相続税申告、遺産分割、遺留分、売却精算では、同じ株式でも見るべき評価日が変わります。目的別に帳簿を分け、上場株式と非上場株式の資料を整理する考え方を確認します。
相続税申告、遺産分割、遺留分、売却精算では、同じ株式でも見るべき評価日が変わります。
一つの株式に一つの評価日だけがある、と考えないことが出発点です。
相続開始日と株式の評価基準日にズレがある場合の処理で最も重要なのは、評価の目的を先に分けることです。相続税、遺産分割、遺留分、売却や代償金の精算では、同じ銘柄でも基準時と評価額の使い道が異なります。
次の比較表は、株式評価でよく混同される四つの目的と基準時を整理したものです。目的ごとに担当する専門職と実務上の意味が違うため、どの欄の評価額をどの書類に使うのかを読み分けることが重要です。
| 評価目的 | 典型的な基準時 | 主な関与者 | 実務上の意味 |
|---|---|---|---|
| 相続税申告 | 相続開始時、つまり被相続人の死亡時 | 税理士 | 税額を計算するための評価です。 |
| 遺産分割 | 遺産分割時、または相続人が合意した評価時点 | 弁護士、家庭裁判所、鑑定人、公認会計士 | 相続人間で公平に分けるための評価です。 |
| 遺留分侵害額請求 | 原則として相続開始時 | 弁護士 | 遺留分額を算定するための評価です。 |
| 売却、換価分割、代償金算定 | 売却日、換価日、合意日、鑑定基準日など | 弁護士、税理士、証券会社 | 実際の現金化や代償金精算の根拠になります。 |
処理の順番は、評価目的の確定、帳簿の分離、上場株式と非上場株式の区分、相続開始後の出来事の時系列整理、そして協議書や申告書への明記です。この順番を外すと、税務上の評価額を民事上の分配価値と取り違えやすくなります。
死亡日、課税時期、評価基準日は似ていますが、使う場面が違います。
次の一覧は、評価日の議論で最初に確認したい三つの用語を並べたものです。言葉の意味がずれると、証券会社の残高証明書、税務評価、協議書の評価日を混同しやすいため、それぞれが何を指すかを確認してください。
民法上、相続は死亡によって開始します。戸籍、死亡診断書、死体検案書、住民票除票などで死亡日を確認します。相続人の範囲、相続放棄期間、相続税申告期限も死亡日を起点に検討します。
相続によって財産を取得した場合、相続税の課税時期は原則として相続開始時です。上場株式では死亡日の最終価格と、死亡月・前月・前々月の月平均額を比較する取扱いがあります。
相続税では課税時期を指すことが多く、遺産分割では協議日、調停成立日、合意日などを指すことがあります。非上場株式の算定書では、算定書に明記された日を確認します。
上場株式では、死亡時刻そのものより、その日の取引所の最終価格や月平均額が問題になります。証券会社の残高証明書に記載された日付は事務上の残高基準日であり、相続税や遺産分割の評価基準日と常に一致するわけではありません。
死亡日と評価資料の日付が合わない理由を、先に洗い出します。
次の一覧は、評価基準日のズレが問題になりやすい場面をまとめたものです。どの場面に当てはまるかで集める資料や協議書に書くべき内容が変わるため、まず該当する出来事を確認してください。
土日、祝日、年末年始などは死亡日の最終価格が存在しないことがあります。相続税評価では通達上の取扱いを確認し、遺産分割では前後の価格や分割時価格も資料になります。
相続税申告期限は原則10か月以内ですが、遺産分割は数か月後または数年後になることがあります。未分割申告と後日の修正申告・更正の請求を分けて考えます。
相続開始時は1株2,000円、協議時は1株3,500円というように、税務評価額と代償金の基礎額が大きく離れることがあります。
決算書の日付と死亡日は一致しないことが多いものの、課税時期が決算日に移るわけではありません。重大な資産売却や借入などの有無を確認します。
相続人全員の合意による売却なら換価分割として整理し、無断売却なら返還、損害賠償、不当利得、取引履歴の確認などが問題になります。
ズレが起きた理由を確認せずに死亡日の株価と分割日の株価だけを比較しても、正しい結論にはつながりません。株数、配当、手数料、税金、名義移管、会社側の手続まで含めて時系列で並べます。
税務上は、原則として相続開始時の時価評価を基礎にします。
相続税では、相続により取得した財産の価額は原則として相続開始時の時価で評価されます。税務上の評価は課税の公平と大量処理を目的とするため、相続人間の納得感ある分配価値と一致しないことがあります。
次の比較表は、上場株式の相続税評価で確認する四つの価格資料を示しています。死亡日の終値だけでなく月平均額も確認する点が重要で、どの価格が採用候補になるのかを読み取ります。
| 確認する価格 | 内容 |
|---|---|
| 課税時期の最終価格 | 被相続人の死亡日に金融商品取引所が公表した最終価格です。 |
| 死亡月の月平均額 | 死亡月における毎日の最終価格の平均額です。 |
| 死亡月の前月の月平均額 | 死亡月の一つ前の月の平均額です。 |
| 死亡月の前々月の月平均額 | 死亡月の二つ前の月の平均額です。 |
次の例は、死亡日の最終価格よりも前月平均額が低い場合の見方を示しています。金額欄を比較し、最も低い月平均額を参照する取扱いが、評価基準日を前月へ変更する意味ではないことを確認してください。
| 価格資料 | 1株あたりの価格 | 読み取り方 |
|---|---|---|
| 死亡日の最終価格 | 2,500円 | 課税時期の価格資料です。 |
| 死亡月の月平均額 | 2,420円 | 比較対象となる月平均額です。 |
| 死亡月の前月の月平均額 | 2,100円 | この例で最も低い価格資料です。 |
| 死亡月の前々月の月平均額 | 2,280円 | 比較対象となる月平均額です。 |
死亡日が取引所休業日である場合や、権利落ち、配当落ち、株式分割、株式併合、上場廃止、合併が絡む場合は、通常の四価格比較だけでは処理しにくいことがあります。証券会社の評価明細がある場合でも、根拠資料を確認します。
次の資料一覧は、上場株式の相続税評価で集める代表的な資料を整理しています。取得先と目的を分けておくと、残高、株数、月平均額、相続開始後の変動を照合しやすくなります。
| 資料 | 取得先 | 目的 |
|---|---|---|
| 残高証明書 | 証券会社、信託銀行 | 相続開始日時点の保有銘柄と株数を確認します。 |
| 取引履歴 | 証券会社 | 相続開始前後の売買、移管、入出庫を確認します。 |
| 配当金支払通知 | 証券会社、信託銀行、発行会社 | 相続開始後の果実を確認します。 |
| 月間相場表 | 日本取引所グループ等 | 月平均額と最終価格を確認します。 |
| コーポレートアクション資料 | 発行会社、証券会社 | 株式分割、合併、TOB、上場廃止等を確認します。 |
非上場株式では、取得者が同族株主等に当たるか、会社規模が大会社・中会社・小会社のどれか、特定の評価会社に当たるかを確認します。同族株主等は原則的評価方式、大会社は類似業種比準方式、小会社は純資産価額方式、中会社は両方式の併用が中心になります。少数株主などでは配当還元方式を使う場面があります。
遺産分割協議が申告期限までに成立しない場合でも、相続税申告期限は原則として延長されません。未分割財産については、民法上の相続分等に従って取得したものとして申告する場面があります。後日分割が成立したときは、必要に応じて修正申告、更正の請求、特例適用の手続を検討します。
税額計算ではなく、相続人間で公平に分けるための評価です。
遺産分割では、株式をそのまま分けるのか、一人が取得して代償金を払うのか、売却して代金を分けるのかで評価の意味が変わります。上場株式では協議日や調停成立日に近い市場価格、非上場株式では算定書や鑑定基準日が重視されることがあります。
次の比較表は、遺産分割で二つの評価時点が同時に出てくる理由を整理しています。具体的相続分の算定と最終取得財産の精算では目的が違うため、どちらの欄で何を計算しているかを確認してください。
| 計算場面 | 使われやすい基準時 | 理由 |
|---|---|---|
| 具体的相続分の算定 | 相続開始時 | 特別受益、寄与分、相続人間の基礎的取り分を調整するためです。 |
| 最終取得財産、代償金の算定 | 遺産分割時 | 現実に分ける財産の現在価値を反映するためです。 |
次の一覧は、上場株式の遺産分割で使われる代表的な分け方を示しています。どの方法を選ぶかで評価日、配当金、売却益、手数料、税金の扱いが変わるため、分け方ごとの注意点を読み取ります。
各相続人が銘柄または株数を現物で取得する方法です。単元未満株、NISA口座、特定口座、外国株式、端株、未受領配当金があると実務処理が複雑になります。
株数調整一人または一部の相続人が株式を取得し、他の相続人に代償金を支払う方法です。代償金の基礎となる評価日を協議書に明記します。
評価日明記株式を売却し、売却代金を相続人で分配する方法です。売却益の税金、取得費、取得費加算、売却手数料を確認します。
税金確認次の比較表は、非上場株式の民事評価で参照されやすい評価アプローチを整理しています。市場価格がないため、会社の性質や相続人の立場に合う方法を読み分けることが重要です。
| 評価アプローチ | 内容 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 純資産価額方式 | 会社の資産と負債を基礎にします。 | 資産保有会社、不動産保有会社、清算価値が重要な会社です。 |
| 類似会社比較 | 上場類似会社や取引事例を参考にします。 | 同業上場会社との比較可能性がある会社です。 |
| DCF法 | 将来キャッシュフローを現在価値に割り引きます。 | 収益力、成長性、事業計画が重要な会社です。 |
| 配当還元的評価 | 配当収益に着目します。 | 少数株主、経営関与が乏しい株主が問題になる場面です。 |
| 相続税評価額の参照 | 財産評価基本通達による評価を参考資料にします。 | 相続人が簡便な基準で合意する場合です。 |
被相続人の同族会社株式を後継者が承継する場面では、相続開始後の価値上昇が市場環境によるものか、後継者の固有努力によるものかが問題になります。役員報酬、配当、貸付金返済、退職金、関連会社取引、定款の売渡請求規定、株式分散が会社経営へ与える影響も整理します。
税務や分割だけでなく、請求権、名義移管、株主名簿の問題も確認します。
遺留分は一定の相続人に保障される最低限の相続利益です。遺留分算定では、被相続人が相続開始時に有していた財産の価額に一定の贈与財産を加え、債務を控除するため、遺産分割の分割時評価とは異なり、相続開始時評価が中心になります。
相続開始後に株式が大きく値上がりまたは値下がりしても、その変動が当然に遺留分額へ反映されるわけではありません。非上場株式では、相続開始時の会社価値をどう評価するか、相続税評価額をどの程度参考にするかが争点になることがあります。
被相続人が生前に特定の相続人へ非上場株式を贈与していた場合、贈与時の評価、相続開始時の評価、会社価値の変動、贈与の趣旨、特別受益、持戻し免除、事業承継税制の有無を確認します。税務上の贈与税評価額、民事上の遺留分評価額、会社支配権の経済的価値は一致しないことがあります。
被相続人がどの証券会社に口座を持っていたか不明な場合、証券保管振替機構の登録済加入者情報の開示請求を利用できることがあります。ただし、開示結果だけで保有銘柄、株数、取引履歴まで分かるとは限らないため、判明した口座管理機関に別途確認します。
名義移管の日付は、必ずしも評価基準日ではありません。証券会社の事務処理が相続開始から数か月後に行われても、相続税評価の基準は原則として相続開始時であり、遺産分割では協議書に定めた評価日や分割時の価値が問題になります。
非上場会社では、株主名簿、定款、株券発行会社か否か、譲渡制限、種類株式、議決権制限、属人的株式、相続人等に対する売渡請求規定を確認します。売渡請求規定があると、相続人が株式を取得した後の会社側対応や価値評価に影響することがあります。
典型例ごとに、税務処理と分割処理を切り分けます。
被相続人が上場会社X株式1万株を保有し、相続税評価額が1株2,000円で2,000万円、遺産分割協議時には1株3,000円で3,000万円相当になっていた場面では、相続税申告は原則として相続開始時の評価ルールに基づきます。一方、長男が株式を取得して長女に代償金を支払うなら、代償金の基準を2,000万円にするか3,000万円にするかで公平性が大きく変わります。
相続人全員が相続税評価額を遺産分割上の評価額として採用することもありますが、その場合でも、相続税評価額を分割評価として採用する合意を協議書に明記する必要があります。
相続開始時に5,000万円相当だった上場株式が、申告期限前または分割時に2,500万円へ下落した場合でも、相続税評価は原則として相続開始時の評価額を用います。遺産分割では、分割時の実価を踏まえて、売却、換価分割、評価日の合意、値下がりリスクの負担を協議書に記載します。
被相続人が同族会社株式を80パーセント保有し、相続税評価額は1億円、公認会計士による継続企業価値は3億円とされたような場面では、相続税申告と遺産分割・遺留分で違う評価が主張されることがあります。相続税評価額は重要な参考資料ですが、民事上の株式価値を当然に拘束するものではありません。
相続人全員の合意に基づく売却であれば、換価分割として売却代金、手数料、税金、配当金を精算します。無断売却であれば、売却権限、代金返還、損害賠償、不当利得、口座履歴の開示、仮差押えなどの検討につながることがあります。相続税評価は原則として売却代金ではなく相続開始時の評価です。
相続開始後に後継者が経営改善を行い、3年後に会社価値が大きく上昇した場面では、分割時評価が基本線になり得ますが、価値上昇が後継者の固有努力によるものか、相続財産そのものの自然増価かを検討します。役員報酬、配当、会社資金の利用、被相続人の生前貢献、相続開始時の事業基盤、経営リスクの負担を総合的に見ます。
評価日の議論に入る前に、財産・目的・資料を順番にそろえます。
次の判断の流れは、株式の有無を確認してから協議書や申告書へ反映するまでの順番を示しています。順番を守ることで、評価目的の取り違えや資料漏れを防ぎ、各段階で何を確認すべきかを読み取れます。
上場株式、ETF、REIT、投資信託、外国株式、非上場株式に分類します。
相続税申告、遺産分割、遺留分、売却、会社法上の対応を分けます。
相続税は相続開始時、分割は分割時または合意日、遺留分は原則相続開始時、売却は売却日や入金日を確認します。
上場株式は終値や月平均額、非上場株式は決算書、税務申告書、株主名簿、定款を集めます。
売却、配当、株式分割、合併、上場廃止、TOB、名義移管を時系列で記録します。
税務帳簿と分割帳簿を分け、協議書、申告書、調停条項に採用評価額と目的を記載します。
次の比較表は、すべての相続で共通して確認したい資料を整理しています。株式評価の前に相続人、死亡日、遺言、協議の前提を固めるため、どの資料がどの用途に結びつくかを確認してください。
| 資料 | 用途 |
|---|---|
| 被相続人の戸籍、除籍、改製原戸籍 | 相続人を確定します。 |
| 死亡診断書、死体検案書、住民票除票 | 相続開始日を確認します。 |
| 遺言書 | 株式の取得者、遺言執行者を確認します。 |
| 遺産分割協議書案 | 評価基準日と取得者を整理します。 |
| 相続人の印鑑証明書 | 手続書類や協議書作成に用います。 |
| 法定相続情報一覧図 | 金融機関や証券会社手続を簡素化します。 |
次の比較表は、上場株式関係の証拠資料を整理しています。相続開始時の保有状況と、その後の配当・売買・移管を切り分けるため、資料ごとの用途を読み取ります。
| 資料 | 用途 |
|---|---|
| 証券会社の残高証明書 | 相続開始時の銘柄、株数、評価額を確認します。 |
| 取引履歴 | 相続開始前後の売買、移管、出庫を確認します。 |
| 特定口座年間取引報告書 | 譲渡所得、配当所得を確認します。 |
| 配当金支払通知書 | 相続開始後の配当の帰属を確認します。 |
| JPX等の月間相場表 | 相続税評価に必要な月平均額を確認します。 |
| コーポレートアクション資料 | 株式分割、合併、TOB、上場廃止を確認します。 |
| 証券保管振替機構の開示結果 | 口座開設先が不明な場合に調査します。 |
次の比較表は、非上場株式で確認する資料を整理しています。会社支配権や民事評価が問題になる場合、財務資料と会社法上の資料を併せて読む必要があります。
| 資料 | 用途 |
|---|---|
| 株主名簿 | 被相続人の株式数、議決権割合を確認します。 |
| 定款 | 譲渡制限、売渡請求、種類株式を確認します。 |
| 株券発行の有無に関する資料 | 株券発行会社か否かを確認します。 |
| 決算書、勘定科目内訳明細書 | 会社財務を確認します。 |
| 法人税申告書、地方税申告書 | 税務上の利益、資産負債を確認します。 |
| 総勘定元帳、試算表 | 相続開始日前後の重要変動を確認します。 |
| 固定資産台帳、借入金明細、担保資料 | 不動産、設備、債務、担保を確認します。 |
| 役員報酬、退職金、関係会社取引、事業計画 | 会社価値、利益調整、DCF等の民事評価資料になります。 |
評価目的、評価日、配当・税金・手数料の扱いを文書化します。
遺産分割協議書では、株式の取得者だけでなく、どの日の評価額を何のために採用したかを明記します。以下は一般的な条項例であり、具体的な文案は相続人構成、争いの有無、税務処理、会社法上の制限に応じて専門家が調整します。
争いがある相続、非上場株式、未成年者や成年後見制度利用者がいる場合、利益相反がある場合、海外居住者がいる場合は、家庭裁判所手続や税務手続との整合を慎重に確認します。
税務、民事、会社価値、名義変更を一人で抱え込まないための整理です。
次の一覧は、株式評価のズレに関わる専門職と機関の役割をまとめたものです。評価額が争点になったとき、誰に何を確認すべきかを読み取り、必要な範囲で連携体制を組みます。
評価基準日の合意、資料開示、遺産分割協議、遺留分侵害額請求、調停、審判、訴訟、仮処分、使途不明金追及を扱います。
上場株式の終値・月平均額、非上場株式の評価明細書、未分割申告、修正申告、更正の請求、譲渡所得との関係を確認します。
不動産と株式が混在する相続では、相続登記、戸籍収集、法定相続情報一覧図、裁判所提出書類作成が関係します。2024年4月1日から相続登記の申請義務化が始まっています。
相続税評価額とは異なる民事上の会社価値が争われる場合、株式価値算定書、財務分析、会計資料の検証が重要になります。
争いのない範囲で、遺産分割協議書、相続人関係説明図、各種手続書類の作成を支援します。代理交渉や法律判断が必要な場面では弁護士との連携が必要です。
証券会社、信託銀行、証券保管振替機構は、残高証明書、取引履歴、配当金情報、相続移管手続、口座開設先確認を担います。相続人間の法的紛争の判断者ではありません。
遺産分割調停や審判では、当事者の主張を整理し、必要に応じて資料提出や鑑定を通じて遺産の内容と評価を確認します。
同じ評価額をすべての場面へ流用しないための管理方法です。
次の一覧は、株式評価で紛争や申告誤りにつながりやすい誤解を整理しています。どの誤解も、税務上の評価と民事上の分配価値を取り違える点に共通点があります。
相続税評価額は税額計算のための評価です。株価変動や非上場会社の支配権価値を十分反映しないことがあります。
相続税の課税時期は原則として相続開始時です。遺産分割が遅れても、評価基準時を自由に変更できるわけではありません。
残高証明書は重要ですが、月平均額、配当、売却、株式分割、移管、手数料、税金を別途確認します。
非上場会社の決算書は評価資料であり、相続税の課税時期を決算日に変更するものではありません。
相続人全員が遺産分割上の評価額に合意しても、相続税評価は法令、通達、課税実務に従います。
相続開始後の配当金、外国株式、投資信託、ETF、REIT、取得費加算、売却タイミング、評価合意の有効性と限界も別途整理します。未成年者、成年被後見人、利益相反関係者、資料隠し、虚偽の財務資料、遺留分権利者、債権者や会社の権利が関係すると、評価合意だけでは解決できないことがあります。
次の比較表は、相続税評価帳簿に記載したい項目を整理しています。税務署や税理士に説明する評価根拠を明確にするため、相続開始日時点の株数、価格資料、採用額を読み取れる形にします。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 銘柄 | 正式名称、証券コード |
| 株数 | 相続開始日時点の株数 |
| 口座 | 証券会社、支店、口座区分 |
| 課税時期 | 被相続人の死亡日 |
| 最終価格 | 死亡日の最終価格 |
| 月平均額 | 死亡月、前月、前々月 |
| 採用評価額 | 財産評価基本通達に基づく評価額 |
| 根拠資料 | 残高証明書、月間相場表、証券会社評価明細 |
次の比較表は、遺産分割評価帳簿に記載したい項目を整理しています。相続人や家庭裁判所に説明する分配根拠を明確にするため、分割時点の株数、基準日、配当、変動、精算方法を読み取れる形にします。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 銘柄 | 正式名称、証券コード |
| 株数 | 分割時点の株数、分割後株数、売却済株数 |
| 基準日 | 協議日、調停成立日、売却日など |
| 評価方法 | 終値、平均額、売却代金、鑑定額など |
| 配当 | 相続開始後の配当金と帰属 |
| 変動 | 株式分割、合併、TOB、上場廃止 |
| 採用理由 | 公平性、合意内容、鑑定理由 |
| 精算方法 | 現物分割、代償分割、換価分割 |
二重帳簿方式を使うと、税務申告と遺産分割の評価額が違っても、なぜ違うのかを説明しやすくなります。税務署、相続人、家庭裁判所、証券会社に対して、目的別の根拠資料を示せます。
評価日、リスク負担、売却方法、資料開示を早めに決めます。
次の時系列は、相続開始後に評価方針を整える流れを示しています。早い段階で合意するほど株価変動や資料不足による紛争を防ぎやすいため、順番と各段階の目的を確認してください。
どの口座にどの銘柄が何株あるかを確認し、上場株式、投資信託、外国株式、非上場株式を分けます。
上場株式は協議成立日の終値、売却銘柄は売却代金、長期保有銘柄は取得者が値動きリスクを負うなど、方針を決めます。
相続開始日から分割日までの配当金、売却手数料、税金、振込手数料をどのように負担するか決めます。
決算書、税務申告書、総勘定元帳、株主名簿、定款、議事録、借入資料、関係会社取引資料を開示する範囲を決めます。
上場株式は値動きする財産です。代償分割では「評価基準日以後の株価変動は株式取得者に帰属する」といった条項を置くことで、評価日後の上昇や下落をめぐる再紛争を防ぎやすくなります。
換価分割では、誰が、いつ、どの証券会社で、成行注文か指値注文か、一括売却か分割売却か、手数料や税金をどう控除するかを具体的に決めます。非上場株式では、資料が出ないまま評価額だけを示されると納得が得にくいため、資料開示が紛争予防の要になります。
一般的な制度説明として、目的別に考え方を整理します。
一般的には、相続人全員が納得している場合、簡便な基準として相続税評価額を遺産分割でも採用することがあります。ただし、上場株式の価格変動、非上場株式の支配権価値、資料の範囲によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、相続税評価は相続開始時の評価規則に従うとされています。ただし、死亡日時点の最終価格と月平均額の比較、権利落ち、上場廃止、特殊事情などにより確認事項が変わる可能性があります。具体的な対応は、税理士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、まず相続人全員の合意で評価日を決めることがあります。合意できない場合は、調停や審判で資料や鑑定を踏まえて検討されます。ただし、株式の種類、価格変動、分割方法、証拠資料によって判断が変わる可能性があります。具体的な対応は、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、相続税評価額と民事上の会社価値が一致しないことがあります。会社支配権、収益力、含み益、少数株主性、譲渡制限、後継者の地位によって結論が変わる可能性があります。具体的な評価方法や交渉方針は、資料を整理したうえで弁護士や公認会計士等へ相談する必要があります。
一般的には、目的によって使う評価額が異なります。相続税申告では財産評価基本通達に従って確認し、遺産分割では相続人間で合意した評価日、終値、売却代金などを使うことがあります。ただし、口座区分や価格資料の内容によって結論が変わるため、専門家へ相談する必要があります。
一般的には、配当の基準日、相続開始日、分割日、協議内容によって扱いが変わります。相続人全員で精算するのか、株式取得者に帰属させるのかは、合意内容や証拠関係によって変わる可能性があります。具体的な対応は、協議書案と資料を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。
一般的には、相続税申告は期限内に行い、未分割の場合でも相続開始時の評価を行ったうえで法定相続分等に従って仮に取得したものとして申告する場面があります。ただし、特例適用、修正申告、更正の請求の可否は事情によって変わるため、税理士等へ相談する必要があります。
一般的には、相続人間で争いがある場合は弁護士、相続税申告が必要な場合は税理士、非上場株式の会社価値が争点となる場合は公認会計士を含めた体制が必要とされています。不動産もある場合は司法書士や不動産鑑定士が関与することがあります。具体的な相談先は、財産内容と争点によって検討する必要があります。
一つの評価額に、税務・分割・遺留分・売却のすべてを背負わせないことが重要です。
相続開始日と株式の評価基準日にズレがある場合の処理は、単純にどの日の株価を使うかという問題ではありません。相続税、遺産分割、遺留分、会社法、証券実務、所得税、非上場会社の支配権が交差する総合問題です。
次の重要ポイントは、ページ全体の結論をまとめたものです。各項目がどの目的に関わるかを読み分け、必要な根拠資料と基準日を文書化してください。
同じ株式でも、相続税評価は原則として相続開始時、遺産分割は分割時または合意した時点、遺留分は相続開始時、売却精算は売却日や入金日を中心に整理します。
公的機関・制度運営機関の資料を中心に確認しています。