医療ADRで解決できる場合と、訴訟や証拠保全を検討すべき場合を分け、相手方参加、時効、証拠、和解条項まで整理します。
医療ADRで解決できる場合と、訴訟や証拠保全を検討すべき場合を分け、相手方参加、時効、証拠、和解条項まで整理します。
解決できる場合と、ADRだけでは足りない場合を最初に分けます。
医療ADRで裁判を起こさずに紛争を解決できるかという問いへの答えは、解決できる場合があるものの、すべての医療紛争がADRだけで終わるわけではない、というものです。
医療ADRは、裁判所で判決を得る手続ではなく、医療機関側と患者側・遺族側が、中立的な第三者の関与のもとで話し合い、和解による解決を目指す手続です。説明、謝罪、再発防止、一定の金銭支払、将来の関係整理などを話し合う余地がある事案では、有効な選択肢になります。
次の重要ポイントは、医療ADRの使いどころと限界を一つにまとめたものです。裁判を避けたい気持ちだけで手続を選ぶと時効や証拠保全を見落とす可能性があるため、ADRで何を解決でき、何を別手段で補うべきかを読み取ることが重要です。
相手方が参加し、争点が話し合いに適し、双方が合意できる場合には裁判を起こさずに解決できる可能性があります。一方で、参加拒否、重大な事実争い、時効リスク、高額損害、証拠保全の必要がある場合には、弁護士相談、証拠保全、調停、訴訟も検討します。
次の比較一覧は、裁判なしで解決できる可能性が高い場面と、ADRだけでは慎重に見るべき場面を分けたものです。左と右を対比すると、相手方の参加、証拠、時効、求める結論の性質が判断軸になることを読み取れます。
説明、謝罪、再発防止、一定の解決金、今後の診療体制など、柔軟な合意で納得可能性を高めたい場面です。
相手方が参加しない、証拠保全が必要、時効が近い、判決や公的判断を求めたい、高額損害が見込まれる場面です。
相手方の説明、争点、資料不足、和解可能額の水準が見え、訴訟や再交渉の準備に活かせる場合があります。
ADR、医療ADR、和解、裁判所手続の違いを整理します。
ADRとは、Alternative Dispute Resolution の略で、日本語では裁判外紛争解決手続と呼ばれます。裁判所の判決によらず、当事者間の話し合いを第三者が支援し、紛争解決を目指す手続の総称です。
医療ADRとは、医療事故、医療トラブル、診療契約上の紛争など、医療に関係する紛争について、裁判ではなく話し合いによる解決を目指すADRです。実施主体は一つではなく、弁護士会が運営するもの、医療関係団体が関与するもの、認証ADR機関が扱うもの、地域の専門機関が実施するものがあります。
次の表は、ADRの種類と医療紛争での意味を整理しています。第三者が何をするのか、当事者が何に合意するのかが制度ごとに異なるため、医療ADRが主に調停・あっせん型であることを読み取ると、裁判との違いを理解しやすくなります。
| 種類 | 概要 | 医療紛争での意味 |
|---|---|---|
| あっせん | 第三者が話し合いの場を整え、解決案の調整を支援する | 感情的対立を整理し、実務的な着地点を探します |
| 調停 | 中立的な第三者が双方の言い分を聴き、合意形成を支援する | 資料、説明、損害、再発防止を踏まえて和解を目指します |
| 仲裁 | 当事者の合意により、仲裁人の判断に拘束される手続 | 医療ADRでは一般に調停・あっせん型が中心で、仲裁とは性質が異なる場合が多いです |
次の比較一覧は、「裁判を起こさない」という言葉に含まれる三つの意味を分けたものです。同じ裁判なしでも、完全に裁判所を使わない場合、裁判所の調停を使う場合、ADR後に訴訟の可能性を残す場合では準備が異なることを読み取れます。
訴訟を起こさず、当事者の合意で終わらせる形です。相手方の参加と合意が重要になります。
判決を求める訴訟ではありませんが、裁判所の手続として話し合います。
ADRで説明と和解可能性を探り、不成立なら訴訟や証拠保全へ移る選択肢を残します。
和解は、当事者が互いに譲歩して紛争を終わらせる合意です。医療ADRで成立する和解は、必ずしも医療機関が法的責任を認めたという意味ではなく、責任の有無を明確に断定しないまま、説明、謝意、再発防止、一定額の支払、今後の対応を合意することもあります。
専門性、情報格差、感情的対立、長期化が重なります。
医療紛争は、通常の契約トラブルや金銭トラブルとは異なり、医学的専門性、情報の非対称性、感情的対立、法的責任判断の難しさが重なります。悪い結果が生じたとしても、直ちに医療過誤が認められるわけではありません。
次の一覧は、医療紛争が裁判になりやすい理由と、医療ADRが補える可能性を対にしたものです。各行の右側はADRで必ず解決できるという意味ではなく、裁判前に話し合いの余地を作るために何を整理できるかを示しています。
診療ガイドライン、当時の医療水準、患者の個別事情を踏まえる必要があります。ADRでは説明や資料確認を先に行える場合があります。
医療記録や院内の判断過程は医療機関側に偏りやすく、カルテ開示や説明が重要になります。
患者側の不信と医療機関側の防御的対応が重なると対話が難しくなります。第三者の場が緩衝になります。
注意義務違反、説明義務違反、因果関係、損害範囲を分けて検討する必要があります。
次の縦方向の比較は、医事関係訴訟と通常の民事訴訟の平均審理期間を示しています。数値が大きいほど期間が長いことを意味し、医療紛争では裁判前に争点と和解可能性を整理する意義が大きいことを読み取れます。
この期間差は、医療ADRが常に短く終わるという意味ではありません。ただし、相手方が参加し、争点が整理されれば、訴訟より早期に説明や和解へ進める可能性があります。
参加、争点適性、解決目標、時効・証拠の管理が鍵です。
医療ADRで裁判を起こさずに解決するには、少なくとも、相手方が手続に参加すること、争点が話し合いに適していること、何をもって解決とするかが明確であること、時効・証拠・手続選択を誤らないことが重要です。
次の割合の比較は、東京三弁護士会医療ADRの第三次検証報告書に示された対象事件の数値を整理したものです。特定地域・特定機関の運用に関する数字で全国全体を示すものではありませんが、応諾、応諾後の和解、全体の和解という三段階を読むことで、相手方参加の重要性が分かります。
次の表は、医療ADRに向きやすい争点と、ADRだけでは慎重に検討すべき争点を分けています。どちらか一方に機械的に分類するのではなく、相手方の姿勢、証拠、時効、求める結論を合わせて判断するために読みます。
| ADRに向きやすい事案 | 向く理由 |
|---|---|
| 説明不足への不満が中心 | 第三者の場で診療経過を説明し直せる可能性があります |
| 謝罪・再発防止を重視 | 判決では命じにくい内容も合意に含められます |
| 一定の解決金で調整可能 | 責任に争いがあってもリスク調整型の合意が可能です |
| 診療継続や転院支援が必要 | 今後の関係や連絡方法も協議できます |
次の表は、ADRだけでは慎重に検討すべき事案を示しています。左側の特徴がある場合、ADRを使わないという意味ではなく、証拠保全、訴訟、弁護士交渉などを組み合わせる必要性を読み取ります。
| 慎重に見る事案 | 理由 |
|---|---|
| 相手方が参加を拒否 | 話し合いが成立しにくく、別手段を検討する必要があります |
| 証拠隠滅のおそれ | 証拠保全等を優先すべき場合があります |
| 時効完成が近い | ADRだけでは権利保全が不十分な可能性があります |
| 高額損害・死亡・重度後遺障害 | 損害評価と法的見通しの専門的検討が必要です |
| 公的判断や社会的公表が目的 | 非公開の合意形成とは目的が合わない場合があります |
院内対話、医療安全支援センター、事故調査制度、訴訟、調停を混同しないようにします。
医療トラブルが起きたとき、使える制度は医療ADRだけではありません。院内対話、医療安全支援センター、医療事故調査制度、民事訴訟、民事調停、認証ADRと非認証ADRは、それぞれ目的と効果が異なります。
次の表は、各制度の役割と限界を比較したものです。似た窓口を混同すると目的に合わない手続を選ぶ可能性があるため、何をしてくれる制度なのか、何をしてくれない制度なのかを同時に読み取ることが重要です。
| 制度 | 主な目的 | 限界・注意点 |
|---|---|---|
| 院内対話・院内メディエーション | 医療機関内で説明と信頼回復を図る | 患者側から見ると中立性に不安が残る場合があります |
| 医療安全支援センター | 苦情・相談、助言、関係機関との連絡調整 | 賠償額を決めたり支払いを命じたりする機関ではありません |
| 医療事故調査制度 | 予期しなかった死亡・死産について原因調査と再発防止を図る | 責任追及や損害賠償のための制度ではありません |
| 民事訴訟 | 裁判所が証拠に基づいて法的判断を示す | 時間、費用、精神的負担が大きくなりやすいです |
| 民事調停 | 裁判所で話し合いにより合意を目指す | 民間ADRとは異なり、裁判所の手続として進みます |
| 認証ADR | 法務大臣の認証を受けた民間ADR | 時効完成猶予や特定和解の扱いは要件確認が必要です |
次の判断の流れは、制度選択の大まかな順序を示しています。上から目的を確認し、説明、再発防止、賠償、証拠保全、公的判断のどれを重視するかで手続が分かれることを読み取れます。
説明、謝罪、再発防止、金銭、証拠、公的判断の優先順位を決めます。
相手方に参加意思があり、柔軟な解決を目指せるかを見ます。
事前相談から和解成立または不成立までの順番を押さえます。
医療ADRの細かな手続は実施機関によって異なりますが、一般的には、事前相談、資料収集、申立書作成、相手方への通知、期日での話し合い、解決案の調整、和解成立または不成立という流れで進みます。
次の時系列は、医療ADRの進行順序を示しています。上から下へ手続が進み、それぞれの段階で確認すべきことが変わるため、どこで時効、証拠、弁護士相談を入れるかを読み取ることが重要です。
対象になる紛争か、申立人と相手方は誰か、時効や証拠保全のリスクはないかを確認します。
診療録、看護記録、手術記録、検査結果、画像、同意書、領収書、時系列メモを整理します。
診療経過、問題点、結果、損害、求める解決内容、添付資料を明確にします。
相手方が応諾すれば期日調整や資料提出へ進み、応諾しない場合は別手段を検討します。
医学的説明、法的責任、損害、感情面、再発防止などを整理します。
合意すれば和解書を作成し、不成立なら時効や証拠を踏まえて次の手段を選びます。
次の表は、申立前に整理する資料を目的別にまとめています。資料の有無だけでなく、どの疑問や損害に対応する資料なのかを読むことで、申立書と期日での説明が具体化します。
| 資料 | 確認する目的 |
|---|---|
| 診療録、看護記録、手術記録、麻酔記録 | 診療経過と関係者の判断を確認します |
| 検査結果、画像資料、読影報告 | 診断、見落とし、急変対応の論点を確認します |
| 説明書、同意書、入退院時書類 | 説明義務と意思決定の過程を確認します |
| 請求書、領収書、診療明細書 | 治療費や通院費など損害資料を整理します |
| 時系列メモ、面談記録、メール、手紙 | 本人や家族の記憶と医療機関の説明を照合します |
| 死亡診断書、診断書、後遺障害資料 | 死亡事案や重い後遺障害の損害評価に使います |
判決より柔軟に、説明、謝罪、再発防止、金銭、将来対応を組み合わせます。
医療ADRの強みは、裁判の判決よりも柔軟な解決を設計できる点にあります。金銭支払だけでなく、何が起きたのかの説明、謝罪や遺憾の表明、再発防止、診療継続・転院、守秘義務や公表範囲まで協議できる場合があります。
次の一覧は、医療ADRで合意対象になり得る解決内容を整理しています。各項目は単独で選ぶものではなく、事案に応じて組み合わせるため、金銭と非金銭の両方から納得可能性を読み取ることが大切です。
診療経過、検査・治療方針の選択理由、リスク説明、急変時対応、院内調査結果、再発防止策の説明を求めます。
事実確認法的責任を認める謝罪か、結果発生への遺憾や共感の表明かを文言で調整します。
文言調整院内マニュアル、説明文書、チェック体制、研修、インシデント共有の仕組みを協議します。
安全改善担当医変更、紹介状、転院支援、問い合わせ窓口、今後の連絡方法を調整します。
将来対応弁護士、税理士、医師、家族、行政機関、法令に基づく開示などの例外を確認します。
条項確認守秘義務条項は、範囲が広すぎると、患者側の生活や将来の相談、医療安全上の報告を不当に制限するおそれがあります。医療機関側にとっても、個人情報、医療情報、風評リスクを管理する必要があります。
早期解決、専門性、非公開性の一方で、強制力や時効に注意が必要です。
医療ADRには、裁判より早期解決を期待できる、専門性のある第三者が関与する、感情的対立を整理しやすい、柔軟な解決ができる、非公開で進められる、訴訟前の見通しを得られるというメリットがあります。
次の表は、医療ADRのメリットを実務上の意味に置き換えたものです。単に便利な制度としてではなく、何が当事者の負担を下げ、どの情報が次の判断に残るのかを読み取るために使います。
| メリット | 実務上の意味 |
|---|---|
| 早期解決を期待できる | 相手方が参加し争点が整理されれば、訴訟より短期間で合意できる可能性があります |
| 専門性のある第三者が関与 | 医療紛争の経験を持つあっせん人等が関与する制度があります |
| 感情的対立を整理しやすい | 中立的な場で説明と疑問を分けて扱えます |
| 柔軟な解決ができる | 説明、謝罪、再発防止、連絡窓口なども合意に含められます |
| 非公開で進められる | 医療情報やプライバシーに配慮しやすくなります |
| 訴訟前の見通しを得られる | 相手方の主張や資料を踏まえ、次の方針を判断しやすくなります |
次の一覧は、医療ADRの限界とリスクを整理しています。メリットだけで進めると不利な和解や時効リスクを見落とすため、相手方参加、証拠、法的判断、和解、守秘の各項目を事前確認として読みます。
相手方が参加しない場合、手続は進みにくくなります。
資料提出が任意に進まない場合、事実解明に限界があります。
過失や因果関係を強制的に判定する制度ではありません。
清算条項や守秘義務を理解しないまま合意すると後で不利益になる可能性があります。
ADR申立てで当然に時効リスクが解消されるとは限りません。
将来の相談や情報発信まで心理的に制限される場合があります。
法的構成、医療記録、損害額、時効、和解条項を確認します。
医療ADRは、弁護士を付けなくても利用できる場合があります。しかし、裁判を起こさずに紛争を解決できるかを真剣に検討するなら、少なくとも一度は医療紛争に詳しい弁護士に相談する価値があります。
次の一覧は、弁護士相談の意義を五つに分けたものです。各項目はADRの申立て前後で判断を誤りやすい部分であり、相談によりどの不確実性を減らせるかを読み取るために使います。
診療契約上の債務不履行、不法行為、説明義務違反、安全配慮義務違反、法人責任などを検討します。
症状出現時刻、検査指示、説明内容、同意書、急変対応、看護記録の時刻を確認します。
ADR、訴訟、証拠保全、任意交渉の順序を、時効と証拠の状態から判断します。
支払、清算、守秘、謝罪文言、再発防止、強制執行に関する合意を確認します。
次のチェックリストは、医療ADRを申し立てる前に整理する項目をまとめたものです。事実、希望、証拠、医学的評価、費用と時間を分けることで、申立書と相談内容を具体化できます。
| 確認項目 | 整理する内容 |
|---|---|
| 事実関係 | 日時、出来事、関係者、資料、疑問点を時系列にします |
| 解決内容の優先順位 | 真相説明、謝罪、再発防止、金銭賠償、転院支援、記録訂正などを並べます |
| 証拠資料 | 医療記録を開示請求し、家族内で記憶が薄れる前にメモを作ります |
| 医学的評価 | 医師意見書や協力医の見解が必要かを検討します |
| 費用と時間 | 申立手数料、期日手数料、弁護士費用、意見書費用を確認します |
感情、事実、医学的疑問、法的争点、解決希望を分けます。
患者側・遺族側の怒りや悲しみは当然のものです。しかし、医療ADRで相手方を動かすには、感情だけでなく、事実、医学的疑問、法的争点、求める解決を分けて示す必要があります。
次の表は、医療ADRで主張を組み立てるときの分け方を示しています。感情を消すのではなく、事実や法的争点と並べることで、何を説明してほしいのか、どの解決を求めるのかを相手方が理解しやすくなることを読み取れます。
| 区分 | 整理例 |
|---|---|
| 感情 | 説明が不誠実で、家族として非常に傷ついた |
| 事実 | 説明時に合併症の具体的リスクを聞いていない |
| 医学的疑問 | 症状悪化に対し、検査が遅れたのではないか |
| 法的争点 | 説明義務違反や経過観察義務違反が問題になる可能性 |
| 解決希望 | 経過説明、謝罪、再発防止策、解決金を求める |
次の表は、和解書で確認する条項を整理しています。和解は成立すれば大きな解決手段ですが、条項の一文で将来の請求可否や情報発信の可否が変わるため、支払だけでなく対象紛争、清算、守秘、強制執行を合わせて読みます。
| 条項 | 確認内容 |
|---|---|
| 当事者 | 患者本人、相続人、遺族、医療法人、病院、医師個人などを明確にします |
| 対象紛争 | どの診療、どの期間、どの結果について和解するかを明確にします |
| 支払条項 | 支払額、期限、振込方法、遅延損害金、分割払い時の扱いを確認します |
| 謝罪・再発防止 | 文言、説明文書、再発防止策、報告方法を具体化します |
| 責任否認・責任留保 | 法的責任を認めるのか、認めずに解決金とするのかを確認します |
| 清算条項 | 後日の追加請求をどこまで制限するかを慎重に見ます |
| 守秘義務 | 秘密にする範囲、期間、例外を確認します |
| 強制執行 | 認証ADRの特定和解に該当するか、執行合意を含めるかを確認します |
不成立でも、争点整理や次の手段に活かせる情報が残ります。
医療ADRが不成立になっても、それで終わりではありません。ADRを通じて、医療機関側の説明内容、争点の所在、相手方が認める事実と争う事実、必要な追加資料、医学意見が必要な点、和解可能額の水準が分かる場合があります。
次の一覧は、ADR不成立後に検討する主な選択肢を整理しています。各手段は目的が異なるため、証拠を確保したいのか、再交渉したいのか、裁判所の判断を求めたいのかを読み取って選ぶ必要があります。
ADRで整理された争点や説明内容を踏まえ、医療機関側または保険会社と再交渉します。
再交渉カルテ改ざんや証拠散逸が懸念される場合、訴訟前に証拠を確保する手続を検討します。
証拠確保裁判所の手続として話し合いを行います。民間ADRとは制度が異なります。
裁判所手続損害賠償請求訴訟を提起し、証拠、医学的意見、尋問、鑑定、和解協議を通じて解決を目指します。
判決可能性死亡・死産事案では医療事故調査制度の対象可能性を確認し、医療安全支援センター等の相談も検討します。
再発防止ADRを有効に使うには、最初から裁判は絶対にしないと決めつけないことも重要です。ADRは訴訟を避けるための手段であると同時に、必要なら訴訟へ移行するための争点整理の場にもなります。
目的、相手方の姿勢、証拠、時間、精神的負担から判断します。
医療ADRを選ぶべきかどうかは、目的、相手方の姿勢、証拠の状態、時間的余裕、精神的負担から判断します。説明や謝罪を求めたいのか、高額賠償や公的判断を求めたいのかによって、適した手続は変わります。
次の表は、主目的ごとのADR適性を整理したものです。高い、相手方が参加すれば高い、訴訟向き、別制度という違いを見て、自分の希望が話し合いで調整しやすいものかを読み取ります。
| 主目的 | ADR適性 |
|---|---|
| 説明を受けたい | 高い |
| 謝罪・再発防止を求めたい | 高い |
| 早く解決したい | 相手方が参加すれば高い |
| 高額賠償を厳密に請求したい | 弁護士相談が必須で、訴訟も視野に入ります |
| 医療過誤の有無を公的に判断してほしい | 訴訟向きです |
| 刑事責任・行政処分を求めたい | ADRとは別制度です |
次の一覧は、医療ADRで扱われることが多い紛争類型を整理しています。類型ごとに争点が異なるため、どの資料と医学的評価が必要になりやすいかを読み取るために使います。
追加検査の必要性、早期診断で結果を避けられたか、因果関係が問題になります。
手技上の過失、術前説明、術後管理、合併症と医療過誤の区別が問題になります。
リスク、代替手段、予後、患者の意思決定に必要な情報が説明されたかを見ます。
危険評価、巡回、ナースコール対応、家族説明、病院管理体制が問題になります。
薬剤取り違え、用量ミス、検査結果の見落としなど、事実が比較的明確な場合があります。
次の判断の流れは、医療ADRを有効に使うための実践ポイントをまとめたものです。法的見通し、説得力のある資料、期日での発言整理、和解前の確認という順に進めることで、不利な判断を避けやすくなります。
責任が強い事案と弱い事案では交渉戦略が異なります。
カルテ、説明書、時系列、損害資料、医学的意見を整理します。
何が起きたか、疑問点、根拠資料、求める説明、解決希望の順に話します。
清算条項や守秘義務を含む和解は、持ち帰って確認することが望ましい場合があります。
個別事案の結論ではなく、制度と一般的な注意点を整理します。
一般的には、相手方が参加し、双方が合意できる場合には解決できる可能性があります。ただし、ADRは判決ではなく合意による解決であり、参加拒否、重大な事実争い、時効リスク、高額損害、証拠保全の必要がある場合には、訴訟や弁護士交渉を併用・検討する必要があります。
一般的には、ADRは責任の有無を強制的に判断する制度ではなく、話し合いによる解決を目指す制度です。責任を明確に認める和解もあり得ますが、責任を認めないまま解決金、説明、再発防止策を合意することもあります。
一般的には、制度によっては可能です。ただし、医療記録の分析、損害額の算定、時効、和解条項の確認が重要になる事案では、弁護士等の専門家へ相談する必要性が高まります。
一般的には、訴訟より費用・時間を抑えられる可能性があります。ただし、申立手数料、期日手数料、弁護士費用、医師意見書費用、資料取得費用がかかる場合があります。費用は機関や事案によって変わります。
一般的には、ADRには裁判のような強制的証拠調べの権限がない場合が多いです。資料提出が任意に進まない場合には、証拠保全、弁護士照会、訴訟上の文書提出命令など別の手段を検討することがあります。
一般的には、医療事故調査制度は再発防止を目的とする制度であり、賠償額を決定する制度ではありません。調査結果がADRや交渉の材料になることはありますが、損害賠償を求める場合は、ADR、任意交渉、民事調停、訴訟などを別に検討する必要があります。
一般的には、謝罪や遺憾の表明を協議できる場合があります。ただし、医療機関側は謝罪が法的責任の承認と受け取られることを警戒する場合があり、文言や範囲を慎重に調整する必要があります。
一般的には、一概にはいえません。認証ADRでは一定の要件のもとで時効の完成猶予などの法的効果が認められる場合がありますが、すべてのADRに当然適用されるわけではありません。時効が近い場合は、弁護士等へ相談する必要があります。
一般的には、和解書の内容によって変わります。清算条項がある場合、追加請求が難しくなる可能性があります。将来発生する損害、後遺障害の悪化、未知の損害をどう扱うかは、和解前に慎重に確認する必要があります。
一般的には、重い後遺障害、死亡事案、高額損害、時効が近い事案、証拠に不安がある事案では、先に弁護士へ相談するのが安全とされています。比較的軽微で説明や謝罪が主目的の場合は、ADR機関や医療安全支援センターへの相談から始めることもあります。
事実・資料・希望内容を整理し、時効と証拠を確認して選択します。
医療ADRは、相手方が参加し、争点が話し合いに適し、当事者双方が合意できる場合には、裁判を起こさずに医療紛争を解決できる有力な手段です。特に、説明、謝罪、再発防止、一定の解決金、今後の診療体制などを柔軟に調整したい場合、訴訟よりも実務的で心理的負担の少ない解決を実現できる可能性があります。
次の重要ポイントは、医療ADRを検討するときの三段階をまとめたものです。裁判を避けたいという希望だけで進めるのではなく、事実、資料、希望、時効、証拠、相手方の参加可能性を順に確認することを読み取れます。
まず事実・資料・希望する解決内容を整理し、次に時効・証拠・損害額・法的責任の見通しについて弁護士相談を検討します。そのうえで、相手方の参加可能性と争点の性質を見極め、医療ADR、交渉、調停、訴訟のどれを使うかを選びます。
医療ADRは、患者側にとっては裁判に行く前に専門的な第三者の場で説明と解決を求める手段であり、医療機関側にとっては訴訟化する前に誠実な説明とリスク調整を行う手段です。適切に使えば、医療紛争を単なる勝敗の問題にせず、納得、再発防止、関係整理、損害回復を同時に目指せます。