相続 空き家の3,000万円特別控除、相続 税の取得費加算、相続登記 義務は、それぞれ別の期限で動きます。
相続不動産を売却するなら3年以内が税金面で有利な理由は、早く売れば常に得をするという単純な話ではありません。譲渡所得税を軽減し得る期限付き制度と、売却の前提になる相続登記の期限が重なっているため、相続後の初動が税引後の手取りに影響しやすいという意味です。
次の比較表は、相続不動産の早期売却で混同されやすい三つの期限を整理したものです。列ごとに制度名、期限の起算点、実務上の効果を分けているため、どの制度が税額を直接減らし、どの制度が売却準備に関わるのかを読み取れます。
| 論点 | 期限の考え方 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 相続空き家の3,000万円特別控除 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで | 一定の空き家を売ると譲渡所得から最高3,000万円、一定の場合は2,000万円を控除できる可能性があります。 |
| 相続税の取得費加算 | 相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日まで | 支払った相続税の一部を取得費に加え、譲渡所得を圧縮できる可能性があります。 |
| 相続登記の義務 | 不動産取得を知った日などから3年以内 | 税額を直接減らす制度ではありませんが、売却に必要な名義変更を放置しにくくなりました。 |
三つの期限は似ていますが、法的な性質は異なります。空き家特例と取得費加算は所得税・復興特別所得税・住民税を軽減し得る制度であり、相続登記義務は権利関係を整えるための制度です。
次の重要ポイントは、読者が最初に押さえるべき結論を一文にまとめたものです。期限だけを追うのではなく、遺産分割、登記、税額試算、売却準備を並行して進める必要があることを読み取ってください。
相続開始後できるだけ早く、遺産分割、相続登記、税額試算、測量・解体・確認書取得を進め、空き家特例と取得費加算の期限を失わない時期に売却判断を完了させることが重要です。
このページでは、譲渡所得税の基本構造、取得費加算、空き家特例、相続登記義務、確定申告、専門職ごとの実務設計を横断して解説します。個別事情で結論は変わるため、具体的な税額や対応方針は税理士、弁護士、司法書士等の専門家に確認する必要があります。
相続した時の評価額ではなく、被相続人の取得費と取得時期を引き継ぐ点が大きなポイントです。
相続不動産を売ったときに主に問題になる税金は、所得税、復興特別所得税、住民税です。これらはまとめて譲渡所得税と呼ばれることがありますが、計算上は譲渡所得を出し、特別控除を差し引き、税率を掛ける順番で考えます。
次の計算式は、売却益に課税される仕組みを表しています。上から順に、収入から取得費と譲渡費用を引き、使える特別控除を差し引き、最後に税率を掛ける流れを読み取ってください。
相続不動産で特に重要なのは、相続税評価額をそのまま取得費にできるわけではない点です。原則として、被相続人が購入したときの購入代金、購入手数料、改良費、設備費などを基に取得費を計算し、建物は所有期間中の減価償却費相当額を差し引きます。
次の比較表は、長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率差を示しています。所有期間の判定時点と税率が大きく違うため、相続後すぐに売ると短期扱いになるのかという不安を整理するうえで重要です。
| 区分 | 判定の目安 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税込みの実務上の合計 |
|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日に所有期間が5年超 | 15% | 5% | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日に所有期間が5年以下 | 30% | 9% | 39.63% |
相続や贈与で取得した土地・建物は、原則として被相続人や贈与者の取得時期を引き継ぎます。たとえば父が30年前に購入した実家を子が相続後1年で売った場合、子の所有期間だけで短期譲渡になるとは限らず、父の取得時期から判定される可能性があります。
取得費が分からない場合は、譲渡価額の5%相当額を取得費とする扱いが問題になります。先祖代々の土地や古い実家では取得費資料が残っていないことが多く、売却額の大部分が譲渡所得として計算されやすくなります。
相続税を負担した人が一定期間内に売却すると、支払った相続税の一部を取得費に加えられる可能性があります。
相続税の取得費加算は、相続財産を売却したときの譲渡所得税を軽減し得る制度です。相続人は、相続税の課税対象になった財産を売ると、相続税を負担したうえで譲渡所得税も負担することがあります。この負担感を調整するため、一定期間内の譲渡について相続税額の一部を取得費に加えることが認められています。
次の一覧は、取得費加算の要件と期限をまとめています。どの人が対象になり、どの財産を、どの期限までに売る必要があるのかを順番に確認するために重要です。
売却する財産を相続または遺贈により取得した人が対象になります。
その財産を取得した人に相続税が課税されていることが重要です。税額がない場合は効果がない、または使えない可能性があります。
相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡している必要があります。
取得費加算の期限は、一般に言われる単純な3年ではありません。次の時系列は、相続開始から相続税申告期限、取得費加算の売却期限までの順番を表しており、通常は約3年10か月という説明になる理由を読み取れます。
取得費加算では、相続開始のあった日の翌日から期間を見ます。
相続税の申告期限は、通常、死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。
通常案件では、相続開始から約3年10か月以内が一つの目安になります。ただし、個別の最終日は必ず計算する必要があります。
取得費に加算する相続税額は、譲渡した財産の相続税評価額が、その人の取得財産等の価額に占める割合を使って計算します。次の計算例では、相続税800万円、取得財産等8,000万円、売却する土地の相続税評価額4,000万円という前提で、どの程度の加算額と軽減効果が出るかを確認できます。
| 項目 | 金額・計算 | 読み方 |
|---|---|---|
| 相続人Aの相続税額 | 800万円 | 取得費加算の原資になる税額です。 |
| Aが取得した相続財産等の価額 | 8,000万円 | 分母として、Aが取得した財産全体を見ます。 |
| 売却する土地の相続税評価額 | 4,000万円 | 分子として、売却財産の評価額を見ます。 |
| 取得費に加算できる相続税額 | 800万円 × 4,000万円 ÷ 8,000万円 = 400万円 | この400万円が譲渡所得を圧縮する方向に働きます。 |
| 長期譲渡での概算軽減額 | 400万円 × 20.315% = 81万2,600円 | 税率を掛けると、概算の税負担軽減を把握できます。 |
ただし、加算できる金額は、この特例を適用しないで計算した譲渡益を超えることはできません。また、譲渡した財産ごとに計算します。相続税申告をしたものの税額がゼロだった人、基礎控除内だった人、配偶者税額軽減等で納税額がない人では、取得費加算の効果がない、または使えない可能性があります。
古い戸建て実家を空き家のまま売る場面では、取得費加算より大きな効果が出ることがあります。
相続空き家の3,000万円特別控除は、相続した被相続人の居住用家屋やその敷地を売却した場合に、一定要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。令和6年1月1日以後の譲渡で、家屋および敷地等を取得した相続人の数が3人以上である場合は、控除額が2,000万円までとされています。
次の重要ポイントは、控除額が税額にどの程度影響し得るかを示しています。長期譲渡所得の税率を掛けるだけでも、3,000万円控除の税額インパクトが数百万円規模になり得ることを読み取れます。
長期譲渡所得で3,000万円控除が使える場合、単純計算では約609万円の税負担軽減につながる可能性があります。実際の効果は譲渡所得、適用要件、他の特例との関係で変わります。
空き家特例の期限は、取得費加算とは異なります。次の時系列は、相続開始日から3年経過日、その年の12月31日までの関係を表しており、「死亡日からちょうど3年」とは限らないことを読み取るために重要です。
ここから3年を経過する日を確認します。
この日が属する年を確認します。
空き家特例では、この日までの譲渡が期限の目安になります。
次の比較表は、空き家特例で特に確認される家屋・利用状況・売却条件を整理したものです。左列の要件を満たすかだけでなく、右列の確認資料や実務上の注意まで見て、早期に準備すべき点を読み取ってください。
| 確認項目 | 主な内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 家屋の基本要件 | 相続開始直前に被相続人の居住用、昭和56年5月31日以前の建築、区分所有建物登記なし、被相続人以外の居住者なし | 典型例は一人暮らしだった親の古い戸建て実家です。マンションや同居者がいる家屋は慎重な確認が必要です。 |
| 相続後の利用 | 相続時から譲渡時まで事業、貸付け、居住の用に供されていないこと | 売れるまで一時的に貸す、親族を住ませる、倉庫として使う行為は特例を失わせる可能性があります。 |
| 耐震・解体 | 家屋売却では耐震基準、取壊し後の敷地売却では取壊し後の敷地利用状況が問題になります | 令和6年1月1日以後の譲渡では、譲渡後の翌年2月15日までの耐震改修または全部取壊しが関係する場合があります。 |
| 売却代金 | 1億円以下であること | 分割売却や他の相続人の売却分も含めて判定する場合があります。 |
| 他の特例 | 同じ家屋・敷地等で取得費加算など他の特例を受けていないこと | 取得費加算と空き家特例のどちらが有利かは税額試算で比較します。 |
令和6年以後は、譲渡時点で耐震基準を満たしていない家屋でも、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに一定の耐震基準を満たすことになった場合、または同日までに全部取壊し等を行った場合に、一定要件のもとで対象となる余地があります。
売却代金1億円以下の判定では、本人の売却額だけを見れば足りるとは限りません。同じ被相続人居住用家屋と一体として利用していた部分を分割売却している場合や、他の相続人が売却している場合には、一定期間内の合計額で判定する必要があります。
取得費資料が乏しいと概算取得費5%になりやすく、控除や取得費加算の価値が高まりやすくなります。
相続不動産では、購入時の契約書、領収書、仲介手数料の資料、建築請負契約書、増改築資料などが見つからないことが珍しくありません。取得費が分からない場合には、譲渡価額の5%相当額を取得費とする扱いがあります。
次の計算例は、取得費資料が見つからない古い実家を5,000万円で売った場合を表しています。各列は、売却額、概算取得費、譲渡費用、譲渡所得、税額の順に並べているため、5%取得費だと課税対象が大きく出やすいことを読み取れます。
| 項目 | 金額・計算 | 意味 |
|---|---|---|
| 譲渡価額 | 5,000万円 | 売却による収入金額です。 |
| 概算取得費 | 5,000万円 × 5% = 250万円 | 取得費資料が乏しい場合の概算です。 |
| 譲渡費用 | 200万円 | 仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売却のための取壊し費用などが代表例です。 |
| 譲渡所得 | 5,000万円 - 250万円 - 200万円 = 4,550万円 | 特例前の課税対象に近い金額です。 |
| 長期譲渡での概算税額 | 4,550万円 × 20.315% = 約924万円 | 税率を掛けると大きな税負担になり得ます。 |
次の比較表は、同じ5,000万円売却でも、空き家特例が使える場合と使えない場合の税額差を示しています。3,000万円控除の有無で課税譲渡所得が大きく変わるため、期限内に要件確認を進める重要性を読み取れます。
| 区分 | 課税譲渡所得 | 概算税額 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 特例なし | 4,550万円 | 約924万円 | 約609万円 |
| 空き家特例あり | 4,550万円 - 3,000万円 = 1,550万円 | 約315万円 |
この差額は、空き家特例の3,000万円控除に長期譲渡所得の税率20.315%を乗じた金額と一致します。購入価額が明確で取得費が高い不動産、売却益が少ない不動産、売却損が出る不動産では、3年以内に売ることの税務メリットは相対的に小さくなる可能性があります。
登記は税額を直接減らしませんが、売却を期限内に終えるための前提になります。
相続不動産を売るには、被相続人名義のままでは実務上支障が出やすくなります。買主に所有権移転登記をするためには、相続人側の権利関係を明確にし、通常は相続登記を経る必要があります。
次の時系列は、相続登記義務と売却準備の関係を示しています。税制上の3年期限を活かすには、登記義務を最低限の期限として見るのではなく、売却準備の初期工程として処理する必要があることを読み取れます。
相続により不動産の所有権を取得したことを知った日などが登記義務の起算点になります。
売却前に、誰が売主になるのか、共有で売るのか、換価分割にするのかを整理します。
正当な理由なく義務を怠ると10万円以下の過料対象になると説明されています。
譲渡所得の申告は、原則として譲渡した日の属する年の翌年2月16日から3月15日までに行います。
相続登記を放置すると、売却の決済前に戸籍収集・遺産分割協議・登記申請が間に合わない、相続人の一人が死亡して関係者が増える、共有者の意思確認が難しくなる、測量や境界確認が遅れるといった問題が起こり得ます。
次の判断の流れは、年末の売買契約や翌年決済が絡む場合に、契約日、引渡日、確定申告年分、特例期限をどう確認するかを表しています。上から順に確認し、分岐では期限判定への影響があるかを読む構成です。
契約締結日が年末に近い場合は特に注意します。
原則の譲渡日は引渡日ですが、契約日基準で申告できる場合があります。
空き家特例、取得費加算、確定申告年分が変わる可能性を検討します。
売買契約書、引渡日、登記日、代金決済日の整合性を確認します。
譲渡所得の内訳書、計算明細書、確認書などを確定申告へつなげます。
特例は、売っただけで自動的に適用されるわけではありません。取得費加算では、相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書や譲渡所得の内訳書等が必要になります。空き家特例では、譲渡所得の内訳書、登記事項証明書等、被相続人居住用家屋等確認書、売買契約書の写しなどが問題になります。
税務、遺産分割、登記、価格、測量、確認書を別々に進めると期限を落としやすくなります。
相続不動産の売却は税金だけで完結しません。遺産分割、登記、価格査定、境界、解体、確認書、確定申告が一体になって進むため、どの専門職が何を確認するのかを早期に分ける必要があります。
次の一覧は、専門職ごとの主な役割を整理したものです。左側の記号は役割の目印で、右側には確認すべき内容をまとめています。3年という期限内にどの作業を並行させるべきかを読み取ってください。
特例なし、取得費加算、空き家特例、概算取得費5%、譲渡費用、共有者ごとの税額を比較します。
税額試算特例選択遺言、遺産分割協議、共有売却、代償分割、換価分割、遺留分や特別受益などの紛争要素を整理します。
合意形成紛争予防戸籍収集、法定相続情報、遺産分割協議書、相続登記、住所・氏名変更登記、売却決済の登記を確認します。
相続登記決済準備市場価格、販売戦略、重要事項説明、契約条件、借地権・底地・無道路地などの評価論点を確認します。
価格判断売却戦略境界確認、確定測量、越境、分筆、登記面積と実測面積の差を整理します。
境界測量被相続人居住用家屋等確認書、電気・ガス・水道の使用状況、写真、住民票除票、介護関係資料などを整理します。
確認書資料整理税理士の試算では、特例なしの税額、取得費加算を使った場合、空き家特例を使った場合、取得費資料を発掘した場合と概算取得費5%の場合、解体費・測量費・仲介手数料等を譲渡費用に入れた場合を比較します。
次の比較表は、相続不動産売却で早めに洗い出したい実務上の詰まりどころをまとめたものです。左列の問題がある場合、中央列の確認が遅れるほど、右列のように期限内売却が難しくなることを読み取ってください。
| 詰まりやすい論点 | 確認する内容 | 期限への影響 |
|---|---|---|
| 相続人の確定 | 未成年者、成年被後見人、行方不明者、海外居住者の有無 | 遺産分割協議や売買契約への参加方法が変わります。 |
| 共有売却 | 共有者全員の合意、売買契約・決済への協力 | 一人でも合意できないと売却時期が大きくずれます。 |
| 境界・測量 | 境界確認書、確定測量図、越境物、接道 | 買主や金融機関の条件を満たせず、決済が遅れることがあります。 |
| 解体・耐震 | 建物状態、解体時期、耐震改修、残置物処分 | 空き家特例の要件や売買契約条件に直結します。 |
| 確認書取得 | 住民票除票、閉栓証明、写真、介護保険関係資料 | 確定申告時の添付書類が間に合わないリスクがあります。 |
相続人間でもめている場合、期限内売却の最大の障害は税務ではなく合意形成です。遺留分、使い込み疑い、特別受益、寄与分、親の介護負担、居住者の退去、売却価格への不満があると、3年は短くなります。
死亡時に実家へ住んでいなかった場合でも、一定要件を満たすと対象になり得ます。
被相続人が死亡時に老人ホーム等へ入所しており、実家に住んでいなかった場合でも、直ちに相続空き家特例の対象外と決まるわけではありません。一定の要介護認定・要支援認定等、施設入所の事情、入所後の家屋利用状況などを確認する必要があります。
次の判断の流れは、老人ホーム入所がある場合に確認する順番を表しています。上から順に、入所理由、家屋の利用実態、第三者利用の有無、資料の有無を見て、対象可能性を検討する構成です。
入所の背景となる認定や施設の種類を確認します。
家財保管、一時滞在、電気・ガス・水道の使用状況を見ます。
相続開始前後に家屋が別用途で使われていないかを確認します。
親族居住や賃貸利用があると対象外となる可能性があります。
住民票、介護関係資料、閉栓証明、写真などで実態を確認します。
実務上は、老人ホーム入所日、要介護認定日、住民票の異動、家財の保管状況、電気・ガス・水道の使用状況、親族の居住実態、賃貸利用の有無が争点になりやすいです。老人ホームに入っていたという一点だけで判断せず、資料で実態を確認することが重要です。
相続税が発生していない場合でも、空き家特例の要件を満たせば大きな差が出ることがあります。
ここでは、母が40年前に購入した戸建て実家を子1人が相続し、5,000万円で売却する例を考えます。取得費資料は見つからず、概算取得費5%、譲渡費用200万円、所有期間は母の取得時期を引き継ぐため長期譲渡、相続税は発生していない、空き家特例は要件を満たすという前提です。
次の比較表は、事例の前提と税額計算を一つにまとめたものです。前提、特例なし、空き家特例あり、税額差の順に並んでいるため、どの数字が税額差を生むのかを読み取れます。
| 区分 | 内容 | 計算結果 |
|---|---|---|
| 事例前提 | 売却価額5,000万円、概算取得費250万円、譲渡費用200万円、長期譲渡、相続税なし、空き家特例の要件あり | 取得費加算は効果がなく、空き家特例が中心論点です。 |
| 特例なし | 譲渡所得 = 5,000万円 - 250万円 - 200万円 | 4,550万円 × 20.315% = 約924万円 |
| 空き家特例あり | 課税譲渡所得 = 4,550万円 - 3,000万円 | 1,550万円 × 20.315% = 約315万円 |
| 税額差 | 約924万円 - 約315万円 | 約609万円 |
この例では、相続税が発生していないため取得費加算は使えない前提です。それでも、空き家特例の3,000万円控除により、概算で約609万円の税負担軽減が生じます。
税額だけでなく、売却価格、管理コスト、共有者間の合意、市況、境界問題まで含めて判断します。
税金面で有利になり得るからといって、すべての相続不動産を3年以内に売る判断が最適とは限りません。税額が減っても売却価格が大きく下がれば、最終的な手取りは減る可能性があります。
次の一覧は、早期売却の税務メリットが限定的になりやすい要素を整理しています。各項目は、税額以外の手取りや紛争リスクに影響するため、売却期限だけで判断しないための確認材料として読んでください。
売却損や少額の利益では、特例による税額軽減効果が小さくなります。
取得費加算は相続税が課税されていることが要件であり、税額がない場合は効果がない可能性があります。
マンション、同居者あり、相続後の賃貸利用、1億円超の売却などでは慎重な確認が必要です。
期限に焦って安売りすると、税金が減っても手取りが減ることがあります。
安易な売却合意が後日の遺産分割紛争や損害賠償リスクにつながる可能性があります。
問題を整理すれば高く売れる不動産では、準備不足の早期売却が不利になることがあります。
次のチェック表は、売却前に税務・法務・登記・不動産実務で確認すべき項目をまとめています。列ごとに分野と確認内容を分けているため、どの専門職にどの資料を渡すべきかを読み取れます。
| 分野 | 主な確認項目 | 目的 |
|---|---|---|
| 税務 | 取得時期、取得費資料、相続税の有無、取得費加算期限、空き家特例期限、売却代金1億円判定、確定申告書類 | 税額と特例選択を誤らないためです。 |
| 法務 | 遺言、遺産分割協議、共有売却、未成年者・成年被後見人・行方不明者・海外居住者、遺留分や特別受益 | 売主になれる人と合意形成を確認するためです。 |
| 登記 | 相続登記、住所・氏名変更、未登記建物、法定相続情報、遺産分割協議書の記載 | 売却決済までに所有権移転の前提を整えるためです。 |
| 不動産実務 | 境界確認、確定測量、越境、私道、接道、再建築可否、解体、耐震、残置物、アスベスト | 買主が安心して購入できる条件を整えるためです。 |
最終的に相続人が得るのは、税引後の手取りです。税額だけでなく、売却価格、管理コスト、修繕費、固定資産税、解体費、測量費、仲介手数料、紛争コスト、時間価値を総合して判断する必要があります。
制度ごとの期限や要件は異なるため、回答は一般的な考え方として確認してください。
一般的には、制度によって期限の考え方が異なるとされています。相続空き家特例は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、取得費加算は相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日まで、相続登記義務は不動産取得を知った日などから3年以内です。具体的な最終日は、相続開始日、申告期限、売買契約や引渡しの時期によって変わるため、専門家に確認する必要があります。
一般的には、取得費加算は相続税が課税されていることが要件とされています。そのため、相続税がゼロの場合は通常効果がない可能性があります。一方で、相続空き家特例は相続税の発生有無だけで決まる制度ではなく、家屋や利用状況などの要件を満たせば適用できる可能性があります。
一般的には、空き家特例では相続の時から譲渡の時まで事業、貸付け、居住の用に供されていないことが重要とされています。短期間の貸付けでも結論に影響する可能性があります。具体的な適用可否は、利用実態や証拠資料によって変わるため、税理士等に確認する必要があります。
一般的には、老人ホーム等へ入所していた場合でも、要介護認定等、施設の種類、入所後の家屋利用状況、家財保管、事業・貸付け・他人居住の有無など一定要件を満たすと対象になり得るとされています。個別事情によって結論が変わるため、資料を整理して専門家へ確認する必要があります。
一般的には、買主への所有権移転登記の前提として相続登記が必要になることが多いとされています。相続登記は2024年4月1日から義務化され、一定の起算点から3年以内の申請義務があります。具体的な手順は、相続人の状況や遺産分割の有無で変わるため、司法書士等に確認する必要があります。
一般的には、3年を過ぎても売却自体が禁止されるわけではありません。ただし、空き家特例や取得費加算といった税務上の優遇を失う可能性があります。売却価格の上昇が税務メリット喪失を上回る場合もあり得るため、税額と市場価格を比較する必要があります。
一般的には、共有者ごとに適用可能性を検討することになります。ただし、令和6年1月1日以後の譲渡で、被相続人居住用家屋および敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合、控除額は2,000万円までとされています。また、1億円以下の判定では他の相続人や分割売却分を含めて判断する場合があるため、具体的には税理士等へ確認する必要があります。
3年を単なる期限ではなく、税務・登記・売却準備を設計する期間として使うことが重要です。
相続不動産を売却するなら3年以内が税金面で有利な理由は、一定期間内に売却すれば、相続税の取得費加算または相続空き家の3,000万円特別控除により、譲渡所得税・住民税を大きく圧縮できる可能性があるためです。
次の判断の流れは、相続開始後にどの順番で準備を進めるかをまとめています。上から順に、相続関係、登記、取得費、税務特例、不動産実務、売却、確定申告へ進むため、抜けやすい工程を確認できます。
誰が売主になるのかを整理します。
相続登記と売却決済の前提を整えます。
概算取得費5%、取得費加算、譲渡費用を比較します。
同じ資産でどちらが有利かを税額で確認します。
売買条件と特例要件を同時に整えます。
売却後は必要書類を添えて確定申告します。
空き家特例は3年経過日の属する年の12月31日まで、取得費加算は相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日まで、相続登記義務は不動産取得を知った日などから3年以内です。この違いを理解しないまま売却活動を始めると、期限管理を誤る可能性があります。
相続不動産の売却は、税金、遺産分割、登記、境界、建物状態、買主との契約、親族間の感情、将来の紛争予防が一体となった総合実務です。税理士、弁護士、司法書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、行政書士等が連携し、3年という時間を設計期間として使うことが、最終的な手取りと紛争予防の両面で合理的です。