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配偶者居住権の設定には
遺言書か遺産分割協議が必要か

長期の配偶者居住権は、住んでいた事実だけで当然に成立する制度ではありません。遺贈、遺産分割、家庭裁判所の審判、死因贈与、登記と税務評価まで、相続実務で確認する順番を整理します。

1028条 取得要件の中心
4経路 遺贈・分割・審判・死因贈与
2020年 4月1日施行
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配偶者居住権の設定には 遺言書か遺産分割協議が必要か

長期の 配偶者居住権は、住んでいた事実だけで当然に成立する制度ではありません。

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配偶者居住権の設定には 遺言書か遺産分割協議が必要か
長期の 配偶者居住権は、住んでいた事実だけで当然に成立する制度ではありません。
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  • 配偶者居住権の設定には 遺言書か遺産分割協議が必要か
  • 長期の 配偶者居住権は、住んでいた事実だけで当然に成立する制度ではありません。

POINT 1

  • 配偶者居住権の設定には原則として取得原因が必要
  • 遺言書か遺産分割協議かという二択に見えますが、調停・審判や死因贈与も含めて確認します。
  • 「住んでいた事実」と「長期の権利取得」は別に考える
  • 長期の配偶者居住権は、配偶者が被相続人の家に住んでいたという事実だけで当然に成立する権利ではありません。
  • 実務では、遺言書による遺贈、遺産分割協議書、調停調書、審判書が中心になります。

POINT 2

  • 配偶者居住権とは所有権と住む権利を分ける制度
  • 自宅をもらう制度ではなく、自宅に住む権利を所有権から切り離して取得する制度です。
  • 典型例は、夫が亡くなり、相続人が妻と子である場面です。
  • 自宅の所有権を子が取得し、妻が配偶者居住権を取得すれば、妻は住み続けながら生活資金を確保しやすくなります。
  • 配偶者居住権は所有権そのものではありません。

POINT 3

  • 配偶者居住権の成立要件は民法1028条から確認する
  • 配偶者以外との共有
  • 借家に住んでいた場合
  • 被相続人が賃借していた建物は、配偶者居住権ではなく賃借権、借地借家法、契約承継などの問題として検討します。

POINT 4

  • 配偶者居住権の設定方法は遺言書・遺産分割協議だけではない
  • 1. 相続開始時に配偶者が居住していたか:長期権を検討する前提として、生活の本拠だったかを確認します。
  • 2. 遺言書に配偶者居住権の遺贈があるか:対象建物、存続期間、所有権の承継先、登記協力が読み取れるかを見ます。
  • 3. 遺贈を根拠に登記・税務へ進む:遺言執行者の有無や遺留分も確認します。
  • 4. 遺産分割で取得できるか検討:合意できない場合は調停・審判の必要性を確認します。
  • 5. 死因贈与契約がある場合は別途精査:契約の成立、撤回、遺留分、税務を個別に確認します。

POINT 5

  • 配偶者居住権は住んでいたら自動であるという誤解に注意
  • 長期の配偶者居住権と配偶者短期居住権は、要件・期間・登記の扱いが異なります。
  • 「夫婦で住んでいた家だから、残された配偶者は当然に一生住める」という理解は、長期の配偶者居住権については正確ではありません。
  • 相続開始時に居住していたことは必要条件ですが、遺産分割、遺贈、死因贈与などの取得原因が別に必要です。
  • 一方で、配偶者短期居住権は別制度です。

POINT 6

  • 遺言書で配偶者居住権を設定する実務と文言の注意点
  • 1. 配偶者へ配偶者居住権を遺贈する:建物の表示を登記事項証明書に合わせ、建物全部または対象範囲を明確にします。
  • 2. 存続期間を定める:終身を基本にするか、一定期間にするかを明記します。
  • 3. 建物所有権の承継先を定める:所有権を取得する相続人と、居住権を取得する配偶者を分けて書きます。
  • 4. 登記協力と遺言執行を整える:所有者が登記に協力すること、遺言執行者を置くかどうかを検討します。

POINT 7

  • 遺産分割協議で配偶者居住権を設定する実務
  • 協議書には取得原因、所有者、存続期間、登記協力、費用負担を明確に残します。
  • 一人でも反対する相続人がいる場合、協議書だけで配偶者居住権を取得させることはできません。
  • 遺産分割協議書に入れる主な項目を一覧にしました。
  • 協議書の骨格を、実務上の順番に沿って整理した一覧です。

POINT 8

  • 配偶者居住権の調停・審判と登記で確認すること
  • 1. 取得原因を確認する:遺言書、遺産分割協議書、調停調書、審判書、死因贈与契約書を確認します。
  • 2. 建物所有権の相続登記を整える:被相続人名義のままでは、配偶者居住権設定登記を円滑に進めにくいことがあります。
  • 3. 配偶者居住権設定登記を申請する:存続期間や第三者使用・収益を許す定めがある場合の内容を登記事項として確認します。
  • 4. 第三者への主張可能性を確保する:登記を備えることで、建物を買い受けた第三者などに対して権利を主張しやすくなります。

まとめ

  • 配偶者居住権の設定には 遺言書か遺産分割協議が必要か
  • 配偶者居住権の設定には原則として取得原因が必要:遺言書か遺産分割協議かという二択に見えますが、調停・審判や死因贈与も含めて確認します。
  • 配偶者居住権とは所有権と住む権利を分ける制度:自宅をもらう制度ではなく、自宅に住む権利を所有権から切り離して取得する制度です。
  • 配偶者居住権の成立要件は民法1028条から確認する:法律上の配偶者、相続開始時の居住、建物の所有関係、取得原因を順番に見ます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

配偶者居住権の設定には原則として取得原因が必要

遺言書か遺産分割協議かという二択に見えますが、調停・審判や死因贈与も含めて確認します。

長期の配偶者居住権は、配偶者が被相続人の家に住んでいたという事実だけで当然に成立する権利ではありません。民法1028条は、相続開始時に被相続人の財産に属した建物に居住していた配偶者が、遺産分割で取得するものとされた場合、または配偶者居住権が遺贈の目的とされた場合に取得すると定めています。

実務では、遺言書による遺贈、遺産分割協議書、調停調書、審判書が中心になります。さらに、死因贈与契約については、民法554条により遺贈の規定が準用されるため、配偶者居住権を取得させる方法として整理されます。

結論長期の配偶者居住権を確実に設定するには、原則として遺言による遺贈、遺産分割、家庭裁判所の審判、または死因贈与契約という法的な取得原因が必要です。単に同居していた、長年住んでいたという事情だけでは足りません。

次の強調部分は、このページ全体で最初に押さえる結論を表しています。読者にとって重要なのは、住み続ける必要性だけでなく、どの法的な原因で長期の権利を取得するのかを早い段階で分けて読むことです。

「住んでいた事実」と「長期の権利取得」は別に考える

配偶者短期居住権は別制度として一定期間の居住保護が問題になりますが、終身または定めた期間の長期権を成立させるには、遺贈、遺産分割、審判、死因贈与などの取得原因を確認する必要があります。

配偶者居住権の設定で使われる主な経路を一覧にしました。左から取得原因、根拠となる書面、実務で注意する点を読むと、遺言書だけでなく協議・裁判所手続・契約という複数の入口があることを把握できます。

取得原因根拠となる資料実務上の要点
遺贈遺言書「相続させる」ではなく、配偶者居住権を遺贈する趣旨を明確にします。
遺産分割遺産分割協議書、調停調書相続人全員の合意、建物所有者、存続期間、登記協力を整理します。
審判家庭裁判所の審判書配偶者の生活維持の必要性と所有者側の不利益が比較されます。
死因贈与死因贈与契約書契約の真正、撤回、遺留分、税務処理を専門家と確認する場面が多くなります。
Section 01

配偶者居住権とは所有権と住む権利を分ける制度

自宅をもらう制度ではなく、自宅に住む権利を所有権から切り離して取得する制度です。

配偶者居住権とは、被相続人の配偶者が、相続開始時に住んでいた被相続人所有の建物について、原則として無償で使用し、一定の範囲で収益することができる権利です。残された配偶者が住み慣れた自宅から退去せざるを得ない事態を避けつつ、所有権を他の相続人に承継させる余地を残すことが制度の狙いです。

典型例は、夫が亡くなり、相続人が妻と子である場面です。自宅を妻が完全に取得すると、妻の取得分の多くが自宅の評価額で占められ、預貯金などの生活資金を十分に取得できないことがあります。自宅の所有権を子が取得し、妻が配偶者居住権を取得すれば、妻は住み続けながら生活資金を確保しやすくなります。

配偶者居住権は所有権そのものではありません。配偶者が建物を売却できる権利ではなく、自由に第三者へ譲渡できる権利でもありません。民法1032条は、配偶者居住権の譲渡禁止、所有者の承諾なしの改築・増築、第三者使用・収益の制限を定めています。

「設定」と「取得」という言葉の違いを整理した比較表です。読者にとって重要なのは、法律上の発生場面と登記手続の場面で用語がずれるため、書類を作るときにどの場面の話かを読み分けることです。

場面正確な整理実務上の表現
遺言、遺産分割、死因贈与配偶者が配偶者居住権を取得する配偶者居住権を設定する
登記配偶者居住権設定登記をする登記で設定する
所有者側居住建物の所有者が登記を備えさせる義務を負う所有者が設定登記に協力する
注意点配偶者居住権は、登記をして初めて発生する権利ではありません。遺産分割、遺贈、死因贈与などで発生し、その後、第三者に対抗するために登記を備えるという理解が基本です。
Section 02

配偶者居住権の成立要件は民法1028条から確認する

法律上の配偶者、相続開始時の居住、建物の所有関係、取得原因を順番に見ます。

長期の配偶者居住権が成立するには、配偶者の生活実態だけでなく、建物の所有関係と取得原因を確認する必要があります。特に、被相続人が配偶者以外の第三者と建物を共有していたかどうかは、制度利用の可否に直結します。

次の表は、民法1028条を実務上の確認項目に分けたものです。左から要件、内容、確認資料の順に読むと、戸籍・住民票・登記事項証明書・遺言書など、どの資料で何を確認するのかが分かります。

要件内容実務上の確認資料
法律上の配偶者であること被相続人の夫または妻であること戸籍謄本、除籍謄本
相続開始時に居住していたこと死亡時に、その建物を生活の本拠として使用していたこと住民票、公共料金、郵便物、生活実態資料
建物が被相続人の財産に属していたこと被相続人の所有建物であること登記事項証明書、固定資産税関係資料
配偶者以外の第三者との共有でないこと被相続人が配偶者以外の人と建物を共有していた場合は原則として難しくなる登記事項証明書
取得原因があること遺産分割、遺贈、死因贈与、審判など遺言書、遺産分割協議書、調停調書、審判書、契約書

配偶者居住権を検討する際に、対象外になりやすい事情をまとめた一覧です。読者にとって重要なのは、同じ「自宅に住んでいた」という状況でも、共有者や賃貸借の有無によって検討する制度が変わる点です。

配偶者以外との共有

被相続人が子、兄弟姉妹、第三者などと建物を共有していた場合、民法1028条1項ただし書との関係で長期の配偶者居住権は難しくなります。

借家に住んでいた場合

被相続人が賃借していた建物は、配偶者居住権ではなく賃借権、借地借家法、契約承継などの問題として検討します。

居住実態が弱い場合

住民票だけでなく、生活の本拠として使っていたかが問題になります。医療、介護、郵便物、公共料金なども確認対象になります。

Section 03

配偶者居住権の設定方法は遺言書・遺産分割協議だけではない

合意できるか、遺言があるか、裁判所手続が必要かで確認する資料が変わります。

被相続人が生前に配偶者の居住を設計したい場合は、遺言書で配偶者居住権を遺贈する方法が有力です。遺言書がない場合や、遺言で明確に定められていない場合は、相続人全員の遺産分割協議で成立させることを検討します。

協議がまとまらない場合でも、遺産分割調停や審判が問題になります。民法1029条は、家庭裁判所が一定の場合に配偶者居住権の取得を定めることができるとしています。また、死因贈与契約による取得も、遺贈規定の準用を前提に実務上検討されます。

次の判断の流れは、どの取得原因から検討するかを整理するものです。上から順番に確認すると、遺言の有無、相続人全員の合意、家庭裁判所の手続、死因贈与契約の有無を切り分けられます。

配偶者居住権の取得原因を確認する順番

相続開始時に配偶者が居住していたか

長期権を検討する前提として、生活の本拠だったかを確認します。

遺言書に配偶者居住権の遺贈があるか

対象建物、存続期間、所有権の承継先、登記協力が読み取れるかを見ます。

ある
遺贈を根拠に登記・税務へ進む

遺言執行者の有無や遺留分も確認します。

ない
遺産分割で取得できるか検討

合意できない場合は調停・審判の必要性を確認します。

死因贈与契約がある場合は別途精査

契約の成立、撤回、遺留分、税務を個別に確認します。

各方法の実務上の違いを比較した表です。読者にとって重要なのは、どの方法でも建物の特定、存続期間、登記、税務評価が後続の論点として残る点です。

方法使われる場面主な注意点
遺言による遺贈生前に配偶者の居住を設計したい場合対象建物を登記事項証明書どおりに特定し、遺贈と明示します。
遺産分割協議遺言がない、または遺言が不十分な場合相続人全員の合意が必要です。登記協力や費用負担も定めます。
調停・審判協議がまとまらない場合審判では配偶者の生活維持の必要性と所有者の不利益が問題になります。
死因贈与死亡により効力が生じる契約を結んでいた場合自力で設計する難度が高く、契約・登記・税務の総合確認が必要です。
Section 04

配偶者居住権は住んでいたら自動であるという誤解に注意

長期の配偶者居住権と配偶者短期居住権は、要件・期間・登記の扱いが異なります。

「夫婦で住んでいた家だから、残された配偶者は当然に一生住める」という理解は、長期の配偶者居住権については正確ではありません。相続開始時に居住していたことは必要条件ですが、遺産分割、遺贈、死因贈与などの取得原因が別に必要です。

一方で、配偶者短期居住権は別制度です。配偶者が相続開始時に被相続人の建物に無償で居住していた場合に、遺産分割で建物の帰属が確定した日または相続開始から6か月を経過する日のいずれか遅い日までなど、一定期間の居住を保護する制度です。

長期の配偶者居住権と配偶者短期居住権の違いを比較した表です。読者にとって重要なのは、長期権は取得原因と登記が大きな論点になる一方、短期権は当面の居住保護を中心に読む点です。

制度遺言書や遺産分割協議の要否期間登記収益
配偶者居住権原則として取得原因が必要原則終身または定めた期間可能可能。ただし所有者の承諾が必要な場面があります。
配偶者短期居住権長期権ほどの取得原因は不要一定の短期不可原則として居住使用が中心です。
誤解しやすい点短期の居住保護を主張できる可能性があることと、終身または長期の居住権を当然に主張できることは別です。相続人から退去を求められている場面では、どちらの制度を前提にするかを分けて確認します。
Section 05

遺言書で配偶者居住権を設定する実務と文言の注意点

公正証書遺言や自筆証書遺言書保管制度を含め、明確な遺贈文言を検討します。

遺言書で配偶者居住権を設定する場合、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言のいずれかが考えられます。方式不備、紛失、改ざんのリスクを下げたい場合には、公正証書遺言や自筆証書遺言書保管制度が有力な選択肢になります。

遺言では、単に「妻を自宅に住ませる」と書くだけでは不十分になることがあります。対象建物を登記事項証明書どおりに特定し、「配偶者居住権を遺贈する」と明示すること、建物所有権の承継先、存続期間、登記協力義務を併せて整理することが重要です。

遺言で配偶者居住権を定めるときの基本構造を順番に並べたものです。読者にとって重要なのは、住む権利、所有権、登記協力、遺言執行の役割を一つの書面内で対応させる点です。

第1段階

配偶者へ配偶者居住権を遺贈する

建物の表示を登記事項証明書に合わせ、建物全部または対象範囲を明確にします。

第2段階

存続期間を定める

終身を基本にするか、一定期間にするかを明記します。

第3段階

建物所有権の承継先を定める

所有権を取得する相続人と、居住権を取得する配偶者を分けて書きます。

第4段階

登記協力と遺言執行を整える

所有者が登記に協力すること、遺言執行者を置くかどうかを検討します。

遺言で避けたい表現を比較表にしました。左の表現は一見分かりやすくても、右の問題点が残るため、配偶者居住権として登記や税務に進めるかを慎重に確認する必要があります。

避けたい表現問題点
妻は自宅に住み続けてよい配偶者居住権の遺贈なのか、単なる希望なのか不明確です。
自宅は子に相続させるが、妻の居住を妨げないこと義務の内容、期間、登記の可否が不明確です。
妻に自宅の使用権を与える使用貸借なのか、配偶者居住権なのか判別しにくくなります。
妻に配偶者居住権を相続させる配偶者居住権は被相続人が生前に有していた財産ではないため、遺贈として構成する発想が重要です。
施行日前の遺言配偶者居住権に関する改正法は2020年4月1日に施行されました。施行日前にされた遺言で、現在の民法上の配偶者居住権を設定できるとは限らないため、作成日、相続開始日、文言を確認します。
Section 06

遺産分割協議で配偶者居住権を設定する実務

協議書には取得原因、所有者、存続期間、登記協力、費用負担を明確に残します。

遺言書がない場合、または遺言書で配偶者居住権が明確に定められていない場合、相続人全員が合意して配偶者居住権を成立させるには遺産分割協議が必要です。一人でも反対する相続人がいる場合、協議書だけで配偶者居住権を取得させることはできません。

遺産分割協議書に入れる主な項目を一覧にしました。読者にとって重要なのは、住む権利だけを書けば足りるわけではなく、所有権の取得者、登記協力、費用、敷地利用、税務評価まで一体で読まなければならない点です。

記載事項理由
居住建物の表示登記対象を特定するため
建物所有権を誰が取得するか配偶者居住権は所有権と分離して機能するため
配偶者が配偶者居住権を取得すること取得原因を明確にするため
存続期間原則終身ですが、別段の定めが可能なため
第三者使用・収益の可否不動産登記法上の登記事項になり得るため
登記協力義務所有者と配偶者の共同申請が必要になるため
費用負担登録免許税、司法書士費用、固定資産税、修繕費の争いを防ぐため
敷地利用関係建物に住むには土地利用も問題になるため
相続税評価の確認具体的相続分、代償金、申告に影響するため

協議書の骨格を、実務上の順番に沿って整理した一覧です。左から条項の目的、入れる内容、後で起きやすい確認事項を読むと、配偶者居住権の取得と建物所有権の承継を分けて書く必要が分かります。

条項の目的入れる内容確認事項
所有権の帰属相続人が建物所有権を取得すること相続登記に進める表示になっているか
居住権の取得配偶者が建物全部について配偶者居住権を取得すること取得原因が明確か
存続期間終身または具体的な期間登記事項として記載できるか
登記協力必要書類の作成、署名押印、登記申請への協力共同申請の準備ができるか
費用と維持管理登録免許税、司法書士費用、通常の必要費、大規模修繕固定資産税、保険、修繕の負担を分けているか

配偶者居住権には財産的価値があります。遺産分割で配偶者が配偶者居住権を取得する場合、その価値は配偶者の取得分として考慮されます。価値をゼロと扱うと、他の相続人から不公平と主張されたり、相続税申告で誤りが生じたりするおそれがあります。

評価と代償金建物所有権は配偶者居住権の負担付き所有権になります。所有者となる子などが取得する価値、配偶者が取得する居住権の価値、預貯金、代償金を総合して具体的取得額を整理します。
Section 07

配偶者居住権の調停・審判と登記で確認すること

協議がまとまらない場合の家庭裁判所手続と、第三者に対抗するための登記を整理します。

遺産分割調停では、家庭裁判所の調停委員会が当事者の事情を聴き、合意形成を目指します。配偶者居住権についても、配偶者が住み続ける必要性、他の相続人の負担、財産評価、代償金、登記、税務を踏まえて調整します。

調停が成立すれば調停調書が作成されます。調停調書は確定判決と同様の効力を持つため、遺産分割協議書がなくても、調停調書を根拠に配偶者居住権の登記手続へ進むことができます。審判では、家庭裁判所が最終的に判断します。

審判で比較されやすい事情を左右に分けた表です。読者にとって重要なのは、配偶者側の生活維持の必要性だけでなく、建物所有者側の不利益も同時に見られる点です。

配偶者側の事情所有者側の事情
高齢、病気、介護、障害所有者自身が住む必要性
長期間その建物を生活の本拠としていた建物を売却して生活資金や納税資金を確保する必要性
近隣の医療、介護、親族支援への依存住宅ローン、維持費、固定資産税の負担
転居による生活破綻リスク所有権の利用制限の程度
他に居住可能な住宅がない代償金を受け取れるか
年金や収入の状況建物の老朽化や建替えの必要性

登記までの順番を時系列で整理しました。読者にとって重要なのは、配偶者居住権の登記だけを単独で考えるのではなく、建物所有権の相続登記、登記事項、第三者対抗を連続して読むことです。

確認

取得原因を確認する

遺言書、遺産分割協議書、調停調書、審判書、死因贈与契約書を確認します。

所有権

建物所有権の相続登記を整える

被相続人名義のままでは、配偶者居住権設定登記を円滑に進めにくいことがあります。

居住権

配偶者居住権設定登記を申請する

存続期間や第三者使用・収益を許す定めがある場合の内容を登記事項として確認します。

対抗力

第三者への主張可能性を確保する

登記を備えることで、建物を買い受けた第三者などに対して権利を主張しやすくなります。

相続登記義務化2024年4月1日から相続登記の申請は義務化されています。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内、遺産分割で取得した場合は遺産分割の日から3年以内の登記が問題になります。
Section 08

配偶者居住権の相続税評価と費用負担を一体で見る

一次相続、二次相続、固定資産税、修繕、保険まで長期運用を前提に設計します。

配偶者居住権は、相続税や贈与税の評価対象になります。国税庁のタックスアンサーでは、配偶者居住権、居住建物、敷地利用権、居住建物の敷地の用に供される土地の評価方法が示されています。

配偶者居住権を設定した場合の税務上の分解を表にしました。読者にとって重要なのは、建物だけでなく土地利用部分も分けて評価し、配偶者と所有者の取得財産を別々に見る点です。

財産取得者の例税務上の考え方
配偶者居住権配偶者建物を使用収益する権利として評価します。
居住建物の負担付き所有権子など配偶者居住権の負担がある所有権として評価します。
敷地利用権配偶者建物利用に伴う土地利用部分として評価します。
敷地の負担付き所有権子など敷地利用権の負担がある土地として評価します。

配偶者居住権は、配偶者の死亡により消滅する性質があります。この点から二次相続での効果が注目されますが、一次相続で配偶者居住権を取得した時点では評価が必要です。途中で合意解除、放棄、無償消滅などがある場合には、贈与税や所得税の問題が生じ得ます。

設定後の維持管理で決めておきたい項目を一覧にしました。読者にとって重要なのは、権利を作る場面だけでなく、固定資産税や修繕など毎年続く負担の処理まで協議書や運用ルールに落とし込む点です。

項目決めておく内容
固定資産税誰が実質負担するか、納付通知先と清算方法
火災保険契約者、保険料負担、保険金受取時の処理
通常修繕畳、設備、給湯器、雨漏りなどの範囲
大規模修繕事前協議、費用負担、拒否できる場面
改築・増築所有者承諾の要否と手続
介護改修手すり、段差解消、浴室改修など
空き家化配偶者が施設入所した場合の扱い
賃貸活用所有者承諾、賃料帰属、登記事項との整合
税務だけで判断しない配偶者居住権は、配偶者の生活安定、相続人間の公平、将来の売却可能性、建物の老朽化、登記、納税資金を総合的に検討する制度です。節税効果だけを目的にすると、後の紛争や課税リスクが増えることがあります。
Section 09

配偶者居住権を使う場面・使わない場面と専門職の役割

居住確保に向く場面と、売却・建替え・税務リスクが大きい場面を分けます。

配偶者居住権は、高齢配偶者の住まいを守りつつ、他の相続人に所有権を承継させる設計に向きます。特に、前婚の子と後妻、子のいない夫婦と兄弟姉妹、同居していない子と高齢配偶者など、利害対立が起きやすい家族構成で検討されます。

活用しやすい場面を整理した一覧です。読者にとって重要なのは、居住の必要性、自宅評価額、預貯金、相続人間の関係を合わせて読み、自宅を所有権で取得する方法との違いを見ることです。

USE

高齢配偶者の転居が難しい

住み慣れた生活環境、医療、介護、親族支援を維持する必要性が高い場面です。

USE

自宅評価額が高く預貯金が限られる

所有権取得だけでは生活資金を確保しにくい場合、住む権利と預貯金の取得を両立しやすくなります。

USE

居住確保と所有承継を分けたい

配偶者は居住、子は所有権承継という分離により、相続人全体の調整をしやすくなります。

一方で、配偶者居住権を使わない方法も検討したい場面があります。次の表では、左の状況に対して、右側に注意点を示しているため、制度の強さがかえって不動産利用を制限しないかを読み取れます。

場面注意点
配偶者が近く施設入所する可能性が高い住み続ける必要性が低下し、売却や賃貸の制限が問題になります。
建物が老朽化している建替え、滅失、大規模修繕で権利関係が不安定になることがあります。
売却して納税資金を確保する必要がある負担付き所有権は売却しにくくなることがあります。
相続人全員が配偶者の所有権取得に合意している配偶者居住権より所有権取得の方が単純なことがあります。
家族信託や生命保険で別の設計が可能居住確保と資金確保を別制度で実現できることがあります。
配偶者と所有者の関係が悪い長期の管理関係が紛争化しやすくなります。
税務上の効果だけを狙っている二次相続、特例、評価、贈与税リスクを総合判断する必要があります。

関与する専門職の役割を、目的別にまとめた一覧です。読者にとって重要なのは、すべての専門職が毎回必要なわけではなく、争い、登記、税務、評価、不動産処分のどこが問題かで相談先が変わる点です。

弁護士

遺産分割交渉、調停、審判、遺留分、使い込み疑い、紛争対応、遺言文案の法的検討を担います。

紛争

司法書士

相続登記、配偶者居住権設定登記、登記原因証明情報、戸籍収集、裁判所提出書類作成を担います。

登記

税理士

相続税申告、配偶者居住権評価、敷地利用権評価、小規模宅地等の特例、税務調査対応を担います。

税務

公証人・遺言執行者

公正証書遺言の作成、意思確認、方式不備リスクの低減、遺言内容の実現を担います。

遺言

不動産鑑定士・土地家屋調査士・宅建業者

自宅や敷地の評価、境界や表示、不動産の市場性、将来処分の検討を支援します。

評価

FP・社会保険労務士

老後資金、保険、遺族年金など、死亡後の生活保障手続や資金計画を整理します。

生活
Section 10

配偶者居住権の遺留分・実務手順・判断チェックリスト

遺留分侵害額請求、相続開始後の進め方、最初に確認する項目をまとめます。

配偶者居住権を遺言で配偶者に遺贈した場合、他の相続人の遺留分を侵害することがあります。配偶者居住権は住む権利であっても財産的価値があるため、生命保険、代償金、預貯金配分、付言事項、遺言執行者指定などを総合して検討します。

遺言書がない相続で、残された配偶者が自宅に住み続けたい場合の手順を時系列で示します。読者にとって重要なのは、戸籍や登記の確認から始め、協議書、所有権登記、配偶者居住権設定登記、維持管理ルールまで順番に進めることです。

1

相続人と自宅の所有関係を確認

死亡届、戸籍収集、相続人調査、自宅の登記事項証明書の取得を進めます。

2

居住実態と遺言書の有無を確認

相続開始時に配偶者が居住していた事実、公正証書遺言や法務局保管の有無を確認します。

3

対象になる建物か判断

被相続人の財産に属する建物か、配偶者以外との共有がないかを確認します。

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遺産分割案を作る

建物所有権、配偶者居住権、預貯金、代償金、相続税評価を含めて整理します。

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登記と運用ルールへ進む

遺産分割協議書を作成し、所有権の相続登記、配偶者居住権設定登記、固定資産税や修繕のルールを整えます。

最初に確認したい項目を一覧にしました。左のチェック項目に対して、中央の「はい」の場合の進み方と、右の注意点を読むと、配偶者居住権だけで解決できるか、別制度の併用が必要かを見分けやすくなります。

チェック項目はいの場合いいえの場合の注意
被相続人と配偶者は法律上の婚姻関係にあるか次の確認へ進む内縁関係では原則として対象外です。
配偶者は相続開始時にその建物に居住していたか次の確認へ進む長期の配偶者居住権は難しくなります。
建物は被相続人の財産に属していたか次の確認へ進む借家、第三者所有では別制度を検討します。
被相続人が配偶者以外の人と建物を共有していないか次の確認へ進む共有者が子や第三者なら原則として難しくなります。
遺言書に配偶者居住権の遺贈が明記されているか登記と税務へ進む遺産分割で取得できるか検討します。
相続人全員が合意できるか協議書作成へ進む調停・審判を検討します。
配偶者の終身居住が本当に必要か存続期間を設計する所有権取得、使用貸借、売却なども検討します。
税務評価を行ったか申告に反映する不公平や申告誤りのリスクがあります。
登記する準備があるか第三者対抗を確保する建物売却などの場面で権利主張が難しくなるおそれがあります。
将来の施設入所、売却、建替えを想定したか紛争予防につながる長期運用で対立が生じるリスクがあります。
組み合わせ「いいえ」が多い場合、配偶者居住権だけで解決しようとするのではなく、遺言、生命保険、生前贈与、家族信託、任意後見、財産管理契約、使用貸借、所有権取得、売却分割などの併用を検討します。
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配偶者居住権の設定に関するよくある質問

回答は一般的な制度説明です。個別の見通しは資料と事情により変わります。

Q1. 配偶者居住権の設定には遺言書か遺産分割協議が必要ですか

一般的には、長期の配偶者居住権は単に配偶者が住んでいただけでは足りず、遺言による遺贈、遺産分割、家庭裁判所の審判、死因贈与契約などの取得原因が必要とされています。ただし、遺言の文言、相続人の合意状況、建物の所有関係によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 遺言書がないと配偶者居住権は使えませんか

一般的には、遺言書がなくても相続人全員が遺産分割で合意すれば、配偶者居住権を取得できる可能性があります。合意が難しい場合には、調停や審判が問題になります。ただし、審判では民法1029条の要件や所有者側の不利益も考慮されるため、個別の見通しは資料を整理して弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q3. 遺産分割協議書がないと登記できませんか

一般的には、遺産分割協議で配偶者居住権を取得した場合、協議書が重要な登記原因資料になります。一方、調停で成立した場合は調停調書、審判で決まった場合は審判書などが根拠になります。遺言による遺贈では遺言書や遺言執行者の関与が問題になるため、具体的な登記資料は司法書士等の専門家へ確認する必要があります。

Q4. 配偶者居住権は登記しなくても有効ですか

一般的には、取得原因があれば当事者間で配偶者居住権が問題になることがあります。ただし、第三者に対抗するには登記が重要とされています。建物所有者による売却などの事情で結論が変わる可能性があるため、取得後の登記方針は司法書士や弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q5. 配偶者居住権は売れますか

一般的には、民法1032条により配偶者居住権は譲渡できないとされています。配偶者が施設に入った場合でも、当然に所有者へ買い取ってもらえる制度ではありません。第三者に使用・収益させるには所有者の承諾が問題になるため、具体的な処理は契約内容や登記内容を確認して専門家へ相談する必要があります。

Q6. 配偶者が家全体を使えますか

一般的には、長期の配偶者居住権は居住建物の全部について無償で使用及び収益をする権利とされています。ただし、従前の用法、善管注意義務、第三者使用の制限、所有者の承諾の有無によって扱いが変わる可能性があります。具体的な利用範囲は、遺言書や協議書、登記内容を確認して専門家へ相談する必要があります。

Q7. 夫婦共有の家でも設定できますか

一般的には、被相続人と配偶者だけの共有であれば、配偶者居住権が問題になり得るとされています。これに対し、被相続人が相続開始時に配偶者以外の者と居住建物を共有していた場合は、民法1028条1項ただし書により取得が難しくなる方向です。共有関係の判断は登記事項証明書などを確認して専門家へ相談する必要があります。

Q8. 自宅を配偶者に所有権で相続させる場合、配偶者居住権は必要ですか

一般的には、配偶者が自宅の完全な所有権を取得する場合、配偶者居住権を別に設定する必要性は低くなると考えられます。ただし、共有関係、税務、二次相続、代償金、将来の処分方針によって設計は変わる可能性があります。具体的には弁護士、司法書士、税理士等の専門家へ相談する必要があります。

Q9. 相続税の節税目的で使うべきですか

一般的には、配偶者居住権によって税務上の効果が生じる場合がありますが、常に有利とは限りません。配偶者の年齢、建物価値、土地価値、二次相続、小規模宅地等の特例、納税資金によって結果が変わる可能性があります。具体的な税額や申告方針は税理士等の専門家へ相談する必要があります。

Q10. 古い遺言書に「妻を住ませる」と書いてあります。配偶者居住権になりますか

一般的には、その記載だけで直ちに現在の民法上の配偶者居住権になるとは限りません。配偶者居住権制度は2020年4月1日に施行されており、遺言作成日、相続開始日、文言の具体性によって判断が変わる可能性があります。具体的な有効性や登記可能性は、遺言書を確認して弁護士や司法書士等の専門家へ相談する必要があります。

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配偶者居住権の設定を遺言書・遺産分割協議から設計するまとめ

住まいを守ることと、相続人全体の公平・登記・税務・将来利用を同時に考えます。

長期の配偶者居住権は、配偶者が被相続人の家に住んでいたという事実だけで当然に成立するものではありません。相続開始時の居住、建物所有関係、第三者共有の不存在に加え、遺産分割、遺贈、死因贈与などの取得原因が必要です。

遺言書は、生前に配偶者の居住を設計するための有力な方法です。ただし、「相続させる」ではなく、配偶者居住権を遺贈する趣旨を明確に書くことが重要です。公正証書遺言や遺言執行者の指定も検討対象になります。

遺言書がなくても、遺産分割協議によって配偶者居住権を取得できる可能性があります。協議がまとまらない場合には家庭裁判所の調停・審判が問題になります。審判では、配偶者の生活維持の必要性と所有者の不利益が比較されます。

登記は成立要件ではありませんが、第三者に対抗するために重要です。相続登記義務化も踏まえ、建物所有権の相続登記と配偶者居住権設定登記を一体で検討します。

配偶者居住権は、税務評価、遺留分、代償金、建物管理、将来の売却・建替えに大きく影響します。最終的には、配偶者の住まいを守ることと、相続人全体の公平・納税・将来の不動産利用を同時に設計することが重要です。

Reference

参考資料

法令、公的機関、税務実務、公証実務に関する資料名を整理しています。

法令・公的資料

  • e-Gov法令検索「民法」
  • e-Gov法令検索「不動産登記法」
  • 法務省「残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。」
  • 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度について」

税務・公証実務

  • 国税庁「No.4666 配偶者居住権等の評価」
  • 国税庁「配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例」
  • 日本公証人連合会「公正証書遺言の作成手順に関するQ&A」