2σ Guide

遺言書の書き方で
注意すべき点

方式不備を避け、財産と受け取る人を明確にし、保管・検認・遺留分・税務・登記まで見通して、死亡後に実行できる遺言書を整えるための要点を解説します。

15歳遺言能力の入口
10か月相続税申告の原則期限
3年以内相続登記の原則期限
本ページは株式会社Dプロフェッションズ(医師/医療機関/弁護士/弁護士法人ではありません)が運営しています。
一般的な情報提供を目的としており医療上の助言や法律相談等を行うものではありません。
広告(PR)を掲載しています。広告は編集内容や推奨を意味しません。
Video

遺言書の書き方で 注意すべき点

方式、内容、保管、周辺制度、専門家相談を一体で確認します。

動画を読み込み中…
2σ GUIDE ・ VIDEO
遺言書の書き方で 注意すべき点
方式、内容、保管、周辺制度、専門家相談を一体で確認します。
動画の文字起こし(全文テキスト)

2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 遺言書の書き方で 注意すべき点
  • 方式、内容、保管、周辺制度、専門家相談を一体で確認します。

POINT 1

  • 遺言書の書き方で注意すべき点の全体像
  • 方式、内容、保管、周辺制度、専門家相談を一体で確認します。
  • 遺言書は「書く」より「実行できる状態にする」ことが重要です
  • 方式を守る
  • 対象を明確にする

POINT 2

  • 遺言書の基本とエンディングノートとの違い
  • 遺言書でできること、できないことを先に整理します。
  • 遺言書は、遺言者が死亡後の財産承継や一定の身分関係・法律関係について、法律の方式に従って意思を表示する文書です。
  • 遺言書がない場合、遺産は原則として法定 相続人 全員の 遺産分割協議で分けられます。
  • 相続人間で意見が割れると、調停・審判、遺留分請求、遺言無効確認の争いに発展することがあります。

POINT 3

  • 遺言書の書き方で最重要なのは方式と遺言能力
  • 方式を満たしているか
  • 本文・日付・氏名・押印など、方式を外すと法的な遺言として扱われないリスクがあります。
  • 15歳以上で判断能力があるか
  • 民法上15歳に達した者は遺言できますが、内容と結果を理解できる遺言能力が必要です。

POINT 4

  • 遺言書の種類と選び方 ― 自筆証書・公正証書・秘密証書
  • 相続人間に不仲がある
  • 意見対立が予想される場合は、方式面と証拠面の安定性が重要です。
  • 相続人以外へ遺贈したい
  • 内縁の配偶者、友人、法人などへの遺贈では、実行面の設計が必要です。

POINT 5

  • 自筆証書遺言の書き方で注意すべき点
  • 本文自書、日付、署名、押印、財産目録、訂正、封筒の扱いを確認します。
  • どの要件が本文に関するものか、どれが財産目録や訂正に関するものかを読み取ってください。
  • 制度ごとに扱いが異なるため、自宅保管と法務局保管制度のどちらを使うかを意識して読み取ることが大切です。
  • ページ番号、署名押印、契印などを検討します。

POINT 6

  • 公正証書遺言と法務局保管制度の注意点
  • 証人、必要資料、デジタル化、形式チェック、通知制度をまとめます。
  • ただし、公証人が税務、遺留分交渉、事業承継設計をすべて担うわけではありません。
  • 手続の安定性が高い方式でも、証人や資料の不備があると作成や実行が遅れるため、何を事前に集めるべきかを読み取ってください。
  • 法務局では形式面の確認を受けられますが、遺留分、税務、登記、紛争可能性まで保証されるわけではありません。

POINT 7

  • 遺言書の内容は「誰に、何を、どれだけ」を明確にする
  • 財産目録、人物特定、残余財産条項、債務、生命保険まで確認します。
  • 人物を特定する
  • 相続させる・遺贈する
  • 残余財産条項を置く

POINT 8

  • 遺言書の周辺制度 ― 遺留分・相続税・相続登記
  • 有効な遺言書でも、金銭請求や期限対応が残ることがあります。
  • 遺言能力の入口
  • 遺留分の基礎割合
  • 相続税の基礎控除

まとめ

  • 遺言書の書き方で 注意すべき点
  • 遺言書の書き方で注意すべき点の全体像:方式、内容、保管、周辺制度、専門家相談を一体で確認します。
  • 遺言書の基本とエンディングノートとの違い:遺言書でできること、できないことを先に整理します。
  • 遺言書の書き方で最重要なのは方式と遺言能力:15歳以上、判断能力、共同遺言禁止など、無効リスクの入口を確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

遺言書の書き方で注意すべき点の全体像

方式、内容、保管、周辺制度、専門家相談を一体で確認します。

遺言書は、気持ちを残す手紙ではなく、死亡後に財産承継を実行するための法律文書です。本人が亡くなった後は真意を直接確認できないため、方式、日付、署名、押印、証人、保管、検認などの細かなルールを外すと、内容が合理的でも実務上使いにくくなる可能性があります。

次の強調部分は、このページ全体で確認する結論を表しています。遺言書で何を達成したいかを見失わないために重要で、形式だけでなく、残された人が実行できるかまで読むことが大切です。

遺言書は「書く」より「実行できる状態にする」ことが重要です

本文の自書や押印だけでなく、財産の特定、遺留分、税務、登記、保管、遺言執行者、見直しまで含めて設計すると、相続開始後の協議負担や紛争リスクを下げやすくなります。

次の一覧は、遺言書作成で特に確認したい五つの視点を整理したものです。各項目は互いに関係しているため、どこか一つだけでなく、全体を見て不足しやすい点を読み取ってください。

POINT 1

方式を守る

自筆証書遺言では本文・日付・氏名の自書、押印、財産目録の各ページへの署名押印、訂正方式が重要です。

POINT 2

対象を明確にする

誰に、何を、どれだけ渡すのかを、財産資料と人物情報で特定します。曖昧な表現は手続停滞の原因になります。

POINT 3

周辺制度を見る

遺留分、相続税、納税資金、相続登記、債務、生命保険との整合性を確認します。

POINT 4

保管と発見を設計する

自宅保管だけでなく、公正証書遺言や法務局保管制度を検討し、相続開始後に見つかる仕組みを整えます。

POINT 5

争いの兆候を先に見る

再婚、前婚の子、内縁関係、事業承継、不動産中心の相続、認知症リスクがある場合は、早めの相談が有用です。

Section 01

遺言書の基本とエンディングノートとの違い

遺言書でできること、できないことを先に整理します。

遺言書は、遺言者が死亡後の財産承継や一定の身分関係・法律関係について、法律の方式に従って意思を表示する文書です。遺言書がない場合、遺産は原則として法定相続人全員の遺産分割協議で分けられます。相続人間で意見が割れると、調停・審判、遺留分請求、遺言無効確認の争いに発展することがあります。

次の比較表は、遺言書とエンディングノートの役割の違いを示しています。どちらも終活では役立ちますが、法的効果が異なるため、財産承継を実現したい場合はどちらを使うべきかを読み分けることが重要です。

項目遺言書エンディングノート
主な役割財産承継などに法的効果を持たせる希望、連絡先、契約、家族への思いを整理する
方式民法上の方式を満たす必要がある決まった法定方式はない
財産の帰属有効な内容なら手続で使える原則として財産の帰属を変える文書にはならない
使い分け自宅、預貯金、株式、遺贈、遺言執行者の指定に使う葬儀、医療・介護、契約一覧、家族へのメッセージに使う

遺言書では、財産の取得者、相続分、遺産分割方法、遺贈、遺言執行者、未成年後見人、認知など、法律が遺言で認める事項を定められます。一方で、葬儀の希望や家族への願いは付言事項として意味を持ち得ますが、財産処分と同じ強制力を持つとは限りません。

Section 02

遺言書の書き方で最重要なのは方式と遺言能力

15歳以上、判断能力、共同遺言禁止など、無効リスクの入口を確認します。

民法は、遺言が定められた方式に従わなければ効力を生じないという趣旨を置いています。内容が自然で家族のためになるように見えても、方式不備や判断能力の問題があると、後に有効性が争われる可能性があります。

次の一覧は、遺言書の有効性で問題になりやすい入口を整理したものです。読者にとって重要なのは、文案の中身を見る前に、作成者・作成方法・作成単位が法律上の前提を満たすかを読み取ることです。

方式を満たしているか

本文・日付・氏名・押印など、方式を外すと法的な遺言として扱われないリスクがあります。

15歳以上で判断能力があるか

民法上15歳に達した者は遺言できますが、内容と結果を理解できる遺言能力が必要です。

共同遺言になっていないか

夫婦や親子が一枚の書面で共同して遺言する形は避け、各自が別個の遺言書を作成します。

認知症リスクを記録できているか

判断能力が後に争われそうな場合は、公正証書遺言、医師の診断書、面談記録などが重要になります。

注意認知症の診断があるから直ちに無効になるわけではありません。ただし、遺言時の判断能力は個別事情で評価されるため、作成時の記録を残す設計が重要です。
Section 03

遺言書の種類と選び方 ― 自筆証書・公正証書・秘密証書

普通方式の三類型と、実務で選びやすい場面を整理します。

普通方式の遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。次の比較表は、それぞれの概要、長所、短所を並べたものです。方式選択を誤ると保管や実行の負担が変わるため、自分の財産や家族関係に合う方式を読み取ることが重要です。

種類概要主な長所主な短所
自筆証書遺言本文・日付・氏名を自書し押印する方式費用が低く、自分だけで作成しやすい方式不備、紛失、改ざん、未発見、検認のリスクがある
公正証書遺言公証人と証人2人以上の関与で作成する方式方式不備リスクが低く、原本保管と検認不要の利点がある費用と準備が必要で、証人2人を要する
秘密証書遺言内容を秘密にしたまま存在を公証人・証人に証明してもらう方式内容の秘密性を保ちやすい利用頻度は高くなく、内容不備と検認のリスクが残る

次の一覧は、公正証書遺言を優先的に検討しやすい事情を示しています。将来の争いを予防するうえで重要な要素なので、当てはまる項目が多いほど、簡易な自筆だけで済ませにくいことを読み取ってください。

相続人間に不仲がある

意見対立が予想される場合は、方式面と証拠面の安定性が重要です。

相続人以外へ遺贈したい

内縁の配偶者、友人、法人などへの遺贈では、実行面の設計が必要です。

不動産や事業用資産が多い

登記、株式、納税資金、経営権の設計まで見通す必要があります。

判断能力が争われそう

作成過程の記録、公証人とのやり取り、医療資料の整理が役立つことがあります。

Section 04

自筆証書遺言の書き方で注意すべき点

本文自書、日付、署名、押印、財産目録、訂正、封筒の扱いを確認します。

自筆証書遺言は手軽ですが、本文をパソコンで作る、日付を曖昧にする、財産目録の署名押印を忘れると、方式不備の問題が起きやすい方式です。次の表は基本要件を確認するためのものです。どの要件が本文に関するものか、どれが財産目録や訂正に関するものかを読み取ってください。

確認項目注意点実務上の見方
本文の自書遺言者本人が本文全文を手書きする本文を印刷し署名押印だけ手書きにする形は避けます
日付年月日を具体的に書く「吉日」のように作成日を特定できない表現は避けます
氏名戸籍・住民票上の氏名が安全通称や表記揺れは本人特定や保管申請で問題になり得ます
押印認印でもよいとされるが、真正性の観点では実印も検討するスタンプ印や判読困難な印影は避けます
財産目録パソコン作成や資料添付は可能自書でない目録は各ページに署名・押印が必要です
訂正変更箇所、付記、署名、押印など方式がある重要部分を変える場合は原則として書き直す方が安全です

次の一覧は、自筆証書遺言で見落としやすい実務上の扱いを整理しています。制度ごとに扱いが異なるため、自宅保管と法務局保管制度のどちらを使うかを意識して読み取ることが大切です。

1

財産目録だけは自書でなくてもよい

通帳コピーや登記事項証明書を添付する形も考えられますが、各ページの署名・押印を忘れないことが重要です。

目録
2

複数ページは順序が分かるようにする

ページ番号、署名押印、契印などを検討します。法務局保管制度ではホチキス留めをしない扱いにも注意します。

保管制度
3

消えにくい筆記具を使う

鉛筆、消えるインク、摩擦で消えるペンは避け、長期間判読できる筆記具を使います。

用紙
4

封筒の扱いは保管方法で変わる

自宅保管では封印が改ざん防止に役立つ一方、封印された遺言書は家庭裁判所で開封する必要があります。法務局保管制度では封筒不要です。

検認
Section 05

公正証書遺言と法務局保管制度の注意点

証人、必要資料、デジタル化、形式チェック、通知制度をまとめます。

公正証書遺言は、公証人と証人2人以上が関与し、原本が公証役場等で保管されるため、方式不備・紛失・未発見のリスクを下げやすい方式です。ただし、公証人が税務、遺留分交渉、事業承継設計をすべて担うわけではありません。

次の表は、公正証書遺言を作るときの準備事項をまとめたものです。手続の安定性が高い方式でも、証人や資料の不備があると作成や実行が遅れるため、何を事前に集めるべきかを読み取ってください。

準備事項確認内容注意点
証人2人以上推定相続人、受遺者、その配偶者、直系血族、未成年者などは避ける利害関係者を証人にすると有効性に疑義が生じ得ます
本人確認資料遺言者本人の確認資料を用意する健康状態によっては出張作成の検討も必要です
相続関係資料戸籍、受遺者の住所資料、遺言執行者の特定資料人物特定を曖昧にしないことが重要です
財産資料登記事項証明書、固定資産評価証明書、通帳、証券資料不動産は住所ではなく登記上の表示を確認します
2025年10月1日以降のデジタル化インターネット嘱託、ウェブ会議、電子データ作成・保存が説明されているリモート方式は希望と公証人の相当性判断が前提です

次の一覧は、自筆証書遺言書保管制度で確認したい点を整理しています。自筆の手軽さを維持しながら保管・発見・検認の問題を減らせますが、内容の正しさまで保証されるわけではないことを読み取ってください。

1

形式面の外形的確認

法務局では形式面の確認を受けられますが、遺留分、税務、登記、紛争可能性まで保証されるわけではありません。

内容設計
2

様式ルール

A4、余白、ページ番号、片面記載、ホチキス留めをしないこと、封筒不要など、制度固有の様式があります。

様式
3

本人申請

保管申請は原則として本人が法務局に出向いて行います。外出が難しい場合は公正証書遺言の出張作成も検討対象になります。

申請
4

通知制度

遺言者死亡後に指定された人へ通知する制度を活用すると、未発見リスクを低減しやすくなります。

発見
Section 06

遺言書の内容は「誰に、何を、どれだけ」を明確にする

財産目録、人物特定、残余財産条項、債務、生命保険まで確認します。

遺言書の内容面では、財産目録を作り、財産と受け取る人を特定することが出発点です。財産目録は、遺言書の対象を明確にするだけでなく、相続税、遺留分、納税資金、登記の検討にも使えるため、何の資料で何を確認するかを読み取ることが重要です。

財産類型確認資料注意点
不動産登記事項証明書、固定資産税納税通知書、評価証明書住所ではなく所在・地番・家屋番号、共有持分を確認します
預貯金通帳、残高証明書、金融機関名、支店名、口座番号口座変更に備えて残余財産条項も検討します
有価証券証券会社の残高報告書上場株式、投資信託、国債、NISA口座を整理します
生命保険保険証券、契約内容保険金受取人指定は遺言と別制度である点に注意します
事業用資産株主名簿、会社定款、決算書会社支配権、議決権、納税資金を検討します
債権・債務契約書、借用書、ローン明細債務は遺言だけで自由に特定人へ押し付けられるものではありません
デジタル資産暗号資産取引所、電子マネー、クラウド契約ID、秘密鍵、利用規約、相続手続を別途整理します

次の一覧は、財産目録の後に文案へ落とし込むときの主要な注意点です。手続で誰が何を取得するかを明確にするために重要で、曖昧な文言や制度の混同を避ける観点から読み取ってください。

PERSON

人物を特定する

続柄だけでなく、氏名、生年月日、住所などを組み合わせます。法人なら法人名、所在地、法人番号も確認します。

WORDS

相続させる・遺贈する

推定相続人には「相続させる」、相続人以外には「遺贈する」と書く場面が多く、登記や税務の観点も見ます。

RESIDUE

残余財産条項を置く

後から取得した財産や記載漏れ財産について、誰に帰属させるかを定め、協議負担を減らします。

SHARE

共有を安易に作らない

不動産の共有は売却、賃貸、修繕、建替え、固定資産税負担をめぐる対立を生みやすい点に注意します。

DEBT

債務を誤解しない

住宅ローンなどは遺言だけで当然に他の相続人が免れるわけではなく、金融機関との関係も考えます。

INSURANCE

生命保険と整合させる

保険金受取人指定と遺言内容が矛盾しないよう、契約内容の確認・変更も検討します。

記載例残余財産条項では、「本遺言に別段の定めがある財産を除き、遺言者に属する一切の財産を、長男〇〇に2分の1、長女〇〇に2分の1の割合で相続させる」といった形で、記載漏れに備える考え方があります。
Section 07

遺言書の周辺制度 ― 遺留分・相続税・相続登記

有効な遺言書でも、金銭請求や期限対応が残ることがあります。

遺言書が有効でも、遺留分、相続税、納税資金、相続登記、2割加算などの周辺制度を軽視すると、残された人に資金負担や期限対応が残ります。次の一覧は、特に数字で把握しておきたい制度を整理しています。各数字が何の期限・割合・計算式を表すかを読み取ってください。

15歳

遺言能力の入口

民法上、15歳に達した者は遺言できます。ただし、遺言内容と結果を理解できる判断能力が必要です。

3分の1・2分の1

遺留分の基礎割合

直系尊属のみが相続人の場合は相続財産の3分の1、それ以外は原則2分の1を基礎に計算されます。

3,000万円+600万円×人数

相続税の基礎控除

正味の遺産額から基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を計算します。

10か月

相続税申告期限

被相続人の死亡を知った日の翌日から原則10か月以内に申告・納税します。遺言書があっても期限は延びません。

2割加算

相続人以外への遺贈

友人、内縁の配偶者、兄弟姉妹、甥姪、法人などへの遺贈では、税額の2割加算が問題になることがあります。

3年以内

相続登記義務化

2024年4月1日から、相続により不動産を取得したことを知った日から原則3年以内の登記申請が必要です。

遺留分を侵害する遺言は当然に無効になるわけではありませんが、遺留分権利者から金銭請求を受ける可能性があります。遺留分相当額の預貯金や生命保険、代償金、生前贈与の整理、付言事項、遺留分放棄許可などを検討し、請求可能性と対応資金を試算することが大切です。

税務不動産中心の相続では、税額は発生するのに現金が少ない問題が起きやすくなります。誰が納税資金を確保するか、預貯金を誰に残すか、不動産を売却できるかを文案段階で確認します。
Section 08

遺言執行者・付言事項・検認の注意点

作成後に実行できるか、相続人に納得してもらえるかを確認します。

遺言書は作成して終わりではなく、相続開始後に金融機関、法務局、受遺者、相続人が手続できる状態にする必要があります。次の一覧は、実行段階と心理面で重要な三つの要素を示しています。誰が何を担い、どの手続が有効性判断とは異なるのかを読み取ってください。

1

遺言執行者を指定する

預貯金の解約、不動産登記、株式名義変更、受遺者への引渡しなどを担う人を指定すると、実行段階が円滑になりやすくなります。

執行
2

付言事項は穏当に書く

遺言内容の理由、感謝、家族への思いを落ち着いて説明します。感情的な非難は紛争を強めることがあります。

納得感
3

検認の意味を誤解しない

検認は遺言書の存在と状態を確認し、偽造・変造を防ぐ手続です。有効・無効を確定する手続ではありません。

検認
4

封印された遺言書は勝手に開封しない

封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いのもと開封する必要があります。

開封
記載例遺言執行者を指定する条項では、住所、氏名、生年月日を示し、預貯金の解約・払戻し、不動産登記申請、財産の名義変更、受遺者への引渡しなど必要な行為を行う権限を記載する考え方があります。

次の表は、遺言書で実務上よく問題になる失敗例と予防策を整理したものです。失敗は方式、内容、保管、見直しのどこでも起こり得るため、自分の文案や保管方法の弱点がどこにあるかを読み取ってください。

失敗例起こりやすい問題予防策
本文をパソコンで作る自筆証書遺言の本文として方式を満たさない可能性があります本文は本人が全文自書し、財産目録だけをパソコン作成にするか、公正証書遺言を検討します
日付を「吉日」と書く作成日を特定できず、複数遺言の先後や遺言能力の判断に支障が出ます西暦でも和暦でも、年月日まで具体的に書きます
財産の特定が足りない自宅土地、建物、私道持分、共有持分、口座の範囲で争いが生じ得ます不動産は登記事項証明書、預貯金は金融機関名・支店名・口座種別・口座番号で確認します
遺留分を無視する特定の相続人が金銭請求を受け、納税資金と支払資金の両方が問題になります遺留分相当額、生命保険、代償金、付言事項、専門家相談を組み合わせて検討します
遺言執行者を指定しない相続人全員の協力が必要になる手続が増え、実行が停滞することがあります預貯金、不動産、株式、受遺者への引渡しを担える人を指定します
古い遺言書を放置する後の遺言との矛盾や解釈争いが生じることがあります新しい遺言書で過去の遺言を撤回する条項を置き、保管状況を整理します
判断能力が低下してから慌てて作る遺言能力や作成過程が後に争われやすくなります元気なうちに作成し、必要に応じて公正証書遺言や医療記録を検討します
存在や保管場所が分からないせっかく作成しても相続開始後に実行されない可能性があります公正証書遺言、法務局保管制度、信頼できる人への存在共有などで発見可能性を設計します
Section 09

特殊な事情がある遺言書の書き方で注意すべき点

再婚、内縁、子がいない夫婦、事業承継、国際相続、ペット、デジタル資産を確認します。

家族関係や財産の種類が複雑な場合、一般的なひな形だけでは実行しにくい遺言書になることがあります。次の一覧は、特殊事情ごとの注意点を整理したものです。読者にとって重要なのは、自分の家庭や財産に近い事情がある場合、文案だけでなく周辺制度まで読みに行く必要があることです。

再婚・前婚の子

現在の配偶者と前婚の子が相続人になる場合、遺留分、納税資金、配偶者居住権、生命保険などを総合的に検討します。

内縁の配偶者

原則として法定相続人ではないため、財産を残すには遺贈の設計が重要です。2割加算や住居確保にも注意します。

子がいない夫婦

親や兄弟姉妹が相続人になる場合があります。配偶者に全財産を残したいときは遺言書の効果が大きくなります。

事業承継

株式、事業用不動産、借入金、保証債務、従業員保護、議決権、納税資金を一体で考えます。

海外財産・国際相続

準拠法、現地手続、翻訳、アポスティーユ、プロベート、国外税務などが問題になり得ます。

ペットの世話

ペットは相続人になれないため、世話をする人への遺贈、負担付遺贈、信託的な設計を検討します。

デジタル資産

秘密鍵やパスワードを本文に直接書くと閲覧リスクがあります。別紙管理や信頼できる保管方法を検討します。

Section 10

遺言書作成の手順と専門家相談のタイミング

目的整理から見直しまで、実務上の順番を確認します。

相続人同士の関係が悪い、遺留分侵害の可能性がある、法定相続人以外へ財産を渡したい、不動産が主な財産で現金が少ない、事業承継がある、認知症や海外財産が心配といった事情がある場合は、専門家相談を前提にした方がよい場面があります。

次の表は、相談前に整理しておくとよい資料と、その資料から読み取るべき内容をまとめています。相談を効率化し、遺言書の文案・税務・登記の検討を同じ方向にそろえるために重要です。

準備する資料読み取る内容関係しやすい専門家
財産目録財産の全体像、評価額、記載漏れ弁護士、税理士、司法書士
推定相続人の一覧・戸籍関係相続人、法定相続分、遺留分弁護士、司法書士
不動産資料登記表示、共有持分、相続登記の要否司法書士、弁護士
預貯金・証券・保険資料納税資金、代償金、保険受取人との整合性税理士、弁護士
借入・保証・過去の贈与資料債務、特別受益、紛争可能性弁護士、税理士
希望する配分案目的、優先順位、紛争予防策弁護士、公証人

次の手順図は、遺言書作成を目的整理から見直しまで進める順番を示しています。順番が重要なのは、方式を選ぶ前に財産と相続人を把握し、文案を作る前に配分案と周辺制度を確認する必要があるためです。

遺言書作成の行動順序

第1段階 ― 目的を明確にする

配偶者の生活、事業承継、介護への配慮、寄付、協議負担の軽減などを整理します。

第2段階 ― 相続人と財産を調査する

戸籍、不動産、預貯金、証券、保険、債務、事業資産を確認します。

第3段階 ― 配分案を作る

公平性、遺留分、納税資金、生活保障、事業継続、手続の容易さを考えます。

第4段階 ― 方式を選ぶ

自筆証書、公正証書、秘密証書を比較し、争いの可能性が高いほど安定性を重視します。

第5段階 ― 文案を作る

財産の特定、取得者、遺言執行者、残余財産条項、付言事項、日付、署名、押印を整えます。

第6段階 ― 保管・通知を設計する

公正証書、法務局保管制度、自宅保管、発見可能性を選びます。

第7段階 ― 定期的に見直す

結婚、離婚、出生、死亡、財産変動、税制・法改正、遺言執行者の事情変化に応じて点検します。

Section 11

自筆証書遺言の記載例と注意書き

単純な例を使って、不動産、預貯金、残余財産、遺言執行者を確認します。

次の表は、単純化した自筆証書遺言の記載例を条項ごとに分けたものです。実際に利用する文案ではないものの、不動産、預貯金、残余財産、遺言執行者、付言事項、日付・署名・押印の位置関係を確認できるため重要です。左列で条項の役割を見ながら、右列で財産と人物をどの程度具体的に書く必要があるかを読み取ってください。

項目記載例
表題遺言書
第1条遺言者は、遺言者が所有する下記不動産を、長男〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
不動産表示所在 〇〇県〇〇市〇〇町
地番 〇番〇
地目 宅地
地積 〇〇・〇〇平方メートル
所在 〇〇県〇〇市〇〇町〇番地〇
家屋番号 〇番〇
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階〇〇・〇〇平方メートル、2階〇〇・〇〇平方メートル
第2条遺言者は、〇〇銀行〇〇支店の普通預金、口座番号〇〇〇〇〇〇〇を、長女〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
第3条遺言者は、本遺言に別段の定めがある財産を除き、遺言者に属する一切の財産を、長男〇〇〇〇及び長女〇〇〇〇に各2分の1の割合で相続させる。
第4条遺言者は、本遺言の遺言執行者として、住所〇〇県〇〇市〇〇町〇番〇号、氏名〇〇〇〇、生年月日昭和〇年〇月〇日を指定する。
付言事項家族が互いに感謝を忘れず、円満に手続を進めてくれることを願っています。上記の内容は、長男が長年自宅の管理を担ってきたこと、長女には預貯金を中心に残すことで公平を図りたいことを考慮したものです。
日付・署名・押印令和8年5月27日
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇番〇号
遺言者 〇〇〇〇 印
確認不動産は登記事項証明書に基づいて特定し、預貯金は金融機関名、支店名、口座種別、口座番号を記載します。記載漏れに備えた残余財産条項、遺言執行者、具体的な日付、住所・氏名の自書、押印も確認します。
Section 12

遺言書の書き方チェックリスト

作成前、方式、内容、保管・実行をまとめて点検します。

チェックリストは、作成前の資料整理から、方式、内容、保管・実行までを一つずつ確認するためのものです。抜けた項目があると、方式不備や実行困難につながるため、どの段階の不足かを読み取ってください。

段階主な確認事項
作成前推定相続人、財産目録、不動産資料、預貯金・証券・保険、借入金・保証債務、遺留分、相続税、納税資金、相続登記、遺言執行者候補、公正証書遺言や法務局保管制度の必要性
自筆証書遺言の方式本文全文の自書、年月日までの具体的日付、氏名の自書、押印、財産目録各ページの署名・押印、訂正方式、消えにくい筆記具、共同遺言でないこと、複数ページの順序、A4・余白・片面・ページ番号
内容誰に、何を、どれだけ渡すか、人物特定、不動産の登記表示、残余財産条項、遺留分請求への資金、不動産共有の回避、相続人以外への遺贈の税務、生命保険との整合性、デジタル資産、付言事項の表現
保管・実行安全な保管場所、発見される仕組み、公正証書遺言または法務局保管制度、検認の要否、遺言執行者が手続できる情報、最低限の存在・相談先の共有、定期的な見直し予定
Section 13

遺言書の書き方に関するよくある質問

一般的な制度説明として、個別事情で結論が変わる点も示します。

Q1. 遺言書は若いうちに作ってもよいですか。

一般的には、遺言書は高齢者だけのものではなく、子がいない夫婦、再婚家庭、不動産所有者、会社経営者、内縁の配偶者がいる人、相続人以外に財産を残したい人にも作成意義があるとされています。ただし、財産や家族関係の変化によって内容を見直す必要があります。具体的な作成時期や内容は、財産資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 自筆証書遺言と公正証書遺言はどちらがよいですか。

一般的には、単純な内容で紛争可能性が低ければ自筆証書遺言と法務局保管制度の組み合わせが選択肢になり、財産が複雑、遺留分問題がある、相続人以外へ遺贈する、判断能力が争われそうな場合は公正証書遺言が検討されることがあります。ただし、家族関係、財産内容、健康状態によって結論は変わります。具体的な方式選択は弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q3. 遺言書に全財産を書く必要がありますか。

一般的には、できる限り全財産を対象にし、特定財産だけを書く場合でも残余財産条項を置くことが望ましいとされています。ただし、財産の種類や変動可能性、相続人構成によって文言は変わります。具体的な記載は財産目録を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q4. 相続人に秘密で遺言書を作れますか。

一般的には、遺言書は本人の意思で作成でき、内容をすべて生前に開示する必要はないとされています。ただし、秘密にしすぎると死亡後に発見されない可能性があります。公正証書遺言、法務局保管制度、信頼できる人への保管情報共有など、秘密性と発見可能性の調整は個別事情に応じて検討する必要があります。

Q5. 遺言書を作った後に財産を売却したらどうなりますか。

一般的には、遺言書で特定した財産を生前に売却した場合、その財産に関する遺言部分は実行できなくなる可能性があります。ただし、売却代金、残余財産条項、他の財産との関係によって解釈が変わることがあります。財産変動が大きい場合は、遺言書の見直しについて専門家へ相談する必要があります。

Q6. 家族が反対しても遺言書を作れますか。

一般的には、遺言は本人の単独行為であり、家族の同意がなくても作成できるとされています。ただし、遺留分、遺言能力、強制の有無、作成過程の記録などによって紛争可能性は変わります。家族の反対が強い場合は、証拠化と内容設計について弁護士等へ相談する必要があります。

Q7. 遺言書を書けば相続争いは必ず防げますか。

一般的には、適切な遺言書は遺産分割協議の負担を減らし、遺言者の意思を明確にする効果があるとされています。ただし、方式不備、遺言能力、遺留分、財産特定、税務、感情的対立によって争いが起きる可能性は残ります。具体的な紛争予防策は、家族関係と財産内容を整理して専門家へ相談する必要があります。

Q8. 法務局に預ければ、内容も法律的に正しいと保証されますか。

一般的には、法務局保管制度では形式面の外形的確認を受けられますが、遺言内容の有効性、遺留分、税務、登記実務、紛争可能性まで審査・保証されるわけではないとされています。内容面に不安がある場合は、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q9. 検認を受ければ遺言書は有効になりますか。

一般的には、検認は遺言書の存在・状態を確認し、偽造・変造を防止するための手続であり、有効・無効を判断する手続ではないとされています。ただし、検認後でも遺言能力、偽造、方式不備などが争われる可能性があります。具体的な対応は、裁判所手続や資料を確認したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q10. 弁護士に相談するときは何を準備すべきですか。

一般的には、財産目録、戸籍関係、推定相続人の一覧、不動産登記事項証明書、固定資産税納税通知書、預貯金・証券資料、保険証券、借入資料、過去の贈与資料、希望する配分案を準備すると相談が進みやすいとされています。ただし、税務や登記が関係する場合は税理士・司法書士との連携も必要になる可能性があります。

Section 14

遺言書の書き方で注意すべき点のまとめ

形式・内容・制度・実務を一体として考えることが重要です。

遺言書の書き方で注意すべき点は、手書き、日付、押印だけではありません。遺言書は、方式、内容、保管、発見、執行、税務、登記、遺留分、家族感情が交差する法律文書です。

次のまとめは、読み終えた後に優先して確認したい五つの結論を示しています。遺言書を実行できる状態にするため、形式、内容、紛争要因、保管、専門家相談のどこに不足があるかを読み取ってください。

形式・内容・制度・実務を一体で確認する

方式を守り、財産と人物を明確にし、遺留分・共有不動産・納税資金・相続人以外への遺贈などの紛争要因を先に検討し、公正証書遺言や法務局保管制度、遺言執行者、専門家相談まで含めて設計することが大切です。

Reference

参考資料

公的機関・法令・公証実務・税務資料を中心に整理しています。

法令・公的資料

  • e-Gov法令検索「民法」
  • 政府広報オンライン「知っておきたい遺言書のこと。無効にならないための書き方、残し方」
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度について」
  • 法務省「03 遺言書の様式等についての注意事項」
  • 裁判所「遺言書の検認」
  • e-Gov法令検索「法務局における遺言書の保管等に関する法律」

公証・税務・登記に関する資料

  • 日本公証人連合会「11 必要書類」
  • 日本公証人連合会「公正証書の作成手続がデジタル化されます!」
  • 日本公証人連合会「公正証書の作成手続がデジタル化されます!」リーフレット
  • 国税庁「No.4152 相続税の計算」
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
  • 国税庁「No.4157 相続税額の2割加算」
  • 政府広報オンライン「不動産の相続登記義務化!過去の相続分は?所有不動産を一覧的にリスト化する新制度も開始!」