2σ Guide

公正証書遺言の原本は
どこに保管されるか

紙の原本、電子原本、正本・謄本、保存期間、相続開始後の検索・再交付まで、制度上の保管先と実務上の確認手順を整理します。

公証人側 紙原本の保管先
2025年10月 電子原本の実務開始
死亡後50年 長期保存の取扱い
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公正証書遺言の原本は どこに保管されるか

紙の原本、電子原本、正本・謄本、保存期間、相続開始後の検索・再交付まで、制度上の保管先と実務上の確認手順を整理します。

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公正証書遺言の原本は どこに保管されるか
紙の原本、電子原本、正本・謄本、保存期間、相続開始後の検索・再交付まで、制度上の保管先と実務上の確認手順を整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 公正証書遺言の原本は どこに保管されるか
  • 紙の原本、電子原本、正本・謄本、保存期間、相続開始後の検索・再交付まで、制度上の保管先と実務上の確認手順を整理します。

POINT 1

  • 公正証書遺言の原本はどこに保管されるかをまず押さえる
  • 手元にある書面と、制度上保管される原本を分けて理解することが出発点です。
  • 原本は公証人側で保管され、手元の正本・謄本は利用するための交付物です
  • 公正証書遺言の原本は、遺言者本人が自宅で保管するものではありません。
  • 次の重要ポイントは、原本、正本、謄本の違いと、相続開始後に確認できる制度をまとめたものです。

POINT 2

  • 公正証書遺言の原本の保管先 ― 紙と電子でどこが違うか
  • 紙原本と電子原本では保管の形が変わりますが、遺言者が原本を自宅保管しない点は共通します。
  • 紙で作成された公正証書遺言の原本
  • 電磁的記録で作成された公正証書遺言の原本
  • 従来型の紙の公正証書遺言では、原本は公証役場側に保管されます。

POINT 3

  • 公正証書遺言の原本・正本・謄本の違い
  • 手元の書面をなくした場合の不安は、用語の区別でかなり整理できます。
  • 保管問題で混乱しやすいのは、原本、正本、謄本という言葉が日常語ではないためです。
  • 手続先に提出する資料と、公証人側に残る本体を分けて読み取ることが重要です。
  • 公証人が作成した公正証書遺言の本体です。

POINT 4

  • 公正証書遺言で公証人が原本保管に関与する理由
  • 公正証書遺言は、法律が予定する方式に従って作成される公的な証書です。
  • 公正証書遺言の法的な位置付け
  • 公証人の役割
  • 証拠保全機能

POINT 5

  • 公正証書遺言の原本保存期間 ― 20年だけではない
  • 公正証書一般の20年保存と、遺言公正証書の長期保存の取扱いを分けて整理します。
  • 公正証書一般の保存期間
  • 遺言公正証書の特別な長期保存
  • 「20年で当然に消える」と理解しないことが重要です

POINT 6

  • 公正証書遺言の電子原本とバックアップの考え方
  • 1. 全国の遺言公正証書原本を電磁的記録化:震災等により原本、正本、謄本が全て滅失した場合でも復元できるよう、原本とは別に二重保存する取扱いが公表されました。
  • 2. 公正証書作成手続のデジタル化:公正証書は原則電子データで作成・保存され、電子サインや電子データでの証明情報の発行・交付が説明されています。
  • 3. 検索・交付請求で確認可能性を確保:手元に正本・謄本が見つからない場合でも、一定の要件を満たせば検索や謄本等の請求を検討できます。

POINT 7

  • 公正証書遺言を相続開始後に検索・再交付する方法
  • 1. 自宅・貸金庫・重要書類を確認:正本、謄本、証明情報、公証役場名のメモがないか確認します。
  • 2. 保管公証役場が分かるか:分かる場合と分からない場合で次の手続が分かれます。
  • 3. 保管公証役場へ謄本等を請求:事前連絡のうえ、必要書類と郵送可否を確認します。
  • 4. 最寄りの公証役場で遺言検索:死亡事実、相続関係、本人確認の資料を準備します。
  • 5. 取得した資料で各種手続を進める:金融機関、不動産登記、保険、証券、遺言執行などで提出形式を確認します。

POINT 8

  • 公正証書遺言と自筆証書遺言書保管制度の違い
  • どちらも自宅保管より安全性を高める制度ですが、作成主体と保管の仕組みが異なります。
  • 自筆証書遺言は、遺言者が自分で作成する遺言です。
  • 手軽に作成できる反面、保管を誤ると、紛失、破棄、隠匿、改ざん、発見漏れ、方式不備のリスクがあります。
  • 近年は、法務局の自筆証書 遺言書 保管制度を利用できます。

まとめ

  • 公正証書遺言の原本は どこに保管されるか
  • 公正証書遺言の原本はどこに保管されるかをまず押さえる:手元にある書面と、制度上保管される原本を分けて理解することが出発点です。
  • 公正証書遺言の原本の保管先 ― 紙と電子でどこが違うか:紙原本と電子原本では保管の形が変わりますが、遺言者が原本を自宅保管しない点は共通します。
  • 公正証書遺言の原本・正本・謄本の違い:手元の書面をなくした場合の不安は、用語の区別でかなり整理できます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

公正証書遺言の原本はどこに保管されるかをまず押さえる

手元にある書面と、制度上保管される原本を分けて理解することが出発点です。

公正証書遺言の原本は、遺言者本人が自宅で保管するものではありません。紙で作成された原本は原則として公証役場側で保管され、電磁的記録で作成された原本は日本公証人連合会が運営するシステムに保管されると説明されています。

次の重要ポイントは、原本、正本、謄本の違いと、相続開始後に確認できる制度をまとめたものです。保管先を誤解すると、手元の書面が見つからないだけで遺言が失われたと考えてしまうため、ここから「どこに何があるか」を読み取ることが重要です。

原本は公証人側で保管され、手元の正本・謄本は利用するための交付物です

正本や謄本を紛失しても、直ちに遺言そのものが失効するわけではありません。一定の資格を有する人は、検索や謄本等の請求を検討できます。

公正証書一般の保存期間には20年という説明がありますが、遺言公正証書は死亡後50年、証書作成後140年、又は遺言者の生後170年間保存する取扱いが公表されています。したがって、作成から20年を過ぎたら当然に廃棄されるという理解は正確ではありません。

また、平成元年以降に作成された公正証書遺言については、全国の公証役場で有無と保管公証役場を検索できる可能性があります。検索の申出は無料とされ、遺言者の死亡後は相続人等の利害関係人が必要資料を提出して行います。

Section 01

公正証書遺言の原本の保管先 ― 紙と電子でどこが違うか

紙原本と電子原本では保管の形が変わりますが、遺言者が原本を自宅保管しない点は共通します。

紙で作成された公正証書遺言の原本

従来型の紙の公正証書遺言では、原本は公証役場側に保管されます。遺言者が受け取るのは、原本そのものではなく、原本に基づいて作成された正本・謄本又はこれらに相当する書面です。

ここでいう公証役場側での保管は、民間の保管サービスに預けるという意味ではありません。公証人は国の公務である公証作用を担う実質的な公務員と説明され、法務大臣により任命され、中立・公正な立場で公証事務を行います。

電磁的記録で作成された公正証書遺言の原本

2025年10月1日から、公正証書作成手続のデジタル化が始まりました。公正証書は原則として電子データで作成・保存され、嘱託人は電子サインで足り、正本・謄本に相当する証明情報は電子データ又は紙の書面で発行・交付できると説明されています。

次の比較表は、紙原本と電子原本について、保管先と遺言者が通常受け取るものを整理したものです。相続手続で使う資料と制度上の原本を取り違えないために、左列の区分、中央の保管先、右列の交付物を対応させて読むことが重要です。

区分原本の保管先遺言者が通常受け取るもの
紙で作成された公正証書遺言公証役場側正本・謄本又はそれに相当する書面
電磁的記録で作成された公正証書遺言日本公証人連合会が運営するシステム正本・謄本に相当する証明情報の電子データ又は紙の書面

この表から分かるとおり、どちらの場合も、遺言者が自宅で原本を管理する構造ではありません。ここが自筆証書遺言との大きな違いです。

Section 02

公正証書遺言の原本・正本・謄本の違い

手元の書面をなくした場合の不安は、用語の区別でかなり整理できます。

保管問題で混乱しやすいのは、原本、正本、謄本という言葉が日常語ではないためです。次の一覧は3つの用語が何を指し、相続実務でどう使われるかを示しています。手続先に提出する資料と、公証人側に残る本体を分けて読み取ることが重要です。

Original

原本

公証人が作成した公正証書遺言の本体です。紙では署名・押印等のある公正証書そのもの、電子では電子的に作成・保存された公正証書そのものを指します。

Authenticated Copy

正本

原本に基づいて作成され、原本と同じ内容を持つものとして公証人が交付する書面又は相当する証明情報です。金融機関、不動産登記、遺言執行などで確認されることがあります。

Transcript

謄本

原本の内容を写したものです。内容確認、関係者への説明、金融機関等への提出資料として使われることがあります。

2025年10月以降は、正本・謄本という紙中心の理解に加え、「公正証書に記録された事項の証明情報」という電子的な発行・交付の理解も必要です。どの手続で正本が必要か、謄本で足りるか、電子データで足りるかは、手続先や事案によって異なります。

公正証書遺言では、手元の正本・謄本を紛失しても、直ちに遺言そのものが失効するわけではありません。原本が公証人側に保存されているため、一定の要件を満たす人は、正本・謄本又は相当する証明情報の交付を請求できる可能性があります。

Section 03

公正証書遺言で公証人が原本保管に関与する理由

公正証書遺言は、法律が予定する方式に従って作成される公的な証書です。

公正証書遺言の法的な位置付け

遺言は、遺言者の死亡後に効力を生じる法律行為です。本人が亡くなった後に効力が問題になるため、作成時点で本人の真意、方式、判断能力、内容の明確性をできる限り確保しておく必要があります。

民法は、公正証書遺言について、証人二人以上の立会い、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授することなどを定めています。さらに、公正証書は公証人法の定めるところにより作成されるとされています。

公証人の役割

公証人は、中立・公正な立場で公正証書を作成する専門職です。一方当事者に偏ることなく職務を行う立場であり、特定の依頼者の代理人として最も有利な法的構成を主張する立場とは異なります。

次の一覧は、公証人側で原本を保管することが相続実務で持つ機能を整理したものです。保管先の問題は単なる場所の話ではなく、後日の証拠確認、紛争予防、手続の進めやすさに直結するため、それぞれの機能を分けて読み取ることが重要です。

Evidence

証拠保全機能

遺言者の死亡後に偽造や書換えが争われても、公証人側に原本が保存されていれば、真正な内容を確認しやすくなります。

Prevention

紛争予防機能

遺言者本人や特定の家族が原本を保管する場合に生じやすい紛失、隠匿、破棄、改ざんの疑念を減らせます。

Procedure

手続円滑化機能

公正証書遺言は家庭裁判所での検認手続を経る必要がないため、相続開始後に遺言内容を実現しやすいとされています。

もっとも、公証人は中立の立場です。相続人間で対立が予想される場合、遺留分、事業承継、信託、成年後見、不動産共有など複雑な論点がある場合には、作成前に弁護士等の専門家へ相談する意義があります。

Section 04

公正証書遺言の原本保存期間 ― 20年だけではない

公正証書一般の20年保存と、遺言公正証書の長期保存の取扱いを分けて整理します。

公正証書一般の保存期間

公正証書一般については、公証人法施行規則上、保存期間は20年とされています。しかし、ここだけを読んで「公正証書遺言も20年でなくなる」と考えるのは危険です。

遺言公正証書の特別な長期保存

遺言は、作成時点では直ちに相続手続で使われるものではありません。効力が生じるのは、原則として遺言者の死亡時です。50歳で作成し、95歳で亡くなる人であれば、作成から45年後に初めて実務上必要になります。

次の比較表は、公正証書一般の保存期間と遺言公正証書の長期保存の取扱いを並べたものです。20年という数字だけを見るのではなく、遺言では死亡後に使われるという性質から、より長い保存取扱いが説明されている点を読み取ることが重要です。

対象保存期間の考え方実務上の意味
公正証書一般公証人法施行規則上20年通常の公正証書についての基本的な保存期間
遺言公正証書死亡後50年、証書作成後140年、又は遺言者の生後170年間保存する取扱い死亡後に初めて必要になる遺言の性質を踏まえた長期保存

次の重要ポイントは、長期保存の意味と限界をまとめたものです。原本が長く保管されることは強い安心材料ですが、遺言の有効性や内容の古さまで自動的に解決するわけではないことを読み取る必要があります。

「20年で当然に消える」と理解しないことが重要です

遺言公正証書は、相続開始後の利用に支障が出ないよう非常に長期にわたって保管する制度設計が説明されています。

保存されていても、後に別の遺言を作成した、判断能力に争いがある、内容が不明確、遺留分侵害額請求が問題になる、財産内容が変わった、受遺者や遺言執行者が先に亡くなった、会社株式や不動産などが絡むといった事情があれば、別途の法的検討が必要になる可能性があります。

Section 05

公正証書遺言の電子原本とバックアップの考え方

デジタル化後も、原本を自分で保管しないという制度の本質は変わりません。

公正証書作成手続のデジタル化により、インターネットによる嘱託、ウェブ会議の利用、電子データでの作成・保存が制度上可能になりました。2025年10月1日以降、順次指定される指定公証人の役場で利用可能となることも説明されています。

電子原本の場合、原本は紙の束として存在するのではなく、公正証書として作成された電子データが原本になります。遺言者のパソコンやスマートフォンに保存されるものではなく、公証人側の制度的な保管システムで保存されます。

次の時系列は、公正証書遺言の保管が紙の原本保管から電子的保存とバックアップを含む制度へ広がった経過を表しています。災害や滅失のリスクに備える仕組みが、相続開始後の確認可能性を支える点を読み取ることが重要です。

2014年以降

全国の遺言公正証書原本を電磁的記録化

震災等により原本、正本、謄本が全て滅失した場合でも復元できるよう、原本とは別に二重保存する取扱いが公表されました。

2025年10月1日以降

公正証書作成手続のデジタル化

公正証書は原則電子データで作成・保存され、電子サインや電子データでの証明情報の発行・交付が説明されています。

相続開始後

検索・交付請求で確認可能性を確保

手元に正本・謄本が見つからない場合でも、一定の要件を満たせば検索や謄本等の請求を検討できます。

デジタル化によって手続の方法や交付物の形は変わりますが、公正証書遺言では、原本を公証人側が制度的に保管し、遺言者や相続人は原本そのものではなく証明情報等を利用するという構造は変わりません。

Section 07

公正証書遺言と自筆証書遺言書保管制度の違い

どちらも自宅保管より安全性を高める制度ですが、作成主体と保管の仕組みが異なります。

自筆証書遺言は、遺言者が自分で作成する遺言です。手軽に作成できる反面、保管を誤ると、紛失、破棄、隠匿、改ざん、発見漏れ、方式不備のリスクがあります。近年は、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用できます。

次の比較表は、公正証書遺言と自筆証書遺言書保管制度の主な違いをまとめたものです。保管場所だけでなく、作成に誰が関与するか、方式不備のリスク、検認、探索方法、費用の違いをあわせて読み取ることが重要です。

比較項目公正証書遺言自筆証書遺言書保管制度
作成主体公証人が関与して公正証書として作成遺言者本人が自筆で作成
原本の保管紙原本は公証役場側、電子原本は日本公証人連合会の運営システム法務局の遺言書保管所
方式不備のリスク公証人が関与するため比較的小さい法務局は外形的確認を行いますが、内容の法的有効性まで保証するものではありません
検認不要保管制度を利用したものは不要
相続人による探索平成元年以降の公正証書遺言は全国の公証役場で検索可能法務局の制度に基づく証明書・閲覧等の手続
費用財産価額等に応じた公証人手数料等保管申請手数料等

確実に発見され、形式面の争いをできるだけ減らしたい、相続人間に緊張関係がある、不動産、会社株式、事業承継、再婚、前婚の子、内縁関係、寄付、遺留分などが絡む場合には、公正証書遺言が適していることが多いです。

一方で、内容が比較的シンプル、費用を抑えたい、自分で自筆できる、法務局保管制度を使って紛失リスクを下げたい場合には、自筆証書遺言書保管制度も選択肢になります。ただし、どちらの方式を選ぶかは、保管場所だけでなく、法的有効性、遺留分、税務、登記、金融機関実務、遺言執行者、家族関係を総合して検討する必要があります。

Section 08

公正証書遺言の原本保管と遺言の効力は別に考える

原本保管は強い安心材料ですが、すべての争点を消すものではありません。

公正証書遺言の原本が公証人側に保管されていることは、極めて強い安心材料です。少なくとも、遺言書の物理的な紛失、隠匿、破棄、改ざんのリスクは大きく下がります。

しかし、原本が保管されていることと、遺言の内容が一切争えないことは同じではありません。相続実務では、公正証書遺言であっても、作成時の判断能力、方式、内容の特定性、後日の撤回・変更、遺留分、財産の名義や評価などが問題になることがあります。

次の一覧は、原本が保管されていても検討が必要になり得る主な争点を示しています。原本の存在確認で終わらせず、どの論点が後日の手続や紛争に影響するかを読み取ることが重要です。

遺言能力

作成時に遺言者が内容を理解し、判断できたかが争われることがあります。

方式・証人

口授や意思確認の適切性、証人の欠格事由などが問題になることがあります。

内容の特定性

財産や受け取る人の表示が不明確で、執行しにくい場合があります。

後の遺言

新しい遺言により、以前の遺言が撤回又は変更されている可能性があります。

遺留分

一部の相続人に最低限の取り分に関する請求が発生する可能性があります。

財産・税務

不動産、会社株式、担保、借入、税務評価などが別途問題になることがあります。

相続人の一部に財産を渡さない内容、遺留分侵害の可能性、既にある対立、認知症や診断書・介護記録の問題、会社株式や事業承継、共有不動産、前婚の子や養子、海外財産、遺言執行者の選任、税務・登記費用まで含む設計が必要な場合には、弁護士、司法書士、税理士等へ相談する意義が大きくなります。

Section 09

公正証書遺言の原本保管を前提にした実務確認

生前の設計と死亡後の初動を分けておくと、相続開始後の混乱を減らせます。

公正証書遺言の原本は公証人側に保管されます。しかし、それだけで相続開始後の手続が自動的に進むわけではありません。次の一覧は、遺言者、相続人・受遺者、支援者の立場ごとに確認すべき実務項目を整理したものです。誰がいつ何を確認するかを読み取ることが重要です。

1

遺言者本人の生前確認

正本・謄本又は証明情報の保管場所、遺言執行者の指定、財産目録、重要書類の所在、家族へ知らせる範囲、見直し時期を整理します。

生前設計
2

相続開始後の初動確認

自宅、貸金庫、重要書類ファイル、仏壇、金庫、通帳保管場所、専門家との契約書類を確認し、見つからない場合は遺言検索を検討します。

死亡後検索
3

取得後の内容確認

遺言の日付、後日の別遺言、遺言執行者、財産の表示、受遺者や相続人の存否、遺留分、相続税申告の必要性を確認します。

取得後実行

正本・謄本を誰が保管するか

正本・謄本を遺言者本人が保管するか、遺言執行者候補者が保管するか、専門職が保管するかは、事案によって異なります。遺言者本人が保管する場合は、相続開始後に発見されやすい場所に保管しつつ、第三者に勝手に見られないようにする必要があります。

相続人間の緊張が高い場合、特定の相続人だけに正本を預けると、かえって不信感を招くことがあります。そのような場合は、弁護士、司法書士、信託銀行等の専門職・専門機関の関与も検討に値します。

後日の見直し

公正証書遺言は、一度作ったら永遠に見直せないものではありません。遺言者は、遺言能力がある限り、新たな遺言を作成して以前の遺言を撤回・変更することができます。

次の比較表は、作成後に見直しを検討すべき主な事情と、確認すべきポイントを並べたものです。原本が保管されていても、内容が古くなると手続が複雑になることを読み取ることが重要です。

見直しを検討する事情確認すべきポイント
配偶者、子、受遺者、遺言執行者が亡くなった受け取る人や執行者の指定が現在も機能するかを確認します。
不動産を売却又は新たに取得した遺言の財産表示と現在の登記情報が合っているかを確認します。
会社株式や事業の状況が変わった事業承継、議決権、税務、後継者の設計を確認します。
相続人との関係が大きく変わった遺留分や紛争予防の観点から内容を確認します。
認知症リスクが高まった判断能力や医療記録、相談時期を慎重に確認します。
税制、登記実務、金融機関実務に影響する変更がある相続税、登記、口座解約等の運用に合うかを確認します。

実務チェックリスト

  • 公正証書遺言の原本は自宅保管ではないことを理解している
  • 正本・謄本又は証明情報の保管場所を決めている
  • 遺言執行者を指定するか検討している
  • 財産目録、通帳、証券口座、不動産資料、保険証券等の所在を整理している
  • 作成後に財産・家族関係が変わった場合の見直し時期を決めている
  • 相続開始後は、正本・謄本、証明情報、公証役場名のメモを確認する
  • 見つからない場合は、最寄りの公証役場に遺言検索を相談する
  • 取得後は、遺言執行者、財産内容、受遺者、相続人、遺留分を確認する

表現上の注意

次の比較表は、専門家や企業法務担当者が説明する際に避けたい表現と、より正確な表現を整理したものです。2025年10月以降の電子原本や長期保存の取扱いを踏まえ、古い言い回しだけで説明しないことが重要です。

避けたい表現より正確な表現
原本は必ず作成した公証役場にある紙原本は公証役場側、電子原本は日本公証人連合会の運営システムに保管される場合があります。
公正証書遺言は20年保管公正証書一般は20年ですが、遺言公正証書は長期保存の取扱いがあります。
遺言者は原本を受け取る遺言者は正本・謄本又はこれらに相当する証明情報を受け取ります。
家族なら生前に検索できる生前の検索申出は遺言者本人に限られると説明されています。
正本がないと遺言は使えない原本が保管されていれば、謄本等の請求や検索が可能な場合があります。
Section 10

公正証書遺言の原本保管に関するよくある質問

制度の一般的な説明として整理します。個別事情により結論は変わる可能性があります。

Q1. 公正証書遺言の原本はどこに保管されますか。

一般的には、紙で作成された原本は公証役場側で保管され、電磁的記録で作成された原本は日本公証人連合会が運営するシステムに保管されると説明されています。ただし、作成時期や作成方式によって確認すべき点が変わる可能性があります。具体的な確認は、公証役場や専門家へ相談する必要があります。

Q2. 遺言者が受け取る正本や謄本は原本ですか。

一般的には、正本・謄本又はこれらに相当する証明情報は、原本に基づいて交付されるものであり、原本そのものではありません。ただし、手続先がどの形式を求めるかは運用により異なる可能性があります。提出前に金融機関、法務局、専門家等へ確認する必要があります。

Q3. 正本や謄本をなくしたら、遺言は無効になりますか。

一般的には、正本・謄本の紛失だけで直ちに遺言が無効になるわけではないと考えられます。原本が保管されていれば、一定の資格を有する人が謄本等の交付請求を検討できる可能性があります。ただし、請求できる人や必要資料は事案によって変わるため、公証役場や専門家へ確認する必要があります。

Q4. 公正証書遺言は20年で廃棄されますか。

一般的には、公正証書一般の保存期間は20年とされていますが、遺言公正証書については死亡後50年、証書作成後140年、又は遺言者の生後170年間保存する取扱いが説明されています。ただし、保存の有無と遺言の有効性は別問題です。具体的な見通しは資料を確認したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q5. 親が公正証書遺言を作ったか分からない場合はどう調べますか。

一般的には、平成元年以降に作成された公正証書遺言について、全国の公証役場で有無と保管公証役場を検索できる可能性があります。遺言者の死亡後は、相続人等の利害関係人が死亡事実、相続関係、本人確認の資料を提出して申し出ます。具体的な資料は公証役場へ確認する必要があります。

Q6. 遺言者の生前に家族が有無を調べることはできますか。

一般的には、遺言者の生前の検索申出は遺言者本人に限られると説明されています。ただし、本人確認や代理手続の可否などは個別事情で確認が必要になる可能性があります。具体的には公証役場へ相談する必要があります。

Q7. 公正証書遺言は家庭裁判所の検認が必要ですか。

一般的には、公正証書遺言は家庭裁判所での検認手続を経る必要がないとされています。これは、原本が公証人側で保管され、作成過程にも公証人が関与するためです。ただし、遺言の有効性、遺留分、執行方法などの問題は別途生じる可能性があります。

Q8. 公証役場が遠方の場合、謄本を取りに行く必要がありますか。

一般的には、謄本請求は郵送でも可能と説明されています。また、遠隔地の公証役場が保管する遺言公正証書等について、最寄りの公証役場で手続をして郵送で請求できる取扱いも公表されています。ただし、必要資料や手数料、郵送方法は事案により確認が必要です。

Q9. デジタル化後は紙の書類が不要になりますか。

一般的には、正本・謄本に相当する証明情報は電子データでも紙の書面でも発行・交付が可能と説明されています。ただし、金融機関、法務局、証券会社、保険会社等がどの形式を受け付けるかは、それぞれの運用で変わる可能性があります。手続前に提出先へ確認する必要があります。

Q10. 公正証書遺言を作れば弁護士相談は不要ですか。

一般的には、公証人は中立・公正な立場で公正証書を作成するため、特定の相続人や受遺者の代理人ではありません。相続人間の対立、遺留分、事業承継、認知症リスク、不動産共有、税務、国際相続などがある場合は、結論や対応方針が変わる可能性があります。具体的な設計は弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Reference

参考情報源

法令・公的資料

  • e-Gov法令検索「民法(明治29年法律第89号)」第969条(公正証書遺言)
  • e-Gov法令検索「公証人法(明治41年法律第53号)」
  • e-Gov法令検索「公証人法施行規則(昭和24年法務府令第9号)」
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度」

公証実務に関する資料

  • 日本公証人連合会「公証人とは」
  • 日本公証人連合会「2 遺言」
  • 日本公証人連合会「公正証書遺言には、どのようなメリットがありますか?」
  • 日本公証人連合会「公正証書遺言は、どのくらいの期間、保存されるのですか?」
  • 日本公証人連合会「公正証書の作成手続がデジタル化されます!」
  • 日本公証人連合会「安心・安全のため遺言公正証書の原本を二重に保存します!!」
  • 日本公証人連合会「亡くなった方について、公正証書遺言が作成されているかどうかを調べることができますか?」
  • 日本公証人連合会「遺言公正証書の謄本の請求は、遺言書を保管している公証役場に出向く必要がありますか?」
  • 日本公証人連合会「郵送による遺言公正証書等の正謄本の取得方法について」