期限を確認した
回収可能性相手方の資力、保険、財産を可能な範囲で確認した
請求書文言を冷静に作成した
示談条件示談条件の最低ラインを決めた
相談予約必要に応じて弁護士相談を予約した

次の表は、弁護士相談時と裁判手続検討時の確認事項を整理しています。相談時間を有効に使い、手続の選択を誤らないために重要です。資料準備と手続条件を分けて読み取ってください。

場面確認する事項
弁護士相談時系列表、関係者一覧、契約書・規約、証拠一式、損害計算表、相手方とのやり取り、届いた書面、希望する解決内容、予算、保険・法テラス利用可能性
裁判手続請求額が140万円以下か、60万円以下で少額訴訟に適するか、相手が争わない見込みがあり支払督促に適するか、話合いの余地があり民事調停に適するか、証人尋問や専門的立証が必要か、仮差押えを検討すべき事情があるか、判決後の回収可能性があるか、時効が迫っていないか
Section 18

損害賠償請求のまとめ ― 根拠・証拠・金額・回収で考える

感情的な請求ではなく、立証と回収まで見据えた設計が解決可能性を高めます。

損害賠償請求の手順と必要な準備を一言でまとめるなら、根拠、証拠、金額、回収の四点です。これらを早い段階で整理することが、時効や証拠散逸を防ぎ、現実的な解決可能性を高めます。

次の重要ポイントは、ページ全体の結論を4つに整理したものです。どれか1つだけでは足りず、根拠、証拠、金額、回収をそろえることが重要です。各項目を、請求前に自分の資料で説明できるかという視点で読み取ってください。

損害賠償請求は「根拠・証拠・金額・回収」の四点で整える

契約違反か、不法行為か、特別法かを整理し、事実・責任・損害・因果関係を証拠で裏付け、損害項目ごとの計算表を作り、交渉、調停、支払督促、少額訴訟、通常訴訟、保全、執行の中から現実的な手段を選びます。

損害賠償請求は、感情的には「相手に責任を取ってほしい」という問題ですが、実務的には「法的根拠を構成し、証拠で裏付け、回収可能な形に落とし込む」作業です。早い段階で資料を整理し、時効や証拠散逸を防ぎ、必要に応じて弁護士へ相談することが重要です。

Reference

損害賠償請求の参考資料・出典

法令・制度

  • e-Gov法令検索「民法」
  • 法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」

裁判所手続

  • 裁判所「民事事件」
  • 裁判所「民事訴訟」
  • 裁判所「裁判手続 民事事件Q&A」
  • 裁判所「少額訴訟」
  • 裁判所「支払督促」
  • 裁判所「民事調停」
  • 大阪地方裁判所「民事保全手続とは」

郵便・相談制度

  • 日本郵便「内容証明」
  • 日本郵便「配達証明」
  • 法テラス「無料法律相談のご利用の流れ」
  • 法テラス「弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の流れ」
  • 日本弁護士連合会「法律相談」
  • 日本弁護士連合会「弁護士検索」